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WILLER、東京・有楽町に「MARUNOUCHI TRAVEL LAB」をオープン
「旅」「食」「地域」で新たな価値を生み出す
2017年1月20日 22:16
- 2017年1月17日 発表
WILLER CORPORATIONは1月17日、東京・丸の内にある有楽町ビルの1階に「MARUNOUCHI TRAVEL LAB」(以下、TRAVEL LAB)を開設した。
この施設は、「旅」「食」「地域」のプロフェッショナルが集結し、これまでにない新しいビジネスモデルを創造する研究所といったものだ。
発表会ではまず、WILLER ALLIANCEの代表取締役社長である村瀨茂高氏が登壇し、概要や設立の背景などについて語った。TRAVEL LABは、「旅」「食」「地域」をキーワードに、さまざまな分野のプロフェッショナルを集めて、新しい「食ツーリズム」を作り上げる研究所とのこと。
会社ではなく研究所としたのは、プランニングをする広告代理店、旅行パッケージを実行する旅行代理店、企画を検証するコンサルティング会社、それぞれがよい仕事をしても、個々では推進力が弱く、新たな価値が生まれにくい。それをTRAVEL LABという研究所にプロフェッショナルを集めることで、プランニング→実行→検証→改善までのPDCAモデルを、スピード感をもって回していくことで新たな価値を創造していくことができるのではないかとのことだ。
WILLERグループがTRAVEL LABを誕生させた背景として、「地域ごとに見ると日本は非常に“食”に恵まれています。その地域に人を運ぶキーとなるのが“食”なのですが、そこまでいくのが困難」とし、今まで培ってきた移動に関するノウハウと組み合わせることで新しい食ツーリズムを作り、新たな市場を創造、企業や自治体に新しい旅行スタイルを提案していきたいとのことだ。
食ツーリズムの一つの事例として、欧州で流行している「バルホッピング」を紹介。バルを仲間と一緒に何軒もまわりながら楽しむというものだが、村瀬氏がギリシャを訪れたときは、初めて顔を合わせる人たちがつたない英語で食をツールにこういったスタイルでコミュニケーションを楽しんでおり、とても面白いと感じたそうだ。このような文化もTRAVEL LABを通じて紹介していきたいといい、「単発ではなく、持続的なプランを作っていきたい」と話した。
次にTRAVEL LABの所長であり、umariの代表取締役である古田秘馬氏が登壇し、TRAVEL LABの命題でもある地方創生について語った。
観光客に地方に来てもらい、消費してもらうわけだが、どこの自治体も苦労している現状、どのような方法があるのか。一例として、うどんで有名な香川県の三豊市で行なった事例が紹介された。
従来からある「うどんマップ」を作って消費してもらうという方法だと、1人当たりせいぜい2~3店舗で1000円台程度の売り上げにしかならない。そこで、自ら手がけている「丸の内朝大学」で「うどん留学クラス」を設立。うどんの知識はもとより、現地に行って名人の技法を見学したり、製麺機による味の違いを体験したり、歴史を学んだりすることで、うどんをもっと徹底的に知ろうというものだ。
授業料、交通費、宿泊費で10万円を超える講座だが、募集してから1~2分で30人の枠が埋まってしまうそうだ。
このことからも「パッケージにすることでコンテンツに価値がでる。新しいコンテンツを探すことでもなく、新しい建物を作ることでもない。価値を作ることが非常に重要であり、地方創生のキーワードはそこにあります」と古田氏は語る。
既存であるものを違う角度から見て価値を作り出すのがプロジェクトの目的であり、そのようなことからも地域と都市、地域内を結んで価値を生んでいる人たちにプロデューサーに入ってもらうとのことだ。
また、地方のそういった価値ある場所にどうやって人を運ぶかといった部分は、すでにレストランバスやレストラン列車といった共同プロデュースを行なった実績があるWILLERグループの力を使っていくとしている。
そしてもう一つの強みとして、140カ国以上の人がWILLERグループのバスを利用しており、年間数十万人に及ぶデータベースは正確なインバウンドの分析に威力を発揮。ターゲットを明確にしてプランニングできるとのことだ。
ここからは事例の紹介となり、TRAVEL LABと連携していく団体や企業、自治体が紹介された。
エコッツエリア協会について、プロデューサーの井上氏が語った。この協会は、大手町、丸の内、有楽町をまとめた「大丸有」地区のステークホルダーと一緒になって社会課題、地域課題の解決、企業とのコラボレーションを支援するファシリテーター的役割の団体。
大丸有地区は6000社、23万人が働いており、情報発信の場としても重要なエリアとのこと。このエリアを核として地域の魅力ある資源に着目したインバウンド観光を着実に推進するために、足りていないものとして人材の育成を挙げており、外国人インバウンド向け「地域ナビゲータースクール」を開講する予定とのことだ。
TRAVEL LABとの連携においては、人材育成プログラムの実施推進にあたって、現地への移動、インバウンド観光における実績といった部分に期待し、協業しながら相乗効果を上げていきたいとしている。
続いて有楽町地区においてのバルホッピングに関わる2社が紹介された。一つは三菱地所で、仲通りにおいてバルホッピングの企画を担当。食べ歩きだけでなく、街の歴史がスパイスになるようなプランにし、有楽町エリアを知り尽くしている同社がアイデア出しと店舗との折衝を行ない、商品化や販売促進、集客などはTRAVEL LABでと、相互に補完関係をうまく使いながら新しい付加価値創造を進めていきたいとしている。また、有楽町だけでなく、丸の内ゾーン、大手町ゾーンと広げながら、いろいろな商品企画を提案、サポートもしていくそうだ。
具体的なツアーについては、三菱地所プロパティマネジメントの江口氏より説明された。一つは「SAKE Bar Hopping」で、日本酒をテーマにしたもの。TRAVEL LABに集合してスタートし、まず金沢の日本酒直売店である「福光屋」で日本酒の飲み比べ、日本酒の知識を学ぶ。次に「丸の内バルセン‐鮮‐」でお刺身を堪能し、最後に「和麺 TURURU」で盛りそば、うどんを新潟のお酒とともに楽しむといったものだ。料金は1人6000円で、150分を予定している。
もう一つは「NIKU Bar Hopping」で、こちらもTRAVEL LABから始まり、「ローストチキンハウス 丸の内店」で福島県の伊達鶏とクラフトビールを味わい、「尾崎牛 肉バル ウィッフィ」で宮崎産の和牛ステーキを堪能するというものだ。料金は1人9000円で、150分を予定している。
今後は丸の内商店街に加入する店舗とのネットワークを活かし、いろいろなツアーの企画と運営に協力していきたいとしている。
最後は自治体との事例として新潟県新潟市が取り上げられ、新潟市農林水産部 特区・食文化担当部長である笠原氏が登壇して概要を語った。
新潟市は日本海側で唯一の政令指定都市でありながら米の収穫量が全国の市町村で第1位と、ほかの都市には見られない特徴を持ち、豊富な水量を誇る信濃川と阿賀野川に囲まれ、米のほか、野菜や果樹など、豊富な農産物に恵まれたエリアである。また、古くからの港町でもあり、交易によってもたらされた人や物の交流から料亭や花街などのおもてなし文化も発展し、豊かな食文化を築いてきた美食の街でもあるとのことだ。
2015年に食をテーマに開催されたミラノ国際博覧会をきっかけに、和食のもつ魅力と新たな可能性を広げて世界平和につなげていこうという「ピースキッチン」というプロジェクトが2016年に立ち上がり、新潟市としても大地を大切にしている農家にスポットライトを当て、その農家と意欲あるシェフ、そしてその飲食店と消費者をつなぐ「ピースキッチン新潟運動」を開始。
食の力で地方の力を引き出すことを目的に一般社団法人「ピースキッチン新潟」を設立し、新潟から食文化を創造して発展させていくという明確な目標を掲げて活動をしているとのことだ。
このピースキッチン新潟の最初の事業が、2016年にWILLERグループが日本で初めて運行した「レストランバス」であり、新潟市が最初の拠点となっている。レストランバスとは、シェフの調理した料理を車内でいただきつつ、農家がナビゲーターとなって田んぼや畑、酒蔵やワイン蔵などをまわり、収穫や試飲なども楽しめる新しいバスツアー。
参加者からの評判もよく、新潟市の食のPRも大いにできたとのことだ。このようにすでにWILLERグループと連携してきた新潟市だが、TRAVEL LABにおいても3月末までさまざまな企画を開催する予定だそうだ。