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ブライトリング DC-3が熊本を周回飛行。修復中の熊本城上空にも姿を見せる

2017年4月30日 周回飛行実施

熊本空港を離陸するブライトリング DC-3

 スイスの時計メーカーであるブライトリングが支援している「ブライトリング DC-3」が、4月30日に熊本県内の阿蘇地域や熊本市街地の上空を周回飛行した。これは世界一周飛行への挑戦「ブライトリング DC-3 ワールドツアー」中に熊本を訪れたのを機に、同社が取り組んでいる「みんなで大空を見上げよう!」プロジェクトの一環として行なわれたもの。

 この「みんなで大空を見上げよう!」プロジェクトは、元々2013年に民間唯一のジェット機を使ったアクロバットチームである「ブライトリング・ジェットチーム」が2013年に東日本大震災で被災した福島県を訪問することになった際の、チームリーダーのジャック・ボツラン氏による「人は悲しいことがあると下を向いてしまう。そんなとき、我々が大空で最高のショーを行なうことで、上を見上げ、驚きや感動、ワクワクして笑顔になったり、元気の源を届けたい」との言葉から名付けられたもの。

 今回の熊本での取り組みも、歴史的な飛行機が飛ぶ熊本の空を見上げてもらい、平成28年熊本地震からの復興への励みになることを目的に実施。特に被害の大きかった益城町の小学生を乗せ、阿蘇周辺と熊本市街地、熊本城上空の周回飛行を実施した。

 今回、この周回飛行に搭乗したのは、応募のなかから選ばれた24名。熊本空港に隣接する崇城大学の熊本空港キャンパスに到着した一同は、興味を高めてもらうべく開催された航空教室を受講。

 航空教室の講師は元航空ジャーナル編集長の中村浩美氏。ダグラス DC-3が実用的な世界初の旅客機となったことや、日本でもANA(全日本空輸)の前身である日本ヘリコプター輸送(日ペリ)が1955年に導入し、同社で初めてCA(客室乗務員)を乗務させた飛行機であるといった歴史や、尾輪式で搭乗するときに坂を上るように乗り込むことや近代的な全金属製であるといった構造的な特徴など、DC-3全般の話から解説をスタート。

 また、ブライトリング DC-3は航空電子機器などがアップグレードされていることや、これまでの世界一周フライトではヨルダン空軍のアクロバット飛行チーム「ロイヤル・ヨルダニアン・ファルコンズ」や、マレーシア空軍のPC-7型機などと編隊飛行したことなどを紹介。搭乗体験に応募した子供たちということもあって、約30分の講義を興味深そうに聞いている様子だった。

ブライトリング DC-3に搭乗する児童たち。まずは崇城大学の熊本空港キャンパスに集まって航空教室
元航空ジャーナル編集長の中村浩美氏が講師。かなりマニアックな内容も含まれていたが、子供たちは熱心に聞いていた

 その後、24名は12名ずつの2チームに分かれて搭乗。残るチームは、日本航空協会が行なう航空機の模型教室を受講することに。

 搭乗するチームは、まず機体前で記念撮影をしたあと、パイロットを務めるフランシスコ・アグーロ(Francisco Agullo)機長と、ポール・バゼリー(Paul Bazeley)副操縦士の出迎えを受けて機内に搭乗。機体に内蔵されたタラップ(ステア)を使って1人ずつ乗り込んだ。

 この後、エンジンを始動し、滑走路へ。熊本の空を周回飛行したのちには、全員に搭乗証明書が配布されたという。

講義終了後に2チームに分かれて搭乗へ。手続きを終えた児童たちはさっそく、これから乗り込むブライトリング DC-3や、珍しいハンガー前の光景を撮影
パイロット2名の出迎えを受け、1名ずつ機内へ
児童たちが乗り込み、エンジンスタートを控えるブライトリング DC-3
パイロットとマーシャラーがコンタクトしてエンジンスタート
ブライトリング DC-3のエンジンスタート
パイロットの合図を受け、地上走行をスタート
パイロットは窓から手を振りながら出発。昨今の旅客機ではあまり見られない尾輪式特有の弧を描いて反転し、滑走路へ向かった
パイロットは窓から手を振りながら出発
滑走から離陸へ。早い段階で尾輪が上がり、そのままの姿勢を維持して滑走し、離陸

 一方、ブライトリング DC-3が上空を飛ぶ熊本市内では、事前に公開されていた飛行ルート図に記載されたポイントを中心に多くの人が集まった様子。この日、フライトは3回実施されたが、記者は2回目のフライト時には熊本城の二の丸広場、3回目のフライト時には花岡山公園を訪れてみた。

 天気には恵まれたものの、PM2.5の影響で霞がかった空ではあったが、どちらの場所も観光客に混ざって大きなカメラを持った人たちが多く集まっており、ブライトリング DC-3の飛来を待ちわびていた。そして、いざブライトリング DC-3が現われると、カメラが一斉に空を向き、偶然訪れていた人たちも何ごとかと空を見上げる姿があった。

 この、ブライトリング DC-3による周回飛行は、5月19日~21日に訪れる神戸、5月26日~27日に訪れる福島でも実施される。いずれも大きな震災を経験した土地で、同様に空を見上げる人たちの姿が見られるのだろう。

熊本城二の丸広場より。震災からの復興途上にある熊本城の北東方向を、ブライトリング DC-3がフライト。熊本空港へ向かう際も二の丸広場から見られる位置を飛んだ
花岡山公園は熊本市街を一望できる小高い山の上の公園
花岡山公園から。3回目のフライトはチェイスプレーンを伴って熊本市街上空を2周した
熊本城二の丸広場からブライトリング DC-3を見上げる人々