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JAL、空港警察と共同で羽田空港女性スタッフ向けの護身術セミナーを実施

防犯意識を高め、女性職員の多い職場での対処能力を向上

2017年3月14日 実施

JALの女性スタッフが、東京空港警察署による護身術セミナーを受講

 JAL(日本航空)は、東京空港警察署(空港警察)と共同で、JALグループの女性を対象とした護身術セミナーを開催した。早朝・深夜の出勤もある社員たちの日々のストレスを軽減し、空港で事案が発生した際に利用者の安全確保を目指すのが狙い。初回となった今回は30名ほどが参加し、実用的な護身術の数々学んだ。

羽田空港では初開催、JALグループの女性社員へ空港警察が直接指導

 今回のセミナーは、JALグループから空港警察へ依頼し、協力を得たもの。勤務シフトによって早朝や深夜に出勤・帰宅することもある空港勤務の女性社員を中心に、男性も含めて参加が呼びかけられた。空港警察から直接護身術の指導を受けることで、防犯意識や対処能力を高めることを目的としている。

 セミナーは「JAL羽田オペレーションセンター」のブリーフィングルームで同内容が3回行なわれる予定。成田空港などの他空港では同様のセミナーが実施されたことがあるそうだが、羽田空港では今回が初めてで、JALグループのCA(客室乗務員)やグランドスタッフなど約30名が参加して、座学と実技講習が行なわれた。

 最初にJAL 東京空港支店 副支店長の石川房子氏が挨拶し、「今日は羽田空港で働くJALグループ女性社員の犯罪被害を防止する、防犯対策として実施した。男性も今日はホワイトデーで忙しいなか、数名参加いただいている。護身術という意味では日頃から危険な状態に身を置かないことが大切。私自身もこの知識が自分を守ると同時に、ほかの人を助けることにつながるという思いでセミナーを受講したいと思う」とコメントした。

 続いて東京空港警察署の前田敦署長が挨拶し、「個人的に、最初の海外旅行も新婚旅行もJALだったので思い入れがある。犯罪は弱い立場にある方が狙われやすく、老齢者は振り込め詐欺、お子さんは虐待、女性はストーカーや痴漢・盗撮などの被害に遭う方が後を絶たない。警察としては今回のようなセミナーを通して防犯に努めている。今日のセミナーを通じて、心構えや護身術を身につけていただき、日頃のストレスから少しでも解放されて憂いなく仕事をしていただけたらと思う。羽田空港は人々が夢を乗せて飛び立つ大切な場所であり、そこで働く皆さんの笑顔がそれを支えている。同じ空港で治安維持に勤務する我々も、できる限りの支援をしていきたい」とコメントした。

日本航空株式会社 東京空港支店 副支店長 石川房子氏
東京空港警察署 前田敦署長

防犯対策を動画で解説「まわりを気にするようなそぶりを見せることが大切」

警視庁東京空港警察署防犯少年係 係長 宮崎氏

 セミナーはまず座学として警視庁の製作した、女性被害の防犯対策の動画視聴が行なわれ、痴漢・盗撮、押し入り、強制わいせつなどの被害を防ぐ方法を学んだ。視聴後、東京空港警察署の防犯少年係長 宮崎氏から具体的な事例を挙げながら補足が行なわれた。電車内の痴漢対策では「振り向いてにらむ」のが一番効果が高いという。それでもやめない場合は、声に出して言う、悪質な場合は触っている手の手首をつかんで引き上げる。そうすることで立証が難しい痴漢行為でも誰が犯人か自信を持って確定でき、裁判でも有利になるという。

 さらに夜道や帰宅時の押し入り対策としては、自宅がオートロックでも安心せず、スマホ操作や音楽を聴きながら家に入らない。「まわりを気にするようなそぶりを見せる」ことが大切だと説明した。

すぐに覚えられる実践的な護身術指導を実施

 座学終了後、空港警察の谷口氏と山下氏による護身術の指導がスタート。両名は普段、警察官に逮捕術を教えており、企業でも護身術の研修を行なっているという。終始軽快なトークで分かりやすく解説。参加者は2人1組になって、とっさの時に役立つ護身術を学んだ。

空港警察の谷口氏(左)と山下氏(右)がまずはデモンストレーションを披露

 例えば、腕を握られて引っ張られたときには、「手をつかまれたら犯人に対して横を向いて、後ろ側の足を少し曲げて力を入れる」ことで踏ん張って時間をかせぐ。

 さらに捕まれた手を離すには、「片手で捕まれている場合は手前に引っ張らず、親指の先とほかの指先が合わさる輪の切れ目を狙って横に引っ張る」。さらに両手で捕まれたときは「相手の手の間に捕まれていない方の手を入れて自分の手と握り合わせて肘を曲げながら自分の方へ強く引く」のが有効だという。

手をつかまれたら犯人に対して横を向き、踏ん張る(手前の山下氏が犯人役)
手を外すには、手の指先と指先が合わさる部分から横に素早く抜く
両手で捕まれたら、捕まれた自分の手を握り,、手の手の間から手前に強く引く
実際に体験した参加者は効果の高さに驚いていた

 そしてもし首を絞められたら、締める手を下から持って、素早くしゃがんでくぐる。両手で胸ぐらを捕まれたら、右手を手の上から入れて両手を握り、左足を右足側に踏み込む。いざというときは、喉仏を指で突くのも有効だという。簡単な関節技なども解説された。

 背後から首を絞められたときには、まず相手の両手をつかんで下に下げ、前かがみで相手との間にスペースを作ってから、左足を後ろにクロスさせて膝を曲げて首を抜く。腰に抱きつかれたときには、思い切り前屈して相手の片足を両手で手前に持ち上げれば相手を簡単に後ろに倒すことができるという。

前から首を絞められたら右手をテコのように入れて左足を右側に踏み込む
いざとなったら2本指で喉仏を突くのもかなり有効とのこと
後ろから首を絞められたら、手を下げて尻で押し、スペースを作ってから足をクロスさせて首を抜く
腰を持たれたら前屈で相手の足首を持って思い切り手前に引くと相手が倒れる
CAも見事に講師を倒す

 最後に手首にかける関節技のかけ方を習い、護身術の指導を終了。終了後のインタビューで講師を務めた空港警察の谷口氏は「護身術の技を一つ知っているだけでも、まわりに助けを求めることができたり、危険な状況から被害を最小限にしたりすることができます。その技の一つ一つも大切ですが、私生活を通じて常に防犯意識を高く持っていただくことが大切。それが空港全体の安全にもつながると思っています」とコメントした。

最後に関節技の痛さを体感
密度の濃い1時間のセミナーで参加者からも手応えが見て取れた
東京都空港警察署 山下氏(左)と谷口氏(右)

 参加者を代表してグランドスタッフの権正(ごんしょう)莉奈さんがインタビューを受け、「護身術を学んだのは初めてでしたが、強い力を入れずに自分の身を守れると体験できました。早朝出勤だと暗いうちに家を出ることもあるので、気を緩めずに防犯の知識を持ちながら、自分が置かれた状況に自分で対処できるようになりたいと思いました」とコメントした。

グランドスタッフの権正(ごんしょう)莉奈さん
空港警察から参加者へ防犯に関するリーフレットなどが配布された

 約1時間で防犯意識を高め、護身術を身につけるという密度の濃い有益なセミナーで、参加者も実技講習に積極的に参加して手応えを感じている様子だった。羽田空港は24時間稼働しながら、女性職員が圧倒的に多いという環境。今後も防犯への取り組みに期待したい。