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JAL、女性活躍推進のためのグループ横断プロジェクトを拡充。「JALなでしこラボ」第2期スタート

研究チームが探る理論と現場での実践でより女性が活躍できる会社へ

2016年10月25日 実施

JALグループから集まった女性活躍推進の研究チーム「JALなでしこラボ」2期生

 JAL(日本航空)は10月25日、「JALなでしこラボ」プロジェクト2期生のキックオフを同社で行なった。JALなでしこラボは、女性活躍推進の課題と解決の施策を研究するためのラボプロジェクト。より多様な人材が活躍できる会社への変革を目指して取り組むもので、JALグループ各社から公募・推薦された28人のメンバーで第2期をスタートする。

 このプロジェクトは2015年も取り組まれたもので、第1期は18名が3チームに分かれて参加。第2期となる今期は、各7名のチームを4チーム設けて、28名が1年をかけて研究に取り組む。

約200名のJALグループ社員が参加してキックオフセレモニーが開催された

第2期は「バイアス」と「ビジョン」をテーマに研究を実施

 キックオフセレモニーでは、まずJALなでしこラボの担当役員であるJALの大川順子取締役専務が挨拶。第2期では、第1期で研究した理論を意識改革につなげて実践し、実績につなげることをより意識したいと話した。

JALなでしこラボ担当役員、日本航空株式会社 代表取締役専務執行役員 大川順子氏
大川氏が示した「JALなでしこラボ」の3つの柱

 続いて、研究プロジェクト責任者の野村直史氏から第2期活動内容の紹介が行なわれた。第2期の「なでしこラボプロジェクト」は7名1組の「研究チーム」を3組、「Future Designチーム」を1組設置。助言を行なう4名のメンターがサポート。今期から新設されたFuture Designチームでは、1期のメンバーから提言された施策を具現化することをミッションにしているという。

 第2期の研究テーマは、「バイアス」と「ビジョン」の2つ。現在の考え方の偏り(バイアス)がどのように影響しているのか、どういうビジョンを持つべきかを各研究チームがそれぞれの切り口で研究を行なっていくという。

「なでしこラボプロジェクト」責任者の野村直史氏
「なでしこラボプロジェクト」第2期体制。3つの研究チームとFuture Designチームで構成されている
第2期の研究テーマは「バイアス」と「ビジョン」

第1期生から第2期生へバトンをつなぐ

 その後、第1期生から第2期生へバトンをつなぐため、両代表がセレモニーを実施。第1期生の川上さんから「昨年第1期生が育て始めたなでしこラボの取り組みを、第2期のメンバーにも大切に育ててほしい」と挨拶した。それを受けて第2期生の池口さんからは「第1期生の絆や思いを引き継いで、なでしこラボの芽を大きく成長させ、成果という花を咲かせたい」と返答した。

第2期生が来場者に挨拶
第1期生代表から第2期生代表へバトンが渡された
第2期生代表として池口さんから「第2期で成果という花を咲かせたい」と挨拶

佐々木かをり氏によるダイバーシティ推進のための実践的な講演

 なでしこラボのキックオフセレモニー終了後、会場では「ダイバーシティの時代に輝くために」とのタイトルでイー・ウーマン代表取締役社長 佐々木かをり氏による講演が行なわれた。

「ダイバーシティの時代に輝くために」とのタイトルで行なわれた講演
株式会社イー・ウーマン代表取締役社長 佐々木かをり氏

 講演を行なった佐々木かをり氏は、2000年にイー・ウーマンを設立。働く女性の声を発信する「イー・ウーマン」を運営し、企業の商品開発やコンサルティングを展開。時間管理の手帳「アクションプランナー」のヒットでも広く知られている。現在は各社の社外取締役や政府の数多くの部会で委員を務め、ダイバーシティの第一人者として各地で講演を行なっている。

 その佐々木氏からは、「ダイバーシティ」とは女性活躍に限らず、年齢、学歴、障がい、LGBTなど幅広い多様性が生む「視点のダイバーシティ」が重要なのであり、この多様な視点の考えを取り込むことは経営を強化することにつながると解説。実際にダイバーシティを実践するコツとしては、「私はこう思う」「私はこうならよいと思う」と「私」を主語にして「I statement」で話して他者を批判せず自分のことに限定して伝えること。手帳で行動を一元化し、自分のパフォーマンスを高めること。自分を前進させてくれる仲間を持つこと、などが伝えられた。

 講演中は、会場内を歩いて広く意見を募ったり、具体例を豊富に交えるなどダイバーシティの概略について伝えられ、参加した人々は熱心にメモを取っていた。最後の質疑応答では、ダイバーシティの実践では、固定観念にとらわれずさまざまな視点からのチェックを意識することや、徹底的に議論を行なって会社として方向性を決めたらブレずに実行することなどがアドバイスされた。

講演後の質疑応答でも現場での実践方法に関するものが多かった
なでしこラボ所長 植田英嗣氏

 最後に、なでしこラボ所長の植田英嗣氏から挨拶があり、ダイバーシティの重要性やなでしこラボへの期待が語られ、「グループ各社にこうした取り組みを持ち帰ることで、力が最大になるようにしてほしい」とコメント。「私は、今日の気付きをJALグループのダイバーシティ推進活動に必ず活用していきます」と“I statement”で話し、キックオフセレモニーを締めた。

第1期生、第2期生からみた「JALなでしこラボ」

 キックオフセレモニー終了後、第1期生、第2期生代表から活動の実際を聞いた。メンバーは組織横断プロジェクトで公募・推薦され、今回の第2期にも多くの応募があったという。

 第1期生の川上さんによると、第1期ははじめての取り組みということもあり注目度も高く、具体的施策が非常に注目されたという。その取り組みを実践するため、第2期のFuture Designチームのメンバーにはどんどん実践してほしいとのこと。

 第2期生の池口さんからは、3万2千人いるJALグループの個性を尊重し、「JALなでしこラボ」でさまざまな意見交換を行なうことでより新しい価値を生み出していきたい。普段あまり接点のない、さまざまな職種にまたがる研究チームのメンバー自体にも多様性があるので、そのなかで一つのビジョンに向かって取り組んでいきたいと語った。

 JALといえば、空港や飛行機内などでは女性の活躍を目にする機会が多い。その巨大グループから厳選された研究チームが取り組む、女性活躍推進の施策提言や実践はさまざまな企業の参考となりそうだ。JALなでしこラボ第2期の1年間の道のりに注目したい。

第1期生の川上佳子さん(左)と第2期生の池口薫さん(右)