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成田空港、普段立ち入れないエリアの見学や業務体験ができる子供向けイベント「成田エアポート ワンデイ・サマースクール 2016」を実施

2016年7月26日、28日、8月1日 開催

参加者が集合したNAAビル。第2旅客ターミナルから、第3旅客ターミナルへ行く途中に位置する

 NAA(成田国際空港株式会社)は小学校高学年を対象に、成田空港の一般利用者は立ち入れない施設の見学や、業務を体験する特別なツアー「成田エアポート ワンデイ・サマースクール 2016」を実施している。

 この「成田エアポート ワンデイ・サマースクール」は、成田国際空港が2000年から開始した人気の無料見学ツアー。成田空港への理解を深めながら、夏休みの自由研究で題材の1つになるようにと実施されているもので、2016年で14回目となる。毎回全国から多数の応募があり、今回も福島県から長崎県までの約820組1700名の応募があり、約16倍の倍率から選ばれた、52組116名が見学ツアーへ招待された。

 見学ツアーは各回約40名ずつに分けられて、2016年7月26日、28日、8月1日に実施。見学内容はいずれも同じで、ここでは初日である7月26日に同行した様子をレポートする。

NAAビル1階の情報コーナーに集合、成田空港や、見学内容についてレクチャーを受けた

航空機に駐機位置の割り当てを指示する「ランプコントロールタワー」を見学

「成田エアポート ワンデイ・サマースクール 2016」への参加は、小学校高学年(4年生~6年生)が単独、またはその保護者と一緒に参加できる。初日は19組39名全員が参加し、3名は子供だけで参加、残りの36組は保護者と参加していた。

 9時30分にNAAビル1階に集合した参加者はオリエンテーションを受けたあと、大型バスで移動。まずは成田国際空港管理棟に向かった。ここには左右2つの塔があり、1棟が離着陸を管理する管制塔。もう1棟が駐機場を走行する航空機へ、駐機位置の割り当てを指示するランプコントロールタワーだ。1978年の開港当時からあるこの建物はやや老朽化も感じられ、2020年に新しい管理棟の完成後に取り壊しが決まっている。

 NAAが管理するランプコントロールタワーは現在このタワーの16階で業務を行なっているが、参加者は以前使用され、バックアップとして残されている13階のランプコントロールタワーを見学した。実際に、以前ランプコントロールタワーで勤務していた野島さんがその役割について詳しく解説。管制官からの出発指示、ランプコントロールタワーからの移動の許可、管制官からの離陸指示といった話に子供たちは聞きいった。

ランプコントロールタワーに到着。空港内は広いため、施設間の移動には貸し切りのバスを利用
成田国際空港管理棟。向かって左が管制塔、右がランプコントロールタワー

 この日の成田空港は到着336便、出発340便、合わせて676便の航空機の離発着が予定されているが、このコントロールを訪問した時間帯は7名のスタッフで業務を行なっていた。NAA側ではランプコントロールタワーで駐機場の管理を3名で担当。地上の移動は得意ではない航空機が、より安全でスムーズに移動できるようコントロールしている。成田空港は盆地のため、夏場の朝などは霧が発生して、ランプコントロールタワーからの視界がわるくなることもあるという。その際は航空機をゆっくり動かしたり、ディスプレイやレーダーをより重視したりするなどの工夫をしているとのこと。

 夏休みの自由研究の題材にしている子供も多いようで、皆とても真剣。メモを取りながら熱心に話を聞き、積極的に質問もしていた。

以前使用されていた13階のランプコントロールタワーを見学
ツアー全体のガイドもしていた野島さん。以前実際にこのランプコントロールタワーで勤務していたそうで非常に詳しく解説してくれた
参加する小学生は自由研究の課題にと、真剣にメモを取り質問をしていた

「とりぶパスポート」で入国手続きを体験

 次に参加者は、「税関(Customs)」「出入国管理(Immigration)」「検疫(Quarantine)」を行なうCIQ施設に移動。入国手続きの流れを模擬体験した。ここではNAAではなく、東京入国管理局が協力。まずは入国審査官により入出国管理やパスポートの役割について分かりやすく解説していた。

 東京入国管理局のマスコットキャラクター「とりぶ」とのふれあいや記念写真のあと、参加者それぞれが実際に入国手続きを体験。あらかじめ参加者全員に自分の名前入りの模擬パスポートが配られており、実際のゲートで入国審査官から1人ずつ入国スタンプが押された。入国審査を受けるのは初めてという小学生も多く、やや緊張した様子で入国手続きを体験していた。

一般旅客が行き交う空港内を通り、普段は立ち入ることのないルートでCIQ施設へ
海外旅行をするには、「お金」「やる気」そして「パスポート」がいる! と解説する東京入国管理局の野中さんと高梨さん
普段あまり見る機会のない東京入国管理局のマスコットキャラクター「とりぶ」も登場。子供たちに大人気だった
とりぶと参加した小学生で記念撮影
あらかじめ参加者に配布された名前入りの「とりぶパスポート」を使用
とりぶパスポートにはあらかじめ「出国」のスタンプが押されている
入国手続き体験で「入国」スタンプが押されて手渡された

植物防疫を模擬体験、麻薬探知犬の働きに拍手

 入国手続きを無事に終えた参加者たちは、次に植物防疫へ移動。どんなものが対象になるのか、なぜそれが持ち込めないのか、などの解説を受けた。その後、各自にさまざまな果物や植物のサンプルとその名称、収穫された国が書かれたカードが手渡され、実際のカウンターで植物防疫を体験。持ち込まれた食物に寄生していた虫の標本なども見学。海外から持ち込む植物には輸入が禁止されているものが多数あることなど、植物防疫の重要性についてあらためて説明された。

入国手続き後、下の階へ移動して、次は植物防疫の体験へ
植物防疫所の松原さんから、植物防疫の流れや必要性について分かりやすい解説があった
さまざまな果物や野菜などのサンプル、害虫の標本が使われるなど展示が工夫されていた
あらかじめ用意された植物のサンプルと、収穫された国が書かれたカードを使い、実際の植物防疫カウンターで体験

 続いて税関検査場に移動。税関が輸入の際に「税金をあつめる」「悪いものを止める関所」の役割があること、禁止薬物の輸入を防ぐためにトレーニングされている麻薬探知犬についての解説を受けた。訓練を行なうハンドラーとどのようにトレーニングをしているかなどが説明されたあと、実際に麻薬探知犬が登場。参加者が1列に並び、カバンを持って並んだ。麻薬探知犬には薬物に似た臭いがするダミーが入ったカバンが1つだけ用意され、それを持つ人の前でしっかり反応。参加者から拍手が起こった。子供たちは麻薬探知犬と触れ合ったり記念写真を撮影したりしていた。

次に植物防疫のすぐそばにある税関へ移動
税関の役割について事例を使いながら説明する成田税関の蔦森さん
参加者から9名が立候補し、用意されたバッグを持って麻薬探知犬のチェックを体験。この段階ではどのバッグにも薬物は入っていないのですべて反応なし
薬物に似た臭いがするダミーを、とあるバッグに忍ばせる
見事にかぎ分け、ダミーの入ったバッグの前で座る
麻薬探知犬は、かぎ分けたご褒美にハンドラーに遊んでもらえる
現役の麻薬探知犬「イーグル号」と一緒に記念撮影
多くの子供と触れ合い、イーグル号も尻尾を振っていた

昼食は「成田エアポート レストハウス」にて機内食風ランチ

 朝からすでに盛りだくさんの内容をこなした参加者は再びバスに乗り込み、成田空港内のホテル「成田エアポート レストハウス」の宴会場へ移動。ここは各航空会社に機内食を供給する会社、TFK(ティエフケー)の隣に位置し、運営もTFKが行なっている。

成田空港内のホテル「成田エアポート レストハウス」へ移動

 ここで今回の参加者には、2016年のオリンピックにちなんだ、ブラジルの定番家庭料理であるチキンストロガノフをメインにした機内食風ランチが提供された。食べやすい味付けのチキンストロガノフから、スモークサーモンやハムなどの前菜、サラダ、そば、そうめん、パン、チーズなどのほか、本格的な味わいのチーズケーキまでバラエティ豊かな内容。参加者同士の会話も弾んでいるようだった。

 TFKでは国内3社、国外35社の機内食を担当しており、1日平均2万7000食を調理しているとのこと。今回提供されたような食事は「機内食プラン」として成田エアポート レストハウスで一般向けにも提供されており、15名から予約を受け付けている。「スタンダードクラス」1食2700円、「デラックスクラス」1食3800円、「エグゼクティブコース」1食5200円から選択可能。今回提供されたのは子供にも食べやすい味付けがされた特別食だったが、内容は「デラックスクラス」に近いもののようだ。

 食後は次に行なうチェックインのトレーニング体験のセリフが手渡された。チーム対抗戦となると予告され参加者の小学生も真剣。食後にしっかり読み込んでいた。

各航空会社に機内食を供給するTFKは隣
料理を担当したシェフの西尾さん。2016年のオリンピックをイメージしたというメニューを提供
広い宴会場で豪華な機内食風ランチを体験
ブラジルの定番家庭料理「チキンストロガノフ」がメイン。前菜からデザートまで揃った豪華な内容

「ANA成田スカイセンター」にてチェックインなどの旅客業務を体験

 昼食を終えた参加者たちは、成田エアポート レストハウスから再びバスに乗り込み、「ANA成田スカイセンター」へ移動。ここはANA(全日本空輸)がスタッフに対して実際に旅客・手荷物チェックイン業務のトレーニングを行なう施設だ。

ANA成田スカイセンターに移動し、シミュレーション トレーニングルームで旅客業務を体験

 小学生たちは、この施設の「シミュレーション トレーニングルーム」にてAからDまで4チームに分かれてチェックイン手続きを体験。チーム対抗で、どの組が最も手続きをこなせていたかを、各チームを担当したANAのスタッフがチェックした。

 最初にプロの接客を見学したあと、チームごとに係員役と乗客役を入れ替わって体験。入国審査でも使った「とりぶパスポート」と、自分の名前入りの搭乗券を使い、手荷物の預け入れを行なった。チケットのチェック、搭乗口の案内、本物と同じようなタグをスーツケースに取り付けるなどの作業を、楽しそうに取り組んでいた。

 チェックイン手続きが終わったあと、搭乗口を模したゲートに移動。自分の搭乗券をゲートの機械にかざし、搭乗体験も行なった。参加したうち、ランダムに3名だけはゲート通過時にアラームが鳴って「この動物はこの時期に搭乗できるか」というクイズに参加するサプライズも。難しいひっかけ問題もあったが、しっかり正解を答える子供が多く、予習も万全だったようだ。

 チーム対抗戦の優勝はDチーム。Dチームがポップを持ち中央に並んで記念撮影。充実したトレーニングを終えた。

旅客業務の体験を指揮してくれたANAの上野郷さん
最初にプロによるデモンストレーションが行なわれ、流れを確認
プロのサポートを受けながら全員が旅客業務を体験。皆真剣に取り組んでいた
荷物にタグを取り付けるのももちろん初めて。航空券の受け渡しも新鮮だ
各自に配られた航空券には、それぞれの名前入り。訓練用の特別な便名が使われたレアな航空券だ
各グループを担当してくれたANAのスタッフに、子供たちは積極的に質問していた
自分の航空券を搭乗ゲートでかざす搭乗体験も実施
搭乗ゲートを通るときアラームが鳴った人にはクイズが出題された
最後に最優秀チームを発表。Dチームが選ばれた
全員に記念品としてANAのボールペンやペーパークラフトが配られた
Dチームを中心に全員で記念撮影

A滑走路脇で離着陸を間近で見学、化学消防車の乗車体験も

 ANA成田スカイセンターをあとにした参加者は、再びバスで移動。航空機のすぐそばをバスで走り抜け、A滑走路脇に到着。A滑走路脇の広い芝の上で航空機の離着陸の迫力を体感した。さまざまな航空会社の航空機が離着陸をバックに満足いくまで記念写真を撮影。再度バスに乗り、A滑走路脇にある「空港消防西分遣所」に移動した。

待機する航空機の横を車で走り抜け、A滑走路脇へ移動
滑走路を行き来する航空機をまさに間近で見ながら写真撮影
航空機の大きさや音を体で体感
航空機が通り過ぎる抜群のタイミングを狙って全員で記念撮影
今回参加していた渡辺薫さん、黒宮瑞規くん、渡辺唯翔くんのグループ。渡辺さん親子と従兄弟の瑞規くんの3名で、岐阜から参加していた。2人とも6年生で、前日に新幹線で上京。このサマースクール修了後すぐに新幹線でまた帰るという。母親が「貴重な経験が、将来の選択肢の1つになれば」との思いから申し込んだそうだ

 空港消防西分遣所は、成田空港内に3カ所ある消防施設の1つ。2016年6月1日に成田空港に国内の空港で初導入されたばかりの、放水銃を航空機内に入れ込んで瞬時に消火する機能を有する「HRET(エイチレット)」2台のうちの1台が配備されている。

空港消防西分遣所はA滑走路脇に位置し、災害時は滑走路の端まで3分以内に到着できる

 空港消防西分遣所の髙山さんによると、災害時、ここは4000mあるA滑走路の端まで3分以内に到着して、消火活動ができる消防力を備えているという。説明後、参加者は放水車を使った放水体験や、防護服の着用体験、各消防車の乗車体験などを行なった。

 展示されていた車両はHRETのほか、化学消防車、給水車、レスキュー車、指揮車。各自での見学・体験のあと化学消防車とHRETによる放水を見学。HRETを背景に記念写真を撮影し、バスでNAAビルの情報コーナーへと戻った。

空港での消防施設の役割について説明してくれた空港消防西分遣所の髙山さん
HRET、化学消防車、給水車、レスキュー車、指揮車などが参加
放水車による放水体験や、防護服の体験も
目の前を航空機が行き交う特別な場所での体験に、子供たちもこれまでの疲れを忘れたような元気な様子だった
なかなか目にすることのない化学消防車にも乗車体験
化学消防車の上部に設置された強力な放水銃で、力強い放水デモンストレーションが行なわれた
HRETによる放水デモンストレーション。ノズルを航空機に差し込み、機内を一気に消火できる特別な機構を備える
西分遣所の一角にその訓練用の施設も用意されていた
HRETの前でこの日最後の記念撮影

 1日かけて「成田エアポート ワンデイ・サマースクール」のさまざまな見学や体験を終えた参加者たちは、最初に集合したNAAビルの情報コーナーへ再度集合。このサマースクールの校長役であるNAAの江邨孝夫さんから、各人の名前入り修了証を1人1人に手渡し、16時30分にサマースクールを終了した。

 ランプコントロールタワーの見学から消防業務の見学まで盛りだくさんの内容で、自由研究の題材として大人気だというのもうなずける。空港には幅広い業務があるが、例えば男子がチェックイン体験を積極的に楽しんでいたり、消防の見学で生き生きと質問する女子がいたりと、普段できない経験に参加者全員がとても楽しんでいたのが印象的だった。毎年、募集時期が近くなるとNAAに問い合せが多く寄せられるという。参加する小学生はもちろん、付き添いの親まで楽しめるこの人気見学ツアーには、今後もぜひ末永く続いてほしい。

成田空港のマスコットキャラクター「クウタン」が待つNAAビルの情報コーナーへ再度集合
校長役、NAAの江邨さんから1人ずつに修了証が手渡された
参加者にはクウタンのマスコットやNAAのグッズなどの記念品がプレゼントされた