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首都高、小学生が記者となって首都高速の裏側を取材する見学会を開催
交通管制室の見学や黄バイ、黄パトの試乗も体験
2016年8月22日 00:00
- 2016年8月19日 実施
首都高(首都高速道路)と首都高速道路協会は8月19日、首都高の普段見ることができない施設などを見学する夏休み企画「キッズプレス~首都高の裏側を取材しよう!~」を開催した。このイベントは、首都高を身近に感じる体験を通じて、子供達が社会の仕組みを学び、職業観を広げるサポートをする「首都高子ども未来プロジェクト」の一環として実施するもの。
首都高施設見学は、2013年7月に福島県いわき市の希望者から抽選で選ばれた子供達とその保護者を、見学と東京観光へ無料招待した「首都高子ども支援プロジェクト」からスタートし、今回で5回目の開催となる。
今回は子供達が記者となり、首都高の構造物や社員、パーキングエリアなどを本物の記者のように取材する趣向で、首都高ホームページで事前に小学校5年生、6年生と保護者の20組40名を募集した。185組370名の応募があり、抽選で選ばれた18組(2組は欠席)が参加した。
最初の見学場所となったのは、東京都千代田区の首都高東京西局。開会にあたり、主催者を代表してCS推進部長の増根泰氏が挨拶した。首都高について、「皆さんが快適に使えるように、作るだけではなく管理も必要。交通の流れを監視したり、事故が起きたら駆け付けたり、道路の傷みをメンテナンスしたりと、いろいろな人がいろいろな仕事をして支えている」と説明。さらに「今日は、秘密基地に潜入する気分で、その裏側を見て聞いて、最後に新聞にしてほしい」と締めくくった。
続いて、子供たちが記者としてうまく取材ができるように、現役の記者、カメラマンから、取材の仕方や写真の撮り方についての講義となった。講師として登壇したのは、受験や教育、生活などのニュースや情報提供をするWebサイト「リセマム」編集部の2名。
編集スタッフは取材について、「自分の目で見て、話を聞いて、心で感じることを記事にしましょう」と説明。また、参加者には、1人1冊メモ帳が配布されており、「どんなプロでも、100%覚えることはできない。メモ帳は気になったことをどんどん書いて、今日だけで1冊使いきりましょう」とメモを取ることの重要性を語った。
また写真については、カメラの構え方から始まり、どのような写真を撮ればよいかなど基本を説明。さらに「記事を見てくれる人の顔を思い浮かべながら撮影すると、よい写真が撮れます」と講説した。参加者にはデジタル一眼レフ、もしくは高級コンパクトデジカメが貸し出され、今日一日の取材のなかで、撮影もすることになっている。
いよいよ見学がスタートし、交通管制室へ移動となった。交通管制室は、事故や故障、渋滞状況など、首都高速道路上を監視する「交通管制システム」で、いわば首都高を見守る中枢。東京西局では、都心環状線、中央環状線(山手トンネル・王子線)、埼玉大宮線、埼玉新都心線、1号、2号、3号、4号、5号の各路線を管轄している。
管制室の壁一面に設置された横17m、縦3.7mの巨大なスクリーンを見て、足を踏み入れた参加者から感嘆の声が上がる。開始早々、増根氏の挨拶にあった「秘密基地に潜入する気分」を感じたのか、小学生だけではなく保護者もテンションが上がっていたようだ。集合写真を撮影したあと、交通管理課 課長の麻生和裕氏から、交通管制室についての説明があった。
説明後に、巨大スクリーンを前にズラリと並ぶ職員達のデスクには空席が設けられ、小学生達がそこに座って業務を体験する時間が作られた。小学生記者は、約2300台ある監視カメラの1台をマウスで遠隔操作したり、業務内容を細かく質問したりと取材を進めていた。この交通管制室は道路緊急ダイヤル「#9910」がつながる場所でもあり、小学生記者の取材中も職員の目の前に設置された電話が鳴って、忙しそうに対応していたのが印象的だった。
交通管制室の2階は、JARTIC(日本道路交通情報センター)首都高速センターとなっており、ラジオを使って道路交通情報を提供している。ラジオブースの中は、マイクやミキサーなど、簡易な音響設備のほか、時計やラジオなど、至ってシンプル。目の前のガラスの先には交通管制室の巨大なスクリーンがよく見えるようになっている。
JARTICの小林裕之氏が、首都高速センターについて小学生記者達に説明をする。この直前にFM局から交通情報が放送され、すぐ後にもAM局からの放送があるという。放送局と職員がやりとりし、放送開始の時刻や放送時間を確認し合う。放送時間は約50秒とのこと。また、いつも決まった時刻よりも、開始が2分ほど遅くなるという。
続いて訪れたのは、屋外で首都高パトロールカーの見学。「黄パト」と呼ばれる道路パトロールカー、「黄バイ」と呼ばれる道路パトロールバイク、「ホメパト」と呼ばれるホメるパトカーが展示され、交通管理課主任の笠井健二氏から説明があった。
黄バイは、山手トンネル専用として導入され、渋滞でも、いち早く事故現場に到着できるよう性能と機動性のバランスを考え400ccの自動二輪車を採用している。民間企業として、日本で初めて緊急指定を受けた自動二輪車だ。
黄パトは、首都高の道路上の異常を発見するために巡回するパトロールカーで、走行距離は年間18万kmに及ぶという。車線規制を行なうための起立式標識表示装置やLED表示装置、さまざまな資機材を搭載し、事故、故障車、落下物などがあると現場に急行し活動する。積雪や凍結した道路でも業務ができるように走破性の高い四輪駆動車を採用し、故障車のけん引は、最大積載量4t程度の貨物車であれば楽々とけん引できるパワーを持っている。
ホメパトは、「わるい運転を取り締まるよりも、いい運転をホメよう」という“ホメドライブの精神”から誕生した「ホメるパトカー」で、2008年の初代ホメパトから始まり3代目となる車両。展示されていたのはトヨタ「86」だが、2015年に登場した3代目ホメパトにはほかに、スマート電気自動車の2車両が存在する。イベント時など走行する機会も少なく、小学生記者だけでなく保護者も、現車を見て盛り上がっていた。
参加者達はその後バスに乗り込み、レインボーブリッジで芝浦アンカレイジの見学、代々木PA(パーキングエリア)でソフトクリームの試食などしたあと、お茶の水ソラシティ カンファレンスセンターで、取材メモと写真を基に記事をまとめ、「首都高子ども新聞」を制作するワークショップが開催された。
単なる見学ツアーにとどまらず、参加した小学生達は記者として取材する目的ができたことによって、より積極的に、深く、細かいところまで知ろうとしていた様子だった。主催する首都高のCS推進部長 増根泰氏は、「参加する小学生達はいつも、普段見られない裏側を見て目がキラキラと輝いている」と、貴重な体験をした小学生達にすてきな夏休みの思い出ができたことを満足しているようだった。