ニュース
子供たちが税関、麻薬探知犬、整備中の飛行機、化学消防車などを見学した「成田エアポート ワンデイ・サマースクール 2017」
成田国際空港が主催、今年で15回目
2017年8月8日 20:47
- 2017年8月3日/4日/7日 実施
NAA(成田国際空港)は、成田国際空港のさまざまな施設の見学や業務を体験するイベント「成田エアポート ワンデイ・サマースクール 2017」を実施。夏休み中の小学5年生、6年生が参加した。
今年で15回目となる「成田エアポート ワンデイ・サマースクール」は、成田空港が毎年行なっている無料見学ツアーで、成田空港と空港での仕事への理解を深め、夏休みの自由研究に役立ててもらおうと実施されているもの。
ちなみにこのイベントは、昨年までは保護者とのペアでの参加も可能だったが、今回は小学生だけの参加に限定された。
毎年とても人気が高く全国から多数の応募があり、今年は687組870名の応募から64組75名(各日25名枠)が抽選で選ばれた。今年は8月3日、4日、7日の3日間実施されたが、7日参加分に当選した人のなかには台風の影響で参加できないメンバーがいて、3日間で総計69名が参加した。
初日の8月3日に同行したので、レポートする。
CIQ施設で「税関」「入出国管理」「検疫」をまるごと体験
NAAビル1階に朝9時30分に集合した参加者は、オリエンテーション後に徒歩でCIQ(Customs/Immigration/Quarantine)施設に移動。東京入国管理局が協力し、「出入国管理(Immigration)」のエリアで外国人が日本に入国する際の入国手続きの流れを模擬体験した。
参加者たちは入出国管理やパスポートの役割について説明を受けたあと、入国審査官役、旅行者役をそれぞれ交代で体験。事前に英語での入国審査の例が資料として送られており、参照しながらしっかり入国審査を行なうなどスムーズ。海外旅行をしたことがあるという子供が多かったようで、なかには流ちょうな英語でスラスラ会話する子供もいた。
次に下のフロアにある「検疫(Quarantine)」へ進み、持ち込めるものと持ち込めないもの、どんな作業が行なわれているかといった、植物検疫の解説を受けた。ここでは穀類や植物に付く虫を顕微鏡でチェックし、持ち込まれた食物に寄生していた虫の標本なども見学。持ち込める果物をクイズ形式で学ぶなど盛りだくさん。
質疑応答では「ヒアリは空港からも持ち込まれるのか」など積極的に質問がされていた。ちなみにいまのところ空港ではヒアリの付いた荷物は発見されていないという。
さらに「税関(Customs)」エリアに進んだ参加者は、税関には「税金を集める」「わるいものを止める関所」の役割があると説明を受け、禁止薬物の輸入を防ぐためにトレーニングされている麻薬探知犬によるデモンストレーションや、スーツケースに巧妙に隠された薬物や拳銃などを見付け出す体験なども実施した。
麻薬探知犬によるデモンストレーションでは、カバンを持って並んだ参加者の前を、麻薬探知犬が通過。薬物に似た臭いがするダミーが入ったカバンを見事に発見した。麻薬探知犬は麻薬の臭いが好きなのではなく、見付けるとご褒美としてハンドラーと呼ばれる訓練士と思い切り遊んでもらえるのがうれしくて探知するという。しっかり探知するりりしい姿と、遊んでもらえて体全身でうれしがる、かわいい姿のギャップに参加者たちも驚いていた。
旅客数10億人達成記念の“10”をイメージした機内食風ランチを実食
CIQ施設での体験を終えたあと、昼食のためバスに乗って成田空港内のホテル「成田エアポート レストハウス」へ移動。ここは各航空会社に機内食を供給する会社であるTFK(ティエフケー)の隣に位置し、このホテルの運営もTFKが行なっている。
昼食として提供されたのは「成田空港航空旅客数10億人達成記念」の「10(じゅう)にちなんだ」機内食風ランチ。エコノミークラスの機内食をベースに「ジュー(10)シーチキンハンバーグ」をメインにした洋食で、茶そばや卵麺、ポテトサラダ、スモークチキン、デザートなどがセットになったメニューだった。
挨拶に立ったシェフの西尾氏によると、「機内食を何十年も作ってきた経験から、選んで間違いないのは煮込み料理」だそうで、機内でメインを選ぶときには、煮込み料理を選ぶことを勧める、とちょっとしたトリビアを披露していた。
参加者たちは、今日初めて会った同士にも関わらずすっかり打ち解けていて、楽しいランチの時間を過ごしていた。
JAL 成田第1ハンガーでも工場見学やマーシャラー体験を実施
午後は、再び空港内をバスで移動し、JAL(日本航空)の成田第1ハンガーへ。ここでは機体整備や部品整備、エンジン整備などが行なわれ、約1200人が交代で働くJALで最も大きい整備工場だという。JAXAの宇宙飛行士、若田光一氏もここで3年間勤務したあとNASDA(現JAXA:宇宙航空研究開発機構)の宇宙飛行士候補に選ばれたとのことで、そのつながりを感じるオブジェや若田光一氏のサインなどが展示されていた。
この成田第1ハンガーでは、通常は一般向けの工場見学は行なっていないが、地域貢献や関係者向けの研修が行なわれることはあるそうで、会議室の展示や工場見学のためのコンテンツは充実していた。
参加者たちはまずJALエンジニアリングの品川氏から、スライドで成田空港の概要や、揚力やジェットエンジンの仕組みなど、飛行機の技術的な解説を受けた。具体的には、飛行機のタイヤには縦の溝しかないこと、翼端渦を拡散し燃費を改善するために翼の端を上に曲げる「ウイングレット」の加工がされていることなどが詳しく解説され、参加者もカメラで撮影したりメモをしたりと、積極的に話を聞いていた。そして座学のあとには、整備の現場へ見学に向かった。
広い整備場に参加者は圧倒されながらも、実物を見ながら解説を受けるというまたとない体験に真剣そのもの。先ほどスライドで解説されたタイヤの溝やウイングレットについても実物をチェックしていた。
見学を終え、会議室に戻った参加者たちは2班に分かれて飛行機の誘導を行なうマーシャリングと、救命胴衣を実際に膨らませてみる体験をした。
マーシャリングは、室内でプロジェクターを使い飛行機の映像を投影しながら、誘導の動作をするというもの。実際に普段業務にあたるマーシャラーたちから手ほどきを受け、全員がマーシャリングを体験した。
救命胴衣の体験は、3名が代表して実施。誰しも飛行機に乗るときに装着方法とひもの引き方は見ているものの、実際に装着した状態で膨らませる姿を見る機会はほとんどない。
かけ声に合わせて一気に引くと、すごい勢いで救命胴衣が膨らんだ。膨らむ際、救命胴衣は冷たくなるそうで、体験した参加者から「冷たい!」「寒い!」と声が出ていた。膨らみすぎて苦しいときは赤いパイプの先を指でつまむと空気が抜けるとのこと。救命胴衣は使い捨てで1着100ドル(約1万1000円、1ドル:110円換算)ほどし、5年間程度で交換しているという。
参加者たちはそれぞれ交代してマーシャリングと救命胴衣の両方を体験し、再びバスに乗って滑走路付近での飛行機の離着陸見学へと向かった。
滑走路脇での離着陸見学や化学消防車の放水など最後まで盛りだくさん
バスで滑走路脇に移動した参加者たちは、滑走路のすぐ脇にある広い芝の上で、飛行機の離着陸の迫力を体感。目の前をさまざまな航空会社の飛行機が離着陸していく。音を体感したり写真を撮ったりしたあと、再びバスに乗ってA滑走路脇にある「空港消防西分遣所」へ。成田空港内に3カ所ある消防施設の1つであるこの空港消防西分遣所には、放水銃を飛行機内に入れ込んで瞬時に消火する「HRET(エイチレット)」も配備されている。
まず空港消防西分遣所の宮本氏が空港消防の役割などについて解説。素早く現場に到着するために、隊員は防護服を1分間で着られるよう訓練しているという。実際に隊員による防護服着用がデモンストレーションされ、その素早さに拍手が起きていた。参加者たちは、防護服の着用、消化器の使用、各消防車の乗車などを体験した。
展示していた車両はHRETのほか、化学消防車や給水車。見学・体験のあとには化学消防車とHRETによる放水が行なわれたが、向かい風で放水が参加者たちにかかり、虹も現われた。その様子に子供たちは大喜び。
最後にHRETを背景に記念写真を撮影し、バスでNAAビルへと戻った。
修了証や記念品が手渡され充実したワンデイ・サマースクールが終了
すべての見学や体験を終えた参加者たちは、最初に集合したNAAビルの情報コーナーへ再度集合。参加した感想をアンケートに記入し、記念品も配られた。
最後にこのサマースクールの校長役であるNAAの江邨孝夫氏から参加者たちに挨拶があり、参加者たちに今日の感想を聞くと全員が面白かったと手を挙げ、引率したスタッフたちも笑顔に。
各人の名前が記入された修了証が、校長から一人一人に手渡され、ワンデイ・サマースクールは無事に終了。迎えに来た家族へ感想を話したり、記念写真を撮ったりして解散していった。
これまで保護者も一緒に参加できたこのワンデイ・サマースクールだが、今年は体験できる子供の数をなるべく多くしたいという意図で、子供だけの参加にしたという。昨年までとの雰囲気を比べると、今回は修学旅行のようなワイワイした雰囲気だったのが印象的だった。大人が少ないぶん、自由に動き回る子供たちを引率するスタッフたちは大変そうではあったが、より「体験する」ことを意識したプログラムは、子供たちにとってかけがえのない経験となったことだろう。毎年6月に募集されるこのプログラム、参加できる学年が限られているので、チャンスを逃さず応募してみてほしい。