トピック

飯田裕子の新型カムリで秋の箱根に1泊2日のクルマ旅

温泉、ホテル、かまぼこ、そしてスポーティな走りを楽しむ

 2017年は、世界初の量産ハイブリッドカーとなるトヨタ自動車の「プリウス」発売からちょうど20年という節目になる。また、トヨタはプリウスの発売以降ほかの車種にもハイブリッドシステムを搭載して、世界で販売したハイブリッドカーの累計台数が1000万台を突破した。そんなトヨタの最新ハイブリッドカーが、7月に発売された新型「カムリ」である。

ハイブリッドセダンで出かけるクルマ旅

「旅の目的はなんですか?」と聞かれたら、普段なら「新しい発見や体験をすること」と答えたくなる。行き先(場所)が優先か、したいことを決めて目的地を決めるのか、という選択肢があるなら、だいたいの場合において後者を優先していたような気がする。実際にはそれほど頻繁に旅行などしていないので、両方が満足できる場所を選ぶのだけど……。

 さらに愛着のある愛車で出かけるなら、公共の交通手段(本数の少ない電車やバス)の少ない場所に出かけるのも「ドライブ×旅」の醍醐味。お天気や時間に縛られることもなく気の向くほうへクルマを進めればいい。それにトランクいっぱいに“旅の供”を詰め込むことも、お土産を持ち帰ることも自由なのだから。

 そんなドライブ×旅をともにしたパートナーは新型「カムリ」。北米では15年連続乗用車販売台数ナンバー1というポピュラーなセダン。かつて日本でもセダンは販売の主流を占めていたけれど、日本のセダン人気の減少とともに、その販売の軸足はアメリカをはじめ海外に向かっていた。そんな日本のセダン市場に一石を投じるべく、カムリが久しぶりにフルモデルチェンジをして発売されたのだ。

 ボディサイズは正直、まあまあ大きいミドルサイズ。でもカムリのスポーティさとエレガントさが融合されたこの存在感は、このサイズ感だからこそ体現されている魅力でもある。発売間もないモデルなのに、街中で出会った一台のクルマの後姿の美しさに気づき、直後に「あ~、私はまた新型カムリに反応している」という経験もすでにしばしば……。インテリアの広さも質感の高い内装とともに優雅さを漂わせている。大型の液晶ディスプレイの存在感は大したものだが、デザインのなかにクールに溶け込んでいる。新型カムリのデザイン性は一つの魅力であり武器でもある。

一緒に旅をした新型カムリの「G“レザーパッケージ”」

 さらに魅力的な特徴としては、カムリはハイブリッド車であるということ。モーターとエンジンを組み合わせ、モーターによる走行からモーターと2.5リッターガソリンエンジンを使用した力強いハイブリッド走行が可能。状況によって距離は変動するもののドライバーが自らモーターのみを使って走行するモード(EVドライブモード)を選ぶこともできる。ちなみにJC08モード燃費は33.4km/L(Xグレードの数値。G“レザーパッケージ”、Gは28.4km/L)。「プリウス」に少し負けているけれど、それでもお世辞抜きで立派なものだ。今回も実際に燃料計の表示を疑ったほどだ(苦笑)。それにその分、カムリの静と動を大人が快適に楽しむのに十分な魅力とパフォーマンスを持っている。

 カムリに搭載されるトヨタ最新の予防安全技術「Toyota Safety Sense P」は、レーダーやカメラを使って先行車との追従走行のできるレーダークルーズコントロールはもちろん、車線を逸脱しそうになるとステアリング制御も加わる。夜間の歩行者確認を早めるオートマチックハイビームもナイトドライブには有効。またオプションとして、クルマが後退する際の死角検知と万が一の際にはブレーキも作動する機能「インテリジェントクリアランスソナー(リヤクロストラフィックオートブレーキ機能付)」も採用されている。

 走行性能については、最新の車体に理想的なエンジンや乗員レイアウトを実現しているのが特徴だけれど、その頼もしさについて今回は特別な走行体験もしたので、そちらをぜひ確認していただきたい。

 新型カムリはデザインと機能のちょうどいい落としどころが分かっているのだろうか。実によいプロポーションが与えられ、さまざまな装備と質がハイバランスされている。機能性の魅力という点では、サイズにふさわしいリアシートのスペースと、ハイブリッド車と言うと専用バッテリーなどを後席やラゲッジスペースを犠牲にして搭載せざるを得ないモデルもあるけれど、カムリは後席の下に軽量でしかも高出力なリチウムイオンバッテリーを搭載。これによりラゲッジスペースも驚くほど広い。

 余談ながら運転好きな私としても注目したのは、重量のあるバッテリーを低い位置に配置していることでクルマを低重心で安定させることができ、操縦安定性に貢献してくれている点もご紹介しておきたい。

小田原の老舗かまぼこ屋さん「鈴廣 かまぼこの里」でかまぼこの手づくり体験

 そんなカムリで東京からまずは小田原に向かう。雨模様の高速道路を、しっとりと静かにカムリは走る。ハンドリングは、ステアリングを握っているのは私のはずなのに、なんだかエスコートされている気分になれたのは、しっかりと、しかし滑らかに走るほかのクルマでは体感できないようなカムリの優しさのおかげだと、すぐに分った。

 クルマ好きの方のための情報として、カムリにはタイヤサイズが16インチ、17インチ、18インチとあるが、今回は18インチの「G“レザーパッケージ”」という、足下はスポーティな仕様になる。そこで乗り心地は少し硬めかと覚悟していたのだが、よい意味で期待を裏切ってくれた(苦笑)。そこで私はあっという間に18インチタイヤを履くこのスタイリッシュなカムリのファンになってしまったのだった。

 運転席と助手席をフラットかつシックに繋ぐダッシュボードの間にあるコントロールパネルには大き目のディスプレイが内蔵されている。ここで最初に目的地としてセットしたのは小田原の老舗かまぼこ屋さんの「鈴廣」さん。実はこちらでかまぼこを買うことはあっても施設を見学したことはなく、“かまぼこづくり体験”ができるというのがとてもとても気になっていたのだ。

 鈴廣さんのある小田原は目の前に日本三大深湾の一つである相模湾が広がる、海産物の宝庫。さらに富士山や箱根、丹沢から沸く名水に恵まれ、幕末時代からかまぼこづくりが盛んになったそうだ。江戸時代は大名も旅人も小田原宿でかまぼこを食べたのだとか。鈴廣さんの創業は1865年(慶応元年)。2007年には大掛かりな改装を行ない、ココに<買う>=かまぼこの里、<食べる>=えれんな ごっそ、千世倭樓(ちょうわろう)<知る>=かまぼこ博物館など、まるでかまぼこのテーマパークのような総合複合施設をオープンさせている。

国道1号沿いに隣接する鈴廣さんの施設「鈴廣 かまぼこの里」。小田原~厚木道路、西湘バイパス、箱根新道、さらに箱根ターンパイクなどの道路からのアクセスもよく、立ち寄りやすい
かまぼこの伝統と技を知ることができる「かまぼこ博物館」
工場見学でガラス越しでかまぼこ職人たちの技を間近で見られる
ショッピングを楽しめるミュージアムショップ
「小さな美術展かまぼこ板絵国際コンクール」作品常設ギャラリー
かまぼこ博物館にはかまぼこの研究者たちによる「かまぼこの科学」もある。美味しいだけではないかまぼこの魅力をここで知ることができる

 楽しみにうかがったかまぼこの手づくり体験には、ちくわもセットになっていたからうれしい。あらかじめ用意された魚のすり身を板の上で専用のかまぼこ包丁を使ってさらに練り、伸ばして広げ、かまぼこにはおなじみの板の上をすり身に寄せていくようにして盛っていく。と説明するのは簡単だけど、コレがどうして難しい。“あの”扇型のトンネルのようなバランスのとれたカタチに“近い”状態にするのにも一苦労。最後に大きな蒸し器へ……。担当の方に手渡す際の愛おしさが忘れられない。

 それはちくわもしかり、だった。かまぼこと同じ粘り気のあるすり身を棒に巻き付けるのがこんなに大変だとは思わなかった。ココでは自分のちくわが少しずつ焼けていく様子を見ることもできる。お餅のように膨らんで少しずつ焦げ目がついていく、おなじみの焼き色になれば完成だが、ちくわのシワシワは膨らんだあとに萎んでできることを今さらながら知った。ちなみに、かまぼこはつくって蒸して冷ましてから受け取るため、70分ほどの所要時間が必要だ。待っている間に博物館やショッピング、食事を済ませるとちょうどいいですよ。

かまぼこの手づくり体験に挑戦
かまぼこは体験後、蒸して約70分でできあがるので、待っている間に施設内の博物館や食事、お茶などをして待つのがおすすめ。ちなみにちくわは約20分で焼きあがるので、まずはこちらの焼き立てをいただくこともできる
かまぼこ・ちくわ手づくり体験は水曜日以外、毎日5回開催:1500円(税別)。水曜日はちくわのみで6回開催:500円(税別)
かまぼこ愛に溢れ、楽しく丁寧に説明してくださった鈴廣 広報の清水郁美さん
ショッピングを楽しみながら、約20分でちくわが焼きあがった

 ちなみに小田原のかまぼこは“グチ”という魚を使う。かまぼこはグチのすり身と海水で作った天日塩をすり合わせるとタンパク質が溶け出し、プリプリの弾力を持つかまぼこになる。この食感こそが小田原のかまぼこの特徴であるそうだ。さらに小田原のかまぼこの白さはほどよく硬水である小田原の地下水の活躍によるものだという。しかも専門店で買うかまぼこが少々高価なのは、手間隙がかかっているのはもちろん、かまぼこ1本には5~7匹のお魚を使い作られているからこそ。素材と風土によって小田原独自のかまぼこが生まれていることを、かまぼこ博物館で知ったのだった。

 大人になると食は“量より質”(苦笑)。小田原でかまぼこづくりを続ける鈴廣かまぼこのアレコレを知った上で、いただくかまぼこはなんて美味しいのかしら!

焼き立てつくりたてのちくわはやはり美味しい~。ふだん食べるちくわより旨味が濃いのか甘さも風味も強く感じられた

 レストラン「えれんな ごっそ」ではビュッフェスタイルで鈴廣のかまぼこや“地元産”を中心とした契約農家のお野菜やお肉、お魚を使ったさまざまなお料理がいただける。かまぼこのお料理はご家庭でかまぼこを使ったオードブルの参考にもなる。伊達巻を生クリームでいただくと、素晴らしいスイーツになることも発見! そんなふうに新鮮な体験と発見を日本人にとって、しかも神奈川育ちの私としてもなじみ深い鈴廣のかまぼこでできたことは想像以上に満足度が高い。自分で作ったかまぼこやちくわの味はそれ以上だけど……(苦笑)。

レストラン「えれんな ごっそ」のビュッフェ。「かまぼこをもっと身近に……」というかまぼこを使ったオードブルの提案メニューや地元の食材を中心としたメニューをデザートまで楽しめる
小田原・箱根の「いろいろなごちそう」を楽しめるバイキングレストラン「えれんな ごっそ」。営業時間は平日:11時~14時45分/15時~17時、土日祝:9時30分~17時

富士箱根伊豆国立公園の自然のなかにあるNEST INN HAKONE 俵石閣

 旅の目的。今回、箱根に向かったのは滞在先のホテルが一つの旅の目的地だった。2016年の10月にオープンしたNEST INN HAKONE 俵石閣は、以前から一度滞在してみたいと思っていたホテル。富士箱根伊豆国立公園の特別地域として保護され続けた自然のなかに立地して、木々のなかにレストランやホテル棟がある。

 ここは国定公園内であることもあり、建造物のまわりに自然があるのではなく、自然のなかに私たち人間が安らぐ場所を構える、という体である。通りから脇道に入り、さらに専用道路に逸れて、駐車場に到着。それでもまだホテルの全容が見えないくらい、NEST INN HAKONE 俵石閣は木々のなかでまるで鳥の巣を探すように静かに在った。

富士箱根伊豆国立公園の特別地域として保護され続けた自然のなかに立地する「NEST INN HAKONE 俵石閣」

 37室のお部屋が3棟に分かれて点在し、「バードバス」と名付けられた温泉は離れにあった。大涌谷から直接源泉を引いてくる温泉は白濁系。美肌効果や神経痛、動脈硬化などの効果があるという。快晴の朝風呂は、最高だ~(苦笑)。

 一方、私が宿泊したお部屋は寝室とリビングが分かれており、広くモダンなリビングにはカウンター式の書斎とソファ、オーディオ、隅に冷蔵庫、そして薪ストーブもあるだけ。寝室はベッドがあるだけ。お部屋のシャワールームはコンクリート打ちっぱなしのオープンスタイル。華美な調度品はなく、スペースのわりに物が少なく極めてシンプル。なのにジッとしていたくなるほど落ち着く空間がまた独特だ。時計もテレビもなく、灯りも間接照明のみ。「暗くなったら寝て、明るくなったら起きる。体内時計をリセットする場所」とホテルの方が教えてくれた。でも夜な夜なDVD鑑賞などができるプロジェクターの貸し出しはあるという。

シンプルモダンテイストの客室。調度品も必要十分な“モノ”にこだわり、TVや時計も置かれてはいない。コーヒーを淹れるならレセプションで挽きたてのコーヒー粉をいただくことができる。薪ストーブの温もり、コーヒーの香り……。日々の慌ただしい時間のリセットや心身のリフレッシュがここで過ごすだけで叶いそうだ
チェックイン時には淹れたてのコーヒーとレストランのパンを使った自家製ラスクで一息

 ユニークなカタチをした「ウッドサイドレストラン」は、地産地消を活かしたオーガニック野菜や魚介類、お肉などを使うオリジナル料理がいただける。オープンキッチンを眺めるようにテーブルが配置された館内は、シェフが指揮者でゲストが演奏者のようにも見える。ウッディな室内は大きなガラスが一面に広がり、日中は自然光が柔らかく、夜は灯りを落としてリラックスムード漂うなかでディナーが愉しめる。

 その晩は“錦秋(きんしゅう)の箱根路”というテーマで“ネイチャーエイジングオードブル”と題された8種類の前菜やお魚料理から始まり、松茸と銀杏のスープ、ぶどうの葉に包まれたエスカルゴ、すだちのグラニテ、鴨胸肉の炭火焼きローストに静岡の茶そば、柿のデザートなど、実はそれぞれのお料理のタイトルや盛り付けも楽しく、心もお腹も満たしてくれた。バビロンバードベーカリーの自家製天然酵母パンがまた美味……。

この日のディナーのテーマは“錦秋(きんしゅう)の箱根路”
ユニークなカタチをした「ウッドサイドレストラン」

 翌朝、ビュッフェスタイルの朝食も食べなければもったいない。レセプションのある建物でいただく珈琲も珈琲好きなら素敵なリラックスアロマになるだろう。京都に本店を構える「Unir Coffee」のバリスタ 西村裕次氏が箱根の湿度や標高に合わせてブレンドしてくれた「仙石原ブレンド」をKees van der Westen(キーズ・ヴァン・ダー・ウェスタン)というエスプレッソマシンで淹れるというこだわりぶり。レセプションに広がる珈琲の香りが珈琲好きにはたまらない。

朝食会場。ウッドサイドレストランでのブレックファースト。色々フルーツの入ったリフレッシュウォーターや、色とりどりのフレッシュジュース、手づくりベーコンに卵料理やスープ、そしてバビロンバードベーカリーのパン。せっかくの滞在、朝食タイムだって朝からゆっくりのんびり……、そんな時間も心のご馳走になる

 ここまで東京からクルマでまっすぐ来れば1時間半。箱根が身近な場所である生活環境ゆえに抱く感想かもしれないけれど、現実逃避を目的に長逗留を決め込む宿としてはこんなに素晴らしいところはない。仕事も捗りそう? そういう場所を持つのもわるくないと夢見心地でホテルを後にした。

カムリで富士スピードウェイのレーシングコースを体験走行

 現在の仕事を始めるきっかけになった場所とも言えるのが、実は富士スピードウェイ(以下、FSW)。私はかつてここでレースをしていたことがある。振り返ればレースに夢中になっていた数年間は、大人の体育会系部活動みたいな日々と週末を、自動車会社でOLをしながら繰り返す刺激的な日々が続いていた。だから「カムリで体験走行をしましょう」と同行したCar Watchのスタッフの方に提案されたときは、正直、刺激が足りないのではないかと思ったのだ(苦笑)。ところが体験をしてみると、「それがどうして、意外と楽しいのよ」と誰かれかまわずに話したいくらいだ。お勧めだ。

自分のクルマでスピードウェイ国際レーシングコースの「体験走行」ができる「体験走行券」は料金:1台/2100円

 体験走行はレーシングギヤの準備も予約も要らず、開催される日なら12時から始まるのでその30分-1時間前くらいに集まれば自車で同乗者ともにFSWのレーシングコースの走行を体験できる(多い場合は台数制限あり、注意)。走行周回数は3周。それでもF1も開催され現在も国際レースが開催されるFSWのコースは全長4563m、日本のサーキットで最も直線の長いコースと知られるFSWのメインストレートは1475m。高低差も絶妙なコースにはコーナーが16コあり、コース幅も15-25mと幅広い。初めて走るなら、そのスケールの大きさに感動できるだろう。

 ただ一人で走るとどこをどう走ったらいいのか分らないという人ばかりだと思う。だから体験走行は先導車についてみんなで隊列をつくって走る。プロの先導ドライバーが安全マージンと新鮮な体験を味わえる絶妙な速度とメリハリの効いた先導で……。

先導車に続いて隊列をつくって走行する

 私の今回のパートナーであるカムリハイブリッドがまた、ただ快適で先進性に優れたイケメンなだけでないことも再発見できた。体験走行でもコーナリング中の“G”をほどほど十分に体感できるだけの速度もあって、カムリのボディのしっかり感や”走る“曲がる”“止まる”の頼もしさも、“G”をほどほど十分に体感できる安全な領域で体験できた。こだわってみたのは走行モードだった。カムリには3つの走行モード“エコ”/“ノーマル”/”スポーツ”が用意されている。そこで「FSWを走るならやはりスポーツモードでしょ」とシフトレバーの手前に並ぶモードスイッチから“スポーツ”を選択。するとドライバーが求める加速力に対して、より加速レスポンスがよくなり、モーターとエンジンの動力を使ってハイブリッドシステムのメリットを活かした思いどおりの加速が得られた。それだけで楽しい。

 さらにブレーキの制動力に不満がなかっただけでなく、ブレーキを踏む前にアクセルを緩めると一般的にもエンジンブレーキがかかるのだが、そのエンジンブレーキも積極的に介入してくる。しかもハンドルの操舵感もノーマルよりも重くなり、コーナーに向かってハンドルを切り始めるところからコーナリング中の微妙な調節がより正確に行ないやすくなる。オーディオのボリュームダイヤルなども軽いよりも重さがあるほうがしっとりと操作感がよいのと同じだ。シフトレバーをマニュアルモードにすれば前後で+(シフトアップ)/-(シフトダウン)の操作が行なえ、マニュアル車のような運転ができるのも楽しい。

 100Rいう大きな曲線を描くコーナーがあるのだけれど、ここを走っているときはバケツに水を入れてグルグルさせたときの中の水のような気分(コーナーの外に体が少し持っていかれるような感覚)になりながら、曲がる。そんなときもカムリは4つのタイヤがしっかりと路面を捉え、安定しているのが分るから頼もしい。ちなみにレーシングスピードでココを走行する場合は、自分のことをバケツの水に例えるような余裕はないけれど……。

 この体験走行は開催されている日なら、12時から実施される。FSWの体験走行スケジュールをカレンダーで確認していくことをお勧めします。レーシングギアの準備は不要。同乗もOK。2シーターのスポーツカーでやって来た若いご夫婦は奥さんが間もなく出産を迎えるという妊婦さんだった。「子供が生まれて家族が3人になったらこのクルマで一緒にコースを走れないと思って」とご主人。奥さんも私の心配をよそにとてもうれしそうだった。

 クルマをレンタルして走ることもできる。愛知からやって来た男性2人は会社の休暇に公共の交通手段を使ってこの体験走行をするためにやって来ていた。一人の男性はリピーターでお友達を誘っての2度目の走行だったそうだ。走る前だったので、「そんなに楽しいの?」と思ったのが正直な感想(苦笑)。終わってみれば、一緒になって「楽しかったですねぇ」と感想をシェアしたくて彼らを引き留めてしまったほどだった。そんな2人も2日間、この周辺を旅して帰るのだとか。いやはや、本当にこの走行体験はアリだと思います。ドライバーはドライビングを、同乗者はクルマでできるサファリツアーのようにコースを眺めても新鮮な驚きはあるはず。お天気に恵まれたら、走行中、目の前に富士山がドーンと視界に入るコーナーもある。

走行周回数は3周

 加えて、FSWでは本当のサファリツアーはないけれど、古代恐竜に会えるアミューズメントパークが新たに誕生した。その名も「富士スピードウェイ」ならぬ「富士ジュラシックウェイ」、イェイ! それも、動くんです。14種の恐竜たち……。

 トリケラトプスの親子とか、獲物に狙いを定めるプテラノドンとか、ティラノサウルスの棲む森とか、こちらも想像していた以上に迫力あり可愛くもアリ。家族でも楽しめる施設がFSWにまた一つ増えたと言えるだろう。

富士ジュラシックウェイ
FSWの森を活かした“恐竜体験”は想像以上に雰囲気もあり、サーキットに居ながら森林散歩&恐竜との遭遇ができるのは新鮮。所々にインスタ映えしそうな撮影ポイントもあり
子供向けながら、特別に撮影許可をいただきました(苦笑)

 また一つ、という意味は、本格的なカートコースも併設されているのだ。こちらはお子さんの年齢や体格にもよるけれど、免許がなくてもレーシングな気分を楽しむことができる。コースはFSWの本コースのプチ版と思わせるレイアウトになっているそうで、それだけでFSWファンやレース好きはチャレンジしてみたいと思う方がいるのではないかしら。レーシングコースの走行で新鮮な体験ができた筆者は、軽く愉しめばいいのについつい……(苦笑)。

 サーキットはレースを観に来るところ、レースをする人だけが来るところではない。クルマや運転が好きな方、そして今では家族で楽しめるスポットも増えている。ご興味のある方はぜひ新鮮なサーキット体験をFSWで楽しんでみてください。

カートコースはFISCO本コースの縮小版になっている。カメ走行だってレーサー張りの走りだって楽しめる気軽なカート体験は、ドライブついでに「軽~く、ひとっ走り」にうってつけ。

クルマで出かける旅、思いがけない出会いも

 新型カムリで出かけた2日間の旅。そんなカムリの走行のなかで印象的だったのは、カムリがものすごく心地よく、頼もしい走りをしてくれるのに、その魅力的なデザインほど性能を主張しないところ。例えばモーター走行も可能なカムリの静粛性。タイヤが路面を捉える音わずかに聞こえるだけの走行は、まるでクルマの存在を消すかのようだった。

 しかしその一方で、エンジンも走行に加われば、例えばクルマらしく息遣いまで聞こえるようになり、呼吸を合わせながらワインディングをスイスイ、ヒラリヒラリと走らせる楽しさもある。でもエンジンが「どうだ、凄いだろう」とアピールするでもなく、ハイブリッド車らしく走行を支える一部に徹してくれているかのようだったのだ。

 乗り心地のよさと前述のような動力をバランスさせたモデルはトヨタ車のなかでも少ないように思える。大人がゆったりとツーリングを楽しむパートナーとしては、この乗り味は体と心によく馴染む。

箱根ターンパイクのドライブを楽しみながら大観山に向かう。すると雨上がりの山頂で視界に入ったのは生まれたての雲の流れだった。思わずクルマを停め、眼下に広がる山々と芦ノ湖、流れる雲を眺めていた。“今”しか見れない、切り取ることのできない風景を思うがままに楽しめるのもドライブ旅の魅力

 ところで、クルマで出かける旅には自由な移動が約束されているようなものだ。そこでは思いがけない出会いもある。人であり、食であり、風景でさえ……。実は今回、箱根の山間(ターンパイク)の道路を走っていたら、雨上がりの眼下の山間に立ち昇る蒸気が大きな雲となって流れ、芦ノ湖とともに幻想的な風景を創り出す様子に遭遇。それを発見できたときは、思わず「ラッキー!」とクルマを停め、スマホ片手に駆け出していた。

 この辺りは取材で何度も訪れたことのある場所だったから、天気がよければ富士山だって大きく見えることも知っている。そんな私でも初めて目にした光景は、自然のいたずら的な、今しか見ることのできない景色でもあった。ホテルへと向かう足を止め、しばらく眺めていたのだった。

提供:トヨタ自動車株式会社

撮影協力:
鈴廣 かまぼこの里
株式会社鈴廣蒲鉾本店
http://www.kamaboko.com/
NEST INN HAKONE 俵石閣
俵石ホテルアンドリゾート株式会社
https://hyosekikaku.jp/
富士スピードウェイ株式会社
http://www.fsw.tv/
箱根ターンパイク株式会社
http://www.htpl.co.jp/

飯田裕子

■日本自動車ジャーナリスト協会会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員/日本自動車連盟 交通安全・環境委員会 委員
東京生まれ、神奈川育ち。自動車メーカーでOLをした後、フリーの自動車ジャーナリストに転身。きっかけはOL時代に弟(レーサー・飯田章)と一緒に始めたカーレース。その後、女性にも分かりやすいCar&Lifeの紹介ができるジャーナリストを目指す。独自の視点は「人とクルマと生活」。幅広いカーライフを柔軟に分析、紹介のできる視野を持つ。自身の2年半の北米生活経験や欧米での豊富な運転経験もあり、海外のCar&Life Styleにも目を向ける。安全運転やエコドライブの啓蒙活動にも積極的に取り組んでおり、近年はIT技術を採用するクルマの進化とドライビングスタイルの変化にも注目。ドライビングインストラクターとしての経験も15年以上。現在は雑誌、ラジオ、TVなど様々なメディアで様々なクルマ、またはクルマとの付き合い方を紹介するほか、ドライビングスクールのインストラクター、講演、シンポジウムのパネリストやトークショーなど幅広く活動中。

Photo:高橋 学