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ポルシェ×東大のLEARN with Porscheが2023年も開催決定! 過去2回のスカラーシップ生の同窓会をレポート

「LEARN with Porsche」2021~2022年開催のスカラーシップ生が一同に集まった

 LEARN with Porsche 2023の参加者募集が6月1日から始まっている。

「LEARN with Porsche」とは、ポルシェジャパンと東京大学 先端科学技術研究センター 個別最適な学び寄付研究部門が共同で実施する、中学~高校の若者向けプログラムだ。

 このプログラムは全国から若者を集め、各個人に最適な環境に合わせて能力を伸ばしつつ、自信を深め意欲を高めていく気づきのきっかけを与えていく、という取り組みになっている。これまで2021年と2022年に開催しているが、その過去2回に参加したスカラーシップ生(参加者たち)が全国から集う同窓会を、桜の咲く季節に開催した。

 LEARN with Porscheの発端となる「LEARN」は、東京大学 先端科学技術研究センターで中邑賢龍(なかむら けんりゅう)シニアリサーチフェローが率いる「個別最適な学び研究」寄付研究部門の研究室が中心になって展開するプログラム。子供たちにとって個別最適な新しい学びとは何かを、実践しながら追求していく場だ。

 この考えにポルシェジャパンが賛同した取り組みがLEARN with Porsche。なぜポルシェが若者を支援を?と思うかもしれないが、ポルシェは「Porsche. Dream Together」というコンセプトで未来を担う若者向けの支援を続けている。「夢を持つことに優劣はない」という考えが根底にあり、夢を持つことをあきらめてしまった若者、自信をなくしてしまった若者、自分の能力を発揮できていないと感じる若者、そういった現代の迷える若者たちに、夢を持って自信をつけてもらおうと行なっている支援の一環だ。

 LEARN with Porscheの2021年夏には北海道十勝周辺で、2022年夏には四国周辺にてプログラムが開催され、その様子はこれまでにトラベル Watchで詳しくレポートしている。何も知らされないまま、さまざまな課題を克服していき、最終日にポルシェの最新モデルに出会う。その経験や高揚感は、参加者たちにもなかなか得がたい体験だったのではないかと思う。

リアル10名+オンライン7名の参加者が全国から集まる

 2年間の合同同窓会と言ってもよいミーティングは、3月にLEARN本部のある東京大学 先端科学技術研究センター内の中邑研究室で開催された。研究室に来た参加者が10名、ほかはオンライン参加などで、多くが積極的に参加してくれた模様。遠くは鹿児島や大阪、三重などからも足を運んでくれている。まだ数年しか経過していないが、みな成長して自信に満ちた顔をしていたのが印象的だった。2期間での交流は今回が初めてだが、課題を克服した仲間たちということもあるのか、終始和やかな雰囲気で進んでいった。

 プログラム終了日は慌ただしく解散してしまったため、参加者たちが意味合いなどを考える時間はなかった。中邑氏が「昨年の最後は、みんなでポルシェで羽田に向かって、空港で降りたらじゃあねって、解散して僕たち走り去っちゃったよね。今回はこの2年をみんなで少し振り返る機会を設けてみました」と参加者たちに語りかけ、2年分をまとめたダイジェストビデオが会場に流されるところから、会は始まった。

東京大学 先端科学技術研究センター内中邑研究室にLEARN本部がある
これまでの参加者たちが集まり始める
東京大学 先端科学技術研究センター 「個別最適な学び研究」寄付研究部門 シニアリサーチフェロー 中邑賢龍氏
研究室に参加者が集まり、和やかな雰囲気で始まる
全国に散らばるので、オンラインの参加者も多い
これまでのLEARN with Porscheをまとめたダイジェストビデオが流された
懐かしく振り返る

思いのほか自信をつけたスカラーシップ生たち

 中邑氏は、参加者たちの成長に驚きながら、全員の近況報告を聞きつつ、「LEARNで何かについて教えるということはあまり考えてなくて、日々現われる新しい場所、そこで何かをしてみる、その場所で起きることを活かすのは参加者たちなのだ、というスタンスでいます。受験勉強とかで、“これをしなさい。こうしたらいい”と常に指示されながら生きる、これでいいのかという考えがある。もっと勝手に生きる社会でいいんじゃないか、そういう大人もいるということも知ってもらいたい。元気な社会にしていきたい。違った意見があってもいい。違う考えが存在するってことを知っていくのが大切だと考えているんです」と、さりげなくプログラムの意義や方向性などに触れていく。

 参加者たちは近況に織り交ぜ、LEARN with Porscheに参加したあとの心境の変化を語ってくれた。

 独り暮らしをしたいと奮起した、「これでオッケー!」と前向きに考えられるようになった、自分と世界やまわりの人々との関係をよく考えるようになった、行ったことのない場所・したことのないことに挑戦するようになった、楽しんで受験勉強ができるようになった……など、想像していたよりも前向きな影響を受けた模様だ。

日々現われる新しい場所、そこで何かをしてみるのがLEARNの醍醐味
参加者たちが近況を報告しあう
各自からの報告に耳を傾ける
お互いの近況にも新しい刺激がある

「受験や試験とは違う価値観で生きている人たちと過ごせて、いろいろと感じることもあったと思う。今の世の中は、“こうしなきゃいけない”ということがハッキリし過ぎていて、自分に向いていないところで、がんばっちゃっている人もいるんじゃないかと思う。学びは大事。基礎知識がなければ志望する大学に入ったって、ついて行けないこともある。大学受験1つだけの目標で行ってしまうというのは、どうなんだろうと思います」と語りかける。

“こうしなきゃいけない”と決めつける必要はない

 技術家庭の教育過程で体を動かすようになったと言っていたエンジニア志望の参加者に、中邑氏は「あのポルシェのビンテージトラクターを一緒にレストアしようよ」と冗談半分に誘っていた。こういった指向に発展していくところが、新たな人との出会いでおもしろいところ。きっと彼は、あのトラクターに限らず、いつか古いエンジンをレストアしたくなって、実際に行動に移すのではないかと想像する。

 北海道のLEARN with Porscheを経験したあと、魅力を感じて北海道の大学を選択したという参加者もいた。あの大自然が魅力的に映ったのだろう。若い人に伝搬していき、人生の選択少なからず影響を与えていると言える。これはまたすごい影響力だ。

 短歌に情熱を燃やす参加者は、「自分が環境に合わなかったら、自由な場所に行ってみて、そこで発見したことを深く考えたりしたい」という価値観が得られ、短歌の賞を取ることもできているとのこと。学校での勉強に時間をとられるよりも短歌に魅力を感じていると、熱く語っていた。

 迷いながらも音楽演奏に情熱を向けている参加者は、音楽談義をしたことを覚えてくれて「INXS(インエクセス)ってバンド知ってますか!」と、元気に声をかけてくれた。もちろん知っている。リアルタイムで大ファンだった。こうして新しい感性で音楽に出会っていくのを見るのは、実に頼もしく見える。ミーティング終了後に、またしばしロック談義を楽しませてもらい、その勢いで若いうちにバンドを組む経験をオススメしておいた。ぜひ、日本のロックシーンに新しい風を送り込んでほしい。

 悔いのないように好きなことを正直にはじめてみたいと、ミュージシャンとして生きていくことを決めた参加者もいて、この音楽系の2人は今回初対面だったが、すぐに意気投合したようで、会の終了後に一緒に帰っていった。

リラックスした雰囲気で、活発な意見交換が弾む

「将来何をしたらいいのかが何もなかったけど、したいことが見つかって、それがどうしてなのかなって考えたときに、LEARN with Porscheで経験して、いろいろな大人に出会ったことを思い出した」という感想は実に印象的だった。「ここに関わっていた大人たちは、みんな輝いて見えるのはなんでだろうと考えたとき、自分の好きな仕事に誇りを持っていること、それはスゴイことだなと実感して、将来を考えることができた」とも話していた。

「そう言ってくれるのはうれしいね。日本は将来に希望を抱いている若者の割合がとても低いと言われています。それは本当なのかな? 若者のポテンシャルはあるし、誰も希望を言わないだけ、言えない世の中になっているだけなんじゃないか」と中邑氏が意見する。これこそがLEARN with Porscheの神髄だろう。若い参加者たちはポテンシャルを絶対に持っている。自主性を重んじつつ、少しでも引き出すキッカケを与えたい。それがこの活動が目指す方向性なのだと解釈している。

若者のポテンシャルは大きい。実は将来に希望を抱いているけど、気づいていない、言えないだけ

 もう1つ印象的だったのが、「LEARN with Porscheで一番心に残ったのは、失敗してもいいって知ったこと」と教えてくれた参加者がいたことだ。「これからはいろいろと失敗しながら生きていきたい」とも言ってくれていた。

 それに応え中邑氏は、「そうか……。失敗しちゃダメって言われてきたのか」と肩を落とす。「今は、みんなが完璧にできなきゃいけないと思い過ぎている。そうだよね。だからみんな故障するクルマには乗りたくないよね。私は以前、故障の多い骨董品のようなクルマばかり乗っていた。すぐ動かなくなって飛行機のフライトに間に合わない。そこでどうするかを考える。そんなことが日常なんだけどね。今は、そんなイレギュラーなトラブルを許せない人が多い。LEARNでは、自分が子供の頃におもしろかったことをみんなに体験してもらっているだけだったりするんだ」と悪びれずに言う。

 失敗上等、失敗からすべてが始まる、回り道こそが楽しいと考える自分も同意見だ。実は、失敗やイレギュラーなトラブルは人生の宝であることは、ある程度生きてはじめて気がつくものだ。若いときは失敗や悩みを抱えると、もうこの世の終わりみたいな考えに陥ってしまう。だけど生きてさえいれば、あとから考えるとあれは何だったんだろうってくらい些細なことだったりする。時には負けたって何の問題もない。そのことに、たった今気がついた君は素晴らしい。

 さて、このLEARN with Porscheが今年も開催される。6月1日から申し込みが始まり、開催日は8月21日~25日を予定している(26日が追加される可能性あり)。

 単なるミステリーツアーではない。スマホを投げ捨て、自分と仲間の力で解決していき、自分のポテンシャルに気がつくための実践的なスカラーシッププログラムだ。もちろん保護者の同伴は不可、事前に持ち物以外は明かされない。一部の食事や飲料を除き、旅費と宿泊費は奨学金として負担することなく参加できる。採用に学力は不問で、書類選考を経て個別の面接がある。また、今年度は物作りの好きな参加者向けのプログラムも実施する予定だ。

LEARN with Porsche

https://learn-project.com/pj/

終わったあとには連絡先交換。これからもグループで交流をしていくそう
オンラインの仲間とも熱心に雑談
なかなか話は尽きない
終わっても話は尽きず。音楽系の2人は意気投合中