車中泊の拠点 RVパークを訪ねる

富士山を望む朝霧高原に誕生。プライベート感の高い設備充実RVパークに泊まってみた

RVパーク TiC! ふじさん朝霧高原

数多くのキャンプ場がある朝霧高原に新たにオープンした「RVパーク TiC! ふじさん朝霧高原」に行ってきた。撮影のタイミングは日の出の頃。右端に昇ってくる太陽がある

 今回行ってきたのは静岡県富士宮市の朝霧高原にある「RVパーク TiC! ふじさん朝霧高原」(静岡県富士宮市人穴201-9)だ。

 朝霧高原といえばキャンプ場がたくさんあるエリアなのだが、なぜか車中泊施設はなかったので、クルマ旅ユーザーにとってTiC! ふじさん朝霧高原ができたことはおおいに歓迎すべきものだろう。

 TiC! ふじさん朝霧高原は2024年8月オープンしたばかりで、代表の土屋氏は地元で製造業を営んでいる。朝霧高原は富士山周辺、駿河湾側など観光資源が豊富な立地にあることから、短期の利用だけでなく、ここをベースとした長期のレジャーにも使えるよう設備を充実させたという。設備が整ったキャンプ場のことを高規格キャンプ場と呼ぶが、さしずめここは「高規格RVパーク」と呼べるところである。

TiC! ふじさん朝霧高原へ行く道の途中から見える富士山。朝霧高原側は「大沢崩れ」が正面に見えるので、ほかの方角からとは違って荒々しい雰囲気の富士山を見ることができる

 施設の概要は全区画がプライベートフェンス付き&電源付きで、区画サイズが横5m、奥行き8mが基本。区画についてはこのあと改めて紹介する。

 利用料金は平日、休日とも同一で1区画5500円。2台分の広さを持つ11番の区画のみ7700円。チェックインは13時から。施設は無人で運営しているので、チェックインにスタッフの立ち会いは不要。そのため夜遅いチェックインも可能になっている。

 例えば金曜の仕事終わりに東京を出発して21時ごろにチェックインというスケジュールも大丈夫だ。チェックアウトはキーを指定の場所に返却するだけなので、こちらも無人対応。早朝発も自在だし、ゆっくりしたい場合は11時までチェックアウトすればいい。

施設は奥まった別荘地にあってナビで住所の検索をしても正確な場所が出てこない。ただ、道は出てくるのでタップするなりして地点登録をすればOK
国道139号からくるとこの景色で左へ曲がる。細い道で街灯もないので夜の到着は注意して走ること
細い道を進むと「TiC! ふじさん朝霧高原」に到着。現在、施設にはドッグランはないが近隣に広い敷地があるのでそちらに作る予定とのこと

人の目を気にせず、のんびりしたい人向けの区画作り

 RVパークに限らず広々とした敷地のキャンプ場などは開放感こそあるが、その分利用者が多いとプライベート感があまり得られない状況になったりする。

 にぎやかな場所が好きな人であればそれも気にならないだろうが、せっかくのアウトドアレジャーゆえ、開放感と同時に人の目を気にせずのんびりと過ごしたいと思う人もいる。

ほかでは見ない区画の作り。側面だけでなく正面にもフェンスがを回り込ませたデザインなので、車外に展開するテーブルなどが外から見えにくくなっている

 写真を見て分かるようにすべての区画は背の高いフェンスで仕切られていて、そのフェンスは両サイドだけでなく正面側にもL字に回り込んだ作りになっている。フェンスの高さは2m以上あるので区画内に入ると「囲われている」感があるが、空が大きく抜けているので窮屈ではない。また、フェンス自体もよくある外構用の無機質なものでなく、細長い木材を横に渡して壁を作りつつ適度に隙間を設けたことも圧迫感の軽減につながっているのだろう。

板自体の色も上から塗るタイプの防腐剤のみの色なので、フェンスの見た目と合わせてアウトドア施設としての上質な雰囲気となっている

利便性か、広さか、それとも風景重視か、区画選びは悩みどころ

 TiC! ふじさん朝霧高原はもともと小山だったところを整地しているので敷地内には緩やかな傾斜が残っている。区画は敷地の境界に沿って17区画用意しているのだが、敷地は真四角ではなく弧を描く部分もあるので、サイズは一定ではない。基本的には横幅が5m、奥行きが8mとなっているが、このパターンの区画は下に掲載している配置図では1~10番の区画となる。

 そして11番以降は弧を描く境界に沿っているので間口サイズや奥行きはほかと同じだが、奥側が扇状に広がっているので実際の面積は広くなる。

 また、11番は角地でもあるのでTiC! ふじさん朝霧高原のなかではもっとも広く、クルマ2台が入るうえ、タープやテーブルを展開するスペースも十分にある。

区画の配置図。敷地の外のラインに沿って区画が設けてある。11区画からは徐々に低くなる傾斜があり、さらに敷地のラインが曲線になる
施設の入口から広く見た状況
前の写真の左側に見えているフェンスに沿って敷地内に入り、そこから奥を見た状況

 TiC! ふじさん朝霧高原は建屋内にトイレやお風呂、シャワールームがあるので、建屋との行き来を重視するのであれば1~7番あたりが便利だろう。そして8~10番だが、区画の正面に富士山があるので眺望を重視するならここだ。実際、記事冒頭のカットはここから撮ったもの。

1~10番は全面砂利引きで広さは横が5m、奥行きが8m。砂利引きなので区画内にタープやシェルターを設置する際、ペグ打ちしやすい
11番は敷地で最も高い位置にあり、傾斜が始まる部分でもある。隣の12番が少し低いのが分かるだろう。そのため11番からの駐車スペースは平行を出すためにコンクリート打ちになっている。11番は土地の形状の都合から2台で利用できる
奥側から見た図。砂利引きのスペースも広い
11番は広さもあるのでグループやファミリーには使いやすい区画ではあるが、隣には住宅があるので夜間だけでなく、日中であってもにぎやかになり過ぎることは避けたい。なお、施設のルールとしては20時から翌朝の6時までは静かに過ごすクワイエットタイムとしていて、さらに21時以降は車内で過ごすことが定められている
12番は1~10番とほぼ同じ形状で駐車スペースのみコンクリート打ち
13番から敷地のラインが曲線になる影響で区画の形状が扇形になる。間口のサイズは変わらないが奥がこのように広くなる
17番は広さもありつつ建屋からも近く、民家からは離れるので子供連れの利用に適しているように感じた
取材では14番を利用させてもらった。コンクリート打ちのところを試したかったのと、富士山バックの写真が撮りやすかったのが理由。あと筆者のクルマのナンバープレートと同じ番号だったのも理由の1つ(笑)。整地されているので寝ていても傾斜を感じることはなかった
1~10番の地面はほぼ平らだがコンクリート打ちの駐車スペースほど平らにはなっていないので、繊細な人だと傾きが気になることもある。そこで車体の水平を調整するためのレベラーの貸し出しもある。数に限りがあるので使えるのは先着順だ
すべての区画は電源付き。予約すると電源ボックスの扉を開くための解除番号が知らされるので、到着したら予約した区画へクルマを入れ、電源ボックスを開ける。ボックス内には建屋に入るためのカードキーなども入っている
コンセントは2口で1000Wまで対応。利用料金に電源使用分も含まれているが、あくまでも車中泊時に必要な電気を得るための設備
電源ボックス内には利用時の注意事項を書いた紙や建屋に入るためのカードキーと物理キー、TiC! ふじさん朝霧高原のステッカーが入っている
帰るときはポストへキーが入っていた箱ごと返却する。この返却をもってチェックアウトとなるので、キーを返し忘れて持ち帰ってしまうと、実際に撤収済であっても延長料金が発生するので注意

設備充実の建屋

 ここからは建屋の紹介をしよう。2階建ての建物のうち1階がRVパーク利用者ができる設備があるスペースとなる。

 建屋のドアはオートロック式で解除にはカードキーが必要だ。ドアにある案内どおりにカードをかざすとロックが外れて入室できる。

 入ってすぐにあるのが電子レンジと冷凍庫。電子レンジは無料で使えるが冷凍庫は販売用のロックアイスやアイスクリームなどが入っていて、これらを購入する場合は玄関前にある自動販売機を利用する。欲しい商品の料金を入れボタンを押すと扉の解除ナンバーが入った販売ケース出てくるので、それで解錠して商品を取り出すという仕組みだ。

 自販機には冷凍庫の商品のほかに指定ゴミ袋やお風呂の利用券、歯磨きセット、シャンプーなどもある。また、TiC! ふじさん朝霧高原は飛び込み利用にも対応しているので(空きがあれば)、その分の区画キーの販売もある。ちなみに自販機で扱う区画は1~3番。施設へ入口は24時間開いているので夜間の到着でも区画に空きがあれば利用できるが、20時からはクワイエットタイムなので入場の際はよけいな音を立てないように注意をしよう。

トイレやシャワー、お風呂はこの建物内にある。TiC! ふじさん朝霧高原は無人で営業しているので入口は施錠されている
カードキーで解錠して中に入る。大勢が利用するとまれにカードキーが反応しないことがあるので、その際は物理キーを使用する
エントランス部分。建物内は土足禁止なのでスリッパに履き替える。用事を済ませて履いてきた靴に履き替える際に何気に便利だったのがベンチ
電子レンジがあるのは便利。筆者は来る途中に購入したお弁当の温めに利用させてもらった。レトルト食品や惣菜、お弁当は調理するよりゴミの量が少ないので、ゴミを持ち帰る車中泊向きだ
冷凍庫内の商品が欲しいときは自販機で販売ケースを購入する。今後は利用者の意見を聞きながら商品を増やしていくという
自販機は入口前にある。現金のほかQR決済に対応。カード類は非対応だ
自販機で販売している商品。予約なしの当日利用の際もここで区画の利用ケースを購入する
そのほかの販売品。オリジナルグッズも購入できる。Tシャツなどは着替えとしても使える。こうした販売品は代表の土屋氏が自身でほかの施設を利用したときに「あったらいいな」と思ったものを選んでいると言う
トイレは3か所にある。奥の扉が個室。ここは男女兼用で、ほかは男女別に分かれてる
有料ではあるが洗濯機と乾燥機もあるので長期滞在にも対応する
シャワールームは男女別に用意している。ルーム内の作りは男女用同じでブースは3つある。この部屋にもトイレがある
シャワールームには鏡、洗面台、コンセントはあるがドライヤーはないので、必要であれば持参すること
シャワーブース内。脱衣所付き。シャワーの利用料は10分で300円。料金はブース内の機器に直接入れる。ロビーには両替機があるのでコインがない場合は両替しておく
お風呂も男女別にそれぞれある。利用時間は80分で湯張りからセルフで行なう。お風呂の洗面台にはドライヤーが置いてある
浴室、浴槽のサイズは大きめなので親子での利用もできる。入浴後はお湯を抜き、シャワーで浴槽を流してキレイにする。また、壁などの水分をワイパーで拭き取る。ようは自分が誰かのあとに利用する際、不快に思わないレベルの清掃をするのだ
80分お風呂という名称だが、時間枠が決まっているのでスタート時間は厳守
建屋の外に洗い場がある。お湯は出ない
飲料水の自動販売機も設置
自販機で有料のゴミ処理を購入すると使用できるゴミ箱だが、連泊でゴミの量が多くなるわけでなければ持ち帰って自宅でゴミ出しするのを勧める
変わった設備がこちら。車内清掃用の掃除機に、タイヤの空気入れ用のエアコンプレッサー。エアゲージもある。これらは無料で使える
こちらは高圧洗浄機と高い位置を洗う用の脚立。洗車用の駐車スペースも用意している。これらも施設利用者であれば無料で使える
子供用のオモチャまで貸し出ししている

1泊してみた感想

 取材は平日に行ったためか利用者は筆者1人だったが、この広い施設を独占できるのは贅沢な感じがして気持ちいい。夜も当然ながらかなり静かだし、街灯がないことの暗さもあわせて、普段の生活では体験できないいい感じの孤独感が味わえた。週末は予約が入るが平日は空いている日が多いとのことなので、人がいない(少ない)状況でのんびりしたいなら休みを取ってでも平日の利用を勧める。

 筆者が利用した14番の区画は駐車スペースが5~6mほどの奥行きがあるコンクリート打ちなっているが、クルマが軽自動車なので後方にはスペースがたっぷり残った。そこでテーブルやイスは余ったコンクリート上スペースに展開。道具を入れていた箱もその周辺に置いたが、それでもコンクリートの上で済んでしまうくらいだったので区画の広さは十分と感じた。

 ただ、コンクリート打ちがされているところと砂利引き部分には段差があり、車外にイスやテーブルを展開する場合、コンクリート打ちと砂利引き部分を連続して使うことは難しい。また、カーサイドタープなども段差があるため張りにくそうだ。テーブルやイスの展開法にこだわりがある人やカーサイドタープを使いたいというなら段差がない1~10番の方が使いやすいだろう。

 区画内での調理はカセットガスコンロであればOKだが「薪や炭を使う調理は禁止」。理由は防火と煙の発生によってほかの利用者や近隣の住民の方へ迷惑にならないようにするため。ここはしっかりと守りたい。

筆者の装備だとコンクリート打ちの上ですべてが済んでしまうレベル。たき火もOKだがコンクリート上でやるのはNG。砂利の上で行なうこと。また、直火はNGなのでたき火台の使用がルール。灰がまわりに落ちることもあるのでたき火シートも敷いた
隣の区画に入ってフェンスの効果をチェック。ご覧のとおり目隠し度は十分だと思う
敷地内に街灯はないが、各区画の入口に小さい照明がある。とはいえ基本的に夜は暗いところなので、建屋まで行くときのための足元を照らす用のライトは持っていった方がいい
コンクリート打ちの駐車スペースは停めやすいが、余った部分はデッドスペースになるので、テーブルなどを広く展開したい場合はスペース作りに自由度がある砂利引きの区画の方がいいかも
砂利引きなのは1~10番。区画内を有効に使うにはこちらの方がいいかも
ここは感心したところ。敷地内にはいくつかの消火器が設置されていた。大型のバッテリーを積んだクルマが利用して、なおかつ火を使うだけに消火器は絶対にあった方がいいだろう
夕飯用に持参したインスタントのトマトリゾット。以前取材でお世話になった千葉の鉄道会社「いすみ鉄道」のオリジナル品
レトルトながら素材にこだわっていて美味しい。お弁当をメインにしていてもこうした一品があると食事の満足感は高まる
ここしばらくのRVパーク取材は、雨こそ降らなかったが曇り空が続いていたので星空は見えなかった。しかし今回はこのとおり
月齢が上限の頃だったので若干明るかったがそれでも多くの星が写った
星空と言うより「宇宙」と呼んだ方がいい感じ。空気が乾燥している冬の空なのでよけいにきれいに写るのだろう。なお、星空写真はすべて画像処理後のもの。肉眼ではここまで見えない
翌朝の富士山。冠雪があるとやはりきれい
富士山の麓なので朝晩はかなり冷え込む。冬に利用する場合は寒さ対策を万全にしてから出かけるように