ハワイ現地発

【ハワイ現地発】15ドル以下でハワイの味を楽しめる店

 相変わらず、ハワイではワイキキをはじめ新たな飲食店が次々とオープンしているが、今回は長年地元に愛されてきた店を紹介したい。それぞれのストーリーを持ち、ハワイで歴史を刻んできた店で、「また食べたい」とふと思い出して通ってしまう彼らの味は15ドル以下で堪能できる。

東仙閣(イースタンパラダイス)

キングストリート沿いに並ぶレストランの一つ。通り過ぎないように!
オープン当初の店の広さは今のスペースの半分だったのだそう

 移民が多いハワイの特徴の一つだが、ハワイは小さな島であるにも関わらず移民が持ち込んだバラエティ豊かな味が集まっている。東仙閣の前身は1969年に韓国のソウルで誕生した。その後、一家でハワイへ移住して1978年にこの店をオープン。代々伝わってきた秘密のレシピと新鮮な食材で考案された料理を提供したのが始まりだった。

見た目のインパクトが抜群の黒豆ソース麺、ヌードルwithブラックビーンズソース

 興味深いのが、ソウル発でありつつ韓国料理ではなく「チャイニーズレストラン」ということ。でも最初に自家製キムチが出てくるのがちょっと韓国っぽい。メニューにはこの店でしか食べられないインパクト大な料理があって、とにかくオリジナリティにあふれた店なのだ。

黒豆と玉ねぎで秘伝のレシピで作るヌードルwithブラックビーンズソース
食べ方はグチャグチャに混ぜる。そうすると本当に美味しくなる

 ここで注文するのは決まって、ヌードルwithブラックビーンズソース(14.95ドル)。一番人気のメニューで、店では「スパゲッティの中国版」と表現している。一見ミートソースと言えなくもないが……。もちもちの生手打ち麺に、黒豆と玉ねぎで作られた真っ黒の秘伝のソースがかかっていて、すべてごちゃ混ぜにして食べる。コクと甘みがあって、ほんのり塩っぱいがまろやかな味で、箸が止まらなくなる。

スープを飲み干してしまう麺、ヌードルwithスパイシーブレイズドビーフスープ

 もう一品オーダーするなら「ヌードルwithスパイシーブレイズドビーフスープ」(14.95ドル)を。牛肉の出汁がしっかりスープに出ていて味が奥深い。辛みのあとにビーフの出汁と野菜の甘みが口にふわっと広がる完成度の高い一品。

 場所は、ワイキキからクルマで10分くらいで分かりづらいところだが、日本のプロ野球選手らも訪れる店で日本語も通じるので安心してドアを開けて入ってみよう。

ミスター・おじさん

 この店もワイキキから少し離れていてクルマで10分くらいだが、いつ行ってもローカルがくつろいで食事をしている。1989年に日本人夫婦がオープンした店で、ハワイには日系人が多いことから、彼らが日本の味をアレンジして作った料理が人気となった。店舗を何回か移転し、今は「ミスターおじさんNEO BAR&SUSHI」となり、オーナーの娘さんたちの若い世代へとバトンタッチをしているところだが、変わらず常連が集まり、地域に根ざしている。

豚汁と漬物以外にもいろいろ出てきてテーブルがいっぱいに!

 定食やそば・うどんなどはどれもローカルの味付け。ハワイの人が好むのはちょっと甘辛い味。そんな和食を味わうのも楽しいと思う。脂がのったマグロを使用したアヒベリー定食(15ドル)など、定食には豚汁、漬物、ご飯が付く。当然ボリュームもローカル向け。

エアコンが効き過ぎるハワイでは、熱々の鍋焼きうどんもお勧め

 ローカルが大好きなとんかつ、チキンカツ、焼き鮭定食も15ドル。参考までにハワイのエアコンで冷えた体を温めたい場合は、鍋焼きうどんもある。

ワイアホレ・ポイ・ファクトリー

 100年前のポイ工場から歴史が始まった店。ポイとは蒸したタロイモをすりつぶして発酵させたハワイ伝統の主食。ねっとりしていて、ご飯のようにおかずと一緒に食べたりする。そんなポイをはじめ、ハワイ伝統食をプレートランチとして提供している。

ウィンドワードモール内のフードコート「パイナ・コオラウ」内にある
常に行列があるが、1号店よりは待ち時間が少なかった

 ワイキキから山を越え、さらに北上してクアロアランチ方面へとクルマを走らせると小さくて古いこの店があるのだが、行列がないタイミングはおそらくない!と思われるほどの混み具合で断念することしばしば。ところが約1年前、カネオヘのショッピングモール「ウィンドワードモール」内のフードコートに2号店をついにオープン。以前よりは行きやすく、買いやすくなった。

ポイとロミサーモン、おかずにラウラウとルアウの2品を選んだプレートランチ

 メニューはご飯とおかず一品を選ぶボウル(丼)が10ドル。ポイかご飯におかず一品を選ぶプレートは13.75 ドル。この日は、せっかくなのでちょっと奮発してポイかご飯におかず2品の17.25ドルにしてみた。

味がしっかりしみてやわらかな豚肉と魚がタロイモの葉のなかから出てきたラウラウ
伝統食のルアウは店によって味が違うので食べ比べも楽しい。ぜひ食べてみよう

 もちろん選ぶのはポイ。ポイは店によって違い、発酵が進んだ酸味の強いものからまろやかなものまであるがこの店はまろやかで食べやすいのでぜひトライを。

 おかずは、豚肉と白身魚をタロイモの葉で包んで蒸し焼きにしたラウラウと、イカのシチューのスクイッドルアウをチョイス。ラウラウは豚肉も魚もホロホロにやわらかく味が染み込んでいるので、ポイと交互に食べるとベストマッチ。ルアウは深みのあるまろやかな味でこれも無言で食べ続けてしまった。どちらも色みはよくないが、カネオヘまで行って食べる価値があると思う。

店員さんもイチ押しのスィートレディ・オブ・ワイアホレ(7.50ドル)
冷たいアイスクリームのなかに伝統菓子の熱々のクロロが入っている

 食後はハワイ伝統のデザートもいかが? 店員さんにデザートのお勧めを尋ねると、はにかみながら「私はスィートレディ・オブ・ワイアホレがすごく好き」と答えてくれたので注文してみた。クロロというタロイモとココナツミルクで作るもっちりしたあったかい伝統菓子の上にハウピア(ココナツ)アイスクリームをたっぷりのせたデザート。

 P.S. まだまだ暑いが10月に入り、季節は移り変わっている。ワイキキの海に太陽が沈む季節になった。

10月、海に太陽が沈んでいくワイキキビーチ
大澤陽子

ハワイで発行している生活情報誌「ライトハウスハワイ」編集長。日本ではラジオアナウンサー、ライターとエディターとして活動。2012年にハワイへ移住。新聞やハワイのガイド本などの編集に携わる。ハワイのビーチとビールをこよなく愛している。