井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
イチから連番とは限らない号車番号。乗車前に案内の確認を
2024年2月21日 06:00
鉄道に関わる「数字」は多岐にわたるが、一般利用者にとって身近なところでは、「発着時刻」とともに「駅の番線」や「号車番号・席番号」が挙げられる。駅の番線は「どこから乗るのか」に関わるし、号車番号や席番号は、自分が利用する車両や席に関わる情報だ。
号車番号が飛んだり11から始まったり
今回は、そのうち号車番号の話を取り上げる。これが実は、「常に1号車から始まって、連番で1ずつ増える」とは限らず、ときどき例外が発生する。これにはいくつか理由がある。
まず、繁忙期と閑散期で両数が違う場合。繁忙期の編成両数に合わせて号車番号を振っておいて、閑散期には一部の車両を外して欠番とする形だ。
次に、複数の列車を併結したときに、通しで数字が並ぶようにしている場合。山形新幹線の「つばさ」や秋田新幹線の「こまち」がこれで、いずれも11号車から始まる。併結相手の「やまびこ」「はやぶさ」が10両編成だから、そちらからの連番でこうなっている。
複数の列車を併結した状態で、同じ号車番号が2両あったら混乱してしまうのは容易に理解できるだろう。もっとも、過去には小田急ロマンスカーでそういう事例があった。このときには新宿方の5両を「A編成」、小田原方の5両を「B編成」と呼んで前後の編成を区別していた。
増1号車
号車番号に漢字が加わる事例もある。昨今だと、JR北海道の特急「オホーツク」「大雪」が該当しており、その名も「増1号車」という。
現在、「オホーツク」「大雪」は所定3両編成だが、繁忙期には2号車と3号車の間に増結して4両にすることがある。さらに1号車と2号車の間にも増結して5両になると、その1両が「増1号車」となる。
「オホーツク」「大雪」で使われている283系気動車の中間車3形式は、すべて定員が違う。実際に確認した組成の例を示すと、こうなる。
指定席車が増減したり定員が変わったりすると、JRグループ全体で指定席の情報を管理している「マルス」システムのデータも変えないといけない。そして、1・2号車の間に増結した際に号車番号を振り直すと、同じ号車番号でも定員が変動する場面が出てくる。
ことに2号車は、定員が少ないうえにバリアフリー対応設備を備えるから、それの号車番号が変わると案内の手間も増えそうだ。それなら「増1号車」として処理する方が合理的、ということであろうか。
JR北海道ではこのほか、261系気動車の「はまなす編成」「ラベンダー編成」を定期運行の特急列車に充てたときに、編成の一端にあるラウンジ車が「増1号車」となる。他車とは車内設備がまったく異なるので、いわば「枠外」の扱いだ。
そのラウンジ車を1号車にすると、「はまなす編成」「ラベンダー編成」が入るときだけ指定席車の号車番号がずれてしまう。それなら、枠外の「増1号車」にする方がスッキリする。
こういうこともあるので、「編成の案内」を事前に確認しておくに越したことはない。駅のホームに上がってから右往左往することになりかねないからだ。増結や車両の変更がかかる場合、大抵、駅に張り紙や案内表示が出ているものだ。
かつて、特急「オホーツク」の夜行便では「増21号車」の事例があった。自由席車が2両(1・2号車)、指定席車が2両(4・5号車)、そして両者の境界に寝台車(3号車)を挟んだ5両編成が所定。そして、2・3号車の間に増結した指定席車が「増21号車」というもの。
横須賀線・総武快速線の増1~増4号車
指定席車ではないので号車番号を意識する必然性は乏しいが、日常的に「増○号車」が走っている事例もある。それが横須賀線と総武快速線で、15両編成のうち、久里浜方の4両が増1~増4号車となっている。
ここの車両は11両の基本編成と4両の付属編成の組み合わせで、号車番号は久里浜方から順に振る。そして、4両編成は久里浜方に連結する。「それなら4両編成を1~4号車としてもいいのでは」と思うが、そうすると11両編成が5号車から始まることになり、単独で走るときに欠番ができる。
あくまで基本は11両編成と考えると、それを1号車から始めたい。ところが、4両編成を増結するのは、その1号車の久里浜側。そこでゼロやマイナスの号車番号を振るわけにもいかないので、増1~4号車としたのだろうか。
同じ15両でも、東海道本線、宇都宮線(東北本線)、高崎線は、5両の付属編成が基本編成10号車の側に連結されるので、5両の付属編成を素直に11~15号車としている。