井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

イチから連番とは限らない号車番号。乗車前に案内の確認を

ある日の特急「大雪」で。号車表示が「増1」となっている

 鉄道に関わる「数字」は多岐にわたるが、一般利用者にとって身近なところでは、「発着時刻」とともに「駅の番線」や「号車番号・席番号」が挙げられる。駅の番線は「どこから乗るのか」に関わるし、号車番号や席番号は、自分が利用する車両や席に関わる情報だ。

号車番号が飛んだり11から始まったり

 今回は、そのうち号車番号の話を取り上げる。これが実は、「常に1号車から始まって、連番で1ずつ増える」とは限らず、ときどき例外が発生する。これにはいくつか理由がある。

 まず、繁忙期と閑散期で両数が違う場合。繁忙期の編成両数に合わせて号車番号を振っておいて、閑散期には一部の車両を外して欠番とする形だ。

JR四国の特急「いしづち」は、3両編成から2両編成に減車していた時期があった(2013年1月の撮影)。このときの号車番号は1号車と3号車。こうすれば、抜かれた2号車をもとに戻す際の手間は最小限で済む

 次に、複数の列車を併結したときに、通しで数字が並ぶようにしている場合。山形新幹線の「つばさ」や秋田新幹線の「こまち」がこれで、いずれも11号車から始まる。併結相手の「やまびこ」「はやぶさ」が10両編成だから、そちらからの連番でこうなっている。

「こまち」のE6系電車。グリーン車は東京方の先頭車だが、これが11号車。以後、大曲方に向かって12~17号車が並ぶ

 複数の列車を併結した状態で、同じ号車番号が2両あったら混乱してしまうのは容易に理解できるだろう。もっとも、過去には小田急ロマンスカーでそういう事例があった。このときには新宿方の5両を「A編成」、小田原方の5両を「B編成」と呼んで前後の編成を区別していた。

増1号車

 号車番号に漢字が加わる事例もある。昨今だと、JR北海道の特急「オホーツク」「大雪」が該当しており、その名も「増1号車」という。

 現在、「オホーツク」「大雪」は所定3両編成だが、繁忙期には2号車と3号車の間に増結して4両にすることがある。さらに1号車と2号車の間にも増結して5両になると、その1両が「増1号車」となる。

増結によって5両編成となった特急「オホーツク」
特急「大雪」に連結された「増1号車」。ちなみに、指定席特急券にもちゃんと「増1号車○番△席」と書かれる

「オホーツク」「大雪」で使われている283系気動車の中間車3形式は、すべて定員が違う。実際に確認した組成の例を示すと、こうなる。

3両編成・4両編成・5両編成、それぞれの組成と車両ごとの定員はこんな具合になる

 指定席車が増減したり定員が変わったりすると、JRグループ全体で指定席の情報を管理している「マルス」システムのデータも変えないといけない。そして、1・2号車の間に増結した際に号車番号を振り直すと、同じ号車番号でも定員が変動する場面が出てくる。

 ことに2号車は、定員が少ないうえにバリアフリー対応設備を備えるから、それの号車番号が変わると案内の手間も増えそうだ。それなら「増1号車」として処理する方が合理的、ということであろうか。

 JR北海道ではこのほか、261系気動車の「はまなす編成」「ラベンダー編成」を定期運行の特急列車に充てたときに、編成の一端にあるラウンジ車が「増1号車」となる。他車とは車内設備がまったく異なるので、いわば「枠外」の扱いだ。

 そのラウンジ車を1号車にすると、「はまなす編成」「ラベンダー編成」が入るときだけ指定席車の号車番号がずれてしまう。それなら、枠外の「増1号車」にする方がスッキリする。

これは「ラベンダー編成」。「はまなす編成」は外部塗装が異なるが、中身は同じ
「はまなす編成」「ラベンダー編成」の一端に連結されているラウンジ車の車内
「はまなす編成」を充当した特急「サロベツ」では、ラウンジ車の号車番号表示が「増1」となっていた

 こういうこともあるので、「編成の案内」を事前に確認しておくに越したことはない。駅のホームに上がってから右往左往することになりかねないからだ。増結や車両の変更がかかる場合、大抵、駅に張り紙や案内表示が出ているものだ。

「オホーツク1号」が増結されて5両編成になっていることを示す、北見駅の発車案内表示。1号車と2号車の間に「増1号車」の存在を確認できる

 かつて、特急「オホーツク」の夜行便では「増21号車」の事例があった。自由席車が2両(1・2号車)、指定席車が2両(4・5号車)、そして両者の境界に寝台車(3号車)を挟んだ5両編成が所定。そして、2・3号車の間に増結した指定席車が「増21号車」というもの。

横須賀線・総武快速線の増1~増4号車

 指定席車ではないので号車番号を意識する必然性は乏しいが、日常的に「増○号車」が走っている事例もある。それが横須賀線と総武快速線で、15両編成のうち、久里浜方の4両が増1~増4号車となっている。

 ここの車両は11両の基本編成と4両の付属編成の組み合わせで、号車番号は久里浜方から順に振る。そして、4両編成は久里浜方に連結する。「それなら4両編成を1~4号車としてもいいのでは」と思うが、そうすると11両編成が5号車から始まることになり、単独で走るときに欠番ができる。

 あくまで基本は11両編成と考えると、それを1号車から始めたい。ところが、4両編成を増結するのは、その1号車の久里浜側。そこでゼロやマイナスの号車番号を振るわけにもいかないので、増1~4号車としたのだろうか。

横須賀線・総武快速線の久里浜方先頭車。号車表示が「増1」となっている様子を確認できる
件の4両については、駅ホームの乗車位置表示も「増○号車」だ

 同じ15両でも、東海道本線、宇都宮線(東北本線)、高崎線は、5両の付属編成が基本編成10号車の側に連結されるので、5両の付属編成を素直に11~15号車としている。