井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

3月延伸の北陸新幹線周遊を割安に? 逆回り・逆方向・別ルートも検討してみる

北陸新幹線は、東海道新幹線と組み合わせて周回ルートを組める

 単純にA地点とB地点を往復する行程であれば、両者を最短の所要時間で結んでいる路線で往復するのが一般的。しかし、鉄道旅行そのものが目的であれば、話は違う。意図的に大回りしたり、周回ルートを組んだりする手もあろう。

 例えば、3月に延伸開業する北陸新幹線。首都圏から見ると、単純に往復するだけでなく、東海道新幹線~北陸本線を交えて周回ルートを組んで訪れる手もある。こちらの方が変化ができておもしろいし、乗車券を割安にできそうだ。

右回り? 左回り?

 では、周回ルートを構成するとして、右回りにするか、左回りにするか。つい、なんとなく「右回りかなー」あるいは「左回りかなー」と考えて、旅程作成を始めてしまわないだろうか。

 冒頭で挙げた北陸新幹線みたいに、列車の運転本数が多い路線であれば、どちら回りでもたいして差は出ない。しかし、運転本数が少ないと話は違ってくる。

 例えば。この3月末で廃止になる、根室本線の富良野~新得間(東鹿越~新得間はバス代行)。3月1日から「青春18きっぷ」が使えることでもあるし、「札幌から普通列車を乗り継いで、この区間を日帰りで、周回ルートを組んで訪れる」との状況を設定してみる。

東鹿越駅。昨年の時点でもかなりにぎわっていたが、最近はますます人が増えているらしい
新得に到着した、東鹿越~新得間の代行バス。「列車代行」の標記を確認できる

 なお、新夕張~新得間だけ特急に乗る行程になるが、そもそも、この区間は特急しか走っていない。新夕張~新得間に限れば、乗車券だけで特急の普通車に乗れる特例がある。

 札幌から富良野に行くには、函館本線で滝川まで行って、そこで根室本線に乗り換えるルートが最短距離。そこで時刻表を開いてみると、接続が成立しないので愕然とする。富良野~東鹿越~新得の乗り継ぎが成立するのは、富良野発7時17分の次が富良野発14時14分。

 前者に間に合わせるには滝川を5時49分に出る必要があるので、札幌発では成り立たない。後者なら寝坊しても間に合うが、新得に16時21分に着いたあとが問題。そこで2時間ぐらいの待ち時間があり、特急で新夕張まで来たところでジ・エンドとなる。上り最終の普通列車は、それより40分近く前に新夕張を出ているからだ。特急ならあるが。

2024年3月15日までのダイヤでは、普通列車だけで済ませようとすると、「右回り」の行程は接続がわるくて成立せず、左回りでなければ日帰りできない

 そこで逆回りを検討してみる。つまり、札幌~(函館本線)~白石~(千歳線)~南千歳~(石勝線)~新得~(根室本線)~東鹿越~(根室本線)~滝川~(函館本線)~札幌という経路。こちらはちゃんと接続して、その日のうちに札幌まで戻れる。札幌発は10時23分と遅いので、そんなに早起きしなくてもいい。

 ただし、札幌に戻るのが23時16分になってしまう上に、肝心の廃止対象区間は日暮れ時となる。さらにこの行程、途中の新夕張で3時間20分の大休止が発生するが、それはまた別の話。

 この「ある方向だとうまく接続が成立するが、逆方向はダメ」が発生するのは、列車の運転本数がきわめて限られる場合。その数少ない列車がつながるかどうかが、成否を分けてしまうのだ。

石勝線のうち南千歳~新夕張間は普通列車の設定もあるが、ことに追分~新夕張間は極端に本数が少ない。廃止が決まっている滝ノ上駅で

 なお、JR北海道は3月16日~31日にかけて、これまで7時台の次は14時台まで空いていた富良野~東鹿越間の下り列車について、11時台に1本を増発する。石勝線のダイヤに大きな変動がなければ、"乗車券のみでの右回り" も成立しそうだ。

逆方向も検討してみる

 似たような話で、「往路は飛行機、帰りは鉄道」「往路は新幹線、帰りは在来線」といった、往路と復路で異なるモードを利用する行程がある。こちらも、組み合わせを逆にして両方の行程を調べてみるようお勧めしたい。どちらを先に持ってくるかで、行程が成立するかどうかが決まったり、現地で過ごす時間に差がついたりするかもしれないからだ。

 筆者は以前に、「東京から新幹線で北上して新函館北斗まで行って、そこから在来線の普通列車を乗り継いで札幌泊まり、翌日に旭川まで。帰りは旭川から新千歳空港まで戻ってきて飛行機」との行程を組んだことがある。

 実はこれ、逆方向で同じことをしようとすると成立しない(2023年3月改正ダイヤによる)。札幌~新函館北斗間を普通列車で移動しようとすると、東室蘭~長万部間の運転本数が極端に少ないために、普通列車だけではその日のうちに移動できないのだ。もちろん特急に乗れば楽勝だが。

長万部で。ここと東室蘭を結ぶ普通列車は、1日に下り4本、上り5本しかない

 それなら函館本線の「山線」区間(長万部~倶知安~小樽)はどうかと思って調べたら、なんと、長万部に到着する上り列車が14時台までなかった。

別ルートも検討してみる

 これはさすがにあんまりな事例だが、ルートを変えると接続がうまくいくこともある。

 例えば、上野から普通列車を乗り継いで北上する場合。過去のダイヤでは、東北本線で仙台まで行って、そこから仙山線~奥羽本線とつないで青森までその日のうちに行けた。ところが2023年3月改正ダイヤで奥羽本線のダイヤが変わり、新庄~秋田間の接続がわるくなった。その結果、大館までしか行けなくなった。

 ところが、東北本線でさらに北上まで北上して、そこから北上線で横手に抜けると、うまい具合につながって青森まで行ける。ときにはこんなこともあるので、見かけの最短区間にとらわれずに、別経路もあたってみると道が開けることがあるかもしれない。