井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

「そこ私の席なんですけど」を回避するには? 座席指定なしで指定席車に乗るときの席選び

東北・北海道新幹線の「はやぶさ」は全車指定だが、盛岡以北については空いている席に座れる特定特急券が発売されている。では、「空いている席」とは?

 JRでも民鉄でも、指定席車が設定されている列車はたくさんある。普通、これは事前に指定席券や指定席特急券などを購入するもの。きっぷを購入した時点で、どの号車のどの席に座るかが決まる。ところが例外もある。

「空いている席にお座りください」

 例えば、東北・北海道新幹線の「はやぶさ」、秋田新幹線の「こまち」、山形新幹線の「つばさ」は、全車指定席である。ところが、「はやぶさ」の盛岡~新函館北斗間、「こまち」の盛岡~秋田間、「つばさ」の福島~新庄間には、特定特急料金の設定がある。

 対象は普通車のみで、「立席、ただし空席があれば着席できる」という条件がついている。つまり、「通常の指定席特急券より割安だが、着席の保証はできませんよ」というわけだ。この辺の事情は、「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」も変わらない。

 似たような話はほかにもある。名鉄の特急は中部国際空港行きの「ミュースカイ」以外、一般車と特別車の併結となっている。そして特別車を利用する際には、特別車両券(ミューチケット)の購入が必要。購入に際して座席指定がなされる。

 その名鉄には「まる乗り1DAYフリーきっぷ」という商品がある。要するに全線フリー乗車券だが、「10~16時に限り特別車フリー」となっている。つまり、この時間帯であれば、一部特別車の特急に乗車したときに、追加料金なしで特別車を利用できる。ただし、乗車に際して特別車両券の発券と座席指定を行なうわけではなく、これもまた「空いている席に着席」方式である。

名鉄の「まる乗り1DAYフリーきっぷ」は、券面に記載されているように、10~16時に限って、追加料金なしで特別車を利用できる
名鉄特急に連結されている特別車の例。これは2200系のもの

 ところが、鉄道は飛行機と違って途中停車駅がいくつもある。着席した時点では空席でも、その先の駅で、その席の指定席券を持っている人が現われて「あのー、そこは私の席なんですが……」となる事態は、当然ながらあり得る。

 もちろん、そうなったら席を譲り、空いている別の席に移動することになる。そういうことになればお互い、多少は気まずい思いがある。それに、「あとで誰か来るんじゃないか」と気にしていたのでは落ち着かないし、席を変えることになれば荷物も動かさなければならない。

 理想は、「今の時点で空いている席は、自分が下車する駅まで空いていること」である。しかし、一般の旅客が指定席の販売状況を知るのは難しいし、いちいちネット予約サービスで空席状況を調べるのもめんどうな話。

 そこで、「空いていそうな席を選ぶにはどうすればいいか」という話が、本稿の本題となる。JR東日本の在来線特急みたいに、空席かどうかが分かる表示灯が付いていれば話は簡単なのだが。

JR東日本の在来線特急では、席ごとに、空席なのか売れているのかを示す表示灯を付けている場合がある。これは常磐線の「ひたち」「ときわ」で使われているE657系のもの

埋まりやすい席はどんな席か

 それには、「どんな席だと埋まりやすいか」を知ることが早道であろう。その裏返しで、不人気な席、あるいは発売が後回しにされる席であれば、空いている可能性が高いからだ。

 最近は、シートマップ表示を用いて好みの席を取れる場面が増えているが、その話はひとまずおいておき、JRグループの「マルス」みたいな指定席管理・販売システムがどのように空席を割り当てていくかをみてみる。

「マルス」における基本的な考え方は、「客室前後端とその近くの席は後回し」「窓側席が優先」である。この原則と、指定席の申込をかけたときの人数によって、空席をどのように割り当てていくかが決まる。

 例えば、1名なら窓側席が優先されるし、2名なら並んで座るように割り当てる。4名なら2名並びの2列連続であろう。新幹線の普通車だと3人掛けの席があるから、3人ならそれが優先されよう。

 そして「客室前後端とその近くの席は後回し」だから、前端の何列かは後回しにして、その後ろの列から発売を開始。そして客室の後端まで埋まったら、最後に前端に残っていた空席を割り当てる、といった按配になる。なぜ前後端に近い席の優先度が下がるかというと、出入台やトイレ・洗面所に近く、人が出入りする度にざわつく傾向があるからだ。それに、一般論として、車両の前後寄りと比べて中央付近の方が、揺れが少ない傾向がある。

 ただし、前後端の1列ずつについて電源コンセントと大型テーブルを設置している車両が増えているので、そうした車両では逆に、最前列の人気が上がる可能性がある。筆者自身、3人連れで新幹線を利用したときに「全員が電源コンセントを欲しいから」といって、わざと最前列の3人掛けをリクエストしたことがある。

1つの車両のなかでは発売順が後の方に来る最前列席だが、電源コンセント付きであれば、むしろ人気が上がる可能性がある。写真は北海道新幹線・H5系のもの

 ともあれ全般的な傾向として、車両の中央付近にある窓側席は、もっとも売れている可能性が高い。ただし、一般的に好まれやすいのは窓側席だが、出入りがしやすい通路側席を好む人もいる。トイレに立つのに、いちいち隣席の人に声をかけるのはなんかなぁ、といった理由が大きいだろうか。

 こうした事情があるから、新幹線の3人掛けでは当然ながら、窓側A席と通路側C席に挟まれたB席がもっとも不人気となる。よって、B席が最後まで残るのがお約束。「B席しかとれなかった」は「ほぼ満タンに近い」と同義である。

この原稿を仕上げている最中に、スマートEXで直近の「のぞみ」について空席照会をかけてみた結果。B席ばかりが見事に残っている様子が見て取れる

 ここまでは販売システム側のロジックに関する話だが、このロジックは利用者の好みも考慮したうえで定められたもの。だから、シートマップ表示を用いて自由に席を選択する場合でも、似たような傾向が出てくるのではないだろうか。新幹線に乗るのに、わざわざ好き好んでB席をとる人がいるという話は、あまり聞かない。

不人気席なら空いている可能性が上がるかも?

 つまり、空いている席を見つけて着席する際に、「車端列の通路側」や「3人掛けのB席」を選べば、空いている可能性が高く、移動を求められずに座っていられる可能性が高いということになる。

 もちろん、これはそのとき、そのときの状況次第なので、「必ず空いている」という保証はできない。あくまで、相対的な比較の問題である。しかし、試してみる意味はあるのではないだろうか。

 なお、1両に数名程度しか乗っていないガラ空きの列車であれば、あれこれ考えずとも、好きなように座って問題ない可能性が高くなるだろう。