井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
18きっぷの時期、ボトルネック区間は早め到着で
2023年7月19日 06:00
以前に「旅程立案の際には、列車の運転本数が少ないボトルネック区間を最優先にして、そこから前後に延ばす」という話を書いた。そもそも、利用が少ない区間だからこそ、運転本数が少なく、編成長が短くなる。そこに多数の利用者が集中すると、立ちん坊になりかねない。
2両編成が大混雑
特に問題になりやすいのが、18きっぷのシーズン。
もう10年以上も前の話になるが、早朝に東京を発って、高崎線・上越線・信越本線経由で、新潟まで普通列車を乗り継いだことがある。当時のデータを見ると、高崎まではE231系の10両編成、高崎~水上間は115系の3両編成。そして水上~長岡間は115系の2両編成であった。
その、水上~長岡間の2両編成が大混雑になってしまった。その多くは「同類」であったろう。運転本数が少なければ、乗り継ぎパターンは限られるから、皆が同じような行程をとることになってしまう。よって、乗り継いだ先の列車で次々に同じ顔ぶれの乗客を見かけるのは「18きっぱーのあるある」である。
ただしこのとき、筆者は余裕を持って席の確保に成功していた。その理由は、水上でちょうど接続のよい列車を選ばずに、それより1本前の列車で先行していたから。
このときの行程表を確認してみた。高崎発10時30分、水上着11時35分の731Mに乗ると、水上発11時41分の8737Mにドンピシャで接続する。すると誰もが同じことを考えるから、731Mが到着すると、多数の乗客が跨線橋に集まり、8737Mが待機しているホームになだれ込んできた(冒頭の写真)。
ところが筆者は1本前、高崎発9時21分、水上着10時22分の729Mで先行していたので余裕綽綽だった。ただしその代わり、水上駅でボケッと1時間ばかり過ごすことになったが。
早起きは3文の得?
つまり、1時間ばかり早起きして早く出発したおかげで、水上~長岡間で立ちん坊になる事態を回避できたことになる。実際、このときの8737M~1737Mは、長岡まで立客がビッシリの満員状態が続いていた。まさに「早起きは3文の得」といえよう。
しかし、2両編成で走らせていたJRに文句をいうのもムリがある話。平素はおそらく、2両編成でもガラガラなのだ。なお、2018年8月に同じ区間に乗ったときには、E129系の4両編成に増強されていたことを書き添えておく。それでも立客は出たが。
極端に運転本数が少なく、かつ編成両数が少ない閑散区間を行程に組み入れる場合、同じ課題に直面する可能性がある区間はほかにもある。例えば、奥羽本線の福島~米沢間。ここでも、早起きして1本前の電車で福島入りして、余裕を持って空席を確保したことがある。
この区間は、2年前の2021年9月初頭にも普通列車で利用した。このときには特に繰り上げは行なわず、福島着12時24分、福島発12時38分の乗り継ぎで空席を確保できた。もっとも、新型コロナウイルスの影響で出控えている人が多かっただろうから、これはあまり参考にならない。
え? 1本繰り上げて先着する方法を吹聴されると、皆が同じことをするようになって意味がなくなる? いやあの、そう言われても。
想定外に混むこともある
なお、こうした方法を考えたくなるのは、主として、大都市圏を起点にしてお出掛けする場合だ。例えば、北海道のローカル線で普通列車に乗るような場面では、そんなことをしなくても空いていることが多い。そういう状況だから、JR北海道の経営は大変なのだが。
それに、大都市圏から遠く離れたローカル線は列車の運転本数が少ないから、1本繰り上げた途端に何時間もの待ち時間が発生したり、そもそも繰り上げると旅程が成り立たなかったりする。素直に接続のよいパターンでつなぐ方が無難だろう。
とはいえ、これもときどき見込みが狂うことがある。有名なローカル線では、ツアー客の集団が乗り込んできて、空席をワーッと占拠してしまうことがあるからだ。また、函館本線のいわゆる「山線」(長万部~小樽)や留萌本線など、廃止の話が伝えられた途端に乗る人が増えた、なんていう事例もある。
今後、根室本線の富良野~東鹿越~新得間あたり、こうした事態に見舞われる可能性が高いのではないか。ちなみにこの区間は「一日散歩きっぷ」のエリア内なので、18きっぷの時期でなくても訪問しやすいし、実は札幌から日帰りもできる。