荒木麻美のパリ生活

パリから日帰り旅、バラの季節を迎えた中世の町プロヴァンに

バラ園に行く途中にあるガルニエ庭園は、季節ごとの花が咲き、手入れの行き届いた美しい公園です。パリで財を成したヴィクトル・ガルニエの邸宅でした

 5月末、中世の町並みの残るプロヴァンに日帰りで行ってきました。シャンパーニュ伯の保護を受け、プロヴァンが最も栄えたのは12世紀から13世紀にかけてのこと。フランス北東部、シャンパーニュ平原で開かれた大規模な交易市「シャンパーニュの大市」が開かれていました。プロヴァンはフランスで最も保存状態のよい中世の都市として、2001年にユネスコの世界遺産に登録されています。

 プロヴァン駅までは、パリ東駅からパリ郊外に行く電車に乗って約1時間30分です。これまでパリの公共交通機関の料金体系は、パリ市内を中心として郊外に向けて5ゾーンに分け、ゾーンが遠くなるにつれて料金が高くなっていくゾーン制でした。それが今年から空港行きを除き、ゾーン内であればどこでも同一料金に。電車は2時間以内で2.5ユーロ、バスとトラムは1時間以内で2ユーロとなりました。これにより、プロヴァンはゾーン5ですが片道2.5ユーロとなり、さらに行きやすくなりました。

 プロヴァン駅に着いて、まずはバラ園に行きました。プロヴァンはバラの町としても有名です。13世紀にシャンパーニュ伯ティボー4世が十字軍の遠征から戻るときに、ダマスカスのバラをプロヴァンへ持ち帰ったことが始まりです。それ以来、プロヴァンではバラの栽培が盛んになり、バラを使った食品やコスメが名産品となっています。

 バラ園は3.5ヘクタールの敷地に300種類以上、1500本のバラが植えられています。いろいろなバラの香りに包まれて、癒しのひと時を過ごしました。バラ園ではバラの苗木を買うこともできますし、バラに関連したお土産を売っているブティックと、ティーサロンもあります。

プロヴァンのバラ園

 お昼を食べるため、予約を入れていたレストラン「Les Bistrophiles」(44 Rue du Val, 77160 Provins)に。出てきた料理はシンプルながら、お店できちんと作られていることが分かるもので満足。人気店なので、予約を入れずに来た人たちは全員断られていました!

レストラン「Les Bistrophiles」

 お腹がいっぱいになったところで、中世の騎士伝説のショーを見に野外劇場に。内容は、シャンパーニュ伯ティボー4世と仲間たちが、力を合わせて悪の勢力と戦うという分かりやすいストーリーなので、フランス語が分からなくても楽しめます。子供向けではありますが、馬を使ってのアクションは本格的。当時の生活の様子も少し分かりました。

中世の騎士伝説のショー

 中世の時代劇の近くでは猛禽類のショーもあります。中世時代の衣装を身にまとった猛禽使いたちが、ワシ、ハヤブサ、ハゲワシなどについての紹介をするそうで、時間があればこちらも見たかったです。

 中世の騎士伝説のショーが終わり、城壁に向かいます。城壁を外から、そして城壁に上って上からも見ました。もともとの城壁は高さ25m、長さ5kmほどでしたが、今は1.2kmが残っています。かつての姿をそのままに修復されており、迫力満点。

プロヴァンの城壁

 12世紀に建てられ、監視塔や牢獄、鐘楼などさまざまな役割を担っていたゼザールの塔、革命による破壊を逃れたノートルダム・ドゥ・ヴァル教会と修道院の塔、シャンパーニュの大市が開かれたサン・タユール教会なども見て、バラを愛でるとともに、栄華をきわめていたころのプロヴァンに思いをはせつつプロヴァン一日観光を楽しみました。

セザールの塔
ノートルダム・ドゥ・ヴァルの塔
サン・タユール教会。教会の前でシャンパーニュの大市が初めて開かれました

 6月にはプロヴァンの中世祭がありました。2024年は2日間で10万5000人の来場があり、そのうちの3000人は中世の衣装を着ていたそうです(入場料が割引になります)。今年も大変な盛り上がりと人混みだったと思いますが、馬上槍試合、中世の舞踏会、大規模な中世のコンサート、中世の人々に扮した700人によるパレードと、今年も中世にタイムスリップした気分になれたことでしょう!

プロヴァンの古い町並み
パリのメトロ内に張られていた、今年で40回目を迎えるプロヴァンの中世祭のポスター
荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/