荒木麻美のパリ生活

無料のウォーキングツアーで墓地と大規模再開発中の郊外へ。「パリ市民カード」でパリ北東部を訪ねる

パリ市民カードを使ってお墓や大規模開発地域を見てまわりました

「パリ市民カード(Paris Carte Citoyenne)」という、パリ市が発行するカードがあります。パリ市内に在住または働いている人が対象。このカードを持つ人は、パリ市が開催するガイドツアー、コンサート、討論会など、各種イベントに参加でき、私もこれまでにいくつか参加しています。

 今回は私が参加したイベントの中から、パリ18区、19区、そしてその周辺エリアに関するものをご紹介します!

Paris Carte Citoyenne

Webサイト: Paris Carte Citoyenne(仏語)

Webサイトから登録をすると、後日カードが届きます

パリ18区にあるモンマルトル墓地で著名人の墓を訪ねる

 まずは「モンマルトル墓地を訪ねる」ツアーです。パリ市が管理している墓地は20か所ありますが、規模が大きく多くの有名人が埋葬されているのは以下の4か所です。

・モンパルナス墓地(14区)
・バティニョル墓地(17区)
・モンマルトル墓地(18区)
・ペール=ラシェーズ墓地(20区)

 パリ市民カードツアーでは、この4か所の墓地を歩くツアーを定期的に開催しているのですが、毎回大人気。すぐに定員に達してしまいます。

 それでも無事に登録できた「モンマルトル墓地を訪ねるツアー」、指定された日時に墓地の入り口付近に集合し、ガイドさんお勧めの著名人の墓を訪ねていきます。

モンマルトル墓地

所在地: 20 Avenue Rachel, 75018 Paris

墓地の入り口
モンマルトル墓地は高架橋の下にあります
入り口を入ってすぐに著名人の眠る墓の園内マップが。持ち出し自由の園内マップカードがあったのですが、新型コロナウイルスによる外出禁止措置解除以降は、スマホでマップをダウンロードすることになっています
【アレクサンドル・デュマ・フィス】フランスの小説家・劇作家であるアレクサンドル・デュマの息子。高級娼婦との思い出を小説にした『椿姫』が代表作
【マリー・デュプレシ】『椿姫』のヒロインのモデルとなった女性
【アン・フランソワ・デ・モントモーレンシー・ルクセンブルク】マリー・アントワネットの元女官
【ダリダ】フランスの国民的スターであった美貌の歌姫ダリダ。1987年、54歳で自ら命を絶ちました。アラン・ドロンとデュエットした大ヒット曲「あまい囁き」など、日本ではダリダを知らなくても「この歌は知っている!」という人も多いはず
【ギ・ピチャル】多くの有名人を担当した精神分析医。ダリダを担当したことで特に有名。彼の墓は見る角度によって表情が変わります
【ダニエル・イフ・オシリス】銀行家として財を成し、19世紀にフランスで一番献金をしました。彼の死後、遺産はすべてパスツール研究所に寄付されました
【エミール・ゾラ】フランスの自然主義の小説家。代表作としては『テレーズ=ラカン』『居酒屋』『ナナ』など
【コリッチ家】モンマルトル墓地で一番大きな建造物。中はミニチャペルです
【フランソワ・トリュフォー】フランスの映画監督、映画評論家。代表作に「大人は判ってくれない」「アメリカの夜」など。ヌーヴェルヴァーグを代表する監督の一人
【ゴンクール兄弟】フランスの兄弟作家。兄弟の遺産を基金とするアカデミー・ゴンクールが 1902年設立され、フランス最高の文学賞・ゴンクール賞を授与しています
【エクトル・ベルリオーズ】フランスのロマン派の作曲家。代表的な作品として「幻想交響曲」や「ファウストの劫罰」など
【アンリ=ジョルジュ・クルーゾー】「恐怖の報酬」「悪魔のような女」といった、「フィルム・ノワール」の監督として有名
【ジャンヌ・モロー】フランスの大女優。生涯で130本以上の作品に出演し、「死刑台のエレベーター」「突然炎のごとく」など、代表作は数えきれません。2017年老衰により死去
【フランス・ギャルとミシェル・ベルジェ】このガラス張りの墓を選んだのは歌手のフランス・ギャル。2018年に亡くなったフランス・ギャルは、先に亡くなったパートナーであるシンガーソングライターのミシェル・ベルジェと、彼らの娘ポーリーヌとともにここに眠っています
【ニコラ・ニジンスキー】ロシアのバレエダンサー・振付師。高い跳躍力と中性的な動きで観客を魅了するも、20代で統合失調症を発症。精神病院を転々としたのち、1950年に死去
【ペパ・ボナフェ】フランス映画初期の女優の一人
植木鉢置き場のようになっているお墓も!

開発が進んで変貌中のパリ北東部

 お墓の次は「開発が進むパリ北東部ツアー」に参加です。集合はメトロ12番線マルクス・ドルモワ駅周辺でした。

 まずは以前ご紹介したアル・パジョル(Halle Pajol)に向かいます(関連記事「パリのお気に入り図書館」)。アル・パジョルはフランス国鉄SNCFの敷地だったところを再開発し、2013年にオープンしました。屋根には、約3500m 2 の太陽光パネルを設置するなど、Halle Pajol全体が環境に配慮した作りとなっています。同じ建物内には図書館、ユースホテルやカフェ、コンセプトショップなども入っています。

Halle Pajol

所在地: 20 Esplanade Nathalie Sarraute, 75018 Paris

Halle Pajol

 アル・パジョルのあとにはこれも以前ご紹介した104(サン・キャトル)の前を通ります(関連記事「パリのリサイクルショップを活用しよう」)。もとは葬儀場だったのですが、大規模な改造計画を経て、2008年に多目的文化センターとしてオープンしました。広い建物の中では特別展、演劇・ダンス公演などが常時行なわれているほか、ブティック、カフェなどもあって、年齢を問わず楽しめる場所です。

104

所在地: 104 rue d'Aubervilliers / 5 rue Curial, 75019 Paris
Webサイト: 104(英語)

104

 104の前を通って、パリ高速鉄道RERのE線ローザ・パークス駅に向かいます。アメリカの公民権運動に大きな役割を果たした女性、ローザ・パークスの名を冠したこの駅は、2015年に新設されました。駅前には、パリの中心部にはない新築のアパートが並んでいるのが新鮮。トラムも通っています。

ローザ・パークス駅
駅周辺は現在もあちらこちらでビル建設中

 駅から少し歩くとリニエの森(Foret Linéaire)に到着です。2019年に整備されたばかりなので、まだ「森」という感じはあまりしませんが、遊歩道を気持ちよく歩いていきます。

リニエの森

 ウルク運河にたどりつきました。この辺には今回初めて来たのですが、大型ショッピングセンターがあるのを知りませんでした! ショッピングセンター前には7番線コランタン・キャリウー駅までの無料水上バスがあり、アクセスもよさそうです。

ウルク運河
Le Millenium

所在地: Rue Paul Bert, 93300 Aubervilliers
Webサイト: Le Millenium(仏語)

大型ショッピングセンター
無料水上バス

 ショッピングセンター前を通り過ぎて、旧倉庫街や2017年にオープンした「郊外農場」前を通り12番線フロン・ポピュレールに到着です。ここで今回のツアーは終了でした。

旧倉庫街
Farmhouse Aubervilliers

所在地: 210 Avenue des Magasins Généraux, 93300 Aubervilliers
Webサイト: Farmhouse Aubervilliers(仏語)

郊外農場
フロン・ポピュレール駅周辺も新しい建物が建ち並んでいます

 今回のツアー中、途中のショッピングセンター辺りから解散したメトロの駅辺りはパリではなく、オーベルヴィリエ(Aubervilliers)という町になります。この辺は大規模再開発が進んでいるエリアの一つなので、新しい建物が多いのですね。シャネルの施設も建設中でした。

地上5階、地下2階、総面積2万5500m2となるシャネルの施設が建設中でした
後日、近くまで行ってみるとこんな感じに工事が進んでいました

 私は2003年にフランスに引っ越してきて以来ずっとパリ市内に住んでいますが、家の近く以外は知らないところばかりです。こうしてパリ市内外の知らないエリアを巡るのは新鮮ですし、墓地も残りの3か所を制覇したいので、またツアーに参加したいと思っています!

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/