荒木麻美のパリ生活

ブルターニュ地方の海辺の町サン=ブリューへ(前編)

豊かな食材に美しい浜辺、アール・デコ建築の教会も

海辺の町サン=ブリューへ行ってきました

 私の夫はフランスの映画業界で働いています。新型コロナウイルスのため、予定されていたすべてのプロジェクトが中止か延期になっていましたが、5月に外出禁止が解除されてからは、今のところはまた忙しくしています。

 そして今回はブルターニュ地方にあるサン=ブリューというところで撮影があったので、ここに8月中旬から3週間滞在しました。

サン=ブリュー駅

 サン=ブリューはフランス西部に位置し、ブルターニュ地方のコート=ダルモール県の県都です。今回はサン=ブリューの中心地にある民泊アパートを借りました。

アパート敷地内には小さな中庭もありました

 アパートの周辺には商店街と小さなショッピングセンターもあり、古い町並みと便利さがほどよく共存しています。

近代的な観光案内所

 町中を散策していたら、無料で解放しているサン=ブリュー芸術歴史博物館があったのでふらっと入ると、小さいながらも端的にサン=ブリューの歴史を見ることができました。地名はブルターニュを作ったとされるキリスト教7聖人の1人、聖ブリューから来ているんですね。

サン=ブリュー芸術歴史博物館(Musée d'art et d'histoire de Saint-Brieuc)

所在地: 2 Rue des Lycéens Martyrs, 22000 Saint-Brieuc
Webサイト: Musée d'art et d'histoire de Saint-Brieuc(仏語)

 8月25日には「ブルターニュ・クラシック・ウエスト=フランス」という自転車プロロードレースの1つが開催されていました。ブルターニュ地方には自転車ファンが多いそうですが、平日にもかかわらず、沿道には結構な人が来ていました。私は散歩中に偶然遭遇したのですが、こんなに早く選手たちが走り去ってしまうとは! 今年の優勝者はオーストラリアの選手だったようです。

 町の中心とその周辺を歩いていて思ったのは、教会がとにかく多いことです。

サンテティエンヌ大聖堂。聖ブリューの聖遺物が収められているそうです
サン=ミッシェル教会では無料のオルガンコンサートを開催していました

 どの教会もそれぞれに特徴があって興味深いのですが、観光案内所で勧められた「サン=イヴの家」の無料ガイドツアーに参加しました。町の中心からは2kmくらいのところにあります。

サン=イヴの家(Maison Saint-Yves)

所在地: 81 Rue Mathurin Méheut, 22000 Saint-Brieuc

 サン=イヴの家は神学校として1927年に建てられました。約40年間神学校として使われたのち、全面的な改修を経て、2017年からサン=イヴの家となりました。礼拝堂と地下聖堂のほか、図書館、セミナールーム、展示会場などが一般に解放されています。さまざまな困難を抱えながら子供を育てている女性が、最長1年間ではありますが安心して暮らせるスペースもあります。

 アール・デコ建築の礼拝堂と地下聖堂は必見。タイル好きの私はあちらこちらにある美しいモザイクタイルにうっとりでした。

礼拝堂
鉄の柵や手すりにはネジや釘を使っていません
地下聖堂

 図書館には16世紀から18世紀までの貴重な古書も大量にありました。一番古い本は15世紀のものだとか。図書館員にお願いすれば、これらの本も見せてくれます。

これはラテン語で書かれた本

 町の中心地のすぐ横には海まで続くグエディック川(Le Gouédic)が流れており、この川沿いがとても気持ちのよい散歩コースとなっています。グエディック川から船の停泊所となっているル・レゲ(Le Légué)まで歩いてみました。川のせせらぎを聞きながらうっそうと茂った木々の中を歩いていると、ヤギが黙々と草を食む姿も見られます。

 シャオ・デュ・グエ(Chaos du Gouët)はサン=ブリュー一番の人気スポットです。サン=ブリューの西を流れるグエ川周辺を約2時間ののんびりと歩きました。

 サン=ブリューは海に面しているのであちこちに浜辺があるのですが、徒歩で行くにはどこもちょっと遠いです。でもサン=ブリューのバス路線は充実しているので、場所によっては本数が少ないことを除けば、クルマがなくてもどこでも気軽に行けます。

サン=ブリュー内とその周辺の路線図(Tubのサイトより
これは10回分のチケット。私は観光案内所で買いましたが、一部のチケットはスマホアプリ上でも買えます。サン=ブリューを出る場合は料金が変わる場合があるので、事前に確認をしてください

 サン=ブリューの中心地から一番近い浜辺はヴァレ浜辺(Plage du Valais)です。私が行ったときは午前中の干潮のときだったので、波は見えないほど遠く、誰もいませんでしたが、1人静かに散歩をしました。

 この辺では一番広い浜辺がロゼール浜辺(Plage des Rosaires)。サン=ブリューの隣にあるプレラン(Plérin)にある浜辺です。

2kmにわたって続く砂浜。8月でも20度行くか行かないかの肌寒い気温だったのですが、日光浴中の全裸の人がちょいちょいいるので撮影中ドキドキでした(笑)
砂浜周辺にはかわいらしい家が建ち並んでいます。ブルターニュ地方ではアジサイの花をよく見かけます
砂浜近くには小さな教会が。この日は絵の展示会をしていました

 プレランの先にあるポルディック(Pordic)にあるプチ・アーヴル浜辺(Plage du Petit Havre)にも行きました。ここは日陰がたくさんあるので、長居するのによさそう。

潮干狩りをしている人がたくさんいました

 ブルターニュは食材の宝庫です。海の幸はもちろん、乳製品や野菜も本当に美味しくて、市場に行くたびにワクワクしていました。町の中心地で開かれる市場にはオーガニックのスタンドも多く、外れがない!

 特に気に入ってよく行っていたスタンドがあるのですが、そこのお兄さんが私のアクセントから「あなた日本人でしょ?」と話しかけてきたのをきっかけに、彼が合気道をやっていること、先生が日本人であることなどを教えてくれ、自分で作っているのに食べ方がよく分からない(!)というニガウリの食べ方を教えてあげたりしました。

 このスタンドで扱う野菜はちょっと変わっているものが多いからか、ほかのスタンドより買い物客が若干少ない印象ですが、とにかく美味しい野菜たちなので、機会があればぜひ行ってくださいね! スタンドはJardin de la Perrièreという名前で、水曜日と土曜日に開かれる市場に来ています。

 クイニーアマンは有塩バターをたっぷり使ったブルターニュ名物のお菓子の1つです。外はサクサク、中はブリオッシュのような感じでバターの味が口いっぱいに広がります。

写真右がクイニーアマン

 借りていたアパートの大家さんが勧めてくれた、魚料理が美味しいというレストランにも行きました。夫婦で経営していると思うのですが、古い映画が好きなのか、店内は名作映画のポスターや写真でいっぱいです。夫婦そろって少々ぶっきらぼうな対応なので、最初は「ん?」と思いましたが、大家さんが勧めてくれたレストランだし、とめげずに話かけていたら、だんだんと根はよい人なんだわと感じることができ、気分よくおいしい魚料理を堪能しました。

Bistrot du Port

所在地: 15 Rue des 3 Frères le Goff, 22000 Saint-Brieuc
Webサイト: Bistrot du Port(仏語)

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/