荒木麻美のパリ生活
2019年の欧州旅行先ランキングで1位に。ドナウの真珠・ハンガリーの首都ブダペストへの旅(前編)
2020年1月18日 09:00
「ドナウの真珠」などと形容されるハンガリーの首都ブダペストは、世界でも有数の美しい街。ヨーロピアン・ベスト・デスティネーションズ(EBD)では、2019年の欧州の旅行先ランキングで1位となりました。
そんなブダペストで、ラ・シオタでの撮影(関連記事「世界で最も美しい湾や、石灰岩の断崖絶壁が続く海岸線・カランク国立公園も。フランス南東の街『ラ・シオタ』訪問記(前編)」)に続き、同じ映画の撮影が続行されたので、私も夫について行ってきました!
まずはフリー・ウォーキング・ツアーで主要観光スポット巡り
ブダペストに滞在したのは2週間強。宿泊したのはバガボンド・コービン(Vagabond Corvin)というアパートホテルです。2人には十分な広さで、生活に必要なものはほぼそろっていました。近所には大きなショッピングセンターもあって便利です。
Vagabond Corvin
所在地: Budapest, Práter u. 6-8, 1083
TEL: +36 1 616 4497
Webサイト: Vagabond Corvin(英語)
ホテルに荷物を置き、まず参加したのはフリー・ブダペスト・ウォーキング・ツアー。開催は毎日で、午前と午後にあり、事前申し込みなしで待ち合わせ場所に行けばOKです。参加費は無料ですが、最後にガイドさんにチップを渡します。
私は午後のツアーに参加しましたが、日暮れの早いこの季節。すてきな夜景を見られたので、午後にして大正解でした!
待ち合わせは大きな観覧車がシンボルとなっているエルジェーベト広場(Erzsébet tér)。ガイドをしてくれたのはガイド歴4年というハンガリー女性でした。とても気さくな人で、「2年前には日本に行ったのよ。日本人は親切だし、最高だったわ!」と話しかけてくれました。ただ、「このツアーは英語なので、日本人の参加者は滅多にいなくて残念ね」とのこと。
彼女についてまわったのはエルジェーベト広場をスタートに、周辺にある聖イシュトヴァーン大聖堂(Szent István-bazilika)、セーチェーニ鎖橋(Széchenyi Lánchíd、西岸のブダ地区と東岸のペスト地区を結ぶ吊り橋)、ブダ城(Budavári Palota)、漁夫の砦(Halászbástya)、マーチャーシュ教会(Mátyás-templom)といったブダペストの主要観光スポット。ブダペストの歴史などを聞きながら、徒歩で約2時間半かけてまわります。
ガイドさんの話で一番印象的だったのは、聖イシュトヴァーン大聖堂の前を通ったとき。教会を挟んで歴史的建造物と共産党時代の建物が向かいあっているのですが、ガイドさんは「この共産党時代の建物は醜くて本当に嫌になるの!」とかなり嫌そうな顔で話していました。
聖イシュトヴァーン大聖堂は前を通っただけだったので、あとで再訪して中に入りました。荘厳という言葉がぴったりの場所。聖イシュトヴァーン(ハンガリー王国の初代国王)の右手のミイラが入っているという黄金の聖遺物もあります。代わる代わる人々がのぞきこんでおり、私もじっくり見てみたのですが、中はよく見えませんでした。
漁夫の砦に着いたときにはすっかり日が暮れて、ライトアップが本当に美しかったです。日中に再訪しましたが、この付近は夜に行くのが断然お勧めです。
漁夫の砦の先にあるマーチャーシュ教会でフリーツアーは終わったのですが、解散時にガイドさんが「この先にルスヴルム(Ruszwurm)という古いカフェがあって、そこのケーキは絶品よ!」というので寄ってみることに。でも有名店なので、長蛇の列。座って食べられそうにないので、テイクアウトをしました。
Ruszwurm Confectionery
所在地: Budapest, Szentháromság u. 7, 1014
Webサイト: Ruszwurm Confectionery(英語)
ホテルに帰ってゆっくりと味わいましたが、見た目よりも軽いです。素朴なケーキで、ほっとする、懐かしい気持ちになる美味しいケーキでした。
このほか、フリーツアー中に遠くから見ただけの国会議事堂(Országház)も後日再訪しました。宮殿のような建物ですが、ハンガリーの政治の中心地なのです。警備兵があちらこちらにおり、銃を持った警備兵が旗のポールのまわりをグルグルまわっていました。
日程に合わせて選べるパスはとにかく便利でお得
ブダペストの公共交通機関は充実していてとても便利です。ブダペストに着いた翌日にパスを買いに行きました。
私が買ったのは、ブダペストのほとんどの公共交通機関が乗り放題の2週間パス。24時間、72時間、1週間、1か月などもあります。販売窓口または自動券売機で買えます。扱っているチケットの一覧はBKKブダペスト交通センターのWebサイトで確認してくださいね。
乗り放題パスは滞在中に使いまくったので、買って大正解でした。平日はボートにも乗れるので、ドナウ川からもブダペストを眺めました。一方の夫は週末にちょっと移動するだけだったので、10回つづりの回数券を買いました。でもこれは乗り換えをするたびに1枚使わないといけないので、思ったよりも早くなくなっていました。
公共交通機関といえば、観光センターでもらったパンフレットには2番、19番、56番線のトラムが観光にお勧めとあったのですが、私が一番気に入ったのは2番線。ドナウ川に沿って走るので、ドナウ川越しにブダ城やセーチェーニ鎖橋などがよく見えます。
この車内で日本語が聞えてきたので思わず振り向くと、日本人のご夫婦でした。少しお話をさせてもらったのですが、老後をブダベストで過ごしたいので、今回も含めて何度も長期で滞在しているとか。治安がよく物価が安くて住みやすいので気に入ったそうです。準備が整って早く移住できるといいですね!
日常生活の中に垣間見えるユダヤ人虐殺の歴史
今回なぜブダペストでの撮影かというと、一番の理由は、ナチスによる強制収容所のセットがあるということと、物価が安いからですね。以前、セルビアに滞在したのも、ロシアに似た雰囲気があるということと、やはり物価が安いためでした(関連記事「セルビアの首都・ベオグラードで過ごした2週間(その1~観光編)」)。
ハンガリー系ユダヤ人約60万人がホロコーストの犠牲となったそうですが、ブダベスト市内にはホロコースト・メモリアル・センターや、ハンガリー人のファシスト政党によってドナウ川の堤防で射殺された人々を慰霊するためのモニュメント「ドナウ川遊歩道の靴」などがあります。
ブダペストには今もユダヤ系の人々が多く暮らしており、ヨーロッパ最大のシナゴーグもあります。
話は戻り、確かにブダペストの物価は全般的に安かったです。ただし、オーガニック商品については話が別。私が普段住んでいるパリと同じか高いくらいです。オーガニック専門店はあちらこちらにあるのですが、商品の内容が物足りないうえに生鮮食品がほとんどない!
パリも私が初めて渡仏した15年くらい前は、ブダベストと同じような状況でした。ブダペストもこれからオーガニック市場が拡大していく感じでしたが、それに伴い、商品もさらに充実し価格も下がっていくのかもしれませんね。
dmというドラッグストアはドイツが本社のようですが、ブダペストのあちこちに店舗があります。自社ブランドのオーガニック商品が充実しており、値段もお手ごろ。
というわけで、パリから持ってきたもので間に合わないぶんをドラッグストアのdmで買い足し、生鮮食品は市場などで買っていました。中央市場(Nagy Vásárcsarnok)にも行ってみましたが、ここはフードコートもあるのがいいですね!
市民の憩いの場・ブダペストにあるヤーノシュ山をハイキング
滞在中はお天気のわるい日が多かったブダペストですが、晴天の日にハイキングに行きました。目指したのは、標高500mちょっとのヤーノシュ山(János-hegy)。トラムとバスを乗り継いで、最後はリフトで一気に上がります。リフトを下りて少し上がると、エルジェーベト展望台(Erzsébet kílátó)に到着です。展望台からはブダペスト市内を一望できます。
ヤーノシュ山からさらに遊歩道を歩くとノルマファ(Normafa)に到着です。ここは市民の憩いの場なのか、老若男女を問わずいろいろな人が思い思いに楽しんでいました。
歩き足りないのでさらにセーチェーニ山(Széchenyi-hegy)まで行き、ブダペスト市内に戻ってきました。ノルマファより先に行く場合は、平たんながらもぬかるんだ道が多かったので、歩きやすい靴やトレッキングシューズがいいですね。
セーチェーニ山に行く途中にはブダペスト子供鉄道にも遭遇しました。なぜ子供鉄道という名前かというと、運転以外をほぼすべて10歳から14歳の子供たちが行なっているからですね。
ブダペストでも盛んな弓道に参加
私はパリで弓道をしているのですが(関連記事「パリで弓道! 公共の弓道場も完成してますます盛んに」)、ブダベストにも弓道クラブがあります。今回の滞在中、何度かお邪魔しました。
ブダペストのクラブは若い人が多く、とても真面目ながら和気あいあいとやっている様子でした。道具の面など、いろいろ工夫をしながら日々研鑽をしているのだなと、私もまたがんばろう! と思えるよい経験となりました。