旅レポ

新勝寺、うなぎ、うなりくん――空港だけじゃない成田市の見どころを巡る

成田山新勝寺

 日本の玄関口、成田国際空港を抱える千葉県成田市。日本有数の参拝客を誇る成田山新勝寺もあり、空港だけでなく観光都市としても魅力をアピールしていこうとしている。そんな成田市が主催したプレスツアーに参加。成田空港が現在力を入れる格安航空会社(LCC)3キャリアのCA(客室乗務員)も同行し、成田市内のお勧めスポットを紹介してもらった。

 成田市は千葉県の北部にあり、成田国際空港によって世界からの日本の玄関口となっている。東京都の羽田国際空港の機能拡張も進められているため、空港としての競争も激化しており、LCCの強化に加えて、市として観光をアピールすることで、単に空港から都内へ「通過」するだけでなく、「滞在」しての観光需要も掘り起こしたい考えだ。

 プレスツアーのバスがまず向かったのは成田山新勝寺。全国でも明治神宮に次ぐ初詣の参拝客数を誇り、年間1000万人が訪れる。弘法大師が開眼したという不動明王の本尊を、寛朝大僧正が成田山に運び、940年に開山したとされている。真言宗智山派で、総本山は京都の智積院。川崎大師平間寺、高尾山薬王院と並ぶ大本山だ。

成田市の観光スポットと言えばやはり成田山新勝寺

 境内には複数の国指定重要文化財があり、長い歴史を誇る。1700年頃の中興の照範上人以降は、新勝寺の僧侶はすべて「照」の字を持つ名前を名乗ることになっており、戸籍ごと変更しているそうだ。住職は世襲制ではなく、これが「1000年以上続いた理由ではないか」と新勝寺の松岡照英氏は話す。

山門に向かって進み、急な階段を上る
新勝寺大本堂
1701年に建立された鐘楼(右)と成田市指定文化財の一切経堂。1722年の建立
重要文化財の三重塔。1712年建立
1981~1983年に漆塗、彩色工事などの保存修理工事が行なわれた。1803年の古文書に書き留められていた情報をもとにしたそうだ
建立当時のものと思われる極彩色の色合いや細工が美しい

 開山以来、1日も欠かすことなく護摩祈祷が行なわれており、護摩の日に護摩木を投入しながらの祈願に続き、大切なものを護摩の火に当てる御火加持などが行なわれ、毎日多くの人が祈祷に訪れている。

護摩祈祷のために住職が本堂に向かう
本堂での護摩祈祷の様子
常香炉で身を清めてから参拝に向かうCAの3人。左からSpringJapan(春秋航空日本)の和田朱里さん、バニラエアの杉山友梨さん、ジェットスター・ジャパンの塩満萌加さん。説明をするのは成田山新勝寺の松岡照英氏
内部は非公開だったが、7代目市川團十郎も暮らしたという延命院

 成田山新勝寺は歌舞伎との縁も深く、初代市川團十郎が祈願をして子供を授かり、その縁で「成田屋」の屋号を名乗るようになったという。その後も市川家と成田山新勝寺との交流は続き、第11代市川海老蔵が幼少時には成田山新勝寺で生活したほか、現在は「成田市御案内人」となっているのも、こうした繋がりがあったからだ。

 ツアー時も、護摩祈祷に多くの人が詰めかけており、厳かな雰囲気で執り行なわれる祈祷に、それぞれの願をかけて、バッグなどを護摩の火に当ててもらっていた。

 今回はプレスツアーということで、非公開のお内仏殿(仏間)も訪問。残念ながら撮影は禁止だったが、成田山新勝寺の歴史に触れることができた。境内の重要文化財を見たり、護摩祈祷を見物したり、初詣以外の機会に、ゆっくり訪れるのもよさそうだ。

 続いて、成田の名物である鰻の紹介として、古い鰻料理屋である「菊屋」も紹介があった。成田市は近隣に印旛沼があったため、古来から鰻料理が著名だった。現在でも、成田山新勝寺の参道には複数の鰻料理屋が建ち並び、昨今では外国人旅行者が食べに来ることも多いそうだ。

古い建物も残る成田山の参道
横道に入ったところにある菊屋の別館
歴史のある菊屋の別館
名物の鰻の説明を聞いてからの鰻重

 菊屋は現在11代目と歴史のある鰻屋。成田の鰻は白焼きで蒸して、じっくりタレで焼くという作法になっている。

菊屋の本店

 今回は菊屋の別館で名物の鰻重が紹介された。女将さんによれば、江戸後期から明治にかけてロウソクを扱っていた店で、昭和になって菊屋に譲られたものだという。それを別館としてオープンさせたものということで、予約客にゆっくり過ごしてもらえるようにと、同時に1組のみが利用でき、かつ一見客は断っているそうだ。

 出された鰻はふっくらとして抑えめのタレで鰻の味がよく分かる。好みに応じてタレや山椒をかけて食べるとまた別の印象になって美味しい。

 CAたちは、お正月に新勝寺への参拝後に鰻を食べると話しており、頻繁には食べないものの、大切な時に食べるもののようだ。

 食事のあとは参道を下だって、周囲のお土産屋などを散策してみる。駅に向かう参道は登り坂になっていて、食後の散歩にもちょうどいい。途中、CAの3人がお勧めという甘味屋「三芳家」に立ち寄り、甘いものを補給。

こちらも横道に入る三芳家

 さらに進むと、今度は「成田ゆめ牧場薬師堂前店」が現れる。牧場直営で新鮮な牛乳やアイスクリーム、チーズケーキなどを楽しめる。ここまでくると、JRと京成の成田駅までもう間もなく。そのまま進むと、今度は成田市観光キャラクターの「うなりくん」のぬいぐるみが販売されているお土産屋「しばらく」。飛行機のキャラクターということで、CAの3人も思わず立ち止まる。ぬいぐるみだけでなく、成田市のお土産も購入できるので立ち寄ってもいいだろう。

成田ゆめ牧場の店舗
うなりくんのぬいぐるみも購入できる「しばらく」

 そこからCAさんたちにはちょっと裏道を案内される。その先に現れたのはお洒落で居心地のよさそうなカフェ「はしらデリ&カフェ」。ラテアートのうなりくんも一緒に小休止。参道から1本入った裏道にあるため地元の人がメインの客層だが、歩き疲れた足を休めるのに最適なカフェで、CAさんたちもここでよく休んでいるそうだ。

落ち着いた雰囲気のカフェ「はしらデリ&カフェ」
ラテアートも楽しめる

 そこから駅まではもうすぐ。ツアーでは、そこからさらに「さくらの山公園」に移動した。ここは、成田空港の脇にある公園で、飛行機の離着陸を間近に眺めることができる。見えるのはA滑走路で、普段は飛行機マニアが撮影によく訪れているという。春には桜が満開となって、飛行機と桜を収められるベストスポットだ。

 今年(2015年)3月には観光物産館として「空の駅さくら館」がオープン。地域の農産物や成田ソラあんぱん、焼きたてのクロワッサンが販売されている。飛行機を眺めながら飲食できるスポットになっている。

空の駅さくら館
うなりくんと。背後に見えるのが成田空港

 今回のツアーでは成田市の観光地を駆け足で巡ったが、空港や成田山新勝寺だけでなく、それにまつわるさまざまなスポットを紹介してもらった。単に通過や立ち寄るだけでなく、1日楽しめる街でもあるのだ。

小山安博