旅レポ
チェコの工業都市・オストラヴァへ。産業遺産が丸ごと観光スポットになってます!
2024年4月6日 08:00
チェコが誇る産業遺産「ドルニー・ヴィートコヴィツェ」
ワルシャワ・ショパン空港からLOTポーランド航空を利用して降り立ったのはチェコ随一の工業都市・オストラヴァ。まず向かったのは、空港からクルマで20分ほどの「ドルニー・ヴィートコヴィツェ」です。
ここは1836年~1998年までの162年間、石炭の採掘と鉄の生産が行なわれていた場所。鉄の生産が終わったあと、工場を壊してしまうのではなく、次世代につなぐ産業複合施設として生まれ変わらせています。日本ではほとんど知られていませんが、チェコ国内では人気の観光スポット。ユネスコの世界遺産候補とも言われているそうですよ。
施設内では見学ツアー(有料)に参加することができます。ツアーの目玉は2015年に第1高炉上部に新設された展望施設「ボルトタワー(Bolt Tower)」。オストラヴァの街を360度ぐるりと見渡せる外郭通路がてっぺんに作られていて、エレベーターで上がることができます。78mの高さから俯瞰する廃プラントはとにかく迫力満点! 壮観です。
ちなみにこの「ボルトタワー」という名前、建物の形がネジに似ているからだけでなく、あのウサイン・ボルト選手の名前を冠しているのだとか。オストラヴァで開催される陸上の国際大会ゴールデンスパイクでボルト選手はこの地をたびたび訪れていたようで、タワー内には彼のサインもありました。
そんなドルニー・ヴィートコヴィツェでは、毎年「カラーズ オブ オストラヴァ(Colours of Ostrava)」というチェコ最大の屋外音楽フェスティバルが開催されています。今年はレニー・クラヴィッツやサム・スミス、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジらが出演し、7月17日~20日に行なわれる予定。こんなインダストリアルな雰囲気のなかでの音楽フェス、楽しそうですよね!
オストラヴァ郊外のペンションにはチェコの河童がいた
オストラヴァでは、街中心部からクルマで30分ほど郊外に走った田園地帯にある「ムリーン・ヴォドニーカ・スラーミ」というペンションに宿泊しました。
チェコは言いにくくて覚えにくい地名が多いのですが、こちらのお宿も然り。私は勝手に“河童のペンション”と命名していました。というのも「ヴォドニーカ」はチェコの河童・ヴォドニークにちなんでいて(Vodaはチェコ語で水)、敷地内を流れる小川のほとりにはヴォドニーク像が! 日本に伝わる河童とはだいぶ様相が異なりますが、どこか憎めないチェコの河童なのでした。
自然に囲まれたのどかな環境にあるこのペンションは、かつて製粉工場だった歴史ある場所。子供の遊び場があったり、馬や羊などの動物もいて、乗馬やキャンプなども楽しめます。緑が美しい季節には結婚式や披露パーティなどもできるそう。こんなヨーロッパの片田舎(失礼!)で、のんびりペンションに滞在する旅もいいですよね。
絵のように美しい小さな街で800年伝わる伝統菓子に出会った
続いては、オストラヴァから南西にクルマで小一時間のところにあるシュトラムベルクという街です。この小さくてかわいらしい街には、“いつ誰によって築かれたのか不明だけれど14世紀半ばには地主の所有物だった”というシュトラムベルク城が丘の上に建っています。
息を切らせて上ったかいあって、城内にある高さ40mの円筒形の塔の上からは、ミニチュアのようなかわいらしい街並みが一望できました。城下には18~19世紀に建てられた古い木造の家が立ち並ぶ一角も。タイムトリップしたかのような小道を下りながら向かったのは、街の名産品「シュトラムベルクの耳」を製造販売するお店です。
「シュトラムベルクの耳」は、蜂蜜やスパイスミックス、砂糖などで作られる素朴な味わいが特徴の甘い焼き菓子。その名のとおり人間の耳に似た形をしています。街には10軒ほどの製造元があり、それぞれの味を大切に守って作り続けているそう。ちなみに、形はオーブンから取り出してすぐに型(円錐形のカップ)に入れて整えられます。
店主のおじさんいわく、この街では毎年「シュトラムベルクの耳の祭り」という伝統的なお祭りが開催され、街の“耳製造メーカー”が一同に介して、広場で巨大な“耳”を焼くのだそう。気になったので調べてみると、今年は4月27日。行きた過ぎる~!
ベスキディ山地の観光スポット、プステヴニへ
ベスキディ山地で最も人気のある観光地の1つ「プステヴニ」。ここもオストラヴァからの日帰り観光にお勧めのスポットで、夏場はハイキング、冬はスキー場として多くの人が訪れるといいます。今回は「ヴァラシュカ トレイル」という空中に作られた歩道を歩いてきました。
2015年秋に誕生した「ヴァラシュカ トレイル」の長さは610m。樹木をほとんど伐採せずに作られた、森のなかの木道トレイルです。途中にロープ歩道が張られていたりと、アスレチック要素もありました。一番奥に作られたタワーには、空中にせり出す展望スポットも。ガラス張りの先端部分では浮いているかのようなスリルを味わえちゃいます。
民俗アール・ヌーヴォーな山小屋でチェコ料理に舌鼓
トレイルのあとは、ケーブルリフト山頂駅の近くにあるレストラン「リブシーン」でランチをいただきました。独特の色合いで目を引くこちらの木造建築は、スロバキア出身の建築家ドゥシャン・ユルコヴィッチさん(1868~1947年)が設計した民俗アール・ヌーヴォー様式の木造ロッジ。チェコの文化記念物にも指定されています。
独創的なのは外観だけではありません。なかはさらに個性的! 青緑色を基調とした壁や天井にはオレンジや赤の差し色を使った装飾が映えていて、まるで童話の世界に入り込んだようなキュートな店内でした。
実はこの建物、2014年に起きた火災で焼けてしまったそうですが、その後、お金と時間をかけて再建され2020年7月にリニューアルオープンしています。ほかにもユルコヴィッチさんが手掛けた建築物はブルノなどチェコ国内で見ることも。建築に興味がある人にささりそうな場所がチェコにはたくさんあります。