旅レポ
JR西日本、特急列車「WEST EXPRESS 銀河」の紀南コースを運行開始。豪華な車両でおもてなしを体験してきた
2022年10月6日 00:00
- 2022年10月3日~2023年3月6日 運行
JR西日本は10月3日、「WEST EXPRESS 銀河」紀南コースの運行を開始した。かつて新快速などで使用された117系車両を改修した特急列車。京都駅~新宮駅間を結ぶ紀南コースの導入は2年目となる。
月・金曜は京都駅発新宮駅行きを夜行特急列車として、日・水曜は新宮駅発京都行きを昼行特急列車として、2023年3月6日まで運行する。本稿では、この運行開始に先立ち実施された試乗会や見学会の模様をお届けする。
6両編成の「WEST EXPRESS 銀河」。1両ごとに異なる豪華な座席仕様
まずは各車両の造りから紹介していこう。1号車(グリーン車指定席)は、向かい合う2席のファーストシートを配置したボックスが8つあり、計16席用意されている。夜行運転時は定員8名とし、1つのボックス(2席分)を1名で利用。夜間は可動式の背もたれを倒すことで簡易ベッドとしても利用可能。またグリーン車利用者専用のデッキも備えている。
2号車(普通指定席)は女性用車両。通常のリクライニングシート14席に加え、1つのボックスに簡易寝台「クシェット」が上下2段に計4つ設置されている。これが計3ボックスあり、定員は12名。また女性専用の更衣室やトイレも備わっている。
3号車(普通指定席)にはリクライニングシートが20席。通常の特急列車の座席よりも間隔が広く、長時間でもゆったりと過ごすことができる。また大きなベンチシートが設置されたコンパートメント「ファミリーキャビン」が2つ備わるほか、静かで落ち着いた雰囲気のフリースペース「明星」も設けられている。
4号車は1両丸々フリースペース「遊星」となっており、室内は夜間運転時でも消灯されず常に明るい。誰でもいつでも自由に利用できる多目的スペースとなっている。
5号車(普通指定席)は、上下に計4つの簡易寝台「クシェット」が配されたボックス4つ(計16席)に加え、車椅子での利用が可能な座席が2席備わる。また車椅子対応のトイレや洗面台も用意されている。
6号車には、「プレミアムルーム」と名付けられた完全プライベート空間の個室が用意されている。複数名で利用できる個室が4室と、1名で利用できる個室が1室の計5室。またフリースペース「彗星」が乗務員室の側に設置されている。
紀南コースを試乗してみた
「WEST EXPRESS 銀河」紀南コースの車両は117系電車6両編成。今年度の運行より車両編成を反転し、新宮方面向きが6号車、京都方面向きが1号車となる。これにより車窓の眺めを楽しめる席が、従来の24席から61席(夜行運行時)に増えることとなった。車内サービスやおもてなしも、2年目の運行を迎えリニューアルされている。
9月30日に実施された今回の試乗は、京都駅発新宮行きの夜行列車。21時15分に京都駅を出発し、終着の新宮駅には翌朝09時37分に到着する。京都から東海道本線・大阪環状線・阪和線・紀勢本線と紀伊半島を約半周する、計12時間22分の夜行列車の旅だ。
筆者は新大阪から乗り込んだ。新大阪に到着するのは22時10分。6分間停車し、22時16分に同駅を出発。最初のおもてなしポイントである和歌山駅に着くまでのあいだ、途中で天王寺駅と日根野駅に停車する。
和歌山駅には23時42分に到着。ここで、最初のおもてなしである夜食「麺屋 ひしお」の和歌山中華そばが待っている。和歌山駅に到着すると添乗員に連れられて、駅から徒歩3分ほどにある店舗に向かう。そしてテイクアウト容器に入った、できたての一杯を受け取る。
ホームのベンチに腰を下ろし、停車する銀河を眺めながら食べてもヨシ。もちろん座席に戻って車内で食べてもヨシ。各自思い思いの場所で、熱々の中華そばをいただく。
和歌山中華そばは、とんこつ醤油ベースの濃厚な味わいが美味。時間が時間だけに、若干の背徳感を感じつつ一口すするともう止まらない。あっという間に完食した。
出発は午前1時00分ちょうど。駅前にはコンビニもあるので飲み物なども調達が可能だ。というのも「WEST EXPRESS 銀河」の車内では自動販売は設置されておらず、車内販売などもないので、飲み物や軽食といったものは各自で用意する必要がある。必要なものはこのタイミングで調達しておきたい。
出発に遅れないよう、満腹になったお腹をさすりながら再度列車に乗り込む。午前1時00分、和歌山駅を定時に出発した。夜食で満たされそろそろ眠くなってくる頃合い。和歌山駅を出ると4号車のフリースペース「遊星」を除く車両は消灯され、一気に夜行列車の雰囲気が色濃くなる。和歌山駅を出発した列車は紀勢本線を一路、新宮へ向けて走って行く。
4号車に移動し少し仕事を片付けていると、試乗会に参加している何名のゲストが、同じように4号車のフリースペースで旅の会話を楽しんでいた。なるほど、たしかにこういうスペースがあるというのは自分のペースで旅を楽しむにはありがたいと感じた。そうこうしているうちに、睡魔がやってきた。自席に戻り、眠りにつくことにした。
朝の05時30分過ぎ、車窓の明るさで目が覚めた。今回筆者は1番スタンダードな普通指定席のリクライニングシートに座ったが、リクライニングの角度も深く、深夜の夜食の効果もあってかぐっすりと眠ることができた。次の停車駅は本州最南端の駅「串本」。ここでは2つ目のおもてなしが待っている。
6時04分、WEST EXPRESS 銀河は串本駅に到着。ここでの目玉は南紀熊野ジオパークの1つ「橋杭岩」を見学する。駅に到着するとここから用意されたバスに乗り込む。串本駅から5分ほど走った先にある道の駅くしもと橋杭岩へ向かう。
橋杭岩は、大小の奇岩が整然と並び立つ国の天然記念物。熊野を代表する絶景だ。ここでは小グループに分かれ、この絶景の起源をジオパークガイドの方々から説明を受けることができる。朝日が昇る海岸沿いにそびえ立つ橋杭岩の絶景を是非堪能してほしい。
見学が終わると、バスで駅に戻る。出発は8時00分ちょうど。見学を終えて戻ってきても少し余裕がある。駅前にはコンビニもあるのでここでも飲み物などの調達が可能だ。
串本駅を出発すると、いよいよお待ちかねの朝ご飯。提供される朝食は「空海 漁師の朝ご飯」と名付けられた鯛めしのお弁当だ。本州最南端の町である串本は漁業の盛んな町。沖合で獲れる鯛を使った鯛めしは出汁が効いていて絶品。付け合わせには地元産の貝の酢の物。これもまた鯛めしによく合う。朝から贅沢なひとときを堪能した。
串本駅を出発したWEST EXPRESS 銀河は、紀勢本線の古座や日本の古式捕鯨発祥の地ともいわれる太地町などを通過。車窓には雄大な太平洋の絶景が次々と映し出される。そして旅もいよいよ大詰め。途中、紀伊勝浦駅で5分停車し新宮駅には9時37分に到着した。
「WEST EXPRESS 銀河」紀南コースは、夜の京都発新宮行きと、昼の新宮発京都行きの2パターン。夜行列車の情緒を楽しむか、昼行列車で車窓の景色を目一杯楽しむか、悩みどころだ。もちろん片道の利用でもよいが、ここはぜひとも往復利用して鉄道旅を思いっきり楽しんでほしい。
車両見学会では親子で銀河を楽しむ姿も
試乗会後、和歌山県の紀勢本線 新宮駅では一般向けに車両見学会も実施された。受付の窓口となったのは新宮市商工観光課で、今回100名の募集定員に対し、201組565名の応募があったという。当日は、見事当選した37組98名が参加した。
10月1日の朝、「WEST EXPRESS 銀河」は新宮駅1番線に到着。京都から戻ってきた試乗会の参加者を降ろしたあと、次は見学会の参加者が7班に分かれ、順に車内を見て回った。
「WEST EXPRESS 銀河」の紀南方面への運行は、2021年7月〜12月の運行に続いて二度目となる。車両編成を反転させ、車窓の景色を楽しめる座席を増やし、おもてなしのリニューアルを図るなど、より魅力的な内容となっている。
参加者は車内をつぶさに見て回り、座席に座ったり記念撮影をしたりと、思い思いに楽しんでいた。