旅レポ
神戸市街からひと足のばして有馬温泉へ。芸妓遊びや名産いちじく狩り、里山ステイを楽しみました
2022年9月30日 06:00
神戸市が主催する里山巡りのプレスツアーに参加してきました。神戸といえば、港エリアが観光のメイン。ですが、神戸市中心部からクルマをちょっと走らせるだけで自然豊かな里山が広がります。前回に引き続き、神戸の山側エリアの魅力をたっぷりお届けします。
有馬温泉街をぶらり。世界レベルのジェラートを発見!?
年間約170万人が訪問するという日本最古の温泉・有馬温泉。神戸北区に位置する温泉街は、古き良き部分を残しながらより幅広い層が訪れやすい街へと進化中。ファミリーだけではなく、一人旅や1泊2日の短期滞在でも楽しめるコンテンツが増加しています。
代表的な泉質は2つ。鉄分と塩分を多く含む赤茶色の「金泉」と無色透明で炭酸とラドン泉を含む「銀泉」。2度入ることで、より肌がツヤツヤになるといわれています。日帰り利用もOKな外湯「金の湯」「銀の湯」があるので、ハシゴしたり、朝夕で分けてその違いを肌で感じてみるのもお勧めです。
ちなみに「金の湯」は足湯も開放されているので、街歩きのひと休みにお勧め。「金泉」が湧き上がる天神泉源などあちこちに泉源がありますが、今回同行してくれた「陶泉 御所坊」の若女将・金井ラミアさんによると、地殻変動の影響で2つの湯が混ざることもあるそう。
細い路地がまるで迷路のような有馬温泉街には小さい商店が並び、食べ歩きにもってこい。名物の「炭酸煎餅」(1箱500円)や「ありまサイダー てっぽう水」(250円)のほか、人気パン店Pao De Beauの「金泉塩パン」(250円〜)もお勧めです。
今、有馬温泉街で話題なのが「アリマジェラテリア スタジオーネ」。片山圭介さんが作るジェラートは、甘酒や六甲山のふもとの牧場産ミルクを使用。日本のエッセンスをプラスしたフレッシュなジェラートはまさに絶品の極みです。
なかでも「塩マスカルポーネ きんかん香る甘酒仕立て」マストで味わいたいフレーバー。片山さんは「コース料理のデザートを意識しています。五味を大切にし、質感と口にした時の滑らかさにこだわっています」と話してくれました。
もちろん神戸牛も欠かせません。老舗旅館「中の坊 瑞苑」にあるレストラン「旬彩 猪名野」ではランチタイムに「神戸牛 すき鍋膳」(3520円)を提供中。霜降り神戸牛の美味しさとともに甘めの割り下と旨赤卵、そしてくつくつ煮たうどんを堪能できます。
有馬芸妓に会えるカフェで、抹茶とお座敷遊びに挑戦
温泉といえば、昔ながらの“湯治”をはじめ癒やしとエンタメが融合するもの。温泉街散歩の途中で有馬芸妓が運営する芸妓カフェ「一糸」へと向かいました。
有馬芸妓の歴史は古く、湯治客の世話などをする“湯女(ゆな)”がルーツ。兵庫県唯一の芸妓文化の残る有馬でその文化を伝える「一糸」では、抹茶と季節の和菓子をいただきながら、踊りやお座敷遊びなどの体験ができます。
約60分間の「有馬おどり鑑賞プラン」(1〜5名5万円〜※人数により価格変動、要予約)は、お抹茶と和菓子付きで有馬芸妓の伝統芸能が楽しめるというもの。髪型や扇子の優雅な開き方、美しさの秘密など、芸妓の装いについてレクチャーを受け、お座敷遊びや女子トークなど初めて尽くしを楽しみました。
お囃子を奏でる楽器の試し弾きをはじめ、直接現役の芸妓さんに指導してもらえるのは貴重な機会! 鑑賞だけでなく「芸妓体験」(3万3000円)ではメイクレッスンと着物の着付けもできるので、ぜひ有馬温泉訪問の記念に訪れてみてはいかがでしょう。
文豪たちに愛された有馬温泉。目的別ステイができるのも魅力
ファミリーやカップル、女子旅と、幅広い利用客に人気の温泉宿ですが、コロナ禍を経てマイクロツーリズムや密を避ける一人旅など、そのスタイルも変化しつつあります。コロナ前のインバウンド需要の影響もあり、気軽に宿泊できる施設が有馬温泉にも増えています。
今回宿泊したのは、スイス風ホテル「ホテル モルゲンロート」。六甲山登山者が有馬温泉へ向かう際に必ずとおる道沿いにあり、登山者のギアが購入できる「モンベル有馬店」も併設。山小屋風のフォルムが愛らしく、初めてなのに懐かしい雰囲気です。
「のんびりツイン」は簡単な自炊設備にIHヒーター、レンジにシャワーと長期ステイもOKな仕様。ほどよい広さの室内は自宅のような心地よさ。「銀の湯」も目の前で、宿泊者には温泉利用券が付属するのでとってもお得です。
文豪たちが通った有馬温泉ならではの趣を感じたいなら老舗宿「陶泉 御所坊」へ。伊藤博文や吉川英治らが宿泊したという客室は、和と洋が融合するモダンでノスタルジックな雰囲気です。谷崎潤一郎の「猫と庄造と二人の女」が執筆された部屋前には直筆原稿も展示。物語の世界へと誘います。
神戸はいちじくの一大産地! 採れたてフルーツ&野菜に舌鼓
ぷちぷちっとした独特の食感で、ドライフルーツとしても人気のいちじく。そんな魅力的なフルーツを生で味わえるのが一大産地である神戸なんです。「すまいるふぁーむ藤本」では、ミネラルと繊維たっぷり、ジューシーでやわらかな旬のいちじくを購入することができます。
「神戸アグリマイスター」の資格を持つ藤本喜郎さんが手掛けるいちじくは都市部に近い立地を活かし完熟で出荷。「次の日にパンにジャムのように塗って味わうのもお勧め」といいます。今回は特別に収穫を体験。色ややわらかさ、垂れている状態を確認してくるり。そしてそのまま採れたてをパクッ。採れたての実は想像以上に瑞々しく、ふわっとした甘い香りがたまりませんでした。
地元野菜や神戸フルーツを手軽に購入するなら「道の駅 神戸フルーツ・フラワーパーク大沢」「FARM CIRCUS」も訪れてみてください。パーク内は遊園地にイベントスペース・フルーツ狩りに学習施設まで盛りだくさん。施設内の温室では神戸市内の生産農家配布用にいちじくの苗「桝井ドーフィン」と品種改良版「サマーレッドドーフィン」の2種を育成中でした。
「ファームサーカス・マーケット」では生産者が直接持ってきてくれる野菜を販売。併設のカフェには地産地消を意識した地元食材を使ったメニューも揃っています。神戸の美味しいをリーズナブルに手に入れたいならば、迷わずこちらへ。
お試し移住できる古民家で農業体験。地元で話題のふわもちベーグルも
旅のラストは古民家をリノベーションし、神戸の里山移住を叶えた夫婦が営む施設を訪問。まずは「道の駅 神戸フルーツ・フラワーパーク大沢」から徒歩10分ほどの「一十土(いっとうち)」へ。
Airbnbでの一棟貸し以外にもワーキングスペースやイベントスペースとしても貸出。移住相談も受け付けます。また、宿泊者は農業体験やサイクリングツアーにも参加OK。移住についてオーナーの吉田彰さんは「都会でできないことを今ここで全部やっています。ここは僕のアソビ場。自慢のウッドデッキからの眺めも滞在でぜひ楽しんで」とその充実ぶりを教えてくれました。
続いてはふわもちベーグルと米粉蒸しパンで話題の「はなとね」へ。こちらは築260年以上の神戸市指定有形文化財である茅葺き屋根の「前田家住宅」を活用したパン店。2014年に淡河町に移住したパン職人の村上敦隆さんは「移住で忙しくなるのは珍しいですよね」と笑います。そして「ただパンを作るだけでなく、アレルギーを持つ方々が安心して食べられるパンで地域貢献がしたかったんです」と話してくれました。
卵とミルクを使わず、ほどよくやわらかくて食べやすい。しかもフレーバーも豊富な優しいベーグルはすぐに話題に。完売する日も多いそうなので、確実に手に入れるなら公式Webサイトで事前予約をしてから訪れましょう。
神戸の里山をメインに旅した今回。日本最古の温泉に有馬芸妓、六甲山訪問にいちじく狩りと、山の魅力をたっぷり味わいました。港街はもちろん、ぜひ里山エリアにも足をのばしてみてはいかがでしょうか。