旅レポ

神戸は山側もおもしろい!? 自然豊かな里山エリアで、絶品チーズ&リノベ系施設を体験してきた

神戸観光はベイエリアが人気ですが、実は自然豊かな里山エリアも大注目なんです

 神戸といえば、神戸ポートタワーが目印の「メリケンパーク」をはじめベイエリアの観光が定番。港をバックに写真が撮れるフォトスポット「BE KOBE」や海外との交流を感じる異人館、日本三大中華街に数えられる南京町など、風情あふれる街並みとグルメが人気です。

 そんな神戸ですが、実は海・街・山が近い距離で隣接。六甲山系の山々が目の前まで迫り、クルマを30分ほど走らせるだけで豊かな自然が広がります。今回は神戸市主催の“里山エリア”の魅力を発見するツアーに参加。リノベーションで生まれ変わった施設やグルメなど、山側の見どころ・食べどころをチェックしてきました。

絶品チーズで笑顔に! 循環型を目指す、地球にも生き物にも優しい「弓削牧場」

 神戸都心からクルマで約30分ほどの裏六甲エリアに位置する「弓削牧場」。住宅地を抜けた先、約9ヘクタールの土地で約50頭の牛と暮らし、乳製品の販売からレストラン経営、さらにバイオガスプラントの運用を行なっています。

「弓削牧場」の弓削忠生さんと和子さん
敷地内の林のなかで放牧されている乳牛に遭遇しました

 特別に牧場内を見学させてもらっていると、山の斜面にシュッとした乳牛の姿が。24時間放牧され、自由に過ごす彼らは毛並みもツヤツヤで表情も穏やか。牛舎へと戻る牛は自ら搾乳ロボットのなかへ。外を見ると牛たちが並び、順番待ちをしています。オーナーの弓削忠生さんによると「牛たち同士が教え合い、自らの意志で搾乳へ来る」んだとか。

搾乳ロボットに並ぶ乳牛たち
ちょうど搾るためにロボット内へと入るところでした
とても人懐っこく、表情も穏やかです

 特出するポイントとして「弓削牧場」では、神戸大学・帯広畜産大学らとの共同研究で生まれたバイオガスユニットを採用。牧場で出る牛の糞尿や野菜クズなどを活用しバイオガスを発生させ牧場内で利用しています。さらに、工程途中で生まれる「消化液」も販売。野菜の液肥としても「よく育つ」と話題です。

堆肥なども販売中
家庭向けに2L入りの液肥も用意

 併設するレストラン「チーズハウス ヤルゴイ」では、牧場ならではの絶品チーズや牛乳を使ったメニューを提供しています。「地鶏のハーブ焼とホエイシチュー」(2695円)は、牧場の採れたて野菜やハーブをふんだんに使ったプレートと、ホエイをたっぷり使った栄養満点のシチューのセット。

「チーズハウス ヤルゴイ」ではチーズの新たな美味しさに出会えます
たっぷり野菜&ハーブで焼き上げる鶏肉に生チーズを添えた「地鶏のハーブ焼」
ふわっと優しい味わいで具だくさんの「ホエイシチュー」

 低温殺菌殺菌ノンホモ牛乳は、ほんのり甘くさっぱりした口当たりで「おかわり!」と思わず言いたくなるほどゴクゴク飲める1杯。なお、気に入ったならお隣のショップで購入も可能。乳製品とともに、ふわっと食感の「フロマージュ・シフォンケーキ」(378円)や、お肌に優しい手作り「ホエイソープ」(770円)も売れ筋です。

上にヨーグルトの層ができるので、しっかり混ぜて飲むのがコツ
「弓削牧場の牛乳」(756円)や、できたて「フロマージュ・フレ」(486円)などを販売
ふわっふわっな食感とミルクの味わいで1番人気の「フロマージュ・シフォンケーキ」
肌トラブルには「ホエイソープ」を。しっとりツヤツヤに仕上がります

邸宅や病院をリノベして地域の憩いの場に!? ワーケーションで活用の旧保養所も見学

 長い歴史があるからこそ生まれる建造物の保存問題。そして自然豊かで別荘地としても人気が高いからこそ、社会や経済動向により放置される保養所。地域や山間部が抱える課題を前向きなかたちで解決しようと奮闘する神戸の新名所へも行ってみました。

神戸市北区の「淡河宿本陣跡」。映画の撮影にも使われました
昼間はカフェとして活用されています

 50年間の空き家を経て農村エリアの憩いの場となったのが神戸市北区の「淡河宿(おうごじゅく)本陣跡」。もともとは豊臣秀吉が整備し、江戸時代の参勤交代や身分の高い役人などが泊まった大旅館です。敷地内の白壁の土蔵や大屋敷を活かし、カフェやショップが集う場所へと生まれ変わりました。

縁側からの眺め。蔵にはショップなどが入居中
「鶯(うぐいす)張りの廊下」。歩くとキュッキュと鳴きます

 またここは映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」の撮影にも活用され話題になりました。カフェとして開放されているので、縁側で座ってまったり。「鶯(うぐいす)張りの廊下」で音を愛たりと自由に楽しむことができます。ちなみに、近くの「満月堂」で和菓子を買ってこちらで食べるのもOK。地元気分で、ちょっと小粋な使い方をしてみてもいいかもしれません。

地元の銘菓「豊助饅頭」を販売する「満月堂」
暑い季節にぴったりの「くずあいす(いちご/桃)」(各216円)

 続いては同じ淡河町の旧病院を活用した喫茶店兼泊まれるシェアオフィス「ヌフ松森医院」へ。ブーム真っ只中の昭和感たっぷりの趣を残しつつ、駄菓子屋も併設。約30年ものあいだ空き家だった旧病院施設を含む約450坪を上垣内夫妻が購入し、地域のHUBを目指して運営スタート。子供から大人まで地域の人が集まる場所として息を吹き返しました。

病院をリノベーション。カフェや駄菓子屋も併設します
コンセプトは“昭和レトロ”。懐かしさあふれる空間が広がります

 また移住を考える人々に里山のよさを知ってもらう場所として、神戸市は同館の2部屋を“お試し住居”として貸出中。同病院を含め敷地内の母家も今後リノベーションしていくそうです。

“お試し住居”も提供中。ベッドや冷蔵庫など一通り部屋に揃っています
ワーケーションスペースは個室と大部屋を用意
喫茶店では「野瀬野菜のナポリタン」(650円)や「クリームソーダ」(400円)も提供
駄菓子も充実。子供だけでなく大人も買いに来るそう
レンタサイクルで周辺散策するのもお勧めです
上垣内夫妻と賢いワンちゃんたちが迎えてくれます

 そして、いよいよ六甲山エリアへ。一時期は企業の保養所などが多く建つ別荘エリアでしたが、現在は空き家が目立つように。そんななか、神戸市による「六甲山上スマートシティ構想」で山上へのオフィス進出が押し進められ、旧保養地をリノベーションしたシェアオフィス「ROKKONOMAD(ロコノマド)」が誕生しました。

六甲山を登っていくと突如現れるシェアオフィス「ROKKONOMAD」
企業の保養所をリノベーションし、シェアオフィスとして再活用

 現在個人40名、9企業が契約中で、オフィス代わりに使っているそう。長期滞在用の宿泊施設も併設しており、ウッドデッキやワークルーム、交流もできるソーシャルルームと利用者は自由に使えます。気分転換に庭で焚き火をしたり、六甲山を登山したりと、仕事の合間にリフレッシュもできます。

 宿泊は個室とシェアベッドルーム。さらに独立したコテージの3種類。それぞれ人数と用途に合わせて一般利用者も予約が可能です。

ウッドデッキは風が吹き心地よい空間
ワークルームは集中して作業したいときに
一棟独立型のコテージは2棟用意
ベッドルーム。屋根裏に近い梁エリアにも2名ほど寝ることができます
本館の個室。長期滞在者向けで神戸市の支援プランで宿泊可能
シェアベッドはカーテンで仕切られているのみ

夜景にライトアップ、空からの眺めを見るならアートな六甲山で!

 六甲山上まで登ったならば、ぜひ訪れておきたいのが「六甲山サイレンスリゾート」と「空のダイニング」。

「六甲山サイレンスリゾート」は、1929年に開業した「六甲山ホテル」をイタリアの建築家兼デザイナーのミケーレ・デ・ルッキの手により約2年かけて開業当時の姿に修復。現在はカフェ&ミュージアムとして運営しています。2025年には敷地内に環境配慮型リゾートホテルもオープン予定と、今後最注目エリアなんです。

開業当時の内装に修復された「六甲山サイレンスリゾート」
美しいアーチやレンガが印象的な内観
ショップでは敷地内で採られた「生はちみつ」を販売。採取月で味わいが違います

 併設する「空のダイニング」は六甲山ならではの立地を活かした天空レストランです。オープンテラスからは六甲アイランドに、神戸空港をはじめ海側の人気エリアを一望できるロケーション。BBQやディナータイムのコース料理「絶景夜景ディナーコース」(1万1000円)がお勧め。「但馬牛フィレステーキ」から神戸名産のいちじくを使った一皿が味わえます。

「空のダイニング」はテラス席からの眺めが抜群!
「絶景夜景ディナーコース」は夜景とセットで味わえる人気のコース
テラスからの眺め。食事と夜景が一度に楽しめます

 今回はサスティナブルな酒造りを行なう神戸酒心館の日本酒も試飲。ノーベル賞会場でも振る舞われた「福寿 純米吟醸」や、10月に発売となる世界初のカーボンゼロの日本酒「福寿 純米酒 エコゼロ」が紹介されました。

左から「福寿 純米吟醸」、発泡純米酒「あわ咲」、「純米吟醸山田錦 環」
カーボンゼロの日本酒「福寿 純米酒 エコゼロ」もまもなく発売

 より夜景にフォーカスするなら「自然体感展望台 六甲枝垂れ」へ。現在アートイベント「シダレミュージアム」「六甲ミーツ・アート芸術散歩2022」を開催中です(11月23日まで)。

 建築家・三分一博志の設計による総檜葺きで造られたドームでは、六甲山の四季をイメージした限定色でのライトアップを実施。現在はレッドライトがメインの「秋は夕暮れ」とアートイベント限定からのグリーン「ミドリノアカリ」の2パターン。こちらも夜景ポイントなので、食後にアート×夜景を楽しみたいならば、ぜひ訪問を。

アートイベント限定色「ミドリノアカリ」
ドーム内は木をイメージしています
冬場はヒノキの枝に樹氷がつく幻想的な姿も楽しめます
相川真由美

ライフスタイル系雑誌の編集アシスタントを経て、IT系週刊誌・月刊誌で10年以上編集者として刊行にたずさわる。現在は、フリーの編集記者として国内外のテーマパークやエンタメ、ならびに観光、ファッション関連を中心に執筆中。