旅レポ
禅と銭湯で「ととのう京都」を体験してみた。ココロとカラダを穏やかにする旅
2022年2月28日 00:00
「そうだ 京都、行こう。」のキャッチフレーズでおなじみのJR東海(東海旅客鉄道)の観光キャンペーン。2022年の冬は「禅と湯 ととのう京都」をテーマに“京都で身も心もととのえる旅”を展開しています。
具体的には、京都に点在する「禅」と深いつながりのあるお寺を訪ねて、禅宗の修行法である坐禅をしたり、凛とした空気のなか石庭を眺めたりして「ととのいましょう」という提案。
もう一つの「湯」は、昨今のサウナブームで街の銭湯の魅力が見直されるなか、歴史ある銭湯が数多く残り、サウナーの間で聖地とも呼ばれる京都の銭湯を訪れて「ととのいましょう」というもの。
そんな、ととのう京都を楽しめるツアーのポイントとして、オリジナルロゴ付きの銭湯タオルが入った「ととのうセット(2000円)」も発売中です。ととのうタオルのほかに、5か所の対象寺院の参拝整理券(いずれか1か所分)と銭湯入浴券(1枚)、ととのうマップが入っています。この「ととのうセット」は、ずらし旅商品やEXサービス向けコンテンツなどで購入可能です。
ということで1月上旬に行なわれた報道向けツアーに参加して一足早くととのってきましたので、その様子をレポートします。
マジョリカタイルに心躍る船岡温泉で「ととのえる」
まずご紹介するのは、国の有形文化財に登録されている銭湯「船岡温泉」です。場所は京都市北区紫野。京都駅から市バスで約35分、千本鞍馬口で下車して徒歩5分のところにあります。歴史を感じる町家が軒を連ねる静かなエリアで、近くには織田信長公を祀る建勲神社なども。
お風呂も楽しめる料理旅館「船岡楼」に併設する浴場として大正12年(1923年)に誕生したという船岡温泉。当時の主なお客さんは高級織物で知られる西陣織の職人衆だったようです。
現在のような一般公共浴場となったのは昭和22年(1947年)で、今では地元の人はもちろん、銭湯ファンや外国人観光客にも親しまれているキングオブ銭湯です。ちなみ京都には「温泉」と名の付く銭湯が多いそうですが天然温泉ではなく、インパクトのある屋号を付けたためと言われています。
船岡温泉の魅力は、なんといっても豪華でレトロな非日常空間です。脱衣所の格天井の一画には鞍馬天狗&牛若丸の彫刻がどど~ん! 部屋をぐるりと取り囲む欄間には、さまざまなモチーフの透かし彫り。浴室へ続く通路には美しいマジョリカタイルの装飾が楽しめたりと歴史ごちゃまぜのミュージアムのよう。こんなワクワクする銭湯に通える地元の方々がうらやましくなります。
実はこの日は見学&撮影のみだったのですが、どうしても船岡温泉に入ってみたくなった私は、ツアー解散後に市バスに揺られて再び来訪。通常営業時間に改めて赤い暖簾をくぐったのでした。もちろん手には「ととのうタオル」です!
脱いだ服は黄色い脱衣かごに入れ、そのかごごとロッカーに入れるのが京都流。緑鮮やかなマジョリカタイルに心躍らせながら浴室へと向かいます。泡風呂や電気風呂などがあるメインの浴槽をはじめ、打たせ湯やくすり風呂、露天風呂にサウナ、水風呂もぜ~んぶ制覇して大満足。ここで毎日ととのっている地元のおばちゃんとの会話も楽しむことができました。京都の銭湯、サイコーです。
大正、昭和、平成、そして令和と歴史を紡いできた唯一無二の銭湯「船岡温泉」。大規模な空襲を免れた京都市には船岡温泉のような戦前に造られた銭湯が数多く残ります。京都に行ったらわざわざ立ち寄りたい場所が1つ増えました。
銭湯をリノベーションしたレトロカフェ「さらさ西陣」
船岡温泉に行ったなら、ぜひ訪れてほしいカフェが徒歩3分の場所にあります。それが「さらさ西陣」。銭湯として営業していた築80年以上の建物内部を素敵にリノベーションした人気店です。店内の壁一面には和製マジョリカタイルが施されていてなんともノスタルジック!思わず長湯、ではなく長居をしたくなる空間です。
坐禅体験で「ととのえる」萬福寺
話を再び「禅と湯 ととのう京都」に戻しましょう。ととのうセットにある「参拝整理券」で拝観できる対象寺院は、天龍寺、東福寺、南禅寺、萬福寺、興聖寺(宇治)の5か所ですが、今回は宇治市にある萬福寺と興聖寺の2寺を訪ねました。まずは萬福寺から。
黄檗宗大本山萬福寺は、1661年に中国福建省の高僧「隠元禅師」によって開かれたお寺です。この隠元和尚は、お名前にもあるいんげん豆を中国から日本に持ち込んだお方。ほかにもスイカやタケノコ、レンコン、原稿用紙、明朝体の文字などのルーツとなる経典を江戸時代の日本に伝えたと言われています。
現在は62代目のご住職で、萬福寺では今までに計16名の中国人がご住職を務められたそう。そんなわけでここ萬福寺はすべてが中国式。伽藍や仏像、本堂へと続く道も中国式。お経も唐音と呼ばれる中国語を基本とする読みで唱えるそうですよ。
さて、そんな萬福寺でのととのう体験は法堂(はっとう)での坐禅です。まず靴を脱いで座布団の上に正座します。禅の修行は「すべて捨てる修行」なので、通常は靴下も脱いで、身に着けている指輪などのアクセサリーも外すそう。
合掌して礼をすると木魚が一度鳴り、それが坐禅開始の合図。正座から坐禅に切り替えます。このとき少し体を揺らして軸を決め、ととのう体勢にするのがポイント。目線は1m先下を見て半眼に。次に木魚が3度鳴ったら、そこからは一切動くことは禁止です。
坐禅で大切な要素は3つで、1つ目は「調身(ちょうしん)」で、姿勢をととのえること。2つ目は「調息(ちょうそく)」で、呼吸をととのえること。3つ目は「調心(ちょうしん)」で心をととのえることなのだとか。
通常は15分ごとに小休止しながら約1時間の体験ですが、この日は時間の都合でわずか5分のみ。それでも心のなかのざわざわが次第に消えて気持ちがとっても穏やかに。外は小雪が舞う寒い日でしたが、坐禅をしていると空気が動かないからか、まったく寒さを感じなかったのには驚きでした。わずかな時間でしたが“ととのう”を実感できた萬福寺での坐禅。次はぜひとも1時間の体験をしてみたいです。
宇治市の興聖寺では癒やしの香りで「ととのえる」。いとをかし香の手作り体験
萬福寺同様に、ととのうセットにある「参拝整理券」で拝観できる宇治市の興聖寺では、「ととのう京都」の現地観光プランとして、「宇治抹茶お香づくりと僧侶がご案内する興聖寺」が用意されています。この宇治抹茶お香づくりを今回体験することができました。
お香づくりを教えてくださったのは宇治市に工房を構える「INCENSE KITCHEN(インセンスキッチン)」代表の後藤恭子さん。宇治で抹茶を使った新しい体験コンテンツはできないものか?と考えて、京都産宇治抹茶を入れたお香作りを考案したのだそう。
「いとをかし香(こう)」と名付けられたこのお香、茶席などで振る舞われる茶菓子にそっくり! それもそのはず、菓子木型で型をとって作るんです。粘土状にした材料を木型に入れて抜き出すと、ころんと小さくてかわいらしい、食べてしまいたくなるようなお香ができあがります。もちろんお茶のよい香りも!
作っている間もお抹茶の香りに癒やされる、とっても京都らしい“コト体験”になりました。大人はもちろんお子さんも一緒に楽しめますよ。私もアロマポットで温めて、部屋に広がる抹茶の香りをときどき楽しんでいます。
お香づくり体験のあとは、僧侶が興聖寺の見どころを案内してくださいます。禅道場として全国から修行僧が集まるという宇治の禅寺・興聖寺には、道元禅師作と伝わる法堂のご本尊「釈迦牟尼仏坐像」や、宝物殿の「聖観音菩薩立像(手習観音)」など見どころいろいろ。冬の凛とした空気のなかでの参拝はよいものです。
宇治抹茶お香づくりと僧侶がご案内する興聖寺
設定日: 2022年3月12日、13日
代金: 7500円(大人・子供同額)
申込締切日: 4日前
「京の冬の旅」初公開、大徳寺大光院
現在京都ではデスティネーションキャンペーン「京の冬の旅」も展開中。今年は通常非公開の大徳寺大光院が「京の冬の旅」で初公開となっています。
大徳寺大光院は豊臣秀吉の弟・秀長の菩提寺で、奈良の大和郡山に創建されたあとに、ここ大徳寺山内に移されました。客殿の襖絵「雲龍画」や茶室「蒲庵」が見どころで、1月17日~3月18日まで特別公開しています(2月15日~18日は拝観休止)。
閑臥庵(かんがあん)で隠元禅師が伝えた精進料理「普茶料理」を堪能
本記事でご紹介してきた禅宗とは、臨済宗、曹洞宗、黄檗宗の総称ですが、最後にご紹介する「閑臥庵(かんがあん)」はそのうちの黄檗宗の禅寺です。今回はこちらで幻想的にライトアップされた庭を眺めながら夕食に普茶料理をいただきました。
普茶料理は精進料理なので、肉や魚を一切使わず植物性の食品のみで作られています。ここ閑臥庵の京普茶料理は油を巧みに使ったしっかりした味付けが特徴。メニューには、肉や魚などに似せた「まぐろのさしみもどき」や「かまぼこもどき」などがあって、何の食材で作られているんだろう?と食べる前からも楽しめました。
旬の新鮮な食材を使い、高タンパクで低カロリーな閑臥庵の京普茶料理は、2名からの予約制。気軽に普茶料理を楽しめるお昼のみのコースもあります。
1月27日から京都府全域に「まん延防止等重点措置」が適用されています。混雑する場所や時間を避けた行動など、基本的な感染症対策の徹底のうえで旅行を計画するようにしましょう。またJR東海担当者は「感染状況が落ち着いたタイミングで、ぜひ京都でととのってみてください」とコメントしています。