旅レポ
愛知に離島があるって知ってますか? 新鮮なフグとタコをたっぷり堪能できる島旅を体験してみた!
2021年12月20日 14:33
JR東海(東海旅客鉄道)では、時間や場所、移動手段や行動などを定番からずらす「ずらし旅」を新しい旅のカタチとして提唱しており、まだまだ知られていない観光地をピックアップして、趣向を凝らしたキャンペーンをいろいろと行なっている。
今回紹介するのは、愛知県のフグとタコを扱った「あいちフグタコ」キャンペーンだ。2021年12月から2022年3月にかけて行なうこの企画では、知る人ぞ知る愛知県の新鮮なフグとタコを日間賀島や愛知県内の宿泊施設でたっぷりと堪能できるプランを用意している。実際に、愛知県の三河湾沖にある「篠島」「日間賀島」「佐久島」を巡ってきたので、その模様をお伝えする。
今回訪れた篠島(しのじま)、日間賀島(ひまかじま)、佐久島(さくしま)の3島は知多半島と渥美半島の間に位置し、愛知県民にとっては古くから観光地として親しまれてきた場所だ。知多半島の河和港、師崎港、渥美半島の伊良湖港から高速船が篠島と日間賀島まで運航しており、気軽に訪れることができる。佐久島は前記2島とは違い西尾市の管轄なので、一色港から渡航しなければならない点には注意が必要だ。ちなみに篠島と日間賀島は南知多町に属している。後ほど詳細に説明するが、本キャンペーンではJR東海の「スマートEX」会員限定で、佐久島にも日間賀島から貸切船で簡単に渡れるツアーが用意されているので、一気に3島を満喫することも可能だ。
今回のツアーでは新幹線で名古屋駅まで向かったあと、名鉄で南知多の河和まで移動。そのあとは河和港から高速船に乗って島を目指した。名古屋駅から河和までは特急なら約46分ほどで到着する。高速船は河和港から、日間賀島(西港)、日間賀島(東港)、篠島、伊良湖港までを結んでおり、河和港から日間賀島(西港)までは約20分、篠島までは西港からは5分、東港経由だと15分ほどの航程だ。
伊勢神宮と深いつながりのある篠島
最初に上陸した篠島は知多半島と渥美半島の半ば、三河湾と伊勢湾の境目に位置し、魚類の宝庫として有名だ。タイは「御弊鯛(おんべ鯛)」として古くから年3回、伊勢神宮に奉納され、フグは高級魚である「トラフグ」の水揚げが多いエリアとして認知されている。そして、もっとも盛んなのがシラス漁で、愛知県は漁獲高が日本一として知られており、この篠島はそのなかでもトップの港になっている。そのほか、近年ではカキの養殖にも力を入れており、浄化装置を導入したことにより生カキも島内の食堂や旅館で楽しめるようになっている。
御弊鯛を通して伊勢神宮とつながりのある篠島だが、島内にある神明神社は1200年以上の歴史があるもので、古来より島を見守ってきた。伊勢神宮では20年に一度、お宮を新たに建て替える伊勢式年遷宮があり、役目を終えた御用材は各地に下賜されるが、ここ神明神社では社が建つほど下賜されることから同じく20年に一度、遷宮が行なわれる。もう1つの神社、八王子社はこの神明神社の遷宮の御用材が使われている。
このように伊勢神宮と関わりが深いのは、伊勢神宮を創建したと言われる倭姫命(ヤマトヒメノミコト)が篠島を訪ねてきたとされる伝承が残っており、かつては伊勢神宮領として海の幸を奉納していた時代もあるからだ。島の最南端にある太一岬 キラキラ展望台は、伊勢神宮の遥拝所として訪れる人も多い。
タコとフグを目一杯楽しめる日間賀島
次に訪れたのは篠島より北に2kmほどの場所にある日間賀島だ。こちらも漁業が盛んで、タコが特に有名だ。玄関口である西港と東港にはそれぞれタコのモニュメントが観光客をお出迎えし、島の駐在所までがタコを模したデザインになっているのには驚かされる。ほか、篠島と同じくフグも有名で、冬になるとフグ料理を目当てに多くの人が訪れる。
今回のあいちフグタコキャンペーンでは、東海道新幹線を利用したフリープランの旅行商品「ずらし旅 あいち フグタコ旅~愛知 de 欲張り食体験!」を用意している。新幹線の往復券と宿泊、ずらし旅体験コンテンツがセットになったもので、JR東海ツアーズをはじめ、JTBや日本旅行、近畿日本ツーリスト、名鉄観光で取り扱っている。この日は日間賀島の西港からすぐの場所にある旅館「大海老」を訪れた。このプランに参加しているホテルや旅館の夕食は共通のメニューになっており、「タココース」と「ふぐコース」が設定されている。どちらも豪華で予約の際には悩むことになりそうだ。
実際にいただいたのはふぐコースで、先付けとしてタコの塩辛に始まり、フグサラダ、フグ皮の湯引き、てっさ、フグ魚醤の炭火焼き、ゆでタコ、フグちり鍋、フグの唐揚げ、フグ雑炊、季節のデザートまで、これでもかというほどのフグ尽くしで、筆者にとっては数年分くらいの量を堪能できた。
美味しいものを目の前にすると人間誰もが口数少なくなるので、このコロナ禍では黙食が推奨されていることからもよいのかもしれないと思いつつ、ひたすら口に運ぶ時間が至福であったのは間違いない。
今でこそタコと並んでフグも名物になっているが、1990年ごろは島内にフグの調理資格を持った人が2人ほどしかおらず、漁では獲れるが島の目玉になるほどではなかったそうだ。その後、資格を取る人が増え、勉強会を開くなどして研鑚し、メニューにフグ料理の取り扱いを増やした結果、2000年ごろからフグも認知されるようになったという。
日間賀島でフグ料理を堪能し、波の音を聞きながら心地よい眠りについた次の日は島内を1周してみた。ずらし旅体験コンテンツとしては「日間賀島満喫パス」を用意しており、お土産セット、貸し竿とレンタサイクル、干しタコ体験、おてごろランチの4つのなかから1つを選んで体験できる。今回は特別に干しタコとレンタサイクルを体験させてもらった。
干しタコ作りはタコを調理し、たまり醤油で下味を付けて干すまでの作業を行なう。タコはもちろん、生の状態。〆てあるので動いたり吸盤で吸い付かれることはないが、なにしろ軟体生物の代名詞とも言える存在なので、扱いには苦労する。厳しいが頼りがいのある講師の指導のもと、どうにかカタチにすることができた。普段、生のタコに触れる機会などそうそうないことから貴重な体験になった。
レンタサイクルは気ままに島内をサイクリングできるのでオススメのアクティビティだ。日間賀島は周囲が約5.5kmとコンパクトなので、自転車なら1周するのに20分ほど。徒歩でも約2時間の距離だ。海岸沿いにある道路を進み、時折ある景観スポットで一休みしながらゆるりとした時間を楽しめる。
そのなかでも人気なのは、大きな松の木に取り付けられたハイジのブランコだ。ちょっとした高台にあるので、ブランコをこぐと目の前の海に吸い込まれそうな感覚を味わえる。また、そのビジュアルがインスタ映えすることからひっきりなしに人が訪れる。
3島巡るならスマートEX会員限定の乗り放題パスが便利でお得
日間賀島を楽しんだあと、向かったのは佐久島だ。冒頭でお伝えしたように、普段なら佐久島は篠島や日間賀島から直接渡ることはできないが、2022年3月27日まではJR東海ツアーズが用意したスマートEX会員限定の島旅パス「EX 愛知の離島めぐり!島たび~日間賀島・篠島・佐久島~」に申し込むと、土日(一部祝日)限定で日間賀島から佐久島の間を特別に運航する海上タクシー「オルカ」に乗って向かうことができる。
この島旅パスは、日間賀島、篠島、佐久島をめぐる船が2日間乗り降り自由で、島グルメやレンタサイクルを楽しめるお得なクーポン(全12施設・一部要予約)が付いている。価格は4300~4900円なので、土日に島めぐりを考えている人の強い味方になるはずだ。
アートで島おこしに取り組んでいる佐久島
さて、その海上タクシーで日間賀島から15分かけて佐久島に向かった。佐久島は日間賀島の北東に位置し、3島のなかでは一番大きい。愛知県の資料によると、佐久島が1.73km 2 、日間賀島が0.77km 2 、篠島が0.94km 2 となっている。おもしろいのは人口(2015年の国勢調査)で、佐久島が234人、日間賀島が1896人、篠島が1653人となっており、一番大きな佐久島が少なく、一番小さい日間賀島が3島では最大の人口を擁していることになる。そのような背景に加え高齢化が進んでいることもあり、佐久島は日間賀島や篠島と違って島全体がのんびりとした空気に包まれている。
近年は島おこしの一環として、芸術作品を島のいたるところに展示し、アートの島として誘客に取り組んでいる。雑誌の表紙に登場し、インスタ映えの聖地として人気の「おひるねハウス」をはじめ、「イーストハウス」「カモメの駐車場」「すわるとこプロジェクト」などなど、現在20点以上の常設作品が展示されている。もちろん、海に囲まれているので新鮮な海鮮を楽しむこともできる。
このほか興味深い場所として、宿泊滞在型農業体験施設「佐久島クラインガルテン」がある。これは木造平屋と菜園(約70m 2 )がセットになったもので、1年単位(4月1日~翌3月31日)の契約で最長5年まで借りることができる。ほとんどの人が休日にこちらを訪れ、農作業と島ライフを楽しんでいるそうだ。現在、10区画が用意されているがどれも埋まっているので、興味がある方は佐久島のWebサイトを確認してもらいたい。
駆け足で紹介してきたが、篠島、日間賀島、佐久島のどれもが魅力にあふれている。しかも名古屋から1時間で行けるという立地は大きなポイントで、リピート客が多いというのもうなずける。遠そうで近い愛知の離島、気軽に島旅を楽しみたい人は要チェックだ。