旅レポ

JR西日本×下電ホテルの「せとうちグランピング」で秋のマリンアクティビティとBBQを満喫してみた【Go To トラベル対象】

2020年9月25日~2021年1月17日 実施

波打ち際のドームテントを独り占め!

 JR西日本(西日本旅客鉄道)では2018年より、瀬戸内エリアの多様な観光資源を活用して地域の活性化を目指す「せとうちパレットプロジェクト」を展開している。その一環として、コロナ禍における瀬戸内エリアでの新たな拠点整備を目的に、鷲羽山下電ホテル(岡山県倉敷市大畠1666-2)の敷地内でグランピング事業を開始した。

せとうちグランピング」と名付けたこの取り組みは、新たな観光スタイルとして注目を浴びる「自然」「貸切」に目を向けたもの。鷲羽山エリアは、大阪から新幹線と特急で約90分の距離で、眼前には風光明媚な瀬戸内海が広がり、瀬戸大橋や無人島といったほかにはないコンテンツがある。その気軽さと魅力、そして人が少なく安心して楽しめる旅の形として、グランピングは時代に即したコンテンツといえるだろう。

 目の前のビーチ、瀬戸内海の多島美と瀬戸大橋の眺望、クルージング、無人島ツアー、そしてBBQグリルを活用した地元料理研究家プロデュースの食事。9月から始まったこのグランピングを体験してきたので、その魅力を紹介しよう。

 なお、旅行商品としては阪急交通社や読売旅行、下電ホテルが販売しており、Go To トラベルの対象になっている。詳細はせとうちグランピングのWebサイトで確認していただきたい。

グランピングの醍醐味が満喫できるドームテント

 せとうちグランピングの舞台になる鷲羽山下電ホテルは、戦前より続く歴史ある観光旅館。「下電」とは、かつてこの地を走っていた下津井電鉄のことで、ホテル前には当時の車両(クハ24、ホカフ9)が移設されている。

 ホテルの敷地からの美しい風景は宿泊者以外に見ることができず、さらにビーチやホテルが管理する無人島もあるため、季節を問わずプライベート感のあるマリンアクティビティが楽しめる。宿泊用のドームテント、食事用のスターテントなどのグランピング施設はホテルに隣接する瀬戸内海国立公園の一部を借り上げて設営したとのことで、ホテル棟も見えずこちらもプライベート感は満点だ。

最寄り駅はJR瀬戸大橋線「児島駅」駅前のバス・タクシー乗り場のアーケードには児島ジーンズが
JR西日本と共同で「せとうちグランピング」を展開する鷲羽山下電ホテル。かつての下津井電鉄の電車も展示
ホテルは鷲羽山を背に、目の前には瀬戸内海が広がる。街の喧騒から離れてゆったりと過ごせる
ホテルから見たビーチ。BBQスペース、桟橋もありマリンアクティビティも充実
ホテルのテラス(ホテル泊客の食事会場)からの景色。瀬戸内の穏やかな海と風光明媚な島々、そして瀬戸大橋が望める
施設を見学中にヤギに雑草を食べさせている株式会社下電ホテル 代表取締役社長の永山久徳氏に遭遇。ヤギは優秀な草刈り要員だそう
ホテル売店では地域共通クーポンも利用可能。岡山のお土産も手に入れよう

 ドームテントはホテルの東側およそ100mに設営。「凪エリア」と名付けた場所は、小さな岬を挟みホテル棟が見えないため、大自然のなかに自分たちだけがいるようなプライベート感だ。また、食事の支度などはホテルスタッフが行なうため、キャンプの煩わしい部分は一切なく、ドームテントはエアコン完備でテント前のデッキにも暖房装置があり、ポケットルーター代わりになるスマートフォン型端末も設置、電源も冷蔵庫もある。ホテル棟を利用するのは大浴場とトイレだけで、アウトドア感抜群の離れかコテージに滞在している気分に浸れるだろう。

 夜間にも行ってみたが、灯りがなければ歩けないほど暗くもなく、また季節柄虫なども少ないので、仲間と語らうなどゆったりと過ごせそうだった。ただしこれからの季節は寒い日もあるので、暖かいアウトドアウェアなどは必須。防寒対策をしっかりして冬のグランピングを楽しみたい。

 今回のせとうちグランピングは2021年1月までの期間限定の取り組みだが、ぜひ春、そして海水浴も楽しめる夏場にも楽しめればと感じた。

「凪エリア」のデッキとドームテント。毎日2組が宿泊可能
「凪エリア」は下電ホテルから遊歩道を約100m歩いた先にある。ドームテント泊客のプライベートエリアだ
まさに隠れ家。少し離れればここにドームテントがあるのが分からないほど
デッキと大きなタープで天候に関係なくグランピングが楽しめそう
テーブルとチェア。食事はビーチに専用の設備があるためこのテーブルは自由に使える
ビーチに面して、籐で編んだソファも設置
ドームテント泊客専用のビーチ。石垣のなかにドームが隠れている
アウトドアとインドアのいいとこどりのドームテント内部。冷暖房をはじめホテルの部屋と同等の設備が整う
日当たりのよい場所にソファも設置。グループでの会話の弾みそうだ
ドームテントの南側はビニール製の窓で、室内は十分に明るい
備え付けのカップは備前焼、その下のコースターは児島ジーンズ。いずれも岡山の工芸品だ
現代の宿泊にインターネット環境は欠かせない。モバイルルーターになるスマートフォン型情報端末を設置(写真はホテル棟にて撮影)
海岸のスタータープは、ドームテント泊客専用の食事場所。大自然を独り占めしてBBQが楽しめる
ホテルと「凪エリア」を結ぶ遊歩道には照明があるが、心配な場合はドームテント備え付けのLEDライトを使おう
夜間も人目を気にせず楽しめる。デッキは地面と段差がありカニなども上がってこない
夜間のドームテント内部。テレビなどはないが、その分仲間とゆったり過ごすことができそうだ
しっかりと断熱された室内は季節を問わず快適。窓のビニールもガラスより断熱効果が高い
ホテル泊はもちろん、ドームテント泊でも利用できる下電ホテル大浴場。夜間は24時まで、朝は5時から利用可能

 せとうちグランピングでは、ホテルルーム泊プランも用意している。ドームテント泊と異なるのは、宿泊室がホテル客室であることと、「せとうちグランピングクルーズ」(後述)がオプションになっていることで、食事内容などそのほかはほぼ同じ。食事やアクティビティではアウトドアを楽しみつつ、トイレが室内にあるなど、ホテル泊のメリットの方が大きいと考える人にはピッタリだ。

 今回の取材ではホテルルーム泊を体験した。部屋は、2009年にリニューアルした「燦燦館」の洋室ツインルームで、部屋からの瀬戸内の眺望も美しく、静かで快適だった。

「ホテルルームプラン」の宿泊室(洋室/燦燦館)
燦燦館のベランダからは瀬戸内の美しい風景が広がる
アメニティ類。モバイルルーターになるスマートフォン型端末もベッドサイドにあった
部屋(2階)からの眺望(夕方)
部屋(2階)からの眺望(早朝)

夕食は「グランピングスタイルバーベキュー」

 せとうちグランピングの料理はBBQグリルを使ったもので、料理研究家の大原千鶴氏が監修した。大原氏は岡山出身で現在は京都住まい。NHK Eテレ「きょうの料理」やBS4K「あてなよる」にレギュラー出演しているほか、著書も多数。

 BBQの食材には、食べ応え十分の大きな鰆の切り身や黄ニラといった地元岡山の地山品を多用しており、ご飯にちらし寿司、スキレットでアヒージョやチーズフォンデュもいただける。デザートはグリルを使ってバナナやマシュマロを焼いたりと、まるで高級炭火焼き店のような料理だが、自分たちのタイミングで好きなように焼いて楽しめるのはまさにキャンプのBBQの醍醐味。

「グランピングスタイルバーベキュー」と名付けたこのメニューは、ドームテント泊、ホテルルーム泊いずれもほぼ同じ内容を提供する。

夕食は「グランピングスタイルバーベキュー」で岡山の味覚を堪能
ホテル泊の場合は海辺のテラス(写真)で、ドームテント泊の場合はドームテント横のスターテントでBBQ。料理の内容はほぼ同じ
BBQコンロは炭火が用意され、すぐに焼き始められる。焼いた食材を休めるスペースもあり使い勝手は◎
地元で水揚げされた鰆、森林どりの手羽先、地元倉敷の有名店の油揚げ、岡山特産の黄ニラなど、岡山県産の旬の食材が彩りよく盛り付けられている
スキレットにはカマンベールチーズとアヒージョの具材がセットされている。アヒージョのタコは地元下津井産。好きなタイミングで火にかけていただこう
バスケットにはデザートが入っている。スキレットの焼きりんご(ぶどう添え)はドームテント泊客のみだが、今回特別につけていただいた
調味料は衛生に配慮し小分けしている。BBQを好みの味付けでいただける
クーラーボックスには冷えたドリンク類を用意
グリルの使い方、肉や野菜の焼き方などこまやかな説明もテーブルごとに用意されている。ただし読んでいる間に焼き過ぎてしまわないように注意だ
説明書きのとおりに焼いてみた。黄色く長いものが岡山県産の黄ニラ
倉敷で作られた油揚げは軽く炙り、生姜とネギを乗せて醤油をかけると絶品
地元でとれた新鮮な鰆も豪快に焼く。黄ニラを乗せ、軽く塩をふって豪快にかぶりつこう
BBQグリルはフタが付いているので蒸し焼きも可能
地元の山海の幸を散りばめたちらし寿司。味の濃いBBQとさっぱりとしたちらし寿司は予想外によく合った
チーズフォンデュとアヒージョは固形燃料でもBBQグリルでも調理できる
これからの季節、ほくほく熱いアヒージョは夏場以上に滋味
バスケットのなかに入っていたバゲットでチーズフォンデュ。BBQやアヒージョの食材でも楽しめそう
ドーム泊客のみの「焼きりんご(ぶどう添え)」。シャインマスカットなど岡山県産のぶどうとともにバターで炒める温かいデザート
バスケットのなかは、チーズフォンデュに使ったバゲットのほか、デザートとしてバナナ、板チョコ、クッキー、マシュマロが入っている
りんごの入ったスキレットもバナナもBBQコンロで豪快に焼く。バナナは途中で裏返し、両面が真っ黒になったら完成
焼きりんご(ぶどう添え)は焼き過ぎに注意。焦げのわずかな苦みとシナモンシュガーの香ばしさがベストマッチ
焼きバナナはホテル泊、ドーム泊どちらの夕食にもつく。シナモンシュガーがピッタリで、溶かしたチョコとも合いそうだ
マシュマロも焼いて楽しめる。すぐ火が通るので軽くあぶる程度に
マシュマロとチョコレートを炭火で焼いて楽しむ「スモアセット」。ビスケットに乗せてBBQグリルに置いてフタをしてチョコを溶かしてみた。自由に調理をアレンジできるのもBBQならではの楽しみだ

 なお、夕食後の時間にはホテル前のビーチで焚き火も楽しめるのであわせて紹介。寒い季節だが炎の輻射熱はかなり暖かく、簡易カウンターでアルコールも買えるので食後のひとときを潮騒とともに楽しみたい。

キャンプファイヤーならぬ焚き火。贅沢なナイトタイムだ
炎の暖かさが心地よい季節になってきた。焚き火を囲んで語らうのも楽しそう
カウンターバーもありドリンクも注文できる

海辺でとる朝食は格別!

 朝食もBBQグリルを使ったもので、夕食と同じ場所でいただく。清涼で心地よい朝の海岸の空気を、マスクを着けず他人の目も気にせず、胸いっぱいに吸い込める貴重なチャンスだ。食事は、ホットサンドと熱いスープに、ヨーグルトのデザート付き。こちらも地元でとれた新鮮な野菜などを使用しているそうだ。美しい瀬戸内の朝の風景を眺めながらの温かい食事。シンプルだが贅沢な朝食を頬張ろう。

朝の海岸。すがすがしい空気のなかいただく朝食
ホテル泊客の朝食は夕食と同じ海辺のテラス。ドーム泊客はスターテントでいただく
食材はすべてバスケットのなか。ピクニックにきた気分になる。魔法瓶には熱いスープが入っている
メニューは、BBQグリルを使って自分で作るホットサンド。コーヒーもポットで湯を沸かして自分でドリップ
バスケットのなかをテーブルに広げてみた。開けるときの、何が入ってるんだろう?とワクワクする感じ楽しい。(写真は2人分)
例によって解説を見ながら準備する
ホットサンドプレートに具材をセット。ホットBLT(ベーコン・レタス・トマト)サンドだ
炭火は強力なので焼き過ぎないように注意。香ばしい香りが漂ってきたので開けてみたが少し焼き過ぎたようだ
ヨーグルトはプレーン。バスケットにジャムも入っているので甘党はそちらを
風景とあわせて、シンプルだがとても贅沢な朝食が楽しめる

瀬戸大橋を真下から見上げるチャーター船の「せとうちグランピングクルーズ」

 せとうちグランピングでは、秋や冬でも楽しめるマリンアクティビティを用意している。その1つが「せとうちグランピングクルーズ」だ。

 これは鷲羽山下電ホテルの桟橋からチャーター船で瀬戸大橋のほぼ中央まで行き、斜張橋(櫃石島橋、岩黒島橋)の下をくぐる約30分のショートクルーズ。波が少なく穏やかな瀬戸内だが、船(海上タクシー)は思いのほか高速で意外とスリリング。船内、後部のデッキ(屋根付き)、前部のデッキ(露天)の好きなところに乗って、普段見られない巨大橋を下から見上げてみよう。

 なお、このせとうちグランピングクルーズはドームテント泊に組み込まれており、ホテルルーム泊ではオプション扱いになる。

巨大な瀬戸大橋を真下から見上げる「せとうちグランピングクルーズ」
クルーズの発着は下電ホテルの桟橋から。約30分のスリリングな船旅だ
船内、後部デッキ、前方の甲板(ライフジャケット着用)に座ることができ、天気や気温に関係なく楽しめる
鷲羽山と下電ホテルがあっという間に遠ざかる。速度は20ノット(約37km/h)程度だろうか。冷たい風が心地よい
瀬戸大橋のうちもっとも岡山県側の「下津井瀬戸大橋」
2連の斜張橋が美しい櫃石島橋、岩畔島橋(左)。大型船は最も四国側の備讃瀬戸大橋を通るため、ここはほかの船舶が少ない
櫃石島橋をくぐる。瀬戸大橋は上段が道路、下段がJR瀬戸大橋線のため、運がよければ列車も見えるはず
櫃石島橋(手前)を東に抜ける。非常にダイナミックな光景だ
岩黒島をかすめ、岩黒島橋に向かう。この辺りが本州と四国の中間付近だ
岩黒島橋をくぐり、下電ホテルに戻る。この「せとうちグランピングクルーズ」はテント泊に組み込まれており、ホテル泊ではオプション

ホテルが管理する「釜島」に上陸する無人島ツアー

 鷲羽山下電ホテルから南東に約1km。ホテルが管理している無人島「釜島」は、夏場にはプライベートな海水浴やキャンプといったアクティビティが楽しめる。せとうちグランピングでは季節も考慮して、この釜島を使った「無人島ツアー」を行なっている。ハンモックでの午睡、レンタルの釣竿を使ったフィッシング、また瀬戸大橋の向こうに沈む夕陽の鑑賞などが楽しめる。

船で約10分。無人島「釜島」ではハンモックで昼寝、フィッシング、夕陽鑑賞などが楽しめる
釜島には使える桟橋がないため、砂浜から直接乗り降りできる専用船で向かう
無人島「釜島」。夏はプライベートな海水浴場として活用。夏以外は瀬戸内の景観を活かし、ビーチでゆったりと過ごせるプログラムとした
ビーチに並ぶハンモックとパラソル。秋でも陽が出ていると気持ちのよい午睡ができそう
島にはスタッフが待機し簡易バーカウンターもあり、有料でドリンクも提供
ドリンクや貝殻を片手に映えるカットにチャレンジしてみては
島にはため池や畑の跡もあり、かつては人が住んでいたようだ。朽ちた桟橋を夕陽と絡めて撮るのはいかが?
島からは瀬戸大橋を構成する5つの橋がすべて見渡せる。左から、南備讃瀬戸大橋、北備讃瀬戸大橋、岩黒島橋、櫃石島橋、下津井瀬戸大橋
島では釣竿と餌(小海老)を借りて釣りも楽しめる。撮影のためにスタッフが竿を入れたとたん、小物だがヒット
初心者も気軽にチャレンジでき、日が暮れるまで楽しめる
瀬戸内に沈む夕日をしばし鑑賞。波打ち際で14mmの広角レンズで撮影してみた
日が沈んだころ、迎えの船がやってきた。滞在時間は1時間ほどだったが存分に楽しめた

砂浜でのアクティビティ「ビーチヨガ」

 せとうちグランピングに組み込まれたアクティビティではないが、ホテルではヨガマットとヨガの本を無料で借りられる。例えば空気のすがすがしい朝、ほとんど人のいない砂浜で景色を独り占めしながらヨガにチャレンジしてみてはいかがだろうか。ホットヨガのような外部からの熱はないが、集中してポーズをとりながら腹式呼吸していくと体の芯からほんのりと温まってくる。きっと1日を元気に過ごせるきっかけになるはずだ。

手軽にビーチヨガにもチャレンジ!
インストラクター(取材時のみ)にヨガのイメージを作ってもらった
ヨガマットとヨガの本を無料貸し出し。天気のよい朝はビーチでヨガを楽しみたい

永山社長「瀬戸内海のありのままの自然と味を楽しんでほしい」

 今回のせとうちグランピングについて、鷲羽山下電ホテル 代表取締役社長の永山久徳氏に話を聞いた。

 地元児島で育ち、この海で遊び、ここの物を食べてきたという永山氏。現在の大変な状況をきっかけにこのようなプロジェクトが実現し、日本中に児島と下電ホテルを知ってもらうことになったと驚いたという。「コロナ禍による三密回避などでいま注目をいただいていると思いますが、私としては地元の人々が何百年も見てきて過ごしてきた瀬戸内海のありのままの自然をぜひ楽しんでいただきたいと思っています」と話す。

 また、ずっとこの地にいると、地元のよいところも分かりにくくなるとも述べ、「皆さんの目を通してこの地の素晴らしいところを私たちに再発見させていただければと思います」と結んだ。

株式会社下電ホテル 代表取締役社長 永山久徳氏

板倉秀典