旅レポ
韓国観光公社の「ご当地シャトル」を体験してみた。江華島名物「チャムケジャン」に大満足!
2019年11月16日 07:00
韓国観光公社は、韓国観光のイメージや魅力を海外で広報し、外国人観光客の韓国訪問促進を主な目的として活動しています。その韓国観光公社が、日本人観光客向けとして韓国国内で実施しているバスツアーが「ご当地シャトル」です。ご当地シャトルは、ソウル発が4コース、釜山発が1コースの全5コースが用意されていて、いずれも日帰りで人気の観光地を巡るツアーとなっています。
今回、ソウル発のツアーのなかから、仁川広域市の「江華(カンファ)」を巡るツアーに参加してきましたので、その様子を紹介します。
韓国観光公社「ご当地シャトル」を体験してみた
江華島はソウルから約1時間、日本語ガイドが付いて安心のツアー
今回参加したツアーは、韓国北部にある江華島を巡るツアーです。江華島は、ソウル付近を流れる川の漢江(ハンガン)や、高麗の王朝が築かれていた、現在の北朝鮮の開城(ケソン)付近を流れる川の臨津江(イムジンガン)の河口に位置していることもあって、歴史に翻弄されてきた島なのだそうです。
例えば、13世紀に高麗が元に侵攻されたときには、高麗王朝が臨津江を下って江華島に逃げ、江華島に首都を築きました。また、現在のソウルに首都ができてからは、漢江を渡ってソウルに簡単に到達できるということから、江華島が外国に侵攻されるということも多かったそうです。そういったこともあって江華島には、高麗時代の遺跡や寺院、史跡などが多く残っていて、一部はユネスコの世界文化遺産にも登録されていることもあり、現在では人気の観光地となっているのです。
江華島へは、ソウル中心部からクルマで1時間ほどでアクセスできます。ソウルからはバスも出ていて、江華島内も循環バスが走っていますので、クルマがなくても問題なく観光できるようですが、今回利用したご当地シャトルは、ソウル市内から出発して江華島の観光地を巡り、ソウルに戻ってくるツアーとなっているので、とても楽です。しかも、ガイドさんが日本語で案内してくれますので、言葉の心配が不要なのもうれしい点です。
ご当地シャトルは、出発3日前までの予約が必要となります。また、最少催行人数は3名となっています。申し込みは、ご当地シャトルのWebサイトから行なえます。
北朝鮮を間近に望める、江華平和展望台
さて、当日は朝8時30分ごろにホテルを出発して、江華島へと向かいました。江華島までは1時間ほど。江華島は、その名のとおり島なのですが、朝鮮半島側とは2本の橋で結ばれているので、クルマでそのまま渡ることが可能です。当日もバスに乗ったまま江華島へと渡り、その後30分ほどで最初の目的地である「江華平和展望台」に到着しました。
江華平和展望台は、2008年に開館した施設です。江華平和展望台が位置するのは江華島の最も北で、その先は海ですが、海を隔てた先には北朝鮮の領土が広がっています。北朝鮮までは江華平和展望台からわずか2.3kmしか離れていません。つまり、この江華平和展望台は、北朝鮮を望める展望台というわけです。
江華平和展望台には、韓国と北朝鮮の歴史を示す資料が展示されています。残念ながら、資料のほとんどは韓国語で表記されていますが、そこは日本人観光客向けのツアーですので、韓国と北朝鮮がどのように戦い、現在の状況に至っているのかを、ツアーガイドさんがしっかりと説明してくれます。また、日本語で江華平和展望台や、その先に見える北朝鮮の村などを紹介するビデオも流してくれますので、よく理解できます。
江華平和展望台からは、まさに目と鼻の先にある北朝鮮を、目前に見渡すことが可能です。今回のツアー当日は、ややモヤがかかってくっきりと見渡せませんでしたが、澄みわたっていると、目の前の村はもちろん、その昔に高麗の首都だった開城付近まできれいに見られるそうです。
そして、北朝鮮の村をもっとよく見渡せるように、多数の望遠鏡も設置されています。望遠鏡は1回500ウォン(約50円)で利用できますので、実際に使ってみましたが、肉眼では小さな建物も、望遠鏡なら大きくはっきりと見えました。先に紹介されたビデオでは、北朝鮮の兵士や子供の姿も映っていましたので、タイミングが合えば、望遠鏡で北朝鮮の人も確認できるかもしれません。
北朝鮮は、停戦中とはいえ韓国とは現在でも戦争中の国ですから、そう簡単に足を踏み入れられる国ではありません。実際に、江華平和展望台までの道すがら、海岸線に物々しいフェンスが張り巡らされている光景を見るだけでも、緊張感や、韓国と北朝鮮との関係が伝わってきます。それだけに、北朝鮮を間近に体験できるという意味でも貴重な場所と言えるでしょう。
江華の織物文化を体験できる「ソチャン体験館」
続いて向かったのは、「ソチャン体験館」です。ソチャンとは、江華の伝統的な織物生地のこと。江華では、1916年に織物組合が結成されて以降、織物の生産地として大きく発展したそうです。当時は、非常に多くの織物工場が作られ、大いに繁栄したとのことです。今回訪れたソチャン体験館は、もともとソチャンを作っていた織物工場の跡地を改装して、体験観光施設として運営しているのだそうです。
体験館には、当時実際に使われていた織物の機械などを展示するとともに、江華で発展した織物生産の歴史をビデオで学べます。ビデオは日本語字幕が付けられていますので、まったく問題なく理解できるのもうれしいところです。
そして、このソチャン体験館では、ソチャンの生地にスタンプを押してハンカチを作る体験が行なえるようになっています。もちろんツアーでも、このハンカチ作り体験が盛り込まれています。
ソチャン生地は、ハンカチとしては薄手ですが、とてもすべすべとしていて肌触りのよい生地です。そこに、江華の特産物の植物や花などのスタンプを押して自由に絵柄をデザインするのです。スタンプを押すだけで簡単なようにも見えるのですが、絵柄の配置などバランスを考えるのは難しくもあり、楽しくもあります。今回は、せっかくだからといろいろなスタンプを押したところ、ちょっと騒がしいデザインとなってしまいましたが、ほかにはない自分だけのデザインですし、満足いくものができあがったと感じました。もちろん、このハンカチは持ち帰れますので、旅のよい記念になるでしょう。
江華島名物「チャムケジャン」に舌鼓
韓国には美味しい料理がたくさんありますが、そのなかの1つがワタリガニをタレに漬け込んだ「ケジャン」です。韓国に行ったら、ケジャンを必ず食べるという人も多いのではないでしょうか。実は、今回参加したご当地シャトルの江華島のツアーには、このケジャンを楽しめる昼食が含まれているのです。
韓国でケジャンというと、ワタリガニが一般的のようですが、江華では、江華島周辺で採れるモクズガニを使った「チャムケジャン」が有名なのだそうです。もちろん、昼食で食べられるのは、このチャムケジャンとなります。近年、モクズガニはなかなか採れなくなってしまったそうで、チャムケジャンも価格が高騰しているとのことですが、それが昼食に含まれているというのはなんともうれしい話です。
昼食で訪れたお店は、先ほどのソチャン体験館からほど近い、「クッカーホス」というお店。ツアーの昼食ということで、お店に到着すると、すでにテーブルにはチャムケジャンをはじめ、サラダキムチ、煮物などのたくさんのおかずが並べられています。さらに、モクズガニやエビの鍋まであって、とても贅沢な内容となっています。
ところで、お店に入る前にガイドさんから、テーブルのカニには触ってはダメ、と言われます。それは、このお店にはチャムケジャンを食べる作法があるそうで、お店の人が段取ってくれるからとのこと。テーブルに座っても、美味しそうなチャムケジャンを目の前にしておあずけを食らっているような心境で、じらされている感じです。
すると、お店の人が釜を運んで来てくれました。この釜の中には炊きたてのご飯がぎっしり。そしてまず、中のご飯を茶碗に取るように指示されます。炊きたてのご飯はつやつやしていて、すぐにでも頬張りたいところなのですが、ここでもまだ食べてはだめなのです。実はこのあと、このご飯がさらに絶品の味わいへと変化するのです。
チャムケジャンは、カニの甲羅に詰まっているカニの身や味噌をご飯に乗せ、醤油だれをかけてご飯と混ぜて食べるのが作法なのだそうです。そして、その作業をお店の人がやってくれるのです。ご飯とのかき混ぜ方やタレの分量などで味わいが変わりますから、お店の人が最も美味しい塩梅で作ってくれるわけです。
そしてできあがった、チャムケジャンを混ぜたご飯は、なんとも言えない美味しさです。醤油だれの色が濃いため、塩辛いようにも見えますが、ちょうどよい塩加減に、奥深いカニの風味が加わって、何杯でも食べられそうな勢いです。また、足の付け根部分をしゃぶると、そこからもカニのエキスが口いっぱいに広がって、こちらでもご飯が進みます。カニ自体が小さくて、食べるところは少ないのが残念ではありますが、とにかく納得の美味しさでした。
また、それ以外のおかずも、どれもとても美味しいです。なかでも特に気に入ったのが、朝鮮人参の煮物と、タコのキムチです。朝鮮人参の煮物は、口に入れると甘さと朝鮮人参特有の苦みが広がって、大人の味わいがあとを引きます。また、タコのキムチは、コリコリとしたタコの食感と旨味、そしてキムチの辛さが相まって、こちらも箸が止まりません。チャムケジャン以外のおかずは何度でもおかわりできるのもうれしいところです。お腹もいっぱいになって、大満足の昼食でした。