旅レポ

20万超の収蔵品がひしめき合う「エジプト考古学博物館」。神話と古代の歴史に触れる

ツタンカーメンの黄金のマスクを見られる「エジプト考古学博物館」へ。写真はハトシェプスト女王の頭部像

 大人から子供まで世界中誰もが知る歴史的建造物を擁し、神話や古代の胸踊るような物語があり、個人的にも「一生に一度は行きたい」と思いながら「実際に行った」という話はあまり聞かない国、エジプト。そんなエジプトへ、JATA(日本旅行業協会)とETA(エジプト観光局)主催のプレスツアーで訪問した。

 カイロで最初に訪問したのは、「エジプト考古学博物館」。ツタンカーメンの黄金のマスクを展示していることで知られる場所で、貴重な出土品が超至近距離で見られる。

エジプト考古学博物館
エジプト考古学博物館
吹きさらしで屋外に展示してあるのもレプリカではなく本物

 収蔵品の総数は20万点超。本気で見るなら半日はほしい。現時点でもスペースの都合で展示していない物の方が多いそうで、黄金のマスクを含む主立った収蔵品は目下建設中の「大エジプト博物館(GEM:Grand Egyptian Museum)」に移管される予定になっている。

 入場料は9時~17時が160エジプトポンド(約1040円、1EGP=約6.5円換算)、17時30分~21時が220EGP(約1430円)。ただし夜営業は日曜と木曜のみ。自前のスチルカメラを持ち込むこともできて、別料金で50EGP(約325円)。エジプトの遺跡ではこの「カメラ持ち込み料金」というのがしばしばある。動画撮影の場合は300EGP(約1950円)。

内部は2階建てで広い。時間に余裕を持って見学したい

 博物館の内部は、基本的にすべてレプリカではなく本物が展示してある。それも収蔵品の多さ故か、ひしめき合うように並んでいるので、どこから見て回ればよいかで悩んでしまうのではないだろうか。旅行会社のツアーならガイドの説明があるはずだが、個人旅行なら現地の着地ツアーなどを利用して、「日本語でエジプトの歴史を説明できるガイド」を雇った方がよい。現地で話を聞いたJTUE(エジプト日本旅行業連盟)の方も、「エジプトの観光はガイド必須」と言っていたほど。こうした現地ツアーの料金は、エジプト考古学博物館とピラミッドがセットで大人1人だいたい1万円~。

 古代エジプトの神話や歴史が事細かに現代に伝えられているのは、雨風の浸食や摩耗に強い石造りの遺跡と文字(ヒエログリフ)の存在によるところが大きい。例えば石像の側面には必ずと言っていいほどヒエログリフが刻まれていて、誰の像なのか、何のために作ったのかなどが文字として残っている。こうした情報を教えてもらいながら見学するのとそうでないのとでは、まったく体験が異なると感じた。というわけで、記者も日本語ガイドの雇用をお勧めしたい。

第3王朝のファラオ、ジェセル王の像。自身の階段ピラミッドの中で見つかったもの
ギザのピラミッドでも知られるメンカウラー王(中央)とハトホル、女神の像
ファラオの後頭部をホルスが守っている
わずか7.5cmの高さしかないクフ王の像。クフ王の像はこれしかないという
メイドゥムのガチョウ(The Meidum Geese)と呼ばれる絵。紀元前2500年ごろに描かれたとされるもの
上エジプトと下エジプトを統一したメンチュヘテプ2世の像。赤い王冠をかぶっている
アメンエムハト3世のスフィンクス
ハトシェプスト女王の巨大な頭部像。付けひげと、それをつなぐあごひもが分かる
第18王朝、アメンホテプ4世の頭部像
アメンホテプ4世の妃、エジプト3大美女に数えられるネフェルティティの頭部像。現代の感覚でも美人
2階へ向かう途中、パピルスに記された文書の展示があった
2階にはツタンカーメンの黄金のマスクやミイラの展示があるため、関連した展示が増える
なんだか可愛らしく見えてしまうが、これはミイラを作る際に内臓を別途収納したカノプス壺(Canopic Jar)
アラバスター(方解石)の香油入れ
犬(ないしジャッカル)の頭部を持つ神様と言えばアヌビス神。壁画などでミイラ作りのシーンには必ずアヌビスが描かれている
楕円の下に横棒がある模様は「カルトゥーシュ」と呼ばれ、ファラオの名前を示すもの。写真はツタンカーメン(トゥトアンクアムン:Tut-ankh-amun)の元の名前である「トゥトアンクアテン(Tut-ankh-aten)」
ミュージアムショップを併設。しかしガイドの話では、お土産はルクソールの方がお勧めとのこと
値札がないけどこれもおそらく売り物
敷地の一角には、博物館の開館に尽力したフランス人学者オーギュスト・マリエットの像と墓がある

 博物館内部には「ミイラ室」が2か所あって、大人1人180EGP(約1170円)の別料金。撮影は禁止。なかにはラムセス2世など著名なファラオ(王)のミイラが多数安置されているが、それぞれ個性があって興味深い。

 なお、ツタンカーメンの黄金のマスクが展示されている部屋は区切られていて、内部は完全に撮影禁止。目に焼き付けよう。ツタンカーメンの在位は紀元前1300年ごろなので、死後およそ3000年が経っていることになるが、黄金のマスクは息を飲むほど美しい保存状態で、緻密な装飾が施されているのが分かる。この先もエジプト国外に出ることはないと思われるので、このマスクのためだけにでも訪れる価値がある(GEM完成後はそちらで)。

編集部:松本俊哉