旅レポ
JALの最新ビジネスクラスを手軽に楽しむ。SKY SUITE仕様のボーイング 767-300ER型機(SS6)に乗ってグアムへ
JALグアム線が増便。足元広々のエコノミークラス&グアム空港ラウンジも
2018年4月27日 12:43
- 2018年3月25日~10月27日 期間増便
JAL(日本航空)は、成田国際空港~アントニオ・B・ウォン・パット国際空港(グアム空港)線を3月25日から10月27日まで期間増便している(関連記事「JAL、成田~グアム線の期間増便セレモニーをグアム空港で実施。JAL専用ラウンジスペースの設置も検討」)。
増便・既存便とともにSKY SUITE仕様のボーイング 767-300ER型機(時刻表表記:SS6)を投入しており、ビジネスクラス24席、エコノミークラス175席の2クラス計199席で運航している。今回、この両クラス(成田発はエコノミークラス、グアム発はビジネスクラス)に搭乗する機会を得たので、グアム空港のJALカウンターや共用ラウンジと合わせてお伝えしたい。
JALの成田~グアム線運航スケジュール(2018年3月25日~10月27日)
JL8941便:成田(09時30分)発~グアム(14時10分)着、毎日運航
JL941便:成田(10時40分)発~グアム(15時20分)着、毎日運航
JL8942便:グアム(16時20分)発~成田(19時05分)着、毎日運航
JL942便:グアム(17時30分)発~成田(20時15分)着、毎日運航
日本から3時間台以下の比較的短い路線でSKY SUITE仕様の機材を投入しているのは、グアムのほか、上海(ボーイング 777-200ER型機[SS2]、羽田発で3時間10分)、大連(ボーイング 787-9型機[SS9II]、成田発で3時間15分)、台北(SS6、成田発で3時間55分)、北京(ボーイング 787-8型機[SS8]、羽田発で3時間55分)といったところ。
中国や台湾などビジネス利用の多い路線はともかく、リゾート路線のグアムに新型のビジネスクラスを持つSS6が投入されている点については、JALによれば「グアムは今後も注力したい路線」であり、力の入れようの表われといえる。日本発便のビジネスクラスの主な利用者はレジャーユースとのことだが、JAL グアム支店 支店長の長田博文氏によれば、グアム発便では現地のビジネスマンが日本へ出張する際に利用しているという。
また、旅行者として見たとき、JALのグアム線は“SKY SUITEのビジネスクラスに最安クラスで搭乗できる路線”であり、「最新のビジネスクラスに乗りたい」というニーズを安価に満たしてくれるだけでなく、「いつもより贅沢な旅行」を考えるときにも魅力的な存在だ。
グアム路線は、SS6ビジネスクラス「JAL SKY SUITE II」
グアム路線に投入されるSS6のビジネスクラスは1-2-1配列の24席で、全席が直接通路に出られる構造を採用する「JAL SKY SUITE II」。席ごとのパーティションは低いが、背もたれと配列の工夫で「囲まれ感」があるので、プライバシーは保たれていると感じた。その理由の1つはサイドテーブルで、シートマップを見ると分かるが、ほとんどの席で隣席との間にサイドテーブルがあるように配置されているので、体を起こさない限り隣の人が見えない工夫がしてある。このサイドテーブルの下は空洞で、後席の人の足が入るスペースになっている。
シート幅は約52cm、フルフラット時のベッドサイズは約200cm。シートピッチは非公開だが、写真を見てもらえば足元にかなりゆとりがあることが分かるだろう。そのシートは手元のボタンで標準、リクライニング(カウチ)状態、フルフラットを無段階に切り換えることができ、レッグレストを単独で前後させることも可能。腰の部分の張り出し具合を調整することもできるので、普通に座ると腰がつらい、という人にも配慮した作りになっている。
フルフラットで横になってみたが、機内は薄暗くなっていたので照明がまぶしくこともなく、快適。低反発枕がしっかり頭を支えてくれるので安定感もある。疲れを取ってからグアム入り(または帰国)できるのはありがたい。
機内エンタテイメント用の個人モニターはタッチパネル式の15.4インチ。機内エンタテイメントシステムの「MAGIC-V」はタッチ/リモコン操作への追従が速く、もたつき感はゼロ。3時間半程度の短いフライトだが、食事を挟んでも映画1本を見る余裕は十分にある。今回は機内取材ということもあって、あまりゆっくり楽しむことはできなかったが、1時間以下の短い映像コンテンツも用意されているのはうれしいところ。
モニターの下には折りたたみ式のテーブルが格納されており、その左右にユニバーサルAC電源とUSB充電ポートが設けられている。記者の12.5インチのノートPCを広げてみたが、端に寄せればマウスも使えるくらいの余裕があるので、作業スペースは十分過ぎるほど。電源コンセントが高い位置にあるので、足元を覗き込んだりすることもなく使えるのは助かる。なお、SS6には機内Wi-Fiサービスが用意されており、VPNにも対応している。料金は「1時間プラン」が10.15ドル、「3時間プラン」が14.40ドル、24時間使える「フライトプラン」が18.80ドル。
離陸後、ベルトサインが消えると温かいおしぼりの配布に続いて新聞や雑誌を持ってきてくれる。続いて飲み物の提供があり、シャンパンや赤/白ワイン、カクテル、ウイスキー、ビール、焼酎、日本酒、ソフトドリンクなど豊富な選択肢がメニューに書かれている。
食前酒にはシャンパン、と言いたいところだが、アルコールに弱い記者は取材も残ったいるのでホットコーヒーを選択。ちなみにJALのコーヒーは“コーヒーハンター”の異名を持つ川島良彰氏が監修、焙煎・抽出スペシャリストの石脇智広氏がアドバイザーを務める「JAL CAFE LINES」と呼ばれており、しかもクラスによって提供する豆が異なる。
国際線ビジネスクラスと国内線ファーストクラスでは、エルサルバドルの農園で栽培されたアラビカ種ブルボン亜種の「ブルボン エリテ」を採用しており、紙コップではなく陶器のカップ&ソーサーで提供する。マイルドな口当たりに果実感のある後味で、飲みごろの温度で出てくる。
このコーヒー、気流の乱れで揺れるエリアに差し掛かるとフタ付きの紙カップに交換して、気流が落ち着くとまたカップ&ソーサーで持ってきてくれる(もちろん都度温かいものを入れ直してある)という気遣いがとてもうれしかったことを覚えている。
さて、グアム発便のビジネスクラスの機内食は、和洋チョイスではなく洋洋チョイス(肉/魚)になっている。機内取材の対応をしてくれたCA(客室乗務員)によると「フライトが短いので機内食の提供時間は非常にタイト」だそうで、前菜やスープなどが個別に提供されるのではなく、トレイに乗ってメイン料理までまとめて出てくる。
この日のフライトは、以下のメニューだった。
グアム~成田線 JL942便のビジネスクラスディナー
アペタイザー:カプレーゼ、スモークサーモン(クリームチーズをサーモンで軽く包んだもの)、プロシュート(アスパラのプロシュート巻き)
スープ:コンソメスープ
メインディッシュ:牛フィレステーキ アーティチョークサルサ
ブレッド:2種類
フレッシュフルーツ:メロン、パイナップル、キウイフルーツ
アイスクリーム:ハーゲンダッツ マンゴー&ラズベリー
前菜のプロシュート(アスパラのプロシュート巻き)はやや塩気が強くて食欲が増すような味付け。スモークサーモン(クリームチーズをサーモンで軽く包んだもの)は記者の好物の組み合わせで文句なしの美味しさ。メインの牛フィレステーキはナイフがすっと入る柔らかさに仕上がっていて、すっぱ辛いアーティチョークサルサとすごく合う。ブレッドまで平らげるとボリューム十分なところに、最後にアイスクリーム(ハーゲンダッツ)が出てくる。日本で見かけるものより内容量が多いようで、すっかりお腹いっぱいになってしまった。
SS6のエコノミークラス「JAL SKY WIDER」
エコノミークラスのシート「JAL SKY WIDER」は、航空格付け会社のSKYTRAXが主催する「ワールド・エアライン・アワード(World Airline Awards)」で「ベスト・エコノミークラス・エアラインシート」を2回受賞した(2015/2017年度)、定評あるもの。
シート幅は約45cm(SS6の場合)と標準的だが、シートピッチは約84~86cmとかなりゆとりがあり、「新・間隔エコノミー」の名前はダテじゃないと感じる。特に、前席の下の空間が大きいので、身長178cmの記者が浅く腰掛けて足を伸ばしても、つま先がぶつかる気配がない。そのため、前の席が背もたれを倒しても窮屈に感じないのがうれしいポイントだ。
ヘッドレストは可動式で、両端を折り曲げられる仕様。ぐっすり寝てしまっても頭をホールドしてくれるので、隣の人に寄りかかってしまう心配もなく、気兼ねなく眠ることができる。
個人モニターは10.6インチのタッチパネル式。機内エンタテイメントシステムはエコノミークラス/ビジネスクラスとも同じ「MAGIC-V」。操作の追従性は高く、ストレスを感じない。テーブルは折りたたみ式でノートPCを置く余裕はあるが、キーボードを触ると隣の席に肘がはみ出しがちなので、作業はややしづらい。なお、AC電源は座席の間に共用のコンセントがあり、USB充電ポートは各席のモニター横に用意されている。
この日のエコノミークラスの食事は炊き込みご飯に煮物、ひじきの胡麻和えというザ・和食の組み合わせだった。飲み物とは別に味噌汁とヤクルトが出てくるので、盛りだくさんで満足度は高い。
グアム空港(アントニオ・B・ウォン・パット国際空港)
最後に、グアム空港について紹介しておきたい。現在のグアム空港のターミナルは1998年に建てられたもので、そのことを示すパネルが空港の外壁に貼り付けられている。ホテルや免税店など観光の中心地になっているタモンにはクルマで10~20分程度の立地で、主要なホテルの近くからはバスも出ている。
JALのチェックインカウンターはターミナル1階の角に10コマ分用意されており、カウンターオープン時からスタッフが多めに待機しているので、あまり待たされずにチェックインできているようだった。現地採用のスタッフもいるが、基本的に日本語が通じるので、安心して利用できるのはうれしいところ。
ビジネスクラスの利用者やJMB(JALマイレージバンク)ダイヤモンド/サファイア会員、JGC(JALグローバルクラブ)会員なら、保安検査場を抜けた先で共用ラウンジの「Sagan Bista(サガンビスタ)」ラウンジを利用できる。内部は179席でかなりの広さがあり、軽食が豊富に用意されている。
電源を確保できる席が非常に少ないのでフライト前に仕事をしたい、という用途にはあまり向かない印象だが、免税店で買い物をしてフライトまでまだ時間がある、というときなどにのんびりできるラウンジだ。
用意されている軽食の個人的なお勧めはホットドッグで、大量の極太フランクが保温器でぐるぐる回っているので、自分でパンに挟んでピクルスを選択、ケチャップやマスタードでアレンジできる。帰国前に楽しむ最後のアメリカの味、といったところだろうか。