旅レポ

観光に地震の影響はすでになし。鉄道で東海岸の観光地を巡って台湾を応援しよう

鉄道を使い台湾の東海岸の観光地を巡ってみました

 2月6日(日本時間2月7日)に台湾東部を襲った地震。日本でも倒壊した建物がセンセーショナルに報道されるなどしたため、心配している人も多いことと思います。

 ただ、台湾観光協会に問い合わせてみたところ、震源地に近い花蓮市では、数棟の建物が倒壊するなどの被害が出たものの、それ以外に大きな被害はなく、現在ではすでに日常の生活が戻っているそうで、観光客の受け入れも通常どおりとのこと。

 また、台湾東海岸最大の都市である台東市には、まったく影響がなかったそうです。合わせて台湾東海岸へのアクセスとなる鉄道にも地震の影響はなく、通常どおりのダイヤで運行されているとのことでした。

 観光地の状況についても、花蓮市から近い場所にある、台湾屈指の観光地「太魯閣國家公園」にも、特に大きな影響はなかったそうで、こちらも現在は通常どおり観光客が受け入れられているそうです。

 このように、台湾東部は地震の影響はほぼ解消されていて、観光客の受け入れも整っているので、ぜひとも観光に足を運んでいただきたい、との回答を得ました。そこで今回は、2017年に台湾東部を訪れた際の旅行記をお届けします。

台湾東海岸で途中下車し観光しつつ台湾を1周

 ではまず、実際に実行した観光プランをご紹介しましょう。今回は、台湾の東海岸側での観光が目的でしたので、台北を出発地点として台湾鉄路の列車で東海岸方面へと向かいます。東海岸では、花蓮と台東で途中下車して観光。そして、台東から高雄へと向かい、高雄から台北へ台湾新幹線で移動することにしました。

 利用した列車ですが、台北から花蓮へは、6時20分発の特急「太魯閣列車」を利用しました。花蓮到着は8時20分で、運賃は440台湾元(約1672円、1台湾元=3.8円換算)。次は、花蓮から台東まで、12時12分発の特急「普悠瑪列車」を利用。台東は、台湾の東海岸で最も大きな都市ですので、やはり外せないでしょう。台東には14時2分に到着で、運賃は343台湾元(約1303円)です。そのあとは、台東から高雄まで、特急「自強号」で移動します。台東出発が17時40分、高雄到着が19時50分で、運賃は351元(約1333円)でした。そして高雄駅から新左営駅に移動して、台湾新幹線で台北に戻ります。こちらの運賃は1340台湾元(約5092円)でした。現在は、ダイヤが変わっている可能性もありますので、詳しくは台湾鉄路のWebサイトで確認してください。

 台湾鉄路の特急は、Webサイトから事前に予約が可能です。今回も、台湾渡航前に計画を立てて、Webサイトで予約をしておきました。台湾鉄道のWebサイトは日本語にも対応していて、予約も日本語で行なえますので安心です。また、予約したきっぷの決済も、クレジットカードを利用してインターネット上で行なえます。

 インターネットで予約したきっぷは、乗車前に駅の窓口や券売機で発券して受け取っておく必要があります。今回は、乗車の前日に台北駅の券売機で発券しました。券売機の「Ticket Collection」の項目から、パスポート番号と予約時に受け取った予約番号を入力することで、きっぷが発券されます。もちろん、乗車当日の発券でも構いませんが、窓口や券売機が混んでいると、発券に時間がかかる可能性がありますので、なるべく余裕を持って駅に向かった方がよいでしょう。

台湾鉄道のきっぷは、Webサイトで予約可能。日本語表示に対応しているので簡単に予約できる
きっぷは、乗車前に駅の窓口や券売機で発券する
台北駅にある券売機。パスポート番号や予約番号などを入力して発券する

太平洋沿岸に広がる雄大な断崖「清水断崖」を観光

 当日は、朝の6時ごろに台北駅に到着しました。駅はまだそれほど混雑していませんでしたが、乗車する太魯閣列車のホームに降りてみると、観光客と思われる人たちが大勢集まっていて、ホームは結構混雑していました。やはり花蓮方面は観光地としてかなり人気のようです。

 しばらくすると、乗車する太魯閣列車が滑り込んできました。流線型の白い車体にグレーとオレンジのラインがなかなかかっこいい印象です。座席もゆったりしていて、さすが特急列車です。これなら、花蓮までの約2時間も快適に過ごせそうです。

 座席には小さいながらテーブルが用意されていて、ドリンクホルダーもあります。今回は朝が早く、台北駅ではまだ駅弁が売られていませんでしたが、駅弁を買って車内で食べるのも問題なさそうです。

 台北を過ぎてしばらくすると、車窓には豊かな自然が広がってきました。その車窓を楽しんでいるだけで、2時間という時間もあっという間に過ぎて、ほぼ定刻どおりに花蓮に到着しました。

 今回花蓮では、次に乗る台南行きの列車まで4時間ほどあります。花蓮の観光地としては、「太魯閣國家公園」という国立公園が有名で、台湾でも有数の観光地として人気となっているそうです。ただ、太魯閣國家公園はじっくり巡ろうとすると最低でも1日は必要で、わずか4時間では無理です。そこで今回は、太魯閣國家公園で比較的短時間で楽しめる「清水断崖」のみを訪れることにしました。

 ただ、清水断崖は花蓮地区の観光地ではありますが、花蓮からはやや離れた場所にあります。そこで、花蓮駅からタクシーをチャーターして行くことにしました。駅前にはたくさんタクシーが停車していて、そのうちの1台の運転手に声をかけて「4時間で清水断崖を見に行きたい」と伝えてみたら、問題ないとのことで、お願いすることにしました。

 ちなみに料金はメーターを倒すか、それとも1800元(約6840円)でチャーターとどちらがいいか聞かれましたが、メーターだとどれぐらいになるのか判断できなかったので、チャーターを選択。おそらく、交渉すればもっと安くチャーターできたかもしれませんが、時間もないのでそのままお願いしました。ちなみにそのタクシーでは、後部座席ではなく、見晴らしのよいということで助手席に座らせてくれました。

 花蓮駅を出発して35分ほどで、最初の見どころに到着しました。駐車場から遊歩道を5分ほど歩いて行くと見晴らしのよい場所に出るよと言われたので、そのとおり歩いて行きました。しばらくは、切り立った山肌の間を縫うように歩いていたのですが、いきなり目の前に海が飛び込んできました。そして、深い緑に覆われた、切り立った断崖。海は澄んだコバルトブルー。当日は曇天でしたが、それぞれの対比が非常に素晴らしく、しばらくその美しさに見とれてしまいました。

 また、清水断崖で最も有名で人気のある展望台の「崇徳休憩所」も訪れました。有名な展望台ということで、ツアーバスで訪れている人も大勢見られました。人気があるだけあって、ここから見る断崖は非常に雄大でした。文字どお切り立った岩の断崖が海岸沿いに延々と続いているように見える様は、息をのむほどの美しさです。曇天だったのはちょっと残念でしたが、それを補って余るほどの絶景で、わざわざ来て本当によかったと思える瞬間でした。

朝の6時ごろに台北駅に到着。まだ朝早いので、駅周辺はまだ人が少ない
改札を抜けてホームへ。乗るのは6時20分発の太魯閣列車
定刻どおりにホームに滑り込んできた太魯閣列車。なかなかかっこいい姿をしている
座席は足下が十分に広いリクライニングシートで、ゆったりと過ごせる
小さなテーブルやドリンクホルダーも用意されている
台北市内を抜けると、豊かな自然が車窓に広がる
1時間ほどすると、海岸を進むようになった
ほぼ定刻どおり、8時過ぎに花蓮駅に到着
花蓮駅前にはタクシーが多く停車しているので、そのうちの1台をチャーターして清水断崖へ向かった
タクシーの助手席に座って、一路清水断崖へ
しばらくすると、険しい山が目前に迫ってきた
35分ほどで最初の見どころに到着
この遊歩道を5分ほど歩くと、見晴らしのよい場所に出る
自分以外にも観光客が大勢いた
切り立った山の奥が開けて、海が見えてきた
展望台に到着
海岸からすぐに切り立つ山がそびえ立っている
海は透きとおったブルーで、山の緑やわずかに見える海岸との対比が素晴らしい
こちらは、清水断崖で最も人気のある展望台「崇徳休憩所」だ
整備された遊歩道を抜けて展望台へ
崇徳休憩所の展望台。奥に切り立った崖が連なっている
奥まで続く切り立つ崖と海の対比は非常に雄大で、わざわざ見に来てよかったと思える瞬間だった

台東では、名物「米苔目」に舌つづみ

 さて、次は12時12分花蓮駅発の「普悠瑪列車」で台東に向かいました。普悠瑪列車は、台湾東海岸側を走る特急電車のなかで最も新しい列車で、こちらも一度は乗ってみたいと思っていました。

 座席は先に乗った太魯閣列車よりもさらに足元が広く、座り心地も抜群の座席で、ゆったりと過ごせます。また、車内販売もあって、日本の特急列車とまったく変わらない雰囲気です。花蓮から台東にかけては、台湾でも有数の米どころで、車窓から眺める一面に広がる緑の水田も印象的でした。こちらも2時間ほどの乗車でしたが、あっという間に台東に到着しました。台東での滞在時間は3時間40分弱です。

 時間はすでに14時を過ぎていて、ちょうどお腹が空いていましたので、台東名物を食べに行くことにしました。実は、台東に寄ることを決めたときから、お店は決めていました。そのお店は、台東の中心部にある「榕樹下米苔目」です。台東名物の麺料理に米苔目という食べ物があるそうですが、台東にある米苔目のお店で、最も人気のあるお店として紹介されていて、事前に絶対寄ろうと決めていたのです。ただ、台東駅は台東の中心部からちょっと離れています。今回は、バスなどの公共交通機関は時間が読めなかったのと、時間が惜しかったので、タクシーで直接お店へ移動しました。

 榕樹下米苔目は人気店ということで、食事どきには行列にもなるようですが、到着したのが14時過ぎだったこともあって、すんなりと入れました。もちろん注文したのは米苔目です。トッピングもありましたが、今回はシンプルな米苔目のみを注文。小腕で値段は45台湾元(約171円)でした。

 米苔目は、うどんに近い太麺の麺料理ですが、うどんとは違って麺は米粉で作られています。讃岐うどんのような強い腰があるわけではありませんが、つるつるとして柔らかめの食感は、これはこれでクセになります。また、スープはかつおベースでとてもあっさりとしています。うどんの出汁にも似ていて、とても美味しいです。

 榕樹下米苔目の米苔目には、ねぎやもやし、肉そぼろ、かつお節などが盛られていて、味の変化も楽しめます。テーブルに置かれている唐辛子ペーストを入れると、ピリッとした辛さが加わって、また違った美味しさとなります。お腹が空いていたこともありますが、とても美味しかったので一気に平らげてしまいました。この美味しさなら人気なのも納得です。小腕とはいってもなかなかボリュームがあって、十分に満足できました。

 お腹もいっぱいになって、時間はまだ3時間弱ありましたので、ここから徒歩で台東を散策することにしました。まず最初に向かったのが、台東の中心部にある、旧台東駅跡です。旧台東駅跡は、今は公園として整備されていて、無料で開放されています。公園内には、昔駅として使われていたホームや線路の一部、使われていた客車、ターンテーブルなどが残されていて、なかなか趣があります。置かれている客車や線路などにも自由に近付けますので、鉄道好きも十分に楽しめそうです。また、周りには台湾の芸術家による芸術作品を展示している「鉄道芸術村」もあります。そちらも無料で開放されていますので、旧台東駅と合わせて楽しむのもいいでしょう。

 旧台東駅の次は、1kmほど先にある海岸へと向かいました。台東の海岸付近は、海浜公園として整備されていて、休日にはさまざまなイベントが行なわれるなどして、台東市民の憩いの場となっているようです。今回は平日に訪れましたが、海岸を散策したり、ベンチでのんびり新聞を読んだりする人などが見られました。花蓮で訪れた清水断崖とは違って、平地の浜辺でしたが、水平線まで見渡せる景色は、これはこれでなかなかのものです。1時間ほど散策で歩きどおしだったので、しばらく海岸でまったりと過ごして、台東駅へと戻りました。

12時12分発の普悠瑪列車で台東へ
普悠瑪列車は、台湾東海岸を走る最新の振り子式電車。先に乗った太魯閣列車同様にかっこいい車体だ
リクライニング座席は可動式のヘッドレストもあって快適だ
足元も非常にゆったり
普悠瑪列車では車内販売もある
花蓮から台東にかけては台湾有数の米どころで、車窓には一面の水田が広がる
ほぼ定刻どおりに台東駅に到着
台東駅からタクシーで台東名物米苔目のお店「榕樹下米苔目」に
14時を過ぎていたのですぐに店内には入れたが、店内は大勢の客がいて、人気の高さがうかがえた
まずは店頭で注文
今回は、オーソドックスな米苔目の小腕を注文。値段は45台湾元。日本語メニューも用意されているようだ
榕樹下米苔目の米苔目。ネギや肉そぼろ、かつお節などが盛られて、なかなか豪華な見た目だ
米粉で作られた麺は、つるつるとして柔らかい、日本のうどんとは違う食感で、病みつきになる美味しさだ
かつおベースのスープは、優しい味で、日本人にもバッチリ合う
唐辛子ペーストを入れるとピリッと引き締まって、また違う美味しさになる
食事を終えて、徒歩で台東を散策
旧台東駅跡に到着。今は公園として整備されている
実際に昔使われていたホームや駅舎の一部などが残されている
こちらは実際に使われていた客車。近くまで寄って見学できる
このように線路も残されている
ターンテーブルもあった
旧台東駅の看板
いろいろな昔の鉄道の施設を残しつつ、公園として整備されている
鉄道跡はこのように遊歩道として整備されている
公園周辺には、「鉄道芸術村」として台湾の芸術家が制作した作品も展示されている
次に、徒歩で海岸へ移動
海岸付近には遊歩道や公園が整備されていて、台東市民の憩いの場となっている
海浜公園には、ベンチで談笑するカップルや、新聞を読む市民の姿が見られた
水平線まで見渡せる海岸は、清水断崖とはまた違った趣があり、のんびり過ごすのに最適だ

現地に足を運んで応援しよう!

 この旅では、1日で鉄道を使い台湾を1周するという目的もありましたので、17時40分発の特急「自強号」で高雄へと移動して、さらに台湾新幹線を使って台北へと戻りました。台北に到着したのは22時30分過ぎでした。

 このように、台湾鉄路と新幹線を駆使すれば、1日で台湾を1周しながら台湾東海岸の観光地を巡ることも十分に可能です。しかし、観光に割ける時間はかなり短くなってしまいますので、慌ただしくなるのも事実です。ですので、実際に台湾東部を観光するなら、宿泊しつつ巡るのがお勧めです。花蓮では、本当は清水断崖だけでなく、太魯閣渓谷も訪れたかったのですが、それにはほぼ1日必要となります。また、台東市の観光も中途半端だったように思います。ですので、次に訪れる時には、各地で宿泊しつつ、もっとゆっくりと東海岸を巡りたいと考えています。

 そして、実際に現地に足を運ぶことは、現地の人に対する支援につながることになります。地震で被害はありましたが、現地は日常生活が戻り、観光客の受け入れ体制も整っているということですので、心配することなく訪れられると言っていいでしょう。

 東日本大震災での台湾の方々の支援は、我々も忘れることができません。今度は、我々が恩返しをする番と言えます。そういった想いも込めて台湾東部を訪れてみてはいかがでしょうか。私も、また台湾に行く機会があれば、ぜひとも台湾東部を訪れたいと思います。

あっというまの台東滞在だったが、17時40分の「自強号」で高雄へ移動
この先は非電化区間もあるため、気動車での移動となる
車両はやや古い印象だったが、座席は十分にゆったりとしている
台東を出発してしばらくは海岸線を走る
ほぼ定刻どおりに高雄駅に到着
新左営駅から日本の700系新幹線をベースとする台湾新幹線で台北駅へ
車内はまさしく日本の新幹線そのものだ
定刻どおり、22時30分過ぎに台北駅に到着。約16時間の慌ただしい旅ながら、なかなか満足できた。でも、次はもっとゆっくり花蓮や台東を観光したいという思いも強まった

平澤寿康

うどん県生まれ。僚誌PC Watchなど、IT系の執筆を中心に活動。旅&乗りもの&おいしいもの好きで、特に旅先でおいしいものを食べるのに目がない。ただし、うどんにはかなりうるさい。