旅レポ

ルーベンスからモンドリアン、ミッフィーまで! アートに触れて美食に酔いしれるオランダ&ベルギーの旅(その5)

フェルメール、モンドリアン、レンブラントとアートに浸る、オランダ後編

オランダ&ベルギーの旅もいよいよ最終回!

 アートとグルメをテーマにお伝えしてきたベルギー&オランダの旅レポもいよいよ最終回。今回はリゾート地スヘフェニンゲンや行政都市ハーグ、そして首都アムステルダムと巡ったオランダ後編をお送りします。

解禁日にトライ! 日本人の口にも合うオランダ名物ニシンのハーリング

これが基本の食べ方

 オランダでは毎年6月中旬に初物のニシンを売り出します。ラッキーなことに2017年のニシン漁の解禁直後に北海に面したスヘフェニンゲンというリゾート地を訪れることができました。初ニシン解禁を祝うお祭り「Flag Day(フラッグデイ)」のなか、私たちもオランダ流で食べることに。

 添えられた刻みタマネギをパラパラとかけたら、尾っぽをつまんで顔の位置まで持ち上げて大きな口を開けてパクリ。生臭いかな? と思ったら、まったくそんなことはなく、2、3匹はぺろりといけちゃう美味しさ! 採れたてをさばいているので鮮度は抜群。このころのニシンは脂がのっていて美味しい! 軽く塩を振って食べるので、日本人の口にも合います。

ニシン売りのお姉さんたち。次から次に来るお客さんを相手にせっせと内蔵や骨を取り除いていました
1匹だと2.25ユーロ(約279円、1ユーロ=124円換算)で、5匹で10ユーロ(約1240円)。なかには3匹くらいをぺろりと立ち食いする地元のおっちゃんも
塩加減が絶妙で感動! 刻みタマネギとピクルスがこれまた合う

マウリッツハウス美術館で「真珠の首飾りの少女」とご対面

 オランダ第3の都市ハーグは、国会議事堂や国際司法裁判所などがある国際政治都市。首相官邸も首都アムステルダムではなく、ここハーグにあります。そんなハーグでの観光といえば「マウリッツハウス美術館」。そしてここの人気者といえば、日本でもよく知られている「真珠の首飾りの少女」です。

 ほかにも数多くの珠玉作品を所蔵するマウリッツハウス美術館ですが、思っていたよりも小じんまりとしていてアットホームな感じ。それもそのはず、ここは17世紀にマウリッツ公の私邸として建てられた建物なのだそう。優雅な外観、室内の装飾、階段のレリーフ、天井画、壁紙……貴族の館のような雰囲気で居心地のよい美術館でした。

室内の装飾が素晴らしい
日本でもよく知られているフェルメールの名画とご対面
真珠の“光と影”の部分を間近で見ると吸い込まれそうな感覚に
この作品のファンが増えてきたので設置したという柵。「彼女専用のバルコニーね」とガイドさん
壁から腕! のユニークなキャンドル立て
個人的に強烈に印象に残ったレンブラントの「テュルプ博士の解剖学講義」だけれど部屋には飾りたくはない
パウルス・ポッテルの「雄牛」。この超写実的な作品は、かつてマウリッツハウス美術館の人気No.1だったそう
ガイドさん曰く、このカレル・ファブリティウスの「ゴシキヒワ」は“マウリッツハウスの宝物”なのだとか
マウリッツハウス美術館

所在地:Plein 29, 2511 CS Den Haag, Netherlands
Webサイト:マウリッツハウス美術館(日本語)

今年は「デ・スタイル」100周年、モダンアートに沸くオランダがアツイ!

何気に私もモンドリアン・カラー

「デ・スタイル(De Stijl)」とは、1917年にオランダで創刊した雑誌の名前、それに基づく芸術運動のことをいいます。創立メンバーは画家のピエト・モンドリアンや建築家・デザイナーのヘリット・リートフェルトなど数名(リートフェルトのデザインしたシュローダー邸や椅子は前編のユトレヒトでお伝えしました)。

「デ・スタイル」の理念はモンドリアンが唱えた“垂直と水平の線と原色による表現”、いわゆる「新造形主義」というものなのですが、まぁ難しいことは置いておいて、今まで見てきた絵画とはまったく別物と言ってよいくらい抽象的なアートであり、オランダでは革命的な芸術ムーブメントだったのです。のちにミッフィーの生みの親ディック・ブルーナさんも影響を受けたと言われているほど。そんなモンドリアンの作品を約300点所蔵しているハーグ市立美術館を訪れました。

 この展覧会のウリは、ピエト・モンドリアンが初期のころに描いていた暗い風景画から、次第に作品のなかにリズムが生まれ、そのスタイルを単純化していって、最終的に垂直・水平線と3原色からなる抽象画を確立するまでの過程を一堂に見られること。これはモンドリアンコレクションでは世界最大というハーグ市立美術館ならでは。モンドリアン・ファンなら、これを見るためだけにオランダを訪れてもよいのでは?

初期のころの作品
それがどこでどうなるとこんな作風になるのでありましょうか
ご多分に漏れず、ここのショップもめちゃくちゃ楽しい

 ……というわけで「デ・スタイル」100周年の2017年、ハーグの街はモンドリアン・カラーにあふれていました。どれだけ盛り上がっているかというとご覧のとおり。

大胆にモンドリアン・ペイントがされたビル
キリンもモンドリアン
駅もモンドリアン
キオスクもモンドリアン
ピアノもモンドリアン
工事中の壁もモンドリアン
ホテルの窓もモンドリアン
ブティックもモンドリアン
ショップの窓もモンドリアン
ハーグ市立美術館

所在地:Stadhouderslaan 41, 2517 HV Den Haag, Netherlands
Webサイト:ハーグ市立美術館(英語)

海辺のリゾート地スヘフェニンゲンにある5つ星豪華ホテル「グランドホテル アムラス クアハウス」

 冒頭のニシンを食べた街スヘフェニンゲンで泊まったホテルをご紹介しましょう。「グランドホテル アムラス クアハウス」は、北海を望むビーチ沿いに建つ豪華な大型リゾートホテル。この日は外で生バンドの演奏があったりして、夏のホリデームードを満喫している風の人たちでいっぱいでした。ビーチ沿いにはフリッツやシーフードを売るカフェやレストランがたくさん並んで楽しそうな雰囲気でしたよ。

お城みたいなホテル
シックなお部屋。反対側の海側は目の前にビーチが見える(はず)
北海に沈む夕陽
バンジージャンプや観覧車などがあるPier(=埠頭)

 ここのビーチには夏限定でディック・ブルーナさんのイラストが描かれたポールが目印に立っています。北海は砂浜が広いので、子供たちが迷わないでパパやママのところに戻ってこられるようになのだそう。

100mおきくらいに立っている目印のポール
ブルーナさんの絵のなかでも特に好きな1枚を発見して1人コーフン
ここのホテルの朝食は豪華! ご覧ください、このチーズやハムの種類。パンもいろいろあってどれも美味しかった
グランドホテル アムラス クアハウス

所在地:2586 CK Den Haag, Netherlands
Webサイト:グランドホテル アムラス クアハウス(英語)

アムステルダム国立美術館併設のミシュラン星付きレストラン

お料理の前に、このイケメンシェフに目が釘付け

 いよいよ最後の訪問地アムステルダムにやってきました。「アムステルダム国立美術館」に併設のステキなレストラン「RIJKS」でランチをいただきました。ここは2014年のオープンにして、早くも2016年にミシュラン星を獲得したという実力あるレストラン。取材に応じてくれた30代の若手シェフが「お隣の国立美術館がオランダのアートの文化を伝える場所なら、ここはオランダの食の文化を伝えるところ」と言うだけあって、地元食材にこだわった美しいお料理を提供しています。

レストラン「RIJKS」
どれだけ国立美術館に近いかというと、これくらい@テラス席より

 ランチは37.50ユーロ(3皿/約4650円)のコースと47.50ユーロ(4皿/5890円)の2コース、ディナーは67.50ユーロ(6皿/8370円)と手が出るお値段なのも魅力。肩肘張らずに気軽に楽しめる雰囲気が魅力のレストランでした。

何はともあれ白ワイン
お味はもちろんですが、お皿もテーブルコーディネートもステキなのです
レストラン「RIJKS」

所在地:Museumstraat 2, 1071 XX Amsterdam, Netherlands
Webサイト:RIJKS(英語)

広いホールの正面にある「夜警」に圧倒! アムステルダム国立美術館

いよいよやってきました

 17世紀のオランダ絵画を中心に、彫刻や陶器、アジアの彫像なども所蔵するオランダ最大のミュージアム「アムステルダム国立美術館」。約1時間と滞在時間が少なかった今回は、アートに強い同行のライターさんが“ここに来たら観るべき見どころツアー”を開催してくださったので助かりました。たぶんそれがなかったら私一人ウロウロして終わったはず!(Kさんありがとうございました)。

 そんな私のような初心者の皆さんにお勧めなのがアムステルダム国立美術館公式アプリ。日本語で聞くことができてしかも無料という素晴らしいアプリです。くれぐれもイヤホンをお忘れなく!

入場料は大人17.50ユーロ(約2170円)。18歳以下は無料
Rijksmuseum(アムステルダム国立美術館)公式アプリ。作品名ボードにある数字を入力すると解説をしてくれる
レンブラントの傑作「夜警」
とんでもなく大きな作品
レンブラント「使徒パウロの姿の自画像」
フェルメール「牛乳を注ぐ女」
スペインの画家、ゴヤの作品
帽子をかぶってネクタイ姿。このゴッホの自画像はカッコいいと思う
国立美術館のミュージアムショップ。ミッフィー夜警バージョン!
アムステルダム国立美術館

所在地:Museumstraat 1, 1071 XX Amsterdam, Netherlands
Webサイト:アムステルダム国立美術館(英語)

オランダのインテリアブランド「moooi」のショールームを見学

mooiは美しいという意味。1つ多い“o”はオリジナリティの“o”だという

 アムステルダムでは、オランダ人デザイナー、マルセル・ワンダース氏がディレクターを務める「moooi」のショールームに立ち寄ることができました。革新や自由をモットーとしているというこちらのショップ、店内は洗練されたインテリアや大胆で遊び心あふれるグッズがいっぱい。なかには日本人デザイナーが手掛けたシャンデリアが展示されていたりも。

 世界的に活躍するマルセル・ワンダース氏、実はKLMオランダ航空のビジネスクラスで使われる機内食用食器のデザインを担当しています。一部のカトラリーや食器は機内販売もしているのだそう。洗練されたダッチデザインに囲まれてのフライトは、さぞかし気分が盛り上がるハズ! 次回はぜひともKLMのビジネスクラスで行ってみたいなぁ~。夢は広がります。

マルセル・ワンダース氏
MAISON DECORTE, interior design by Marcel Wanders, 2017

Webサイト:moooi(英語)
Webサイト:KLMオランダ航空
Webサイト:Marcel Wanders

お部屋が全部違う! アムステルダムの名物ホテル

 最後にご紹介するのはアムステルダムで泊まった「ロイド・ホテル」です。実はここ、全117室ある部屋が、1つ星から5つ星まで5段階に分かれているというちょっと変わったホテル。一番格安な1つ星は、バスルームが共同のツインルームといった感じでグレードも内装も部屋によって違うため、予算に合わせてチョイスが可能です。

建築物としても歴史のあるロイド・ホテル
1階にある広~いカフェスペース
オープンテラス席も。ここで食べた朝食はよい思い出

 建物はかなり歴史があって約100年前の建設当時は移民の待機所として使われていたのだそう(←ちょっとコワイ)。そんな歴史的建造物としての価値も持つホテルのリノベーションを手掛けたのは、ロッテルダムでご紹介したオランダの建築集団MVRDV。お部屋訪問をしたのですが、本当に1つとして同じタイプ? テーマ? の部屋がないくらい個性的でした。ダッチデザイン、ダッチアートに興味がある人は泊まるべし! アムステルダム中央駅にもトラムで10分ほどと良ロケーションです。

歴史を感じる廊下
じゃ~ん! 私は最上階の屋根裏部屋でした。ってココは星いくつの部屋だったのかしら?
ハイジになった気分の屋根裏部屋。唯一の窓からは運河を眼下に見下ろせました
ロイド・ホテル

所在地:Oostelijke Handelskade 34, Amsterdam, Netherlands
Webサイト:ロイド・ホテル(日本語)

 以上、全5回でたっぷりご紹介したベルギー・フランダース&オランダの旅でした。前述のとおり、2017年はオランダがデ・スタイル100年のアニバーサリー・イヤーで盛り上がり中。ベルギー・フランダースでは、2018~2020年は「フランドル絵画年」として各所でイベントが開催される予定です。そして2019年には数年間の休館を経ていよいよアントワープ王立美術館がオープン! こちらも見逃せませんね。さまざまなアートでますます盛り上がっていくオランダ&ベルギーの旅、皆さまも計画してみてはいかがでしょうか。

ゆきぴゅー

長野生まれの長野育ち。2001年に上京し、デジカメライター兼カメラマンのお弟子さんとして怒涛の日々を送るかたわら、絵日記でポンチ絵を描き始める。独立後はイラストレーターとライターを足して2で割った“イラストライター”として、雑誌やWeb連載のほか、企業広告などのイメージキャラクター制作なども手がける。