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オランダ・ベルギー観光セミナー開催。ネロが見たかったルーベンスの作品があるアントワープ・聖母大聖堂などを紹介
オランダはフェルメール、レンブラント、ゴッホの足跡をたどる旅
2018年7月14日 00:00
- 2018年7月10日 開催
ベルギー・フランダース政府観光局とオランダ政府観光局は、日本の旅行業者向けに、オランダ、ベルギーの観光セミナーをベルギー王国大使館(東京都千代田区二番町)で開催した。
2019年はオランダの画家レンブラント・ファン・レインの没後350年、ベルギーの画家ピーテル・ブリューゲル(父)の没後450年にあたり、日本でもフェルメール展、ルーベンス展が企画され、アートを通じてオランダ、ベルギーへの興味・関心がさらに高まることが期待されることから、今回旅行商品造成・PRのためのセミナーが企画された。
日本人旅行者数の伸びが宿泊数で26.6%増、人数で34.6%増と「非常に良好」
セミナーではベルギー王国大使館 特命全権大使のギュンテル・スレーワーゲン氏が開会のあいさつに立ち、2016年から2017年のベルギーへの日本人旅行者数の伸びが宿泊数で26.6%増、人数で34.6%増と「非常に良好」と紹介。
ベルギーは多くの著名な芸術家を輩出した「芸術の国」であり、オランダ政府観光局とベルギー・フランダース政府観光局による、アートを軸にした観光プロモーション「フランダースの巨匠たち 2018-2020」がスタートし、数々の展覧会が予定されている。そして一方、人口あたりのミシュランガイドの星付きレストラン数が世界一という「美食の国」でもあるとことに触れ、「ベルギーのさまざまな面を見ていただけたら」と話した。
アントワープといえば、日本でも「フランダースの犬」が有名だが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのちょうど100年前、1920年に、アントワープでオリンピックが開かれた際、男子テニスで熊谷一弥選手と柏尾誠一郎選手が日本人初のオリンピックメダリストになっていて、日本との縁が深いと紹介した。
最後に「今日のセミナーではさまざまなデスティネーションやアトラクションを紹介しますが、それによって日本と欧州が相互に関心を持ち合い、欧州、とくにベルギーやオランダ、フランダースの文化について日本の方によく知っていただいて、相互の理解が進んでいけばと思います」と述べて、あいさつを締めくくった。
2019年に没後450年となるブリューゲルの足跡をたどる「ヨーロッパの美しい街道・道20選」の「ブリューゲル街道」
ベルギーのプレゼンテーションは、ベルギー・フランダース政府観光局 日本地区局長の須藤美昭子氏が担当した。
ブリュッセル空港は「フランダースの巨匠たち 2018-2020」に関連した装飾、広告が施されていること、ブルージュでの旅行業者によるウォーキングツアーが事前認可制になったこと(個人旅行は無関係)、ダイヤモンド博物館「DIVA」が5月7日に開館したことなど、最近のトピックをまず紹介した。ちなみにダイヤモンドの取引所が4カ所もあるのは世界中でもベルギーだけだという。もともとB to Bの市場ではあるものの、博物館は個人の見学も可能であり、観光名所の大聖堂広場からも徒歩数分の立地なので、新しいスポットとしてお勧めとのこと。
紹介したい新しいホテルは、アントワープには2軒。「ホテル・フランク」は、高額所得者向け銀行だった建物をリニューアルしてブティックホテルにしたもので、全42室。ちなみにホテル名は昔の通貨「ベルギー・フラン(オランダ語でBelgische frank)」が由来。もう1軒は6月30日にオープンしたばかりの「ハンプトン・バイ・ヒルトン・アントワープ・セントラル・ステーション」。全145室と規模が大きく、アントワープ中央駅近くにあって交通の便もよい。そのほかゲントには郵便局を改装した「1898 ザ・ポスト・ホテル」がオープンし、ブルージュには「ラディソン ブルー ブルージュ」が8月にオープンする予定となっている。
「フランダースの巨匠たち 2018-2020」では、2018年にルーベンスを取り上げアントワープを中心に、2019年に没後450年のブリューゲルを取り上げブリュッセル・アントワープを中心に、2020年にファン・エイクを取り上げゲントを中心にさまざまなプロモーション、イベントが展開される。
6月にルーベンスの家にルーベンスの自画像が戻ってきたことから「ルーベンスの帰還」展を開催。また、ルーベンスの家に隣接して「ルーベンス・エクスペリエンス・センター」も新設される予定になっている。そのほかルーベンスに縁のある教会として、ルーベンスが眠る聖ヤコブ教会、ルーベンスが建築も含めてデザインした聖カルロス・ボロメウス教会、ネロとパトラッシュで有名になったルーベンスの祭壇画がある聖母大聖堂などが紹介された。聖カルロス・ボロメウス教会には、ルーベンスの「聖家族のエジプト逃避」が240年ぶりに戻り展示されている。
また、日本でも東京・上野の国立西洋美術館で「ルーベンス展-バロックの誕生」が、10月16日から2019年1月20日まで開催される。この展覧会には「アントワープにあるもの以外の主要なルーベンス作品が世界中から集まる」そうで、このルーベンス展に行ってからアントワープに行けば、「ルーベンスのほとんどの作品を見たことになる」という。
国立西洋美術館「ルーベンス展-バロックの誕生」
会期:2018年10月16日~2019年1月20日
開館時間:9時30分~17時30分(入館は閉館30分前まで) ※金・土曜は20時まで開館。ただし11月17日は17時30分まで
会場:東京・上野公園 国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7-7)
観覧料:
[前売り]一般1400円、大学生1000円、高校生600円
[当日]大人1600円、大学生1200円、高校生800円
※中学生以下は無料
Webサイト:ルーベンス展-バロックの誕生
2019年は「バベルの塔」などで知られる没後450周年のブリューゲルを取り上げる。JATA(日本旅行業協会)が選定した「ヨーロッパの美しい街道・道20選」にベルギーの「ブリューゲル街道」が入っており(関連記事「日本旅行業協会、『ヨーロッパの美しい街道・道20選』を決定」)、ガースベーク城やシント・アナ・ペーデの教会など、ブリューゲルがスケッチをしてまわった風景と、「穀物の収穫」「盲人の寓話」「絞首台のカササギ」「鳥罠のある冬景色」といった作品とのリンクを道々に楽しむことができる。2019年4月6日~7月28日には、ガースベーク城で企画展が予定されている。また、ブリューゲルがブリュッセルに移り住んでからの足跡をたどる旅もお勧めで、ベルギー王立美術館やシャルル・ド・ロレーヌ宮などで作品を見ることができる。
2020年は、ファン・エイク兄弟による「神秘の子羊」の修復作業が完了し、ゲントの聖バーフ大聖堂に戻ってくることから「ファン・エイク年」となる。作品の中央にいる羊は「目もパッチリ」になるなど鮮やかな当時の姿を取り戻すそう。
平日はゲント美術館で行なわれている修復作業を見学することができ、休日は作業が休みのため、ガラスの手前に作業中の作品が移動・展示されるので、より近くで見ることができる。2020年2月1日から4月30日までゲント美術館MSKで「ファン・エイク。光の革命」展が開催予定で、同年6月には聖バーフ大聖堂にビジターセンターが開館することになっている。
レンブラント、フェルメール、ゴッホを軸にオランダを旅する
続いてオランダ政府観光局 日本地区局長の中川晴恵氏が、オランダ観光の最近のトピックやアートツーリズムなどについて紹介した。
オランダへの日本人渡航者数は2016年が10万9000人と落ち込んだものの、2017年は11万9000人で回復基調にある。以前はチューリップが盛りを迎える春に渡航者が多かったが、秋の渡航者も増えている。外国人全体でも順調に増えていて、とくに2016年から2017年に伸び、2017年は1405万人がオランダを訪れている。
人気観光地のアムステルダム飾り窓地区は、外国人観光客が増え、一部にはマナーのわるい観光客もいることから、2018年4月からツアー客への規制が行なわれる。具体的には23時までにツアーを終えること、交通量の多い場所で立ち止まらないこと、メガフォン・スピーカ・大声で案内しないことなどが盛り込まれ、違反者には罰金が科せられる。また、アムステルダム市内の地下鉄整備が進んでおり、2020年には市内への観光バスの進入が全面禁止になる予定だ。
レンブラント没後350年の2019年は、関連した企画展が多く開かれる。アムステルダム国立美術館では2019年2月15日~6月10日まで「レンブラント展」を開催。絵画22点、素描60点、版画300点など、同美術館が所蔵する世界最大のレンブラント・コレクションをすべて展示する。また、10月11日から2020年1月19日までは「レンブラントとベラスケス展」を開催する。
2018年から2019年にかけてアムステルダム国立美術館を訪れるときは、他国の美術展に有名作品が貸し出されている時期があるので要注意。「牛乳を注ぐ女」は10月5日から2019年2月3日まで東京に、「手紙を読む青衣の女」は7月3日から9月30日までミュンヘンに、「恋文」も2019年2月から5月まで貸し出される予定だ。
つまり、日本で開催される「フェルメール展」には、「牛乳を注ぐ女」と「恋文」がやってくることになる。現存するフェルメールの作品はとても少ないことが知られているが、絵画35点中8点が、この日本開催展に集まる。ただし、「牛乳を注ぐ女」は10月5日から2019年2月3日までの東京展(上野の森美術館)でしか見ることができない。
アムステルダムにある「レンブラントの家」では、2019年2月1日から5月19日に、レンブラントの家族、友人、知人に焦点を当てた企画展「レンブラントのソーシャルネットワーク」展が開かれる。アムステルダムには、レンブラント広場のほかに、「テュルプ博士の解剖学講義」が描かれた場所である「カフェ・イン・デ・ワーフ」やレンブラントが眠る「西教会」など、レンブラントに縁のあるスポットがある。
ハーグにあるマウリッツハウス美術館では、2019年1月31日から9月15日まで「マウリッツハウスのレンブラント」展(仮)が開かれる。レンブラントの自画像や前述の「テュルプ博士の解剖学講義」「シメオンの賛歌」など関連作品18点を展示する予定だ。
レンブラントの故郷であるライデンでは、2019年11月3日から2020年2月9日までラーケンハル美術館で「若き日のレンブラント」展が開かれるほか、レーワルデンのフリース博物館では、11月24日から2019年3月17日まで「レンブラントとサスキア」展が予定されている。
フェルメール、レンブラントと並んでオランダを代表するゴッホについては、北ブラバント美術館で2019年9月21日から2020年1月12日まで、ゴッホ、ゴーギャン、シニャックらの絵画・素描・手紙を通じてゴッホの家族や身近な人々との人間関係を探る「ゴッホ」展が開催される。アムステルダムにあるゴッホ美術館では、入場券の販売がWebサイトのみとなり、当日窓口に行っても購入できないので要注意。2019年2月15日から5月26日までは「デイヴィット・ホックニー」展が開催される。また、クレラーミュラー美術館では、地元産の食材を使ったゴッホの作品にちなんだメニューを提供。「馬鈴薯を食べる人々」と題したスープとサラダ、「ひまわり」や「ファン・ゴッホ」と題したコースメニューを用意する。
そのほかアムステルダムから電車で約30分のユトレヒト、約40分のロッテルダム、電車で約50分のハーグの見どころなどに触れたほか、最後に成田~アムステルダム線、関西国際空港~アムステルダム線などを運航するKLMオランダ航空のビジネスクラス向けサービス「Anytime For You」が紹介された。Anytime For Youは、日本発のフライトで、離陸後1回目の食事のあとに、好きなタイミングで好きな料理をオーダーできるサービスだ。