イベントレポート

【パリ航空ショー 2019】ボーイング、2038年までの商用航空機の市場を展望する「Commercial Market Outlook」。アジア太平洋が市場の中心に

旅客需要はGDPの成長を上回る勢いで成長

2019年6月17日~23日(現地時間)開催

ボーイング 民間航空機部門 マーケティング担当 副社長 ランディ・ティンゼス氏

 フランス ル・ブルジェ空港で6月17日~23日(現地時間)、世界最大級の航空展示会「パリ航空ショー(International Paris Air Show)2019」が開催されている。

 ボーイングは6月17日(現地時間)、「Commercial Market Outlook」と呼ばれる商用航空機の市場展望を説明する記者説明会を行なった。ボーイングは毎年こうした市場動向の予測を公開しており、例年この時期に行なわれる航空ショーなどに合わせて発表している。

 今年公開したのは2019年から2038年におよぶ20年間の予測で、今後20年間の航空業界の需要がどうなっていくのかを分析しており、航空会社の関係者やボーイングの下請け企業などに、今後のビジネス計画を立てる際の参考にしてもらうために作成している資料になる。

1980年~2018年にGDPは3倍になり、RPKはそれを上回る7倍を実現している

旅客機とサービスを合わせた需要は合計16兆ドル

 ボーイングは同日午前中に行なった記者説明会で、全部門の10年間の市場予測を公開した(関連記事「【パリ航空ショー 2019】ボーイング、737 MAXの現状や事業の見通しを説明。マクアリスター氏『777Xの予定に変わりはない』」)。

 それによれば、今後10年のボーイングの潜在需要は8兆7000億ドル(1ドル=約110円換算で約957兆円)で、このうち旅客機が今後10年で3.1兆ドル(約341兆円)と明らかにした。そのあとに実施した「Commercial Market Outlook」では、ボーイング 民間航空機部門 マーケティング担当 副社長 ランディ・ティンゼス氏が登壇、その後の10年も含む2038年までの20年間の市場展望に関して説明した。

30以上の座席を持つ旅客機と貨物機の需要は6兆8000億ドル、それに伴う各種サービスへの需要は9兆1000億ドル
経済成長と旅客需要
市場の歴史
2008年と2018年の比較
ロングホール(長距離)・ワイドボディ機の需要が成長

 ティンゼス氏は「次の20年間において30以上の座席を持つ旅客機と貨物機の需要は6兆8000億ドル、それに伴う各種サービスへの需要は9兆1000億ドルになり、合計で16兆ドルに達する見通しだ」という。その理由としては「ナローボディ(単通路)機が路線網の拡大を促しており、2008年と比較すると60%増える。またロングホール(長距離)のワイドボディ(双通路)機のルートも増えており、2008年に比較すると550路線も増える」と述べ、過去10年ではナローボディ機、ワイドボディ機、どちらの需要も拡大することで、旅客機の需要が向上してきたと説明した。

Resilient(弾力性)、Sustainable(持続性)、Productive(生産性)

 そしてこれまでのトレンドを象徴する言葉として「Resilient(弾力性)、Sustainable(持続性)、Productive(生産性)」という3つの言葉を挙げた。

1980年~2018年にかけてGDPが3倍になっているのに対し、RPKsは7倍に

 ティンゼス氏は1980年から2018年にかけてはグローバルなGDPは3倍になっているが、RPK(Revenue Passenger Kilometers:有償旅客キロ、料金を払って搭乗した乗客が乗った距離)は7倍になっており、世界経済よりも速いペースで成長しているという。「なぜかと言えば、特に発展途上国の路線などの市場が急速に成長しているからだ。高効率なLCCの成長率なども後押ししている」と述べ、弾力的に成長が続いていることを指摘した。

持続的成長

 持続的な成長性に関しては発展途上国の中産階級の勃興が成長を促していると説明した。具体的にはインドネシアなどの東南アジアと中国の成長が著しく、それに合わせてLCCが成長することでチケットが低価格になり、さらなる飛行機の利用を促していると述べた。

生産性が向上

 そして生産性に関しては、トラフィックは増えたがそれに合わせて新しい航空機が投入されて、古い航空機とのリプレースが進んだことで、航空会社の効率が上昇したと説明した。

2038年までGDPは年率2.7%成長予測のなか、RPKは年率4.6%で上回ると予測

GDPは2.7%、RPK(有償旅客キロ)は4.6%、商用サービスが4.2%、RTK(貨物重量キロ)は4.2%の年成長率

 今後の20年の予測に関してティンゼス氏は、「GDPは2.7%、RPKは4.6%、商用サービスが4.2%、RTK(貨物重量キロ)は4.2%の年成長率になると予想される」と述べ、今後も世界経済は成長し、それに伴って航空需要は旅客向けも、貨物向けも成長していくという。

旅客機の予想
機数は倍に

 旅客機に関しては今後20年で4万4000機の需要があると考えられ、ナローボディ機が3万2420機、ワイドボディ機が8340機、リージョナルジェットが2240機、貨物機が1040機の内訳になり、トータルで6兆8000億ドル(約748兆円)の市場規模になると説明した。これにより、2038年には航空会社が所有する旅客機は、2018年の2万5830機から2038年には5万660機になるという。つまり、2038年には現在の倍近い数が現役の飛行機として地球上を飛び回ることになる。

市場の中心は北米や欧州からアジア太平洋地域に
アジア太平洋地域が40%を占めるようになる

 その市場の中心になるのは中国や東南アジアなどのアジア太平洋地区だとして、「1961年には航空機の市場は3つしかなかった。米国の国内線、米国の国際線、それ以外。しかし、これからは成長市場である中国や東南アジアなどが中心になっていく。経済成長が今後も期待でき、今後も人口が増え、より多くの中産階級が生まれるからだ」と説明した。

貨物機も成長
貨物機の機数
サービスは9兆1000億ドル

 また、貨物機の需要に関しても、Amazonなどのeコーマスの進展が成長を促すとして、2038年までに1040機の新しい需要と、旅客機からの転用が1780機期待できるとした。さらに、サービスに関しては9兆1000億ドル(約1001兆円)の需要が期待できると説明した。

ボーイングのラインアップ

 そのうえで、ボーイングのラインアップについて触れ、旅客機では737型機から747型機まであり、ナローボディからワイドボディまでフルラインアップで用意しているほか、貨物に関しても複数のラインアップを用意しているなどと、競合他社(エアバス)に比べた優位性を強調した。