イベントレポート
【パリ航空ショー 2019】ボーイング、737 MAXの現状や事業の見通しを説明。マクアリスター氏「777Xの予定に変わりはない」
737 MAXの運航再開は当局の承認待ち
2019年6月19日 05:17
- 2019年6月17日~23日(現地時間)開催
航空機メーカーのボーイング(Boeing)はフランス ル・ブルジェ空港で6月17日~23日(現地時間)に開催されている世界最大級の航空展示会「パリ航空ショー(International Paris Air Show)2019」の初日(6月17日、現地時間)に記者会見を開催し、現在同社が置かれている状況に関する説明を行なった。
このなかでボーイング CFO(最高財務責任者)兼 企業成績・戦略担当 上級副社長 グレッグ・スミス氏は、同社のボーイング 737 MAXで発生した2件の墜落事故の犠牲者とその家族に対して哀悼の意を表明し、「弊社で何よりも優先していることは安全性だ。今回の事故の教訓を全社で共有し、今後も、安全性、品質、整合性の3つを重視していく」述べ、今回の事態の教訓を今後の航空機開発に活かしていくと強調した。
また、注目されている737 MAXの運航再開に関しては「3階層によるプロテクションを追加したソフトウェアアップデートをすでに行なっており、テストパイロットによる多数の飛行も行なわれているなど確実な進展を見せている。
FAA(連邦航空局)やほかの規制当局と737 MAXが安全に運航できるように協力しており、それを決めるのは規制当局で、我々はいかなる予測もしていない」(ボーイング コマーシャルエアプレーンズ 社長兼CEO ケビン・マクアリスター氏)と述べ、現状で着実に対策は進展しているが、いつ運航を再開するかはFAAをはじめとした各国の規制当局となるため、見通しなどはボーイングからは語れないと説明した。
737 MAXのセンサーはアップデート済み、運航再開時期は規制当局の判断次第
ボーイングの記者会見は、通常であれば今後のビジネスの見通しなどに関して説明される場として行なわれる。今回の記者会見も、今後のビジネスの見通しに関して話す内容だったが、冒頭で同社のボーイング 737 MAXが2機(ライオン・エア610便、エチオピア航空302便)墜落した件に関する哀悼の意の表明が行なわれた。グレッグ・スミス氏は「737 MAXの件に関しては常に我々にとって一番重要なことだと認識している。今回の悲劇で犠牲になった方やご家族にお悔やみ申し上げたい」と述べた。
その後、「弊社にとって安全は常に最優先だ。我々はこの件から学び、問題を解決するために24時間365日努力を続けていく。そして、737 MAXを安全に飛行できるようにするために、我々のエンジニアが全力で取り組んでいる。今後も安全性、品質、整合性の3つを徹底的に追求していく」と続け、ボーイングとしても飛行機のメーカーとして問題から学び取れることは学び、737 MAXだけでなく同社の全製品にフィードバックを続けていくと表明した。
今回の会見でボーイングは「安全性は弊社にとって最優先の課題だ」と何度も繰り返しており、同社が危機感を持ってこの737 MAXの件に関して取り組んでいることを感じさせる会見となった。
なお、会見の後半に行なわれた質疑応答でも737 MAXの事故に関する質問が集中した。ケビン・マクアリスター氏は「3階層によるプロテクションを追加したソフトウェアアップデートをすでに行なっており、テストパイロットによる280のテスト飛行も行なわれているなど、確実な進展を見せている」と述べ、事故の原因とされているセンサーに関してはすでにソフトウェアアップデートを行なっており、それにより問題は解決しているという従来の見解を繰り返した。
商用は341兆円、防衛は275兆円、サービスは341兆円と今後10年の需要を予測
ボーイングのビジネスの見通しに関しては、今回の会見では初めて3つの部門(商用飛行機部門、防衛用飛行機部門、サービス部門)が揃って行なった。こうした3つの部門でまとめて会見などを行なうことを「ワンボーイング」(1つのボーイング)と呼んでおり、737 MAXでの教訓なども部門を横断して共有される体制にしていることを強調した。
マクアリスター氏は同社の商用飛行機部門に関して、今後10年で3.1兆ドル(1ドル=110円換算で、日本円で341兆円)の需要があると予測されると説明した。特にワイドボディ機(777や787など機内に複数の通路を持つ大型機)の競合他社に対しての強み、リプレース需要などが強くあり、それにより10年で3.6%の年平均成長率(CAGR)が期待できるとした。
ボーイング ディフェンス・スペース・セキュリティ 社長兼CEOのリーアン・キャレット氏は同社の防衛用飛行機事業に関しては、今後10年間で2.5兆ドル(約275兆円)の需要があり、1.2%の年平均成長率(CAGR)が期待できると説明した。また、ワンボーイングとして商用部門の技術を防衛部門でも共有したりなどして効率のよい運営を目指すとした。
ボーイング グローバルサービス 社長兼CEOのスタン・ディール氏は、同社のサービス部門に関して、今後10年間で3.1兆ドル(約341兆円)の需要があり、今後は3.5%の年平均成長率(CAGR)が期待できると説明した。特にパイロットのトレーニングなどの需要が多くなる見通しで、そうした需要に適したサービスを提供していきたいと説明した。
なお、この3部門をあわせると、ボーイング全体で8.7兆ドル(約957兆ドル)の需要と、2.9%の年平均成長率(CAGR)が期待できるとボーイングは説明した。
なお、質疑応答ではボーイングが開発中の777の最新型となる777X(777-800、777-900など)の開発状況に関しても質問が行なわれ、GEが開発しているエンジンに遅れが出ているのではないかと問われたが、マクアリスター氏は「我々はGEと密接にやりとりをしている。今年中にテストフライトを行ない、サービス開始は翌年という計画に変更はない」と述べ、777Xのテストフライトは2019年中に、そして提供開始は2020年という計画に変わりがないと説明した。