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朝の混雑率53%で「あり方検討」関東鉄道 竜ヶ崎線。今後は廃止か、救済か?
2026年6月22日 06:00
主に朝ラッシュの混雑を示す、鉄道路線の混雑率(国交省発表)では、日暮里・舎人ライナーが5年連続で「混雑率・ワースト1位」(177%)をの座をキープしている。ここから北側に40km、常磐線で50分ほど移動すれば、混雑率わずか53%、東日本で「混雑率・逆ワースト2」の「関東鉄道 竜ヶ崎線」(茨城県)に乗車できる。
常磐線 龍ケ崎市駅と接続する佐貫駅から、市役所にほど近い竜ヶ崎駅まで。途中駅1か所・7分で到着するという、首都圏でも指折りの超ミニミニ鉄道だ。そんな竜ヶ崎線が、開業126年目にして廃止の危機を迎えているという。
龍ケ崎市は人口7.3万人とそれなりに多く、竜ヶ崎線の運行はいまも1時間に2~3本と、本数もそれなりに多い。JR常磐線に乗り換えれば1時間ほどで都心に通勤可能なエリアにもかかわらず、この路線の年間赤字額は「5000万円」。廃止が検討される各地のローカル線に比べれば格段に赤字は少なく、一見して存続が容易であるようにも見える。なぜ存続が危ぶまれているのか?
まず、竜ヶ崎線の存続・廃止について「今後のあり方検討」に至るまでの経緯を見てみよう。
埋めようのない赤字、ほとんど起きない朝ラッシュ
竜ヶ崎線の廃止危機が明るみに出たのは、2026年1月のこと。運行会社である関東鉄道から龍ケ崎市へ、鉄道路線としての今後のあり方を協議すべく、申し入れが行なわれた。4月に開催された龍ケ崎市の会合では、鉄道の経営環境や存続の方法について議論がなされており、竜ヶ崎線を「存続させるか、バスなど手段に変えるか」といった議論は、まだまだ始まったばかりだ。
市の資料によると、竜ヶ崎線の利用者は1日2000人程度で、年間で約74万人程度。年間160万人以上を輸送していた30年前(1995年)と比べると半減しており、コロナ下での乗客激減後に定期利用客はほぼ戻っているものの、定期外の利用者は同水準に戻る気配がない。
なお、混雑率としては山万ユーカリが丘線(45%)についで東日本で逆ワースト2位。全国で最も混雑しない能勢電鉄 日生線(混雑率18%)よりは朝晩のにぎわいがあるものの、定員139名(座席定員40名)の主力車両・キハ2000形はそれなりに座れて、昼間は車内にほとんど人影がない……。関東鉄道のメイン路線である常総線(取手駅~下館駅)も含めた首都圏のほかの鉄道路線と比べても、朝晩の利用状況が寂しい状況であることに変わりはない。
首都圏の一角・茨城県にあるのに、なぜ竜ヶ崎線はガラガラなのか?
鉄道低迷の根本的な原因「竜ヶ崎駅の利便性」
佐貫駅から、たった7分。終点・竜ヶ崎駅の周辺には2~3軒の商店とタクシーの待合所しかなく、まばらな住宅街が広がるのみ。バスの本数も極端に少ない……。鉄道が低迷している最大の原因は、「竜ヶ崎駅の拠点性の極端な低さ」のように見える。
かつて駅の周辺には「龍ケ崎セントラル劇場」「トキワ館」など4軒の映画館があり、東側の米町からは1.9kmにもおよぶ商店街が伸びていたという。開業後から戦後、高度成長期あたりまでは、竜ヶ崎駅の周辺は間違いなく、周辺地域の中心地、拠点であったのだろう。
しかし現在、商店街は閉店したままの店舗や空地が目立つ。一方でにぎわいを見せているのは、駅から500mほど北側、県道(竜ケ崎潮来線)沿いのロードサイドエリアだ。沿道にはディスカウントストアやスーパー・はま寿司・ココスなどが軒を連ねているものの、わざわざ鉄道を使ってアクセスする人々はいないようだ。
さらに竜ヶ崎駅は、周辺市町へのバスの拠点としての役割も低い。
ここから霞ケ浦沿いで鉄道がない河内町へのコミュニティバス(1日4往復・休日運休)の玄関口ではあるが、ほか稲敷市江戸崎方面(1日3往復・休日運休)へのアクセスは、1時間に1本の運行があるうえに、快速が終日停車する土浦駅発着のJRバスで向かう人の方が多い。
さらに、竜ヶ崎駅~佐貫駅間が4.5kmしかないことから、バスはほぼ全路線がJR龍ケ崎市駅に乗り入れる。わざわざ下車せずとも常磐線に乗り換えることができるため、この駅は「JRへの接続・培養路線」としての役割すら薄くなっているのだ。
数キロ圏内に学生3000人! それでも「通学利用が少ない」ワケ
竜ヶ崎駅から徒歩10分少々の場所には竜ヶ崎第一高校、竜ヶ崎第二高校があり、周辺地域からの通学需要は旺盛なはず。その先には流通経済大学のキャンパスもあり、合わせると高校生1000人以上、大学生2000人以上が、数km圏内に通学している。しかし、朝晩の状況を見る限りでは、竜ヶ崎線はそこまで学生の姿がない。その理由こそが、常磐線に接続していながら、竜ヶ崎線が「混雑率53%」にとどまっている根本的な原因だ。
まず、竜ヶ崎一高・二高にはスクールバスがあり、東側の稲敷市方面から反対方向にあたる竜ヶ崎線を使うことは、まずない。さらに、JR龍ケ崎市駅・関東鉄道佐貫駅は基本的に「ちょっと飛び出た市域の西端」であり、龍ケ崎市内からの通学で竜ヶ崎線を使うケースは、かなり限られる。
流通経済大学のキャンパスも竜ヶ崎駅から近いものの、ほとんどの学生がJR龍ケ崎市駅から直通するシャトルバスを利用するため、竜ヶ崎線を利用する学生はほぼいないという。そもそも、同学Webサイトの「アクセス」には常磐線とシャトルバスの存在が記されているだけで、竜ヶ崎線は存在すら消されている。
こうなると、JR常磐線沿いの高校への通学のために、竜ヶ崎駅までクルマ利用という「家族送迎通学」頼みとなる。しかし竜ヶ崎線は4km少々なので、そのままJR龍ケ崎市駅まで送迎するという親切な家族の方が多いようだ。こういった理由で、竜ヶ崎線の通学利用率は「25%」(市の会議資料より)にとどまっている。
近年は近隣の会社・事業所の縮小もあって、通勤客の姿も見かけなくなった。だからこそ、稼ぎ時である朝6時55分~7時55分で「混雑率53%」、高確率で座席に座れてしまう状況が続いているのだ。
短いが故の「広告収入伸び悩み」。厳しい経営環境
駅まわりが衰退し、乗り換え需要も薄く、通勤・通学利用も伸び悩む。そんな竜ヶ崎線は、経営再建できるのか? 4月に行なわれた第1回龍ケ崎市地域公共交通協議会分科会では、11人の出席者(傍聴3人)が見守るなか、活発に意見が交わされた。その議事録から、今後を占ってみよう。
まず、会議のなかで「龍ケ崎市の公共交通のハブはJR龍ケ崎市駅」「(竜ヶ崎駅の)ハブとしての機能が弱い」「利用者の多くは、竜ヶ崎駅から徒歩もしくは自転車圏内への移動を目的とする方が大半」といった発言が飛び出している。地元・龍ケ崎市のなかでも、竜ヶ崎駅の拠点性の低さや、そもそもの竜ヶ崎線の使いづらさへの認識はあるようだ。
そもそも龍ケ崎市は、計画当初は人口30万人を見込んでいた「竜ヶ崎ニュータウン」など、鉄道網から離れた周辺地域の方に多くの人々が住んでいる。一方で、竜ヶ崎駅から1km圏内は、2000年からの20年で人口が2割以上も減少。予測値では2050年に、ほぼ半減にあたる3000人少々まで減少するとみられているという。市内でも「竜ヶ崎駅の近辺は特に人口減少が激しく進む」と予測されており、今後の鉄道集客はそうとうに厳しい。
そのうえで、関東鉄道と共有された経営情報も明らかになった。車両・設備について「車両3両の経年が29~45年と老朽化が著しく、修繕費用が増加するうえに新車(1両あたり4~5億円)への更新が必要」という。
関東鉄道にとって、竜ヶ崎線の問題は「年間経費1億8000万円、5000万円赤字」という赤字だけでなく、設備更新の負担・減価償却の重さから、竜ヶ崎線のあり方を改めて検討しているようだ。
こういった厳しい環境のなかで経営環境を改善していくことになるが、竜ヶ崎線は3駅・7分とあまりにも短いことから広告効果が薄く、車両のラッピングなどの受け手が見つからないという。おなじ関東鉄道でも常総線では「JAガス」「UNICO」「luckyFM」などの全面広告車両が目を引くものの、こういった増収策は竜ヶ崎線では取れないようだ。
会議ではさまざまな意見が飛び出し、関東鉄道から提示された「上下分離策」(設備などを地元負担、鉄道会社は運行のみ)などの情報も共有されたが、市からの有益な対策は提示されず、イベント開催の要望が多い過去のアンケート結果をなぞるにとどまっている。また、唯一の途中である入地駅に関する討論で「秘境駅としての集客」が話題にのぼるなど、全体的にまだ解像度が低く、初歩的な部分から問題を模索している段階であるように見受けられた。
しかし、提示されたデータもまだ調査不十分であり、市としての正式な意向も明らかになっていない。会合もまだ第1回であり、これから市議会などで支援策の裏を取り、これから具体的に実行していこうという段階だ。
関東鉄道からは、おおまかな結論について「2年後の提示」を提案されている。存続へ向けてのエンジンがかかりきらない竜ケ崎市の今後の方策を、見守っていくしかないだろう。






























