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レベル4・タクシー自動運転に向けて大阪の新拠点で「データ収集車両」が出発。実用までに立ちはだかる壁とは?

 国土交通省は「第3次交通政策基本計画」において、運転手を必要としない「レベル4」の自動運転車両(バス・タクシー・トラック)の普及台数を、2030年度までにに1万台とする目標を掲げている。

 現状ではまだ実現は遠いが、東京・大阪・沖縄でタクシー事業を展開するnewmoが、大阪では初めてとなる自動運転拠点「JOTO Base(城東ベース)」を開設した。

 newmoは2025年から自動運転タクシーの導入に向けた実証実験を開始し、すでに大阪府堺市では道路のデータ収集も兼ねた自動運転車両が走行しているという。住宅街に囲まれたこの新拠点では、どのような取り組みが行なわれるのだろうか? なんと、newmoのもう一つの将来の柱・ライドシェアを組み合わせて、走行ルートのデータを収集していくという。

 newmoはJOTO Baseを通じて、どのように「大阪の自動運転タクシー」を実現していくのか。新拠点でお話を伺ってきた。

城東ベース全景。15台の車両が入るという

ライドシェアドライバー×自動運転実験。タッグを組んでデータ取得

newmo株式会社 自動運転開発室 室長 円谷雄人氏

 JOTO Baseの本格運用開始に先立ち、newmo 自動運転開発室 室長の円谷雄人氏が概要を説明し、この拠点で行なうのは、業界初の「ライドシェアドライバーによる、レベル4の自動運転実現を目指したデータ収集走行」だという。

 昨年に開催された「大阪・関西万博」を機に、newmoは大阪府内各地から会場にダイレクトアクセスできるライドシェア(ドライバーの自家用車を活用した旅客輸送)を提供し、多くの人々に利用された。いまもnewmoのアプリを利用すると、一部で「タクシーまたはライドシェア」と選択肢が出るようになっており、どちらのドライバーも大阪市内を走行していることが伺える。

 newmoはあらかじめ、データ収集を行なうドライバーを募集しており、80人もの応募があったという。ドライバーはJOTO Base→大阪市舞洲→堺市堺浜→JOTO Baseといったコースを走行しつつ、途中のルートを変えながら、道路幅やカーブの状況など近辺のデータを取得していく。現在のところ、「自動運転の導入に向けてデータを収集する」段階なので、もちろん有人での走行だ。

 今後の見通しとしては、まず2026年にデータを取得し、2027年には自動運転の性能の向上を行ない、2028年には「一定条件下でのレベル4(無人運転)で、配車や乗客の送迎、輸送まで行なう」体制を整えたいという。

 JOTO Baseで積み上げたデータは、5549社・16.9万台にもおよぶ全国のタクシーと連携しつつ、人材不足に悩む全国のドライバーと連携していくという。ただ円谷室長によると、「データ構築と営業運転などのパッケージをそのまま販売するのか、アプリだけ立ち上げて全国のタクシーが対応できるようにするかは、まだまだ分からない」そうだ。

上部にカメラ・ライダー搭載。データ取得車両とは?

ライドシェアドライバーが運転するデータ計測車両が出発する
車両上部に設置したカメラ
社内機器の様子。実際には、外部カメラの映像がこのモニターに映し出される

 6月15日のJOTO Baseの本格運用開始とともに、2台のデータ収集車が出発した。この拠点には3台の車両があり、当面は2台で走行するとのこと。拠点には15台の車両が駐車可能で、至近距離にあるnewmo系列のタクシー会社「夢洲交通」とも連携しているため、今後は車両の増配や、EV車両の配備も行なっていくそうで、人員もそのつど増配していくという。

 なお、JOTO Baseは1階が車庫、2階が待機スペース・事務所となっており、それなりに広く快適である様子がうかがえた。

 データ収集車両は、すでに5月から試験的に何度か走行しており、車体上部に設置している3台のカメラとライダー、後方のGPS機器によって道路の撮影・位置情報の確認・取得を行なう。このデータをもとにしながら、実際のルート上で「1日何度もお客さまを迎車に行く、臨機応変なタクシー」として走行できるまで、道路状況に関するデータを取得していく必要があるという。

 ただ、実際に運転するライドシェアのドライバーの方によると、安定したデータ取得のためには「制限速度を守って、車線の中央をキープしながら走る必要がある」そうで、普段と異なる走行時の苦労もあるようだ。

 自動運転タクシーを運用する際には、各地のスポットまで自動運転で走行する必要があるため、途中のルートも含めた基本的なデータがないと、たとえ心斎橋であろうが、新大阪などの簡単なスポットであろうが、向かうことはできない。いまのデータ取得作業は、2028年の商用化だけでなく、5年・10年先まで残る仕事が行なわれているといえるだろう。

 また、関係者に伺ったところ、まだ基本的なデータには「事故多発地点・狭隘で見通しがわるい」などの「ヒヤリ・ハット」は含まれておらず、どのように加えていくかも含めて、検討していかなければならないという。実際に自動運転タクシーのデータとして使用するには、あと何段階かの壁が存在しているようだ。

国交省・業界団体も期待を寄せる「自動運転実現」

国土交通省 物流・自動車局長 石原大氏
国土交通省 石原局長と一般社団法人大阪タクシー協会 会長 坂本栄二氏(右)
JOTO Base構内

 とはいえ、ドライバー不足が顕著なタクシー業界では、自動運転に早期に目途を付けなければいけない。

 この日に参列した国土交通省 物流・自動車局長の石原大氏もあいさつに立ち、「タクシー業界の人手不足が顕著ななか、取り組みに期待したい」とコメントを寄せた。また、大阪タクシー協会 坂本栄二会長もデータ車両の出発を見守り、こちらも関係者に激励を寄せていた。

 自動運転に向けたデータ取得はいまはライドシェアのドライバーのみで行なっているものの、今後はタクシー運転手の協力も視野に入れるという。今後どこまでデータ取得が進むか、2028年の商用化に間に合うか。社会実験の行方を見守りたい。