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讃岐うどんの本場に全国から集結! 「全国ご当地うどんサミット in さぬき」に行ってみた
2025年12月15日 12:00
全国の「ご当地うどん」ワンフロアで食べ歩き!
年間200~300玉はうどんを食べるという香川県民が、いっせいに集結するフードイベントといえば……もう、「うどん」しかない。国内外19か所のうどん店が総結集した「全国ご当地うどんサミット in さぬき」が、12月6日~7日に、高松市のサンメッセ香川・大展示場で開催された。
サンメッセ香川では、毎年12月に別イベント「年明けうどん大会」が2023年まで開催され、数多くの店舗が出店していた。このイベントがリニューアルしたのか?と思いきや、「うどんサミット」自体も10回以上の開催実績がある、まったく別の地域のイベントとして行なわれていた。
根強い人気を誇った「年明けうどん大会」は、なぜ「うどんサミット」に変わったのか? 香川県民でなくとも気になる……が、まずは目の前で次々と茹で上がっているうどんを優先したい。展示場のワンフロアに大集結した「ご当地うどん」の数々を味わってみた。
うどんを目指して「2日間で3万人」
「ご当地うどんサミット」参加店は、北海道・山梨・愛知・岡山・長崎などから集結。また、国際交流ブースとして中国から2店が参加予定だった店舗に変わって、高松市内の中華料理店が「刀削麺」を提供することとなった。
主催者側にお話を伺ったところ、2024年は「2日間で3万人を集客した」とのこと。普通のフードイベントや屋台村などで、大きな宣伝もしていないのに、来場者が1日1万人を軽く超えるのはめずらしい。
特徴的なのは、来場者の多くが地元・香川県民であること。とにかく讃岐うどん以外のうどんにも興味津々のようで、早朝から「どんなうどんがあるんな?」「普段のさぬきうどんと、どう違うんな?」と、老若男女を問わず「どれを食べるか」という作戦会議に余念がない。
どうやらこのイベント、香川県民のただならぬ「うどんへの好奇心」によって、開催が続いているようだ。
香川県「さぬきの年明けうどん」(出店:本場さぬきうどん協同組合)
地元の讃岐うどんを提供するブースでは、朝9時のオープン前から香川県内の主要うどん店やメーカーなどの職人が粉と水を練り、切った麺を大きな窯に入れて茹で上げている。数m四方のブースに熟練の讃岐うどん職人がぎゅうぎゅうに密集して働いており、ここで提供されるうどんが美味しくないわけはない。
提供されたうどんは、角がビシッと立って弾力がある「讃岐うどん」そのもの。麺はずっしりとしていながら伸びやかで、表面がいりこ出汁の旨味をしっかりまとい、箸を上げただけでもダシのよい匂いにガツン!とやられてしまう。
なお、この日に提供された「さぬきの年明けうどん」は、香川県の正月の定番「あん餅雑煮」をベースにしたものだ。あん餅の甘さと出汁の塩辛さがぴったりとマッチして……県外の方からすると不思議な組み合わせかもしれないが、これはこれで「十分にアリ!」な一品だ。
宮城県気仙沼市「気仙沼ふかひれうどん」(出店:丸光製麺)
三陸の港町・気仙沼市から駆け付けた「丸光製麺」は、新幹線と飛行機を乗り継いで8時間かけて、このイベントのために香川県にたどり着いたとのこと。専務取締役の熊谷敬子さんは「ここまで遠かった!」と苦笑いしながらも、ものすごい勢いでてきぱきと動き、ズラリと行列をなした人々に、次々とうどんを提供していった。
気仙沼市のご当地食材と言えば、全国トップシェアを誇る「ふかひれ」、そして「三陸わかめ」。熊谷さんによると「もともと『ふかひれラーメン』をご当地メニューとして提供しており、その際に開発したタコ・アワビをベースにしたスープがあまりにも美味しく、うどんの太麺と合わせて『気仙沼ふかひれうどん』として提供を始めた」という。
そんな丸光製麺にも、苦難の時期があったそうだ。2011年3月に発生した東日本大震災で、本社工場は全壊。熊谷さんの自宅にも18m(3階の高さ)まで津波が押し寄せ、まさに「すべてを失う」と言っていいほどの、壊滅的な被害を受けたという。
丸光製麺は幸いにして、従業員全員が生命をつなぐことができた。そこから工場を再建しつつ、熊谷さんはたった一人の営業として全国を駆け回り、高島屋・三越・阪急梅田本店・成城石井・明治屋など……幅広く取引先を確保して、なんとか会社再建を果たしたという。
気仙沼から香川県に駆け付けた「気仙沼ふかひれうどん」ブースは、ふかひれうどんの味だけでなく、津波によるダメージから会社を立て直した剛腕おかみの働きぶりを見るだけでも、足を運ぶ価値があった。
東京都武蔵村山市「鶏だしネギチャーシューうどん」(出店:村山かてうどんの会)
東京都武蔵村山市のご当地料理「かてうどん」は、北関東でよく見られる「武蔵野うどん」のカテゴリに入るという。そのなかでも、地粉を使って麺を練り、よく獲れる小松菜などの野菜をトッピングしたかてうどんは、江戸時代から一帯でよく食べられていたという。
そんな村山うどんを普及させるべく、有志で結成した「村山うどんの会」は、北海道・下川町の「しもかわうどん祭り」などのフードイベントや、秋田県で開催された「全国まるごとうどんエキスポ」などに積極的に出店している。もともと「年明けうどん大会」にも「ご当地うどんサミット」にも出店経験があり、今回も東京から材料を運びこんでの参加となった。
村山うどんは香川県の方にも好んで食べられているようで、3年ぶりの傘下となった今回も「美味しい!」の声が上がっていた。また、地元・武蔵村山の関係者もわざわざ食べに来るそうで、ブースは安定して客足が途絶えない様子であった。
東京都のなかで唯一「鉄道がない市」としてある意味有名であった武蔵村山市も、「多摩都市モノレール」の市内延伸がほぼ決まっている。開業まであと10年はかかりそうな状況だが、「モノレールで村山かてうどんを食べに来てもらいたい」と、今から意気込んでいるという。
食べきれない! けど食べたい「ご当地うどん」
そのほか、「年明けうどん大会」の第1回から10年以上も参加している「新居浜肉焼きうどん」や、刀で平麺を削り出す中国・西安の伝統料理「刀削麺」などの参加もあり、巡っても巡っても食べきれない。ワンフロアでうどん文化の多様性を知ることができる「うどんサミット」は、ほかにない唯一無二のイベントといえるだろう。
なぜ「年明けうどん大会」は「うどんサミット」に変わった?
オープニングでは香川県知事 池田豊人氏があいさつに立ち、「うどんを愛してやまないうどん県・香川県で、『ご当地うどんサミット』が開催されるのは、夢のような企画です。県内の方はうどん愛を確認しあって、県外の方は香川県のうどん愛を感じていただいて、楽しんでお帰りください」と述べた。
最後に、なぜ「年明けうどん大会」が「全国ご当地うどんサミット」に変わったのか? 大会運営に携わる、さぬき麺業の大久保篤志氏に事情を伺った。
そもそも、「年末の年越しそばだけでなく、年明けにはうどん」という習慣を定着させるために、全国から業者が結集する「年明けうどん大会」を、2014年から開催していた。コロナ禍を乗り越え、10回目の節目で終了を決めたものの、ここまで多くの人々(2日間で3万人。全盛期は4万人)が集まるフードイベントを辞めてしまうのも「もったいない」との声があったそうだ。
そこで、過去に愛知県・滋賀県などで開催実績のある「ご当地うどんサミット」を香川県に誘致・開催してもらうことになった。「年明けうどん」がメインでなくなっただけで、「年末にサンメッセ香川でうどんイベント開催」という実績は受け継がれたのだ。なかには両方参加していた店舗ケースも多く、香川県での開催はすんなりと決定したという。
「ご当地うどんサミット」は、「年明けうどん大会」から看板が掛け変わった2024年、そして2025年も、相変わらずのにぎわいを見せた。来年は、また新たなご当地うどんが香川県に集結するのか? ……来年の開催を楽しみに待ちたい。






































