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資さんうどん、関東1号店はなぜ千葉県八千代市? 超・外食激戦区で現地レポ
2025年1月9日 19:08
北九州のソウルフード「資さんうどん」創業49年目で関東へ!
福岡県・北九州エリアのソウルフードとして知られる「資さんうどん」(すけさんうどん)が、2024年12月27日に「資さんうどん八千代店」(千葉県八千代市大和田新田1062-7)を出店した。
1976年の創業から北九州市と周辺のみに出店していた資さんうどんは、2009年に福岡市に初出店、さらに2023年11月には関西進出(大阪市・今福鶴見店)。さらに2024年には外食大手の「すかいらーくホールディングス」傘下に入り、開業から49年目にして関東進出。2025年2月には、東京都内(墨田区・両国店)への初進出も決定している。
もともとは北九州市のご当地グルメとして知る人ぞ知る存在であった資さんうどんは、各地へ進出するにつれて、それぞれの地域で定着。かつ、2024年7月に都内に3日間・1日400杯限定で出店した際には「オープン前から400人以上が並び、最終組がうどんを手にしたのは4時間後」という人気ぶり。全国進出前からYahoo!トピックスをにぎわせるなど、本格進出前から資さんうどんの名前は全国に響いている。
関東進出への期待値がMAXに達しているなかでの資さんうどん 八千代店は、どこまで混みあっているのか……年明けの1月に訪問したところ予想以上、出足は好調のようであった。気になる関東1号店の現状と、1号店としてこの場所を選んだことによる今後の資さんうどん事業展開を予想してみよう。
開店記念のご祝儀ラッシュ? 人気のあまり「60~120分待ち」
資さんうどん八千代店へのアクセスは、東葉高速鉄道 八千代緑が丘駅から徒歩20分(1.4km)、バスなら津田沼駅から船橋新京成バスで約25分、津16系統「大和田新田西」バス停を下車してすぐ。つまり、とても公共交通機関で行くような立地ではない。
目の前には地域の幹線道路「成田街道」(国道296号)があり、ほとんどがマイカーで来店しているようだ。資さんうどんとしては最大級を誇る65台の駐車場(隣の店舗と共用)は、筆者を含む3人の一行がクルマをとめたあと、ほどなく「満車」表示が出た。
訪問日が正月休みの期間中だったせいか、駐車場には八王子、多摩(東京都)、横浜、相模(神奈川県)、群馬、水戸など県外ナンバーが目立つ。よく見ると、山梨、静岡ナンバーも1台ずつ見かけた。
いざ入店! 店内は資さんうどんとして最大級の130席はあり、6人ほどが座れる大きめのテーブル席が10卓以上、あとは2人がけのテーブル席が大半を占め、1人がけのカウンター席は少なめだ。
店舗の入口にある発券機で番号札を取って、画面モニターで番号を確認したところ、時間待ちは「60分」、あとから来た人々は120分待ちの表示が出ていたようだ。なお、2023年の関西初進出(大阪・今福鶴見店)の際にも50~100人ほどの待機列が野外にできていたが、八千代店の場合は店内に待機用の数人掛けベンチを10台ほど設置しており、待ち環境としてはかなり快適な方だ。
思った以上に麺にコシあり? 飲みにも最適な資さんうどん
九州発祥のうどんと聞くと、博多うどんのような「麺・柔らか」「ダシ・甘め」のイメージを持たれがちだが、資さんうどんはまた違うように感じる。
資さんうどん創業の地は福岡市から60km以上も離れており、創業者の大西章資(おおにししょうじ)さんは讃岐うどんを参考にうどん作りを学んでいる。かつ、鉄工所で汗をかく工員の方々の要望もあり、一定の食べ応えがある麺と、サバ節などを用いた甘くないダシが完成されていったという。
そんな資さんうどん看板メニューは、約14cmもの長さがあるスティック状のごぼ天(ごぼう天ぷら)が5本も乗った「肉ごぼ天うどん」。ほか、「丸天うどん」「かしわうどん」など、九州らしいラインアップが並ぶ。特製の麺はしっかりダシに絡み、トッピングなどの旨味を十分に吸ってくれるのもうれしい。
資さんうどんは宣伝やキッチンカーなどで「麺・意外とコシある ダシ・意外と甘くない」といったキャッチフレーズを掲げており、博多うどんや九州のうどんとの違いをアピールしている。
また、資さんうどんのもう1つの顔は「ちょい呑みパラダイス」だ。
ほとんどの店が24時間営業を行なっていることもあり、アルコールは日本酒・芋焼酎・麦焼酎・ビール・各種サワーなどがだいたい300円台。かつ、5本120円の「ごぼ天」単品や、ほぼ全品120円(牛すじのみ190円)と、格安のアテも充実している。
さらに、無料のとろろ昆布でおでんを味変したり、同じく無料のつぼ漬けをかじったり、具の旨味が染みたうどんのダシをちびちび飲んだり、おでんにかけたり……お酒のアテが無限にあるのだ。
満腹になったところで、外に出てみよう。記念すべき関東進出の1号店として、資さんが選んだ「千葉県八千代市緑が丘」の立地を見分する。
関東1号店は「超・クルマ社会立地!」。資さん、外食激戦区をどう生き残る?
資さんうどん八千代店の前を通る幹線道路・成田街道(国道296号)は、「日中時間の混雑率1.94」(2.00以上で「日中12時間中7割の時間が渋滞」。令和3年度・一般交通量調査より)というエリアだ。訪問時もずっと渋滞しており、地元の方によると、見える距離を進むのに数分かかることもめずらしくないという。
そして資さんうどん周辺には、ファミリー層向け外食チェーンがひしめくように立地している。片側1車線の成田街道を挟んで向かいには「びっくりドンキー」、1km内には「ジョリーパスタ」「くら寿司」「やよい軒」「コナズ珈琲」「かみむら牧場(焼肉)」「すたみな太郎」。さらにスーパーも「ベルク」「タイヨー」「ロピア」が巨大な駐車場を擁する店舗を構える。どうやら、「外食vs.外食」「外食vs.中食」の生存競争は、そうとうに激しいようだ。
地元の方によると、資さんうどん八千代店も、もともとは「かっぱ寿司八千代店」(2023年6月閉店)だったようで、よく見ると石垣のような壁の作りが見事にそれだ。資さんうどんは九州でもファミレスなどの居抜きで急速に勢力を伸ばしており、半道橋店(福岡市博多区。2020年開店)でも元・かっぱ寿司の物件を活用した実績がある。
推測だが、すかいらーくHD買収の時期と八千代店の準備期間を考えると、傘下入りの確定前から関東進出を進めていたのかもしれない。ここは一度、確認してみたいものだ。
資さんうどん至近距離に小学校新設! 周辺は子育て人口増加エリア
資さんうどん八千代店のまわりに、なぜこれだけ外食チェーンやスーパーがひしめき合っているのか。その答えは簡単、「需要があるから」。実は周辺エリア(八千代市緑が丘・大和田新田)はファミリー層の居住地として人気があり、人口増と子育て世代の転入が続いているのだ。
首都圏の郊外でも人口減少がめずらしくないなかで、このエリアに関しては既存の緑が丘小学校が「児童数1000人以上、36クラス」、隣の新木戸小学校ともども限界を迎えており、2026年には資さんうどんの700mほど北側(パチンコ・サンシャイン跡地周辺)に新設校が開校する見通しだ。なお八千代市全体で見ても、東京メトロ東西線に直通する東葉高速鉄道の開通もあって、「約20年で人口15万人→20万人」と、人口の増加傾向が続いている。
なお、すかいらーくHDが資さんうどんを買収した背景には、1000店を越えた既存ブランド「ガスト」がカニバリ(近隣店舗の食い合い)を起こしており、グループ内の「バーミヤン」「しゃぶ葉」などに次ぐ業態転換のカードとして見込んだとも言われている。
すかいらーくHD傘下での資さんうどんは東京・両国への出店に続いて、2026年から本格的な店舗展開を目指すという。まずは、外食チェーンの競争が激しい八千代市緑が丘で、うどん以外のメニューも豊富な資さんうどんがファミリー層の取り込みを実現できるか。九州から全国区で勝負を賭ける資さんうどんの今後に注目したい。