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圧倒的人気を誇った「イタリア館」作品を振り返る。万博閉幕後には“アトラス像”が特別展で公開決定!
2025年10月10日 21:00
- 2025年10月上旬 時点
大阪・関西万博(EXPO2025)の開幕以来、最も多くの来場者を集めた展示館のひとつが「イタリア館(イタリアパビリオン)」だった。個性豊かな国内外のパビリオンがあるなか、イタリア・バチカン市国の美術館などから持ってきた実物の彫刻や絵画が多数並び、間近で鑑賞できるとあって、連日、数時間待ちや予約困難が相次いだ。
会期はいよいよ10月13日で終了。入館をあきらめた人も、もう一度見たいという人も、改めてスゴい展示を振り返ってみよう。
建築とテーマ
設計は建築家マリオ・クチネッラ。テーマは「Art Regenerates Life(芸術は生命を再生させる)」。ルネサンス期の都市をヒントに、劇場や広場、庭園などをパビリオン内に再現した。建物は木材を多く使い、会期終了後には資材を再利用できる構造となっている。
中心に置かれた古代彫像の傑作アトラス
館内中央の広場「ピアッツァ」に展示されたのは、2世紀に作られた大理石像《ファルネーゼのアトラス》。巨人アトラスが天球を背負う姿を表した作品で、通常はナポリ国立考古学博物館にある。この万博で日本初公開となり、実物が大阪に運ばれたこと自体が開幕前から大きな話題を呼んだ。
高さ193cm、天球儀の直径は66cm。重さはおよそ2トン。実際に像の前に立つと、想像以上の大きさと存在感に圧倒される。肩に載る天球には当時の星座が刻まれていて、古代人が描いた宇宙の姿を間近で見ることができた。
30個の心臓が並ぶ彫刻インスタレーション
同じく展示エリア「ピアッツァ」で目を引くのが、30個の心臓が円形に配置されたセラミック彫刻インスタレーション《Apparato Circolatorio(循環器系)》。イタリアの現代アーティスト・ヤゴによる作品だ。
1個あたりのサイズは15×15×30cm(幅×奥行き×高さ)で、よく見てみるとそれぞれが微妙に異なる形であることに気が付く。また、3Dアニメーション化した心臓の鼓動をうしろのスクリーンに投影することで、まるでひとつの鼓動が始まりも終わりもなく脈打っているかのように見え、生命の絶え間ない循環を感じさせる。まさに、イタリアパビリオンのメインテーマ「芸術は命を再生する」を表現した作品だった。
レオナルド・ダ・ヴィンチの直筆スケッチ
レオナルド・ダ・ヴィンチの現存する最大の素描と文書コレクション「アトランティコ手稿」。ミラノのアンブロジアーナ図書館に所蔵されてる1119枚以上の膨大な手稿のなかから4枚のページを万博全期間にわたり、入れ替えを行ないながら展示した。
スケッチの内容は《金箔職人の道具》と《手回し糸車》。イタリアと日本の文化的伝統を結びつけるものとして選ばれた4枚であり、科学、技術、芸術、工学、建築など、多岐にわたる分野で才能を発揮するレオナルドの思考を垣間見ることができた。貴重なコレクションを“撮影禁止”とせず、間近で見せてくれたことにも驚きだ。
煌々と照らされる巨大な祭壇画《キリストの埋葬》
その奥、併設するバチカン館の「精神性」のエリアでは、イエス・キリストの遺体が墓に安置される瞬間を描いた、カラヴァッジョの《キリストの埋葬》(1604年)を展示。バチカン美術館所蔵の作品を特別に持ち込み、床からわずか30cmの高さに設置したことで、祭壇画として描かれた構図をほぼ同じ目線で体感できるのが貴重。
サイズは203×300cm(幅×高さ)。沈痛な面持ちでキリストを見つめる聖母マリアや、キリストの体を支える使徒ヨハネ、劇的な身振りで天を仰ぐクロパの妻マリアなど、登場人物たちの表情も迫力があり、来館者が長く足を止めていたのが印象的だった。
暮らしの技術やオリンピック聖火も
そのほか、高齢化社会における暮らしをテーマにしたAIやロボット技術、都市計画やインフラ整備、スポーツイベントに関連する建築プロジェクトを映像・体験イベントなどで紹介。イタリアが誇る「フェラーリ」のエンジン技術や次世代モビリティの展示、期間限定で行なった文具ブランド「モレスキン」のノートを使用したアート作品展もおもしろい。
また、2026年に開催されるミラノ・コルティナ冬季オリンピック・パラリンピックの聖火リレー用トーチもこの万博で実物がお披露目され、人気の展示となった。
屋上庭園とレストラン
屋上には、緑や噴水、彫刻アートなどに囲まれたイタリア式庭園が広がる。万博のなかで“屋上”を活用したパビリオンはほかになく、ちょっとした休憩&散策スポットに。
テラスには「Eataly」運営のレストランがあり、スパゲッティ・アル・ポモドーロ、リガトーニ・カルボナーラ、各種ピッツァやティラミスなど、イタリア全土の料理を提供。州ごとに変わる郷土料理も人気で、食事を目当てに訪れる人も多かった。
また、1階に併設するショップではアトラス像をモチーフにしたTシャツやパビリオンのマスコットキャラクター「イタリアちゃん」グッズを販売。
屋外のテイクアウト専門店では、本格イタリアンジェラートを販売。ヒンヤリ冷たく濃厚な味わいは、猛暑が続いた万博で大人気を集めた。
半年にわたり行列が絶えなかったイタリア館。古代彫刻やカラヴァッジョ作品をはじめ、美術館・個人コレクションから実物を日本に運び、展示するというリスクを伴いながらも「本物を見てもらう」こだわりが、来場者の感動と圧倒的人気につながったのではないかと思う。
イタリア館(イタリアパビリオン)
場所: セービングゾーン 海外パビリオン S09-01
運営時間: 9時~21時
所要時間: 約30分
入場方法: 予約もできる(7日前抽選、空き枠先着予約、当日登録対象)
※ショップ、レストランあり
閉幕後の特別展が決定!
イタリア館の展示は万博閉幕とともに終わるが、一部の名作は大阪市内で公開されることが決定。
10月25日~2026年1月12日に大阪市立美術館(大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1-82)で開催される特別展「ファルネーゼ・アトラスと2025大阪・関西万博イタリア館の宝物」として、館内で大きな注目を集めた《ファルネーゼのアトラス》やレオナルド・ダ・ヴィンチの「アトランティコ手稿」などを展示する。
入館料は一般1800円、高大生1200円、中学生以下無料。チケットは、特別展公式サイトと各プレイガイド(ローソンチケット、セブンチケット、tabiwaなど)で10月18日10時から販売する。
万博でイタリア館に入れなかった人や再び名作を見たい人にとっても貴重な機会。ぜひチェックしてみてほしい。

































































