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踊りから海上花火、巨大護衛艦まで! 真夏の清水みなと祭りを楽しんできた

「清水みなと祭り」に行ってきた

「清水みなと祭り」は、静岡市清水区で毎年8月最初の金・土・日曜に開催している夏祭り。港かっぽれ総おどり、清水ゆかた踊りといった市民参加型の催しと、港湾施設での催事、自衛隊や海上保安庁、警察の装備などを見学できる「マリンフェスタ」、さらに最終日の海上花火大会がひとまとめになった大規模なものだ。

 筆者は、大学生時代の親友が清水区(当時は清水市)出身であったことから、かれこれ30年間、ほぼ毎年友人を訪ねるついでに清水みなと祭りを見学している。例年、陸海空自衛隊が全面協力しており、清水港日の出埠頭には海自の護衛艦が寄港し一般公開、陸自の車輌が展示され、空自の航空機が上空を飛行する。過去にはブルーインパルスも展示飛行した実績がある。また、海上保安庁も清水港を母港とする巡視船艇を、静岡県警もパトカーや白バイをそれぞれ公開している。

 ミリオタの筆者はこれらを目当てに来ているが、静岡鉄道新清水駅が徒歩圏内で交通の便がよいこと、会場直近に大きな商業施設があり休憩や食事に不便がないこと、海上花火大会の内容が豪華なわりに(ほかの花火イベントより)比較的空いていることなどから、祭りを気軽に楽しめると思っている。

 そこで今回は、第76回清水みなと祭り(2025年8月1日~3日)のうち、8月2日と3日に行ってきたのでその魅力をお伝えしたいと思う。

8月2日、マリンフェスタ1日目。自衛隊装備、海保巡視船を見学

 前述のとおり、筆者のお目当ては自衛隊の車輌や艦艇の公開。今年は海自の護衛艦「ひゅうが」や陸自の16式(ひとろくしき)機動戦闘車、通称MCV、12式(ひとにしき)地対艦誘導弾が展示され、上空を空自の戦闘機も飛ぶと聞き、楽しみにしていた。蛇足だが、陸自と海自で数字の呼び方に違いがあり、陸自では2を「に」、海自では「ふた」と呼ぶ。時刻も、12時ちょうどなら陸自「ひとにいまるまる」、海自「ひとふたまるまる」となる。

「ひゅうが」は前日夕方に入港済み。マリンフェスタ1日目は早朝にMCVの搬入があるとのことで、清水区内の一般道路を走る様子を撮るために6時前には会場付近にいた。また、MCVや「ひゅうが」の公開は9時からだが、会場は締め切られているわけでもなく展示に向けた準備を見ることも可能。手持ち無沙汰な隊員たちからもさまざまな話が聞けた。いよいよすることがなくなって、「ひゅうが」の艦内見学の列には8時ごろから並んだが、本来はもう少しあとに来た方が並ばずに見学できる。艦載ヘリコプターやラッパ演奏展示、CIWS(自艦に接近するミサイルを撃墜するための近接防御兵器)がぐりんぐりん動いている展示を見て、1時間ほどで退艦した。

早朝6時過ぎ、清水市内の国道を走るMCV。平たくいえば装輪戦車で、道路を傷めることなく高速で移動可能
護衛艦ひゅうが。背後に富士山が見えるが、夏場は昼頃には雲に巻かれることが多く、朝がシャッターチャンス
航空機を移動させるエレベーターで、格納甲板から飛行甲板へ。ひゅうが最大のアトラクションだ
広大な飛行甲板は、滑り止め塗装でザラッとしている。艦尾付近には艦これ「日向」の立て看板があり、フォトスポットになっていた
哨戒ヘリコプターSH-60Kは舞鶴航空基地の第23航空隊所属機。艦尾のVLS(垂直発射装置)は対空ミサイル、対潜ロケットを収容する
「出港用意」などの号令ラッパの実演。「ラッパ君が代」の演奏もあった
ひゅうがカレーのパネルもあった。大きな横断幕は記念写真を撮る家族連れで行列ができていた
16式機動戦闘車(MCV)は駒門駐屯地の機甲科教導連隊からやってきた。自衛隊以外のイベントにMCV×4輛がやってきたのはおそらく前代未聞のこと
マリンフェスタ会場では自衛隊関連やグッズの出店のほか、海洋学部のある東海大学のブースもあり、子供たちに海の技術を分かりやすく展示していた
海上保安庁とから型巡視船「おきつ」は第3管区海上保安本部清水海上保安部所属。8月2日のみの公開で、午後に離岸した
マリンフェスタ会場から300mほど、商業施設エスパルスドリームプラザへ昼食に。飲食店、土産物店が多く入るショッピングモールだ。
清水といえばマグロ! 静岡の海といえば桜えび、しらす! というわけで、ドリームプラザ内の飲食店で、とろびんちょう、赤身、マグロたたき、生桜えび、生しらすが乗った清水丼をいただいた

港かっぽれ総おどり

 清水みなと祭りは、終戦直後の1947年に戦後復興を勢いづけようとして始まったという。1974年の七夕豪雨の被災、2020年、2021年と新型コロナウイルス蔓延防止のため中断されたものの、地元清水の市民や経済団体などの支持を受けて毎年盛大に開催され、今年で76回を数える。

 1976年に市民らによる「総おどり」が誕生し、新清水駅前のさつき通りを使って踊る現在の形が完成した。1987年には宇崎竜童氏作詞作曲の「港かっぽれ、KAPPOREFUNK」が登場。日本の伝統的な踊りとロックの融合は当時大きな話題となり、同様のお祭りが全国に広がるきっかけとなったという。その後も「かっぽれエイサー」「かっぽれ・フラメンコ」など新曲が発表され、現在の総おどりにはかっぽれシリーズ5曲と伝統的な地踊りから3曲が使われている。

 今年の総おどりは8月1日と2日の日没ごろから21時まで行なわれ、中央ゾーン、港橋ゾーン、地踊衆ゾーン(8月1日のみ)に分かれて踊った。主催者によると2日間で250団体約1万人が参加したという。

交差点上に設置した壇上でオープニングセレモニー。総おどりの曲を作詞作曲した宇崎竜童氏(中央)も登場。右端は清水区のマスコット「シズラ」
音楽と太鼓にあわせ、18時30分に総おどりがスタート。
さつき通りの上下線をつかい、踊りながらゆっくり移動する。熱中症対策のため連と一緒にドリンクなども移動、休憩時間もきちんと設けられている
キレのよい踊りを披露する連。この情熱や躍動感が夏祭りの醍醐味の1つだ
揃いの法被が連の一体感を盛り上げる。なかには100名ほどの大規模な連もあり目立っていた
新清水駅近くのさつき通り。静鉄で静岡市中心部と直結しており、アクセスも抜群によい
総おどりが佳境を迎えた21時、日の出埠頭へ。ひっそりと駒門駐屯地に戻るMCVを見送った

清水みなと祭り、マリンフェスタ2日目。空自飛行展示、海上花火大会を堪能

 8月3日、清水みなと祭り、マリンフェスタの最終日。この日も早朝から日の出埠頭に行ってみた。ちょうど陸自の12式地対艦誘導弾システムの発射機が到着し、展示の準備をはじめていた。前日に続いて「ひゅうが」や、本日やってきた陸自車輌、警察車輌などを見学し、早めにエスパルスドリームプラザで昼食に海鮮丼、夕食代わりに唐揚げパックを購入した。

 13時に航空自衛隊のT-7練習機、T-4練習機、F-2戦闘機が飛来して会場上空を飛行した。T-7は静浜基地(吉田町)、T-4は浜松基地(浜松市)と、ともに静岡県内に基地があり、マリンフェスタでの常連。それに加えて今年は岐阜基地(各務原市)からF-2戦闘機が飛来し、会場上空でアフターバーナーを使用して旋回した。花火を除けばこの日最も大きな音が会場に轟いた。

 その後、外国からの客船到着時にはターミナルにも税関施設にもなる清水マリンターミナルのバルコニーでまったり。午後は日陰になり、海風も入るので35℃超の気温でも過ごしやすい。マリンフェスタとしての行事は「ひゅうが」の出港で終了し、夜の花火のためにいったん会場を閉鎖する。これによって、迷惑な場所取りやそれに伴うトラブルを防いでいる。

 筆者も「ひゅうが」の出港を見送り、いったん会場近くの駐車場に停めたクルマに戻り三脚やレリーズを持ってきた。ちなみに最寄り駐車場は会場花火会場から200mほどで、駐車料金は青天井だし花火大会終了後1時間は出口が閉鎖されているが、荷物が多い場合や帰りを急がない場合などに非常に便利だ。

 観客の入場は17時30分からで、18時過ぎからは太鼓の演奏や、清水次郎長一家に扮した一般公募の役者が踊りや口上を披露する「次郎長道中」、清水港ではたらく船舶の海上パレードなどがあり、花火大会開始までの時間も楽しめるように工夫されていた。

 清水みなと祭りのフィナーレを締めくくる海上花火大会は、1万発の花火を60分で打ち上げるためテンポのよさやその贅沢感もウリの一つ。第90回全国花火競技大会(大曲花火)で優秀賞、2016年世界花火師競技会優勝のイケブン(藤枝市)がプロデュースするもので、この海上花火がフランスの花火関係者や文化芸術の専門家から高く評価され、本年8月15日にフランスで開催の「カンヌ花火芸術祭」で日本を代表して出場することが決定している。なお、イケブンは水色、淡いピンクなどのパステルカラーの花火を作り上げた企業であり、今回は子供たちのアイデアをもとにした「富士山」「みかん」「おにぎり」などの花火を打ち上げている。

早朝の「ひゅうが」。手前の芝生エリアは倉庫の跡地で、高潮や津波対策のため景観に配慮した築堤がある
日の出埠頭の脇に設置されていた、当日のスケジュールを書いたボード。これは早朝のもので、行事の進展によって内容が書き換えられていった
この日の陸自の展示は12式地対艦誘導弾発射機。富士駐屯地の富士教導団特科教導隊第6射撃中隊所属。そのほかに高機動車なども展示された
日の出埠頭付近にあったモニュメント。見てのとおり、プラモデルのランナーだ。静岡市は有名模型メーカーの本社が軒並み集まる、模型の世界首都でもある
エスパルスドリームプラザ前に並んだ屋台。海産物やみかんなど、静岡らしい食材を使ったものも目についた
静岡市水道局の「上下水道フェア」も開催。重機で水を移し替える体験に子供たちは大喜び
ミニSL体験乗車。下水道の汚泥から炭素を取り出しペレット状にしたものを燃料としている
静岡県警清水警察署は白バイとパトカーを展示。こちらもファミリーが列を作っていた
昼食を買いにエスパルスドリームプラザへ。モール内の出店で海鮮丼を買っていただいた
13時ごろ、空自静浜基地第11飛行教育団のT-7練習機が飛来。空自のパイロットを目指す学生が最初に操縦桿を握り、単独飛行を行なう機体だ
空自浜松基地第1航空団第32飛行隊のT-4練習機。垂直尾翼チェッカーマークの下が赤帯なのが第32飛行隊機で、青帯は第31飛行隊
空自岐阜基地から飛来した、飛行開発実験団のF-2戦闘機。旋回時にアフターバーナーを使用し轟音を響かせた
14時45分、「ひゅうが」が出港、母校舞鶴へ向かった。
「ひゅうが」が出港すると、会場はいったん閉鎖し海上花火大会の準備に入る。その間にボードも書き換えられた
花火を積んだ台船がクレーン船に横抱きされて入ってきた
例年、花火に先立ち「海ではたらく船のパレード」が行なわれる。海保巡視艇「みほかぜ」と国土交通省「まさき」
財務省名古屋税関清水税関支署巡視艇「はごろも」と、静岡県警警備艇「するが」。黒く大きな物体は「ひゅうが」船体が傷つかないよう岸壁との間に挟んでいた防舷物(フェンダー)
みなと祭りの花火は観客席に近い。超広角14mmでの撮影で、前列にいると真上に近い角度で花火が覆いかぶさってくるように見える
さくら色や水色などの淡い色合いの花火も披露された。これらは世界ではじめてイケブンが開発したものだという
2隻の台船からテンポよく花火が上がる。空に浮かぶ赤い軌跡はヘリコプターの航空灯
芸術的なスターマイン(多数の花火を連続して打ち上げること)には観客席から拍手が沸き起こった
フィナーレ。予想して絞り込んで撮影してみたが予想外に明るかった。いいものを見た

 今年の清水みなと祭りもまったりと楽しめた。個人的には、最近は炎天下に“並ばない(はずの)万博”で並びまくっているので、まったく並ぶことなく、日陰や商業施設にすぐ逃げ込んで涼を取れる清水みなと祭りが快適過ぎた。めずらしい色の花火も見られて、海上花火大会も満足した。来年もまた、ほかに用事がない限りはぜひ訪れたいと思う。