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リニア中央新幹線で一番長い河川橋「釜無川橋りょう」を見てきた! JR東海が現場初公開で「工事進捗は5割強」と明かす

2025年8月5日 公開
リニア中央新幹線に新設される橋りょう(河川橋)の工事現場が初めて公開

 JR東海は8月5日、リニア中央新幹線 品川~名古屋間の開業に向けて山梨県中央市・南アルプス市地内で建設を進めている「釜無川橋りょう」と「常永川橋りょう」の工事現場を初めて報道陣に公開した。

 JR身延線 小井川駅から西へ約1.5km、新設されるリニア山梨県駅からは西へ約5kmほど先の地点を流れる2つの河川にまたがる橋りょう(河川橋)で、常永川橋りょうは延長225m、釜無川橋りょうはリニア中央新幹線 品川~名古屋間で最も長い橋りょうとなる延長754.2mにおよぶ。

 工事担当者の説明によれば、この2つの橋りょうと3つの高架橋を含む路線延長1238mの進捗具合は、2025年5月時点で5割強まで進んでいる(工区名称「中央新幹線、釜無川橋りょう他」、2021年4月から全体着工、工期は2026年8月までの予定)。橋を支えるための土台となる基礎や柱の部分(下部工)はほぼ完成し、リニアの走行面にあたる橋桁(上部工)は5割強、施工が完了している。

 車輪とレールで走行する通常の鉄道とは異なり、リニアは車両を磁力で浮上・走行させるため、「ガイドウェイ」と呼ばれるコの字型の壁にコイルが埋め込まれた構造物がレールの役割を果たすが、最終的にはこの2つの橋りょう上にもガイドウェイが敷かれ、時速500kmを安全走行するため、そして防音・雪など環境対策のために、ガイドウェイをアーチ形に覆うフードや防音壁が設備される。

 このほか、山梨県エリアの事業全体(上野原市~早川町間、地上部27.1km+トンネル56.3km=全長83.4km)においては、リニア山梨実験線の区間にあたる42.8kmがほぼ工事を終えており、残り約40kmの路線区間と構造物(山梨県駅、変電所3か所、保守基地3か所、山岳部非常口9か所など ※既設含む)の本格着工に順次入っている段階。ただし、今回公開した2つの橋りょうについては、1年のうち11月〜5月末が工事可能期間となっている(夏場6月~10月末は河川が増水しやすく危険が伴うため作業禁止のルールがある)。

JR東海 山梨東工事事務所 担当者らが、山梨県エリアで進むリニア中央新幹線の工事概要や進捗について説明
山梨県エリアの事業全体は、上野原市~早川町間の全長83.4km(地上部27.1km+トンネル56.3km)。うち、リニア山梨実験線の区間は42.8km
常永川橋りょう(中央市総合防災公園付近から見た外観)
柱の高さ(地上から桁まで)は、常永川橋りょう(写真)が約19m、釜無川橋りょうが約16m
現在は「常永川橋りょう」上の桁などを工事するため、作業員が使用する昇降階段が設置されている
品川方面
名古屋方面
常永川橋りょうのすぐ北には新山梨環状道路(南部区間)が走る
リニア中央新幹線で最長754.2mの「釜無川橋りょう」(中央市田富ふるさと公園付近の河川敷から見た全景)。ちなみに東海道新幹線では、全長1373mの「富士川橋梁」が橋りょうの最長
新設される山梨県駅からは西へ5kmほどの地点にある。橋を支えるためのケーソン基礎や柱の部分(下部工)は完成しており、現在は桁(上部工)をつなげていくコンクリート打設作業などを行なっている

 リニア中央新幹線に新設される橋りょう(河川橋)の工事現場が公開されるのは今回が初。この日は、2つの橋りょうのすぐ北部を走る新山梨環状道路や常永川橋りょうの工事現場に地域住民を無料招待する山梨県主催「地域インフラ見学会」も行なわれ、小学生5年(とその保護者)から大学生まで計16名が参加。甲府市在住の中学1年生・渋谷さんは、「実際に来てみるとパンフレットとは全然違くて、大きさも仕組みもすごかった。完成して早く乗れるようになるのが楽しみ」と、将来リニアが走ることとなる橋上に立った感想を語った。

 リニアの橋りょう上はガイドウェイが備わる分、新幹線用の橋りょうよりも橋幅が広く、時速500kmの走行に耐えるための強度に優れているのも特徴。最終的には防音・防災対策フードに覆われるため、公園などの周辺から“リニアが橋の上を走る様子”を見ることはできないというが、少しずつ完成に近づく橋の外観は、橋のふもとにある「総合防災公園」(山梨県中央市布施3564-1)や「田富ふるさと公園」(山梨県中央市臼井阿原1740-120)付近の河川敷からでも見上げることができる。

工事中の常永川橋りょうの桁の上に特別にのぼれる「地域インフラ見学会」開催。JR東海の職員が分かりやすいパネルで子供たちに解説した
リニア路線は「ガイドウェイ」と呼ばれるコの字型の壁がレール代わり。ガイドウェイの走行面に傾斜がついている理由は、カーブ区間でも遠心力を利用することで、時速500kmのスピードで安定走行できるように(※今回公開された同工区では直径16kmの円を描くような角度でカーブがついている)
橋りょうから甲府盆地を一望する参加者たち

 囲み取材に応じたJR東海 山梨東工事事務所 所長 岡崎真人氏は、公開した2つの橋りょうについて「2021年4月の着工から着実に進めており、現在は上部工を順次のばしている段階」とし、今後も「工事の安全、環境の保全、地域の皆さまとの連携」に努めたいと話した。

 また、山梨県 県土整備部建設業対策室 室長 鈴木伸太郎氏は、リニア中央新幹線は「山梨県の未来に重要な影響を及ぼす国家プロジェクト。JR東海の全面的な協力により地域インフラ見学会を実現できた」と感謝しつつ、リニアを通じて「建設業の役割や重要性、魅力に関心を持ってもらい、人材不足のなかでゆくゆくは建設産業の担い手確保につながれば」と、今後も地域の声を取り入れ、見学会などを実施していきたいとした。

JR東海 山梨東工事事務所 所長 岡崎真人氏
山梨県 県土整備部建設業対策室 室長 鈴木伸太郎氏
山梨県内の工事概要
山梨県内の事業概要
工事位置図
工事位置図拡大(※現在地=中央市田富ふるさと公園近辺)
建設する構造物
釜無川橋りょうほか新設 進捗図