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JALと日本医師会、飛行機内での医療支援迅速化に向け医師情報を任意登録する「JAL DOCTOR登録制度」

国内航空会社では初めての取り組み

2016年2月3日 実施

 日本医師会とJAL(日本航空)は2月3日、「JAL DOCTOR登録制度」の開始を発表した。この制度は飛行機の機内で具合がわるくなった乗客に対し、搭乗中の医師にいち早く応急処置を行なってもらうために、日本医師会発行の医師資格証を所持している、JALマイレージバンク会員の医師に任意で事前登録してもらう制度で、国内の航空会社としては初めての取り組みとなる。

 今まで機内で急病人が発生した場合は、客室乗務員が機内でアナウンスし搭乗中の医師に呼びかける「ドクターコール」を行なって協力を要請していたが、呼びかけに時間がかかるなど迅速な対応ができなかった。また、ドクターコールをすることにより、機内に緊張感が走るというケースもあった。

登録はJALマイレージバンクのホームページから行なう

「JAL DOCTOR登録制度」では、医師資格証を所持している医師がJALのWebページから事前に登録することで、パイロットと客室乗務員が事前に情報を共有し、搭乗している医師の座席番号を把握できるというもの。機内で急病人が発生した際に、登録した医師へ客室乗務員が直接声をかけて協力を要請、迅速に適切な応急処置を行なうことができるようになる。

 日本医師会では2年ほど前から医師資格証の発行を開始、医師免許証の確認など厳格な手続きが必要となるため、現在、医師資格証を所持している医師は2500名程度となっている。

 1日およそ1000便を運航するJALでは、機内での急病人発生の件数は年間360件程度で、およそ1日1件程度発生しているという。特にフライト時間が長い国際線では、国内線と比較しておよそ2倍程度の発生しており、そのうちドクターコールが必要なケースは3分の2程度。ドクターコールを行なったおよそ半分のケースで、搭乗中の医師が応急処置にあたるという。

会見で握手をする日本医師会 常任理事 石川広己氏(左)と日本航空株式会社 執行役員 路線統括本部商品・サービス企画本部長の加藤淳氏(右)

 JALでは、航空機の保険に付帯されている制度により、万が一の場合の賠償責任は原則として航空会社が負う。ほかにも、飛行中にどこからでも日本人の現役専門医から助言を得る体制を整えているなど、ドクターコールに対するさまざまな取り組みを行なっている。

 協力した医師に対しては、マイレージ上級会員向けのラウンジ利用などの特典も準備する。この制度の登録は2月3日から開始されており、実際の運用は2月15日より開始される。

 海外ではルフトハンザドイツ航空が同様の制度を導入しており、日本医師会では国内のほかの航空会社への導入も働きかけたいとしている。

航空機の機内に搭載されている医療機器
JALが運航するすべての航空機に搭載されているドクターキット。原則医師以外は鞄を開けることはできない。点滴や注射など医薬品や医療用具など診療に必要なものがまとめられている
青いバックのリサシテーションキットは客室乗務員など医師資格のない人でも使用できる。血圧計や消毒液、絆創膏など応急救命に必要なもの入っている。こちらは国際線と国内線で一部内容が異なる
血圧計とパルスオキシメーター。パルスオキシメーターは医師からの要望により搭載されるようになった。主に喘息などの呼吸器疾患の診断の時に有用だという

(鈴木崇芳)