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エアアジア・ジャパン、2016年春就航に向けたエアバス A320初号機を受領

セントレアを拠点に新千歳、仙台、台北に就航

2015年10月16日 到着

セントレアに到着したエアアジア・ジャパンの初号機

 エアアジア・ジャパンの初号機となるエアバス A320型機(登録記号:JA01DJ)が、10月16日12時35分に中部国際空港(セントレア)に到着した。ウォーターキャノンによる歓迎を受けたのち、スポット26に駐機。その後、機内を報道陣に公開した。

 この初号機は10月9日にエアバスのデリバリセンターがあるフランス・トゥールーズで受領。3名のパイロットによりエジプト、オマーン、ミャンマーを経由、約8000マイルの長旅を経て日本に到着したもの。製造番号は6702。同機は今後、11月後半から運航乗務員の訓練に使用されるほか、年明けには国が定める実証試験を実施する。

 エアアジアグループは音楽業界出身のCEO トニー・フェルナンデスが、アジアにLCCを定着させるために2001年に立ち上げた会社。当初、1リンギット(約30円)で航空会社を買い取り、機材は中古のボーイング737型機2機、従業員約200名でスタート。機体にも描かれている「Now Everyone Can Fly(みんなでどこにでも行ける)」を合言葉に航空機業界に参入。「アジア、ASEANエリアでは、従来の交通機関、バス、鉄道、船に替わって、より快適に早く安全にお客様をお運びするツール」を目標に掲げた。14年が経過した現在、アジア全域に路線を広げ、機材は200機を超え従業員数は1万7000名を数えるまでに成長を遂げている。

 エアアジア・ジャパンは2012年にANA(全日本空輸)との提携により一度就航したものの、翌年すぐに関係を解消し運航を休止。2014年7月1日に資本金10億円で再参入を目指し新会社を立ち上げた。2015年9月29日には本社機能を東京から中部国際空港内に移転。2016年春までにA320型機をもう1機追加し、2機体制で同空港を拠点に国内線と国際線への参入を予定している。就航路線は中部~札幌、中部~仙台、中部~台北の3路線で、各路線1日2往復の就航となる見込み。資本金は現在20億に増資されており、最終的(就航開始時)には70億円となる予定だという。

仏トゥールーズから8000マイルを飛びセントレアに着陸
機体右側にはエアアジアの合言葉が描かれる
タクシーウェイではパトロールカーが先導
機体左側には会社名が入る
スカイデッキに集まったファンや報道陣に手を振るパイロット
26番スポットへ向けてタキシングしていく
スポット前ではウォーターキャノンによるお出迎え
26番スポットに駐機後パイロットが日の丸の旗を振り喜びを現した
機体正面
コクピット下に国旗が描かれ赤い頬っぺたのような愛嬌のある顔つき
主翼下部にもエアアジアのロゴが描かれる
前輪。タイヤはもちろんミシュラン
主輪
側面
登録記号はJA01DJ
大型のウイングチップ「シャークレット」が付く
エンジンはCFM56
機体右面のレタリング
左面にも小さく合言葉が入る
機体後方
コクピット
座席数はLCCが用いるA320では標準的な180席
シートは黒の革張りでLCCとは思えない雰囲気
オーバーヘッドビン
背もたれにはAirAsiaの型押しが入る
前部ギャレー

エアアジアグループのシナジーでアジア全域に翼を広げる

最初の就航地は札幌、仙台、台北
エアアジア・ジャパン 代表取締役社長兼CEO 小田切義憲氏

 初号機の到着から通関を待つ間に、エアアジア・ジャパンのセントレアでの新しい拠点となる「レッド・ベース」で記念式典が開催された。

 式典ではまず同社 代表取締役社長兼CEO 小田切義憲氏が登壇。エアアジアグループを紹介した後、今後の展開についての説明を行なった。「私どもグループは日本には関西、羽田、成田、そして千歳空港に就航している。エアアジア・ジャパンが今後、名古屋を中心に各路線を繋げていき、日本をグループで“面”で捉えていくことを戦略としている」と解説。「グループのエアアジア・マレーシア、エアアジア・マレーシアX、タイ・エアアジアという会社を利用して、アジアから日本へ、日本のお客様が広くアジア全域に目的地を広げることができるようになる」と、アジア全域に翼を広げる同グループならではのシナジーであるとした。

 同社としてはまず3路線からスタートするが、その後は「準幹線と言われる路線、新たに開拓していく路線も含めて今後の中でしっかりと見極めていきたい」「毎年5機程度を購入し、4年後には20機体制を目指す」「便数を増やして単価を下げることを追及」「フルサービスキャリアとの線引きをしっかりとしてコストカットを行なう」「2018年度には単年度黒字化を達成したい」「平均搭乗率は85%以上を目指す」と目標を語った。

 セントレアを拠点に選んだ理由は、1つは「24時間空港である」ことを挙げ、飛行機の稼働時間を高めるには早朝、深夜にも飛行機を飛ばせることが望ましいと説明。第2滑走路についても「個人的に」と前置きしたうえで「必要だと思っている。そのためには需要が必要となるので私どもが便を張って路線を増やすことが必要。もっと便利に使える空港として伸びしろがあると考える」と話した。

 もう1つの理由として「ほかのLCCが本拠地としていない」点を挙げた。セントレアは1200万~1400万人程度の後背地人口があり、「周辺のお客様は東京や関西を使っている方もいるが、私どもがしっかりと路線展開をすることで中部に振り向いていただける使いやすい路線展開をしていく」と目標を語った。

 2013年に一度撤退した点については「前回は4カ月程度(の準備)で定着するまでいかなかった。今回は事前にしっかりと地元の皆様に認知していただけるよう活動をして、最初の段階から分かっていただき使っていただけるようにしていきたい。また、“予約のシステムが使いにくい”という課題はすでに解決を図っている」とした。

 機材に関してはA320で統一する。エアアジアグループでは2016年から新エンジンを搭載したA320neoが導入されるが、エアアジア・ジャパンでの導入は未定。複数機材導入のコスト増と効率アップによるコスト減を相殺した中で判断していきたいとした。また、記者からこの10月にも初飛行を行なうとされる三菱リージョナルジェット(MRJ)に関する質問があったが、「日本に数十年ぶりに日本の翼が飛ぶのは非常に喜ばしい。私どものA320に続き名古屋地区から飛行機が離陸するのは非常によいことだと思っている。地元の産業という観点からしても、中部エリアは日本で一番といってもいい航空産業の地。一緒に航空を広めていくことはやっていきたい」と歓迎の意を示したものの、「ビジネスとしてはLCCはコストを下げるため1機種に限定するのが前提。現段階では具体的な検討はしていない」との判断を示した。

レッド・ベース入口
エアバス社から贈られた盾とモデルプレーン
エアアジアの信条
SKYTRAXで7連連続ベストLCCエアラインに輝く
会社概要
各国のエアアジアグループ
エアアジアCEO
エアアジアの始まり
創業当初
2015年のエアアジア
14年間で3億人以上の旅客を輸送
アジア地域で路線を充実
メイン機材はエアバス A320型機
エアアジアXではより大型のエアバス A330を仕様
国土交通省 大阪航空局 中部国際空港長 谷口安弘氏

 続いて国土交通省 大阪航空局 中部国際空港長 谷口安弘氏が登壇。日本国内を拠点とするLCCが中部にはなかったことに触れ「エアアジア・ジャパンから中部を拠点とした事業展開の話を伺った時から心待ちにしていた」「本社も東京からセントレアに移転していただいて本気度に期待している」と、エアアジア・ジャパンの就航を歓迎。

 初号機については「エアアジアジャパンが使用している赤と白がラグビー日本代表を連想させ、今後(の活躍)に大いに期待している。来年4月から予定されている2機体制での運航開始まで十分に完熟を積んでいただいて、セントレアの仲間とともに航空の安全安心を確保しつつ、中部地区の航空需要の拡大、利便性の向上に大いに貢献していただけますよう祈念しています」と、述べた。

エアバス・ジャパンシニア・バイス・プレジデント セールス&マーケティング 日本担当 ジャンピエール・スタイナック氏

 最後に初号機の製造元となるエアバス・ジャパンシニア・バイス・プレジデント セールス&マーケティング 日本担当 ジャンピエール・スタイナック氏が登壇。「エアアジア・ジャパン様への初号機はフランス・トゥールーズにおきまして10月9日引き渡されました。皆様のご尽力のもと、無事に引き渡しが完了したことをお祝い申し上げます。エアアジア・ジャパン様の塗装を纏った美しい飛行機は皆様もご覧になられましたように本日午後、ここセントレアに到着いたしました」と前置き。エアアジアグループがA320型機475機発注する最大の運航会社の1つであり、エアアジア・ジャパンが加わることをうれしく思う、と歓迎。

 また、同機については「A320が提供する優れた運航コスト、広々とした快適な機内、短いターンアラウンドタイムなど、多くの利点を享受できるでしょう。皆様ご承知のとおりA320は高い運行信頼性を誇る単通路型機で多くのLCCに採用されています。また、A320ファミリーは世界でもっとも人気の高い航空機でもあります。これまでに1万2200機以上を受注し、うち6700機以上が世界360社以上の顧客に引き渡されています。エアアジア・ジャパン様が国内および国際線で将来その存在感をA320で高めていかれることは間違いないでしょう」と、同機の優秀性をアピールするとともに、エアアジア・ジャパンの発展を祈った。

エアバス社から盾とモデルプレーンが贈られた
CAを含めたフォトセッション

(編集部:多和田新也)