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東京都中央卸売市場、築地市場の豊洲移転について理解を深める「東京いちばセミナー」

築地市場で小学生親子を対象に開催

2015年8月22日 実施

現在の築地市場。2016年11月に豊洲市場への移転が決まっている

 東京都中央卸売市場は、築地市場の豊洲移転に向けて、中央卸売市場の機能や役割を都民に再認識してもらうことを目的とし、2012年より「TOKYO ICHIBA PROJECT」を実施している。その活動の一環として、8月22日に築地市場において、小学生親子を対象とした「東京いちばセミナー」を開催した。

 このセミナーは、築地市場や建設中の豊洲市場を実際に体験しながら、卸売市場を取り巻く流通環境の変化や市場に求められる機能を学びつつ、築地市場の豊洲移転について理解を深める目的で開催。第1回目は7月18日に開催されているが、2回目となる今回は、夏休み期間での開催ということもあり、1年生から6年生までの小学生親子が参加対象となり、公式ホームページの公募で選ばれた15組30名の親子が参加した。

小学1年生から6年生の親子15組30人が参加して開催された「東京いちばセミナー」。築地市場の豊洲移転について理解を深める目的で開催
開催の挨拶を行なう、東京都中央卸売市場 総務課広報担当 課長代理の岡村正弘氏
2015年度のTOKYO ICHIBA PROJECT応援団長に就任しているタレント清水国明氏も、息子の清水国太郎くん(小学2年生)と一緒に参加した

 セミナーの前半では、築地市場内の会議室を利用して、築地市場や豊洲市場の概要が説明された。

 築地市場は、現在から80年前の1935年に開設された、東京都内で最も古い市場だ。築地市場では魚などの水産物や、野菜・果物などの青果物が扱われている。建物面積は約23万m2、1日あたりの平均取扱数量は水産物が1676トン(金額は約16億円)、青果物が1095トン(金額は約3億円)と、非常に大規模な市場となっており、特に水産物の取り扱いに関しては世界最大級となっている。

 築地市場開設当時は、横を流れる隅田川から船で、その後は鉄道を使って魚や青果物が運ばれていたが、現在はトラックなどの車を使った輸送へとシフト。ただ、築地市場は都心の一等地にあることから道路などの拡張が難しく、トラックなどの運送車による慢性的な混雑が問題となっている。また、水産物や青果物の取扱量に対して建物面積が手狭となっていたり、開設から80年が経過して建物自体の老朽化も進んでいる。そこで、築地から近く、広大な場所が確保でき、高速道路へのアクセスも含めた交通の利便性の高さを考慮して、豊洲への移転が決定。

 セミナーでは、こういった築地市場の豊洲移転の経緯に加えて、懸念された土壌汚染対策工事が完了していることや、豊洲市場の構造や現在の建設状況などが、小学生にも分かりやすいようにイラストを交えながら解説された。

東京都中央卸売市場 築地市場 副場長の村上章氏によって、築地市場の概要が紹介された
築地市場の概要。水産物の取り扱い数は世界最大規模となっている
スライドを使って、築地市場の生い立ちを紹介
築地市場開設当時は、横を流れる隅田川から船で水産物や青果物を運んでいた
鉄道の「東京市場駅」として使われていた建物。現在は水産仲卸売場として使われている
子供にも分かりやすいように、イラストを交えながら市場の役割や水産物などの取引の流れを解説した
豊洲市場について解説する、東京都中央卸売市場 新市場整備部 課長代理の浅倉美文氏
現在の築地市場は、建物などの狭さや老朽化、周辺の交通混雑などが問題となっている
築地市場の約1.7倍となる広大な場所が確保でき、交通アクセスの利便性に優れ、築地から直線距離で約2.3kmと近いことから豊洲への移転が決まった
建設中の豊洲市場の詳細も説明。屋上緑地や太陽光発電などによる環境対策や省エネ化だけでなく、マグロの競りの見学ルートの用意など見学者への配慮も特徴になるという
もともと東京ガスの工場跡地だったため土壌汚染が問題となっていたが、約3年かけて土壌汚染対策工事を行ない、現在は専門家による調査でも安全性が確認されているとのこと
豊洲市場は2016年11月7日に開場予定。築地市場の魅力を受け継いで、さらに発展していきたいという

 続いて、実際に築地市場で働いている水産、青果の各卸業者による、魚や青果物の“目利き”体験が行なわれた。築地市場に限らず、市場で働くには扱っている水産物や青果物などを見極める“目利き”が非常に重要な能力となる。セミナーでは、実際に魚や野菜、果物を使って、どれがよい魚や青果物なのかを見極める方法が、分かりやすく解説された。

 参加した子供達も、目の前に置かれた魚や野菜、果物を実際に手に取りつつ、興味深く目利きを体験していた。また、日々の買い物などで子供以上に食材に触れる機会の多い親の参加者も、卸売業者の目利き術の解説を真剣に聞き入っていたのは印象的だった。

水産物の目利き方法を説明する、水産物仲卸業者 島津商店の島津修氏。東京魚市場卸協同組合広報文化担当常務理事長でもある
魚の見極め方を、実際に鮮魚を使って説明。子供たちも興味津々の様子だった
身体の色が鮮やかで、目の濁りの少ないものほど新鮮と、基本的な目利きのポイントを紹介
子供達も、実際に目利きを体験。島津氏の詳しい解説で、子供達も新鮮で脂ののったサンマを的確に目利きしていた
野菜や果物など青果物の目利きを説明する、青果卸売業者 東京シティ青果の産地開発室課長の舩橋俊二氏
競りで使われる、金額を指定する独特な指使い「手やり」を説明する舩橋氏
参加者全員で手やりを体験
茄子の目利きを解説。表面に光沢があってキズの少ないものがいいとのこと
トマトの目利きでは、サイズや表面の色合い、キズの有無などで目利きを行なうという。全体的に均一な色合いで張りのあるものがいいという
清水氏も実際にぶどうを手に目利きを体験
舩橋氏が目利きした、おいしいぶどうを試食

 目利き体験後には、参加親子の築地市場見学を経て、バスに乗り、建設中の豊洲市場の見学ツアーが行なわれた。第1回目のセミナーでは、建設中の豊洲市場付近で下りて視察もできたようだが、今回はバスに乗ったまま豊洲市場周囲を見て回るだけだった。

 それでも、2016年11月上旬に予定されている豊洲市場開設に向けて急ピッチで進められている豊洲市場の建物や、周囲の道路や橋の整備の様子がバス車内で詳しく解説されたこともあって、参加親子は窓の外に広がる豊洲市場建設の様子を興味深そうに眺めていた。

参加親子の築地市場見学ツアーも行なわれた
築地市場の場内”魚河岸横丁”横に開設されている「東京いちばステーション」。築地市場や豊洲市場など、東京都の市場に関する情報を発信。一般も入場可能だ
豊洲市場のジオラマも設置
ジオラマは子供達にも大人気だった
TOKYO ICHIBA PROJECTの公式キャラクター「イッチーノ」
バスに乗って豊洲市場見学ツアーに出発
バスでは豊洲市場や周囲の道路の建設・整備状況が説明された
築地市場から豊洲市場の間の晴海通りでは、首都高速晴海線の晴海出入り口や豊洲出入り口の工事が進められている
建設中の豊洲市場。これは5街区の青果棟となる
6街区の水産仲卸売場棟。急ピッチで建設が進められている
整備が進められている環状第2号線。完成すると築地市場と豊洲市場の間で直線アクセスが可能となる
建設中の、環状第2号線豊洲大橋
こちらは、築地市場横の隅田川にかけられた、環状第2号線の築地大橋

 豊洲市場見学ツアー後は、前半と同じ築地市場の会議室に戻り、2015年度のTOKYO ICHIBA PROJECT応援団長に就任しているタレントの清水国明氏による絵手紙教室を実施。

 清水さんは、絵手紙の創始者で絵手紙作家の小池邦夫氏に師事し、近年は絵手紙の魅力を伝えるために精力的な活動を行なっているという。今回の絵手紙教室では、清水さんから絵手紙を書くときの心構えや筆の持ち方、彩色のテクニックなどが解説され、参加した親子が今回のセミナーを通して感じたことなどを思い思いに絵手紙にしたためた。そして、完成した絵手紙を自分宛に築地市場内の郵便ポストに投函し、セミナーは終了した。

豊洲市場見学ツアー終了後、清水氏の指導による絵手紙教室を開催
清水氏は、絵手紙作家の小池邦夫氏に師事し、絵手紙の魅力を広める活動を行なっているという
筆の持ち方や絵手紙を書くときの心構えなどを説明する清水氏。子供達の真剣なまなざしが印象的だった
参加者全員で、セミナーを通して感じたことを絵手紙にしたためた
出来上がった絵手紙を自分宛に築地市場内の郵便ポストに投函してセミナーは終了した

(平澤寿康)