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ディナーと地酒を楽しめる京都丹後鉄道「くろまつ」に乗ってみた
銘酒にほろ酔い海の幸、山の幸を食べながら列車の旅を楽しむ
(2015/4/9 00:00)
- 会席弁当ディナー列車
- 料金:大人1万1000円、子供5000円
- 区間:西舞鶴駅発15時36分発~豊岡駅着18時15分
- 運転日:金、土、日、祝
4月1日、「京都丹後鉄道」が北近畿タンゴ鉄道の運営を引き継ぐ形で開業した。京都丹後鉄道は日本三大景勝地である「天橋立」などを沿線に有しており、観光資源が豊富な地域だ。また、京都府は、丹後や中丹地域を「海の京都」という新たな観光圏として振興を目指しており、注目されている地域でもある。この地域の車窓を食事をしながら満喫できるのが京都丹後鉄道のディナー列車「くろまつ」だ。
「くろまつ」は、KTR700形気動車を改装し「『海の京都』の走るダイニングルーム」というコンセプトで2013年に登場した特別車両。デザインは、JR九州の豪華列車「ななつ星in九州」をデザインした工業デザイナー水戸岡鋭治氏によるもの。内装は、天然の木を贅沢に使い、和風の落ち着いた雰囲気を演出している。車内には4人掛けと2人掛けのテーブル席が5組ずつ設けられており、レストランのように食事を楽しむことができる。
「くろまつ」には、3つのコースが設けられており、地元のスイーツ店がプロデュースする、福知山駅~天橋立駅間を運行するカフェ列車「スイーツコース~TANGO CAFE TRAIN~」、京都丹後鉄道の本社がある宮津の料亭「ふみや」が手掛け「焼き鯖寿司」と、旬の丹後の味覚を味わえる「ランチコース~丹後のあじわい ランチ列車~」、そして4月17日より新しく登場する西舞鶴駅から豊岡駅までを、会席弁当を楽しめる「ディナーコース~丹後のきらめき 会席弁当ディナー列車~」が金、土、日、祝に運転される。
【「くろまつ」のコース】
コース名 | 運転日 | 発駅 | 着駅 | 価格 |
---|---|---|---|---|
スイーツコース~TANGO CAFE TRAIN~ | 金/土/日/祝 | 福知山駅10時25分 | 天橋立駅11時37分 | 大人:4000円、小児:3600円 |
ランチコース~丹後のあじわい ランチ列車~ | 金/土/日/祝 | 天橋立駅12時07分 | 西舞鶴駅14時27分 | 大人:1万円、小児:9400円(6月料金 大人:1万2000円、小児:1万1400円) |
ディナーコース~丹後のきらめき 会席弁当ディナー列車~ | 金/土/日/祝 | 西舞鶴駅15時36分 | 豊岡駅18時15分 | 大人:1万1000円、小児:5000円 |
駅弁では味わえない新鮮な食材に感動
今回は報道陣向けに「ディナーコース~丹後のきらめき 会席弁当ディナー列車~」の体験会が行なわれたのでレポートする。
通常のディナー列車は西舞鶴駅~豊岡駅間の運行となるが、今回は特別に京都丹後鉄道の出発式のセレモニーを飾った「あおまつ」(http://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/20150402_695854.html)と接続する設定で、天橋立駅発16時36分の団体臨時列車となった。
車内は、フローリングに木のテーブル、木の椅子、木の窓枠と木材をふんだんに使い、窓にはブラインドとして「京すだれ」を採用するなど落ち着いた和の空間を演出している。また「あおまつ」と同じく、地元の特産品を展示する棚などもあり、雰囲気を盛り上げてくれる。
列車は定刻通り動き出し、まずは食前のドリンクサービス。メニューを見て地酒の多さに驚いた。注文できる地酒は以下の通り。
「久美の浦 特別本醸造(熊野酒造)」
「京の春 生もと(向井酒造)」
「京の春 山廃(向井酒造)」
「伊根満開(向井酒造)」
「旭桜 純米古酒(永雄酒造)」
「池雲 純米吟醸酒(池田酒造)」
「弥栄鶴 祝蔵舞(竹野酒造)」
「特別純米 六歓(東和酒造)」
「純米原酒 綾部の四季(若宮酒造)」
「吉野山 大吟醸(吉岡酒造場)」
「山廃純米 ひやおろし(与謝娘酒造)」
「純米吟醸生原酒 銀シャリ(白杉酒造)」
「鬼退治 原酒(谷口酒造)」
「玉川 人喰い岩(木下酒造)」
車内で14種類もの地酒を味わうことができる。伺ったところ、地元でしか飲めないものもあるとのこと。もちろん、一般的なドリンクも用意されており「サントリー プレミアムモルツ」や「キリン 一番搾り」「アサヒ スーパードライ」などのビールや、「サントリー オールフリー」といったノンアルコールビール、「サントリー 角」、梅酒「恋うらない」、焼酎「京の芋焼酎 いもたん」「二階堂」、ソフトドリンクとしてウーロン茶、100%オレンジジュース、100%アップルジュース、ホットとアイスのコーヒーと紅茶が揃っている。なお、時期によってメニューは変わるため「どうしてもこれが飲みたい」という場合には事前に問い合わせた方がよいだろう。
また、1ドリンクはコースに含まれるため無料だが、もう少し飲みたいという場合は、地酒1ショット400円より追加注文ができる。
仕事中ではあるものの、やはり地酒が気になる記者は「伊根満開(向井酒造)」をお願いした。この伊根満開は、古代米を使った赤い地酒で、フルーティな味わいが特徴。実際に飲んでみると、ワインと地酒の中間のような爽やかな果実の味がスーッと口の中に溶けていくように広がった。いわゆる日本酒的な癖や強いアルコール感はなく、かといってワインのような渋みもない。日本酒や地酒を飲み慣れない人でも飲みやすい。なお、「伊根満開」は京都府与謝郡伊根町にある「向井酒造」での直接購入や通販での取り寄せもできる(http://kuramoto-mukai.jp/)。
そしてお待ちかねのメインディッシュ。「ホテル マーレたかた」による会席弁当。ローストビーフを中心にお刺身、焼き魚、「まいづる肉じゃが」「舞鶴平天稲荷」、点心各種と、丹後地方の食材をふんだんに使ったメニューだ。見た目はお弁当になっているものの、食べてみると駅弁とは別次元の味わい。ローストビーフはとろけるように柔らかく、刺身は身が締まって新鮮そのもの。他の食材もまさにホテルのディナーで味わえるようなものばかりだった。なお、地元の季節のものを使っているため、メニューは日によって変わるとのこと。何度来ても新しい味を楽しめそうだ。
メインディッシュを味わっていると次に出てきたのが「舞鶴ちらし寿司」。ご飯が見えないほど魚介類を中心とした具材が乗っており、「ちらし寿司」というよりも「海鮮丼」といった豪華な内容。メインディッシュに負けず劣らず新鮮で、これだけ食べても満足できるものだった。
最後にデザートとして提供されたのが、天橋立名物の「智恵の餅」。食べると智恵を授かると言われており、天橋立にある「智恩寺」詣の後に、門前の「勘七茶屋」でこの「智恵の餅」を食べるというのが定番のコースだ。餅の上にあんが敷き詰められており、ヘラですくって一緒に食べる。甘さが程よく、ボリュームのあるメインディッシュや「ちらし寿司」の後でも不思議なほどスーッと食べられる。
そして、あっという間に宮豊線 終点の豊岡駅に18時15分に到着。この日はあいにくの荒天のため、ブラインドを下ろしての走行となり、車窓を楽しめなかったが、天気が良い日は天橋立をはじめ、夕焼けに染まる景勝地を見ながらディナーを楽しめる。なお、2015年3月14日改正のダイヤでは、この列車と新大阪行き18時28分発「こうのとり26号」が豊岡駅で接続できるので、ディナーを楽しんだ後に大阪方面に帰ることができる。もちろん、豊岡駅の近隣で1泊するのもいいだろう。
記者としては、仕事ではなく、ぜひプライベートで楽しみたい列車のひとつだ。