JR東日本、いわき駅で品川行き1番列車「ひたち2号」が出発

「上野東京ライン」の開業により一部列車で品川駅までの直通運転開始

　JRグループは、2015年3月14日にダイヤ改正を実施した。これに合わせJR東日本では、上野駅と東京駅の間に新設された「上野東京ライン」を開業するとともに、宇都宮線、高崎線、常磐線と東海道線の相互直通運転を開始。また、常磐線特急は速達タイプが「ひたち」、停車タイプが「ときわ」にリニューアルされ、それぞれの一部列車で品川駅までの直通運転を開始した。

　従来まで、宇都宮線、高崎線、常磐線方面から東京や品川方面に向かう場合には、上野駅で山手線か京浜東北線に乗り換えなければならず、手間がかかっていた（もちろん、逆方向の場合も同様）。また、その影響もあって、上野駅～秋葉原駅間は山手線内で最も乗車率の高い区間となっており、特に朝の通勤時間帯の混雑度は飛び抜けて高くなっていた。

　しかし、今回の上野東京ライン開業によって、宇都宮線、高崎線、常磐線方面から東京駅や品川駅方面へ乗り換えなく移動できることとなった。乗り換えの手間がかからなくなるとともに、通勤時間帯の上野～秋葉原間の乗車率や、上野駅の乗り換え混雑の大幅な緩和が期待される。同区間の利用者にとって、待望の新路線開業といえるだろう。

　さらに、観光にとってもメリットがある。常磐線特急が東京駅や品川駅まで直通運転を開始したことで、東海道新幹線から常磐線方面への乗り継ぎが大幅にスムーズとなった。これにより、東海道新幹線を利用する観光客を、水戸やいわきなど、常磐線方面へと呼び込む起爆剤になる可能性がある。加えて、いわき始発の常磐線特急はすべてが品川行きとなり、常磐線沿線から伊豆や静岡方面などの東京以西への旅行も格段に利便性が向上する。

品川行きひたち号の出発セレモニーをいわき駅で開催

いわき駅1番線で出発を待つひたち2号

駅の掲示板には「上野東京ライン」の文字が記され、ひたち2号の行き先も品川と表示されている

駅券売機横の時刻表も始発電車出発までに掛け替えられ、特急がすべて品川行きとなっている

ホームの電光掲示板にも品川の文字が

出発セレモニーは1番線ホームで行われた

駅のデジタルサイネージで上野東京ラインの開業と常磐線特急の名称変更をアピール

階段にも上野東京ライン開業を知らせる帯が貼られていた

　観光という意味では、当面は北陸新幹線のほうが注目度が高いかもしれない。また、上野東京ラインは、どちらかというと通勤電車など在来線での活躍への期待度が高い。しかし、常磐線特急が品川発着となることで、品川駅や東京駅で“いわき”の地名が表記されるようになるため、観光面でも上野東京ラインは十分なポテンシャルを秘めているといえるだろう。

　その期待度を表わすように、3月14日のいわき発品川行きの1番列車となった「ひたち2号」の出発に合わせ、いわき駅1番ホームで、JR東日本水戸支社営業部長の吉川浩史氏と、いわき駅長の川畑亨氏、来賓として地元いわき市長の清水敏男氏、福島県いわき地方振興局長の緑川茂樹氏、いわき観光まちづくりビューロー専務理事の渡邊弘幸氏が出席して、上野東京ライン開業記念出発式が開催された。

いわき駅で開催された上野東京ライン開業記念出発式。左から、いわき駅長 川畑亨氏、JR東日本水戸支社営業部長 吉川浩史氏、いわき市長 清水敏男氏、福島県いわき地方振興局長 緑川茂樹氏、いわき観光まちづくりビューロー専務理事 渡邊弘幸氏

いわき駅の1番列車「ひたち2号」の出発式

　出発式では、まずJR東日本の吉川氏が「いよいよ本日3月14日、上野東京ライン、上野東京間3.6キロが開通いたします。これまでご愛顧いただきました『スーパーひたち』『フレッシュひたち』は、本日より『ひたち』『ときわ』と名称が変わりまして、品川まで延びます。また、新たな着席サービスを導入しまして、これまで以上に利便性や快適性、速達性を充実させていきたいと思っております」と挨拶。

　品川駅始発の1番列車「ひたち1号」にも触れ、「品川駅や東京駅では、ひたち号やときわ号は『いわき行き』と表記されます。“いわき”という地名が東京地方にも浸透することで、より身近に感じていただけるものと思います。来月4月1日からは、『ふくしまデスティネーションキャンペーン』（JRグループや福島県、地元自治体、観光事業者などと連携した福島県観光キャンペーン）が開催されます。首都圏の方々に、福島の魅力、いわきの魅力を伝えるために情報発信をしていきたいと思っております」と、いわき市側から見たひたちやときわが品川駅発着となることによるメリットや、地元福島県やいわき市への観光客誘致への意気込みを語った。

　続いて、いわき市長の清水氏が、「常磐線が品川まで乗り入れることになりました。常磐線沿線の自治体住民にとって長年の悲願でしたが、やっとこの日を迎えたな、と思っております。いわき市民にとってこれほど嬉しいことはありません。」と、いわき市住民を代表して喜びの声をあげた。

　また、「ふくしまデスティネーションキャンペーン」にも触れ、「いわき市としても（キャンペーンを）全面的に支援し、東日本大震災以来、観光客は7割程度しか戻っておりませんが、震災前同等、そしてそれ以上の皆さまにお越しいただきたいと思っていますし、（ひたち号、ときわ号の品川発着が）その起爆剤になると思っています」と、期待感を示した。

挨拶を行なう、JR東日本水戸支社営業部長の吉川浩史氏

上野東京ラインの開業に期待感を表わす、いわき市長の清水敏男氏

　市長の挨拶後は、ひたち2号の乗務員を代表し、運転士を勤めるいわき運輸区の柳生浩史氏と、車掌を勤める上野車掌区の上村隆弘氏に、いわき市の観光大使でもある「第28代サンシャインガイドいわき」の長谷川真美さんと田村莉沙さんから、フラガールが生まれた地いわきらしく、レイが贈呈された。そして、いわき駅長やいわき市長など来賓の方々によるテープカットを経て、品川行きの1番列車となるひたち2号が、定刻の6時13分に出発した。

セレモニー開催直前に、ひたち2号の行き先掲示板に列車名の「ひたち2号」と行き先の「品川」が表示された

ひたち2号車掌の上村隆弘さん（左）と、運転士の柳生浩史さん（右）

第28代サンシャインガイドいわきの長谷川真美さん（左）と田村莉沙さん（右）

サンシャインガイドいわきの2人から乗務員にレイが贈呈された

いわき駅長やいわき市長など来賓の方々によるテープカット

出発時刻を間近に迎えるひたち2号

ひたち2号を見送る来賓の方々

いわき駅長が出発の合図

出発するひたち2号に手を振るいわき駅長や来賓の方々

ひたち2号は定刻どおり品川に向けて出発していった

いわき駅に到着した品川発の一番列車「ひたち1号」

　品川発いわき行きの1番列車「ひたち1号」のいわき駅到着に合わせて、出迎え式も開催された。出迎え式では、いわき駅長やサンシャインガイドいわきの2人に加えて、いわき市観光ナビゲーターの「フラおじさん」や、JR東日本水戸支社のE657系イメージキャラクターの「ムコナくん」も登場し、改札出口で東京方面からの乗客を出迎えた。乗客には、サンシャインガイドやオリジナルキャラクター、いわき市職員の方々から記念品を贈呈。乗客も、オリジナルキャラクターや駅長と記念撮影を行うなど、終始和やかな雰囲気の中で出迎え式は終了した。

いわき駅に到着する、品川発の1番列車、ひたち1号

改札出口で東京方面から到着したひたち1号の乗客を出迎えるいわき駅長、サンシャインガイドいわきの2人、オリジナルキャラクターのフラおじさんとムコナくん

フラおじさん（左）は、いわき市観光ナビゲーター。ムコナくん（右）は、ひたちやときわで利用される車両E657系のイメージキャラクターだ

いわき市観光協会や市職員も乗客をお出迎え

最後の乗客が改札を出てくるまで、お出迎えは続いた