ニュース

ANAとJAL、カスハラに共同で対処。暴言や侮辱・過剰な要求・セクハラなど9項目を明文化「利用者・会社・従業員で共通認識を持つ」

2024年6月28日 実施

ANAとJALがカスハラに対する方針を共同策定

 ANAとJALは6月28日、カスタマーハラスメントに対する方針を共同策定し、骨子や定義を明文化した。

 従業員の心身の疲弊や職場環境の悪化など、カスハラ被害とその対処に社会的な注目が高まるなか、空港や機内など対面で接触する機会の多い航空会社にとっても、対応の必要は高まっている。また、カスハラ現場にほかの顧客が居合わせることで、気まずい思いをしたり本来提供できるはずのサービスを実現できなくなったりと、利用者にも不便がかかることが考えられる。

 そこで両社で「なにをカスハラとするか」という基本的な定義や該当行為例の整理などを行なって、両社のWebサイトに掲載することで、スタンスと考え方を明確にした。

 会見では、ともに現場での接客経験のあるANA CX推進室 CS推進部 部長の宮下佳子氏、JAL カスタマーエクスペリエンス本部 CX推進部 部長の上辻理香氏が登壇し、「基本方針(骨子)」「定義」「該当する行為例」を説明した。

●基本方針(骨子)

 私たちは、安心で快適な空の旅をお届けするため、常にお客さまに寄り添い、質の高いサービスの提供を目指します。そのため、お客さまのご意見・ご指摘には真摯かつ誠実に対応してまいります。

 一方で、暴言や暴行などの著しい迷惑行為など(カスタマーハラスメント)に対しては、従業員の人権および就業環境を害するものとして、毅然と行動し、組織的に対応いたします。

●カスタマーハラスメントの定義

 顧客または第三者(取引先など含む)からの優越的な立場を利用した「航空法、その他関連する法規に反する行為」、及び「これらにつながりかねない行為」、または「義務のないことや社会通念上相当な範囲を超える対応を要求する行為」により、従業員の就業環境が害されること。

●カスタマーハラスメントに該当する行為例

・暴言、大声、侮辱、差別発言、誹謗中傷など
・脅威を感じさせる言動
・過剰な要求
・暴行
・業務に支障を及ぼす行為(長時間拘束、複数回のクレームなど)
・業務スペースへの立ち入り
・社員を欺く行為
・会社・社員の信用を棄損させる行為(SNS投稿など)
・セクシャルハラスメント(盗撮、わいせつ行為、発言、つきまといなど)

ANA/JAL カスタマーハラスメントに対する方針

 上記定義に該当するカスハラは両社の各部門で確認されており、2023年度は両社ともに300件程度あったとのこと。特に対面でサービス行なう空港・機内では暴行なども起こっており、将来を担う人材がこうした事例で職場を離れてしまうことに強い危機感を抱いているという。

 宮下氏と上辻氏は、カスハラへの取り組みそのものは個社で以前から進めており、そのうえで業界として対策を推進していきたいという考えが両社にあったことで、今回共同で方針を打ち出す段階へと進んだ、と説明する。

 これまでは、カスハラに直面しても従業員自身が「どこからがカスハラか」という線引きをしづらかった面があり、今回明文化を行なったことで、「利用者・会社・従業員で共通認識を持つこと」が大切だという。

 一方、カスハラが近年増えているという実感はありつつも、その理由までは分かっていない。しかし、各種SNSの台頭やスマホのカメラ・アプリなど、写真や映像を伴って拡散しやすい技術的背景が整ったことで表面化しやすくなった、という側面は事実として考えられる。

全日本空輸株式会社 CX推進室 CS推進部 部長 宮下佳子氏
日本航空株式会社 カスタマーエクスペリエンス本部 CX推進部 部長 上辻理香氏
カスハラによって起こる負の循環
「著しい迷惑行為に毅然として対応します」という宣言