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JAL赤坂社長「当期利益344億円の通期黒字化を達成。コロナ禍も支えてくれた皆さまに感謝」。第74期株主総会

2023年6月23日 開催

JALが第74期定時株主総会を開催

 JALは6月23日、第74期定時株主総会を東京ガーデンシアター(江東区有明)で開催した。代表取締役社長執行役員の赤坂祐二氏が議長を務め、株主の出席者は673名。

 まず2022年度の事業報告について。グループの売上収益は1兆3755億円(前期比6928億円増)、EBITは645億(前期比3040億円増)、当期利益は344億円(前期比2119億円増)となっている。

 新型コロナの感染拡大防止と社会経済活動の両立が進み、航空旅客需要が着実に回復した当期。

 同グループではコロナ禍においても社員の雇用を維持し、航空機を省燃費性能の高い最新鋭の機材へ更新するなど、反転攻勢に向けた体制の準備を進めてきた。

 また、収支改善に向けて利用しやすいダイヤの設定や増便をすることで利用客の需要に対応。燃油価格が高騰するなか費用削減に取り組んできたことなども、成果の要因として挙げられた。

議長を務めた日本航空株式会社 代表取締役社長執行役員 赤坂祐二氏

各部門の状況と対処すべき課題

 続いて、議長の赤坂氏が各部門の状況を振り返るとともに、今後対処すべき課題について言及。

 国際線は、下期からインバウンドが増加したことで、通期需要が2019年度比で6割まで回復。回復スピードの早い日本経由のアジア~北米間の通過需要を取り込むべく、成田空港での乗り継ぎ便の設定、各国の規制緩和に応じた機動的な供給調整など、柔軟に対応してきた。

 国内線では「全国旅行支援」の実施もあり、観光を中心に着実に回復をみせた。これに対し臨時便の設定や航空機材の大型化などを図り、GW・年末年始・春休みには2019年度比で旅客数が約9割まで回復した。

 水際対策や行動制限の撤廃、新型コロナ5類移行など、コロナ収束への動きが進み、3年ぶりにコロナ前の日常を取り戻しつつあるが、特に国内線では「すでにコロナ前の水準に戻りつつある。今後も着実な旅行需要の回復が見込まれる」と赤坂氏。

 また貨物郵便事業では、積極的な供給によって収入の最大化に努めるとともに、国際貨物では医薬専用定温庫「JAL MEDI PORT」設置や生鮮貨物の高速輸送、国内貨物では2024年4月から運航するヤマトホールディングスとの貨物専用機など、新たなビジネスへの準備を加速している。

 LCC事業においては、中長距離国際線LCCビジネスモデルを確立し黒字化を達成したZIPAIRをはじめ、スプリング・ジャパン、ジェットスター・ジャパンともに収支改善に努め、成田空港をハブとしたネットワーク構築を推進。

 さらに非航空事業では、マイル・ライフ・インフラを展開。楽天ポイントとの相互交換、新たな決済サービス「JAL Pay」など、さまざまな生活シーンでマイルを使えるサービスを開始した。企業や自治体と連携し、JALブランドを活かした新商品やエアモビリティの開発・推進にも取り組んでいる。

 2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた施策については、CORSIAベースライン見直しに伴う自社排出量の削減、ICP(Internal Carbon Pricing)導入や合成燃料、CO2回収などの新技術を有するパートナーとの連携など、さまざまな手法で対応を加速するとした。

 これらを踏まえ、「グループ連結の売上高はすでに昨年度にコロナ前の水準を回復し、2023年度は再上場後の最高水準となる見込み。営業利益も昨年度に黒字化を達成し、2023年度のEBITは昨年を上回る1000億円、当期利益550億円、および配当を計画している」とした。

 そして中期経営計画の最終年度である2025年度には売上高1兆8500億円以上、EBITは1800億円以上を目指すという。

質疑応答の抜粋

 総会に上程した議題は3つで、剰余金の処分の件(第1号議案)、取締役9名選任の件(第2号議案)と監査役1名選任(第3号議案)。以下は、株主からの主な質疑を抜粋したもの。

 まず国内線運賃に関する質問。JALでは4月搭乗分から国内線運賃を全面リニューアルし、「フレックス」「セイバー」「スペシャルセイバー」の3種類(購入時期の早さに応じてお得さが異なる)による、シンプルな新運賃を導入している。

 株主からは「運賃があとから安くなるのはなぜか?」「株主割引券でファーストクラスの座席が取りにくいのはなぜか?」「特典航空券が予約変更できなくなったのはなぜか?」といった質問が挙げられた。

 これについてソリューション営業担当者は「基本的には早く予約いただいた方が安くなる。しかし想定よりも需要が冷え込む場合には、収入最大化のため値下げを行なっている」。ファーストクラスの座席も限りがあり「需給に応じてきめ細やかに座席のコントロールをしているため、ご要望にお応えできない状況が発生している」と回答。

 また4月からは、空席があれば追加マイルで利用できる「特典航空券PLUS」を導入しており、「便ごとにその時々で必要マイル数が変化する関係上、空席待ちや予約変更を承れなくなり」、変更の際には一旦取り消しが必要となる。しかし一方で、これまで利用が難しかったお盆や年末年始などの混雑シーズンでも、特典航空券を利用して希望の日程や便を予約できるようになったと説明を加えた。

 続いて2024年から開始する新たなステイタスプログラムに関する質問に対し、マイレージ・ライフスタイル事業担当者が回答。これは、搭乗の機会が多くない人でも航空以外のサービスを利用することでステイタスを獲得できるというもの。搭乗機会が多い人にはさらなる特典が用意される。

 毎年の搭乗実績に対してポイントを積算していく現行プログラムを継続したうえで、物販・金融・ライフサービスなどさまざまな生活シーンにおいてポイントが積算されることとなる。なお、新たな入会条件など詳細については今秋発表するとした。

 このほか会場では、頻発するシステムエラーなどに対する指摘の声も上がり、赤坂氏はあらゆる検証を行ない順次改修に努めると陳謝。

 また「JALとして起爆剤となる、JALを身近に感じさせるようなイベントはやらないのか?」という株主の意見に対しては、現在展開中のキッズキャンペーンや地域連携の取り組みを例に挙げ、「何とかいろんな手を使って、もっともっと日本全体を元気にできるよう頑張る。期待していただきたい」とコメント。

 なお3つの議案はともに原案どおり可決され、総会は閉幕した。