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日本政府観光局、2022年の方針発表。キーワードはラグジュアリー、サステナブル、アドベンチャー

2022年1月26日 実施

日本政府観光局 理事 蔵持京治氏

 JNTO(日本政府観光局)は1月26日、都内でメディアブリーフィングを開催し、2021年度の振り返りと2022年度の方針を発表した。2022年度はインバウンド再開を見据え、「高付加価値旅行」「サステナブルツーリズム」「アドベンチャートラベル」の3分野に重点的に取り組む。

 高付加価値旅行については、1月に「高付加価値旅行推進室」を設置したところで、今後は組織横断での取り組みを加速化させる。富裕層をターゲットに日本各地のコンテンツの収集を強化するほか、DMOやツアーオペレーター、コンシェルジュなどのネットワーク化を図る。

 さらに、ラグジュアリートラベル向けのBtoBイベントに参加し、海外旅行会社とのネットワーク拡充とセールスの強化も目指す。このほか、コンソーシアムなど連携し、BtoB、BtoC向けの情報発信を強化する。

本メディアブリーフィングの様子はパートナーにもオンライン上で公開した

 JNTO理事の蔵持京治氏はインバウンド再開後の旅行の再開について、「そこから動くという予想をしっかり立てているわけではない」としながらも「富裕層から動くというコメントをする人がいることは承知している。再開後は航空運賃が高い値段で市場に出るという話もあり、最初から一般のお客さまが動けるのか」と語り、富裕層旅行に期待を示した。

 サステナブルツーリズムについては、2021年度はサステナブルツーリズムの3要素(観光・文化・経済)を体現する施設・アクティビティ50選を収集・選定してデジタルパンフレットを制作。それを受け、2022年度はJNTOのWebサイトに特設ページを開設し、情報発信を強化する。さらに海外メディアでの記事化を促進。商談会やセミナーなどでも積極的にアピールしていく。

日本政府観光局 企画総室事業・プロモーション統括グループマネージャーの伊藤亮氏

 サステナブルツーリズムは欧州を中心に旅行者の意識が高まっているが、東南アジア・アジアではまだそれほど意識されていない。蔵持氏は「(関心度は)国によりばらつきがあるが徐々に世界に広がっていくだろう」との予測を示した。

 また、JNTO企画総室事業・プロモーション統括グループマネージャーの伊藤亮氏は、サステナブルツーリズムがMICEで注目が高まっていることを指摘。地方自治体やDMOに対し、海外の先進的な事例情報を提供するとともに、GSTC(Global Sustainable Tourism Council)などの認証団体を紹介しているという。

 アドベンチャートラベルについては、伊藤氏がその定義を「アクティビティ・自然・文化体験の3つの要素のうち2つ以上で構成される旅行」と改めて説明。市場規模は欧米で約72億円であり、1人当たりの消費額が高く、地域への還元・雇用効果も高いことを特徴として語った。

 そのうえで、アドベンチャートラベルの国際組織であるATTA(Adventure Travel Trade Association)が主催する「アドベンチャー・トラベル・ワールド・サミット」について、昨年の北海道でのバーチャルイベントを経て2023年にリアルイベントとしての開催が内定していることを説明。「これを好機ととらえて積極的に取り組んでいきたい」と意欲を示した。

 具体的にはアドベンチャートラベル専門旅行会社やメディアとのネットワーキングを行なうとともに、観光庁や地方運輸局・自治体・DMOなどと連携し、日本全国の関連コンテンツを紹介するJNTO内の特設ページを拡充させていく方針だ。加えて、インバウンドの受け入れ態勢の整備を目指し、現地ガイドなどの人材育成などの取り組みを自治体やDMOに呼びかけていく。

東京五輪の成果、3.9億人が新たに訪日意欲

日本政府観光局 市場横断プロモーション部市場開発グループマネージャーの臼井さやか氏

 市場横断プロモーション部市場開発グループマネージャーの臼井さやか氏は、東京オリンピック・パラリンピックに合わせてJNTOが実施した情報発信の成果を報告した。JNTOが実施した各プロモーションの成果や海外メディア・海外居住者それぞれへのアンケートの結果についてまとめたもの。

 臼井氏によれば、13か国・地域の8034名の海外居住者に実施した、東京五輪を通じた日本への関心動向や態度変容などのアンケート調査の結果、回答者の44.2%が日本への興味が強まった。パンデミックが落ち着いたあとの訪日意欲は73.2%となったという。

 将来の訪日意欲を示した回答者のうち、38.6%が東京五輪を契機に意欲が高まったと回答。このうち競技の視聴をきっかけとした人が最も多い21.3%で、選手などによるSNS投稿が18.1%、日本のプロモーションが16.1%と続いた。JNTOではこうした結果から、各国人口を踏まえた試算に基づき、新たに3.9億人相当の訪日意欲が向上したと推計している。

 また、海外居住者アンケートによれば、33.2%の回答者が東京五輪の広告宣伝などにより日本の印象がよくなったと回答。特に歴史や伝統文化、景色・風景などへの印象がよくなったという。

 東京五輪で訪日した海外メディア209名へのアンケートでも、8割以上が再訪に前向きな姿勢を示しており、歴史や伝統文化、食文化や有名な観光スポットに魅力を感じたと回答。こうした成果に対し、臼井氏は「JNTOの訪日プロモーションが多くの人にリーチし、旅行先としての日本に非常にポジティブな印象を与えたのでは」と喜びを示した。

 将来の訪日意欲については、海外居住者・メディアともに2025年に開催予定の大阪・関西万万博への興味関心の高さが明らかになった。特に海外居住者については66.5%が「日本でのメガイベントに訪れたい」と回答。万博への参加は27.0%で最も多く、次いでサッカー(23.9%)、陸上競技(16.7%)と続いた。

 また、臼井氏はJNTOのプロモーションの成果についても言及。JNTOでは英国・米国・中国・フランスを重点市場と位置付けてプロモーションを強化するとともに、東南アジア、欧州圏、英語圏でもプロモーションを展開。オンライン広告、グローバルメディアでのテレビCM、屋外広告などを行なった結果、オンライン広告では1.5億以上の視聴があった。テレビCMでは1.2億人、屋外広告では5600万人の視聴があったという。

 プロモーションを強化した4か国については、アンケート対象者の70%以上が広告を視聴した結果、日本を訪れたいと回答。米国で東京五輪の独占放映権を持つNBCのアンケートでも、CM視聴者の95%が日本にポジティブな印象を持ち、40%が次の海外旅行先として日本を検討すると回答している。

 このほか、メディアブリーフィングでは、2021年の訪日外客数の推移や各国の推移について、蔵持氏が振り返って説明。2021年の訪日外客数はコロナの影響を大きく受け、2019年比99.2%減の24万5900人となり、JNTOが発足した1964年以来最低の人数だったことを明らかにした。

 そのうえで同氏は、UNTWO(国連世界観光機関)が1月18日に発表した最新の見通しについて言及。国際線旅客数が2022年後半から緩やかに戻り、2019年比の半分のレベルまで回復する見通しを紹介するとともに、2019年レベルへの国際観光回復時期の見通しを専門家に聞いたアンケートによれば、回復時期を2024年以降とする意見が6割を超えていることを説明した。